目次
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それは、日曜日の昼下がり。
ソファでくつろいでいたママがぽつりとつぶやいた。
「あのね…昔、給食に出てた“ソフト麺のミートソース”って、ほんと美味しかったのよ…」
その瞬間、わたしの中で何かがピコーンと光った。
わたし、小学二年生のまどか。
あだ名は“給食探偵まどかちゃん”。
知らない味には目がない。
もちろん、おいしい事件はもっと大好き。
でも“ソフト麺”?
え、それって…うどんじゃないの?
ラーメンでもスパゲティでもないの?
しかもミートソースときた。
なにそれ、謎の組み合わせ。
しかもママが目をうるうるさせながら「今はもう、あれと同じのには出会えないのよ…🩷」って言ったとき、わたしは思った。
よし、これはもう事件だ。
名探偵の血が騒ぐ。
美味しいものの正体を暴くのが、わたしの仕事だからね。
ということで、今回のターゲットは──“ソフト麺の真実”。
これは、ひとつの家庭とひとつの給食の間に起きた、あたたかくて少し切ない、だけどとびっきり美味しい謎解きの記録である。
ママが大好きだった“あの味”を取り戻すために。
まどか探偵団、出動しますっ!
「ママ、うどんじゃだめなの?」と聞いたのは、パントリーの奥から乾麺の袋を発見したときだった。
「似てるけど、違うのよ…ソフト麺はソフト麺なの」とママが言った。
ちょっと遠くを見ながら。
なんかそれ、初恋の人を思い出してるみたいな言い方じゃん。
だけど探偵まどかの辞書に「違う」で終わる言葉はない。
じゃあ何が違うのか、証拠を集めてみることにした。
まず調べたのは材料。
普通のうどんは「中力粉」という粉で作るらしい。
でもママの言ってたソフト麺は「中力粉と強力粉の混合」だって。
なるほど、それってもしかして…うどんよりコシが強くて、でもラーメンみたいにスープに勝ちすぎない、そんな“ちょうどいい”やつなのかも?
そう思って実験開始!
台所で小麦粉の袋をガサゴソ、粉を出してはふるいにかけ、水と塩でこねる。
うどんと同じように見えるけど、手にまとわりつく弾力がなんかちがう。
「これが…ソフト感!?」わたしの指先に伝わるやわらかさに、ちょっと感動。
でも、ラーメンじゃない理由もある。
中華麺には「かんすい」という、ちょっと独特な匂いと黄色っぽさの出る成分が入ってる。
でもママのソフト麺は白かった。
つまり、かんすいなし。
だからラーメンじゃない。
うどんともラーメンとも違う、ちょっと変わった中間の存在。
どっちつかず…だけど、それがいいのかも。
「へぇ~あの頃はね、学校の給食用にしか作られてなかったのよ」ってママが言う。
つまり、スーパーじゃ売ってなかった。
学校でしか出会えない限定品!?
まさかの給食プレミアムアイテム!
わたしの中で“給食界の幻の麺🩷”としてソフト麺の地位が急上昇した。
調査すればするほど、謎が深まる。
なのにどんどん食べたくなる。
うどんじゃだめ。
ラーメンでもない。
“あの麺”には、“あの麺”にしか出せない個性がある。
…これ、ただの再現じゃないよ。
食文化のミステリーだ。
しかも、美味しすぎるやつ。
次はあのソースの正体を突き止めなきゃ。
そう、ママの言っていた“ミートソース”。
きっとそこに、さらなる謎があるに違いない──。
「ママ、あのソースって…普通のミートソースじゃないんでしょ?」
「うん、あれは…“給食の味”だったのよ」
はい、また出ました。
“給食の味”という魔法の言葉。
ケチャップで煮ればミートソース?
レトルト買えばOK?
とんでもない。
ママの顔を見る限り、あの味はもっと特別で、もっと深い秘密があるらしい。
なら探すしかない!
キッチンに転がるレトルトの袋を並べては、一口ずつ味見するわたし。
「…ちがう。これでもない。こっちはトマトが強すぎるし、こっちはお肉がごろごろしすぎてて、なんかイタリアすぎる!」
どうやらママの記憶にあるミートソースは、ボロネーゼとも違う“日本の給食用ミートソース”という超ニッチな存在らしい。
やるな、給食。
証言をもとに犯人(=本物の味)を絞り込むと、だんだん浮かんできたキーワードは「ケチャップ多め」「玉ねぎの甘み」「ウスターソースの隠し味」「トマトピューレのさっぱり感」「ちょっぴりしょうゆ」…そして「合挽き肉と野菜をじっくり煮込む」。
そうか…このソース、ひとことで言えば、**“家でもイタリアでもない、日本の給食用に進化した和風ミートソース”**だったんだ。
なるほど。
謎は深いが、おいしさは近づいてきた。
「まどか、玉ねぎは細かくしてね。炒めるときはちょっと焦げるくらいがコクが出るのよ」と、ママも気づけば助手に早変わり。
わたしが混ぜ、ママが調味料を足し、だんだん鍋の中から懐かしそうな香りが立ち上ってくる。
「……これかも」
ママがつぶやいた。
探偵の血が騒ぐ。
これはほぼ確定。
記憶の味を再現したそのソースは、市販品では絶対に出ない甘みと酸味と香ばしさが交差した、まさに“あの頃の味”。
だけど、これだけじゃ終わらない。
あのミートソースの完成には、もう一つの重要な証拠がある。
そう、麺とソースが出会った**“盛りつけ方”**という名の最終トリック。
ソースが出来たからといって、気を抜いたら“ただのミートスパ”になってしまう。
それは給食じゃない。
銀色の食器、ぬるめの温度、添えられた牛乳――そこまで再現して、初めて真実にたどり着ける🩷。
次の現場は、麺の調理方法と食器の捜査だ。
まどか探偵団の挑戦は、まだまだ続くっ!
鍋の中のソースは完璧だった。
ママが思わず小さくガッツポーズするくらいに、記憶の味を再現できた。
でも──事件はまだ解決していなかった。
わたしの目の前に立ちはだかる最後の大きな壁、それは……麺だ。
麺を茹でて、お湯を切って、お皿にのせる。
普通はそう思う。
でもママは首を横にふる。
「違うのよ。ソフト麺はね、袋に入って、湯煎して出てきたの。しかも、ちょっとぬるかったのよ…」
ぬるい!?
給食なのに!?
これは重要な証言。
温度管理まで記憶に残ってるとは、なかなかの手ごわい参考人…じゃなかった、ママである。
ということで、再調査。
ソフト麺の調理法を検索してみると…出た!
“袋ごと湯煎して、取り出したら少し蒸らす”。
な、なんですって!?
茹でてすぐ盛り付けてはいけないとは…つまり、あのモチモチ食感は“二段調理”の賜物だったのか!
すぐさま作戦変更。
手打ち風で作った麺をいつもより少し柔らかめに茹でたら、ラップで包んで放置。
じんわりと麺の中に熱と水分が行き渡る。
蒸らしタイムは15分。
まるで麺が自分の味を深めるかのように、静かに熟成していく…。
そう、これは“麺の成長タイム”だ。うどんにはない。
ラーメンでもしない。
ソフト麺だけの秘密の儀式。
「まどか、そろそろいいんじゃない?」
ママの声でラップを外すと…うわっ、麺が!もちもちしてるのに、びっくりするくらい崩れない。
しかも、手に吸い付くような独特の質感。
まさに、給食で食べたと証言されたソフト麺のそれ!
「よし…犯人は再現された!」
わたしとママは小さくハイタッチ。
湯煎して、蒸らして、ミートソースを上からとろーり。
そして、銀色の皿…とまではいかないけど、ステンレスのトレイに盛り付けたら、もう気分は完全に給食。
横に牛乳パック(紙じゃなくてプラスチックのだけど)を置けば完璧。
ただの茹でうどんじゃ、ここまでたどりつけなかった。
ラーメンのスープでも、再現できなかった。
必要だったのは、“湯煎と蒸らし”という見えないひと手間。
これはもう、料理じゃない。
再現実験だ。
いや、もはやロマンだ。
でもね、探偵の仕事はここで終わらない。
ママがちょっとさびしそうに言ったの。
「ソフト麺って、昔はいろんな味で出てきたのよ。でも今は、あんまり見かけないでしょ?」
うん、たしかに。
ミートソースだけじゃないってこと…?🩷
まだあるの?
まだ謎が!?
よーし、次の現場は“給食バリエーション事件”だ!
ついにわたしは、家を飛び出した。
あのソフト麺が再現できたのに、なぜか胸の奥がまだザワザワしてる。
それはたぶん…“もっと知りたい”って気持ち。
そう、真相の先にある真実。
それをつかむために、わたしが目指したのは、駅からちょっと歩いたところにある、のれんが古びた町のうどん屋さん。
その店は、入り口に「手打ち」と書かれた木の看板が下がっている。
機械じゃなくて、人の手で粉からこねてるってこと。
つまり、情報源としては超一級。
まさに秘密基地に違いない。
中に入ると、白いTシャツにエプロンの店主が、カウンターの向こうで粉まみれになっていた。
「こんにちは!わたし、まどか探偵団の者です。
あの、質問があるんですけど!」と挨拶すると、店主は「おっ、ずいぶん元気な探偵さんだね」と笑った。
「ソフト麺って、どうしてうどんやラーメンとは違うんですか?強力粉と中力粉って混ぜて使ったりします?」と聞いたら、店主の目がキラリ。
よっ、話好きの大当たり。
「お嬢ちゃん、いい質問だ。うどんは基本、中力粉。でも店によっては強力粉をちょびっと混ぜたりするんだよ。コシを強くしたいときとか、もちっとさせたいときとかね。逆に柔らかくしたいときは薄力粉を混ぜたりもする。実は“混ぜる”って、職人にとっては秘密の技なのさ。」
わたしの頭の中で、ビンゴの音が鳴った。
そうか!
ソフト麺は、ただの“給食の麺”なんかじゃない。
粉の配合に工夫があって、あの“どっちでもないのにどっちとも合う”不思議な食感を作ってたんだ!
「ってことは…ソフト麺って、麺界のハイブリッドだったんですね!」と言ったら、店主が吹き出した。
「ハイブリッド麺って言い方、面白いなあ!確かに、ラーメンのコシとうどんのやさしさ、両方あるかもな。」
まさかの名付け親になってしまった。
“ハイブリッド麺”──なんかかっこいい。
そしてわたしは気づいた。
このお店の麺も、ソフト麺にちょっと似てる。
出汁は違うけど、粉の風味ともちもち感が、どこか懐かしい。
「お嬢ちゃん、また来な。粉のことなら、なんでも教えてやるよ。」
うん、絶対また来ます。
だって、ここはもう“わたしの研究所”だもん。
その日、まどか探偵団は新たな証拠をゲットした。
“ソフト麺は、偶然の産物じゃなくて、粉の工夫が生んだ技術の味だった🩷。”
次はついに、あの話。
なぜ、ソフト麺は消えたのか。あんなに愛されていたのに──
その謎を追うべく、まどか探偵は再び捜査ノートを開く!
ついにまどか探偵の捜査ノートは、すべての証拠で埋まった。
粉の配合、湯煎と蒸らし、ミートソースの甘み、そして手打ち職人の証言…。
それらを全部照らし合わせていくうちに、見えてきた“ある真実”があった。
「ママ、ソフト麺ってさ……もしかして“余り物から生まれた”ってことなの?」
ママは一瞬、うっと詰まったあと、小さくうなずいた。
「そうかもね。昔は食糧事情が大変で、アメリカからたくさん小麦粉が送られてきたの。お米も足りなかったし、食べられるなら何でも工夫して、子どもたちに届けてたんだと思うわ。」
なんと…つまり、あのソフト麺は「美味しくて人気だったから」作られたんじゃない。
“捨てたくないもの”と“混ぜてなんとかできるもの”を、みんなで知恵をしぼって形にした結果だったのか。
なんてこった。
あのもちもちで、つるつるで、誰もが「美味しかった!」って笑顔で食べてたあの麺が、実は“戦後の混ぜ混ぜ大作戦”だったなんて――!
しかも、それを「ソフト麺」なんて優しい名前で包んで、わたしたち子どもたちに「思い出の味」って錯覚させてたなんて!
いや、ちょっと待って?
それってつまり――
本当にすごいことなんじゃない?
「美味しくない余り物」なんて、誰でもイヤがる。
だけど、どんな材料だって、工夫すればちゃんと“おいしい笑顔”に変えられるって、それってすっごく誇らしいことじゃない?
しかも、全国の子どもたちがそれで元気を出してたなんて、まるで…ヒーローみたい!
「ごまかしだったのかもしれない。でもね、それを毎日つくってた調理員さんや、届けてくれてた人たちには、ちゃんと“まごころ”があったのよ」ってママがぽつり。
その瞬間、わたしの心にじわっとあったかい何かがしみてきた。
ソフト麺。
それはただの“中途半端な麺”じゃなかった。
どこにも属さず、でもどんな味にもなれる。
誰かの工夫とやさしさが混ざって生まれた――**“愛される余白”**だったんだ。
ママは、思い出した。
給食の時間、みんなで机をくっつけて、おかわりジャンケンして、ミートソースが制服に飛んで、先生にこっぴどく怒られて……
でもそのときの、あの味の記憶。
ちゃんと今でも、笑えると…。
これはただの再現じゃなかった。
過去と、今と、家族と、社会とがつながった“ソフト麺事件”🩷。
そしてこの事件は、まだ終わっちゃいない。
次は、あの謎。
なぜ、ソフト麺は今、給食から姿を消してしまったのか?
愛されてたはずなのに、なぜ…?
まどか探偵、ラストミッションへと突入しますっ!
再現はできた。
味も近づけた。
歴史も学んだ。
でも、わたしの心にはずっと引っかかっていることがあった。
「どうして今はもう、給食にソフト麺って出てこないの?」
それが、この事件のラストミッションだった。
ママはちょっと考えてから、こう答えた。
「たぶんね、“あれ”は、手間がかかりすぎるのよ」
手間…?
よくよく聞いてみたら、昔のソフト麺って、専用の真空パックに入れて、湯煎で温めて、袋から出して、ソースをかけて…って、給食センターのおばちゃんたちが手分けして一生懸命つくってたらしい。
でも今はね、一括配送・大量生産・電子調理システムっていう、「給食もデジタル社会」な時代。
ソフト麺みたいに“人の手が必要な麺”は、真っ先に候補から外されちゃったんだって。
それに、最近の子どもたちは「冷凍うどん」や「パスタ」「ラーメン」の味を小さい頃から知ってるから、「ソフト麺ってなにこれ、味がうすい〜」ってなる子もいるんだとか。
えぇ……うすいって、そこがいいんじゃん。
ソースの味がちゃんと分かる優しさとか、ふんわりした食感とか、あの“おかわりじゃんけん”のときの盛りやすさとか!(そこ?)
でも、わたしは知ってる。
あの味には、手抜きじゃない手間と、余ったものをおいしく変える魔法と、そしてなにより、誰かを思ってつくられた優しさがあったことを。
「でもね、まどか」
ママが最後ににっこり言った。
「今はもう学校では出ないかもしれないけど、あの味を思い出して、もう一度作ろうって思った人がいれば、それはちゃんと“生きてる”ってことよ」
……うん!それなら、わたしがつくる!
まどか探偵は、いまから“給食探偵まどかシェフ”に進化する!
ソフト麺は、もう“どこかにある味”じゃない。
わたしが“自分の手で残していく味”になるんだ🩷。
そんな未来があっても、きっと悪くないよね?
事件は解決した。
いや、再現された。
いやいや、たぶん、蘇ったって言うべきかな。
うどんでもラーメンでもない、給食だけの不思議なあの麺――ソフト麺。
ケチャップなのに家庭の味とはちょっと違う、あの“和風ミートソース”。
そして、銀色の器と牛乳パックが並ぶ、机をくっつけて食べたあの光景。
全部ぜんぶ、ちゃんと理由があった。
残り物だったから?
混ぜ混ぜしてたから?
知らなかっただけで、ほんとはすごく工夫されてて、すごく優しくて、すごくあたたかかったんだ。
わたしは思った。
ソフト麺って、きっと「特別な味」なんかじゃない。
誰かが捨てずに、工夫して、笑顔に変えた「ふつうの味」。
でもね、その“ふつう”を守るのって、ほんとはすっごくすっごく大変なことなんだ。
だからこそ、消えてしまったのかもしれない。
だけど…なくなったってことじゃない。
だって、わたしがこうして探し出して、作って、食べて、笑ったんだから。
ソフト麺は、きっとまだ生きてる。
今は“思い出の味”だけど、明日は“未来の味”にできる。
おうちで再現してもいいし、町の手打ち麺屋さんで似た味を探してもいい。
大事なのは、“知ろうとする気持ち”と、“食べて笑う時間”だと思う。
探偵のお仕事は、事件を解決することじゃない。
本当に大事なのは、誰かの「おいしかった」の理由を探して、一緒にまた味わうことなんだってわかった。
というわけで、次のミッションがある人は、すぐに麺とケチャップを用意してください。
あ、でも蒸らしは忘れずに。
ラップで包むんですよ。
重要です。
メモしてください。
まどか探偵、今日も世界を少しだけやさしくしたのでした。
おしまいっ!🩷
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