目次
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8月4日――今日はなんの日?
そう、我が家では朝から“箸”が主役。
テレビをつければ「箸供養祭」のニュースが流れ、スマホには「箸の正しい持ち方」記事の通知。
え?
箸にそんな注目集まる?と苦笑いするのは、25歳、現役介護士で三食しっかり食べる系ママである、わたし。
この日は、いわゆる「箸の日」。
語呂合わせで「は(8)し(4)」、なるほどシンプル。
そして記念日の裏には、「割り箸組合」とか「藤本商會本店」なんていう、何とも渋くてマニアックな名前が並ぶ。
でもわたしには関係ない…と思っていたのに、ふと横を見ると、そこには箸を逆さに持ち、ウインナーをドリルのように刺そうとする5歳の娘。
「おい、それは“正しい箸の使い方”じゃない!」とツッコミを入れた瞬間、今日が“我が家の箸教育記念日🩷”になった。
保育園で箸トレーニング中の娘。
箸より重いものは持たない風のばぁば。
見た目は爽やか好青年なのに、箸でごはんを跳ね飛ばすパパ。
そんな家族に囲まれ、わたしはひとり、箸文化の未来を守る侍のような気分で立ち上がった。
「箸が転んでも笑う年頃」とはよく言ったもの。
笑って、学んで、そしてちょっと得する――そんな“箸のある風景”を、今日だけは真面目に(いや、そこそこ真面目に)見つめてみようじゃないか。
さぁ、“箸にも棒にもかからない”ドタバタな朝食劇場、はじまりはじまり~。
朝7時ちょうど。
炊きたてごはんの香りが台所に広がる頃、わたしは冷蔵庫の前で「お弁当のミニトマトどこ行った!?」と小声で叫んでいた。
そんな中、娘5歳、元気いっぱいの寝癖ヘアでリビングに登場。
「今日はね、はしでたべるの、ぜんぶじぶんでやるの!」と宣言しながら、箸の練習用に買ったキャラ物トレーニング箸を、まさかの“左手”で構えるという大技を繰り出してきた。
「お箸は右手だよ〜」と声をかけると、「あたしはレフティーヒーローなの!」と謎のヒロイン設定。
朝からツッコミどころが多すぎる。
ちなみに彼女、昨日は“箸を舌で押さえて食べる”という超斬新な技を披露し、保育園の先生を静かにざわつかせた。
横では、パパ27歳が無言で納豆と格闘中。
「粘りがスゴい…」とつぶやく彼の手元をよく見ると、箸の持ち方が微妙に“パワー型”。
いわゆる“握り箸”というやつで、「箸の正しい持ち方」というキーワードで検索したら、一発目に“NG集”で出てくるやつ。
しかも今、納豆の糸を切ろうとして、“空中でグルグル回す”という謎の舞を披露している。
そこはアニメの変身シーンじゃない。
ばぁば60歳が呆れ顔で言う。
「最近の若いもんは、箸の上げ下ろしもままならんねぇ…」それ、比喩じゃなくてリアルな事態なんですよ。
娘は箸を上げたきりお皿を直撃、パパは下ろすタイミングがズレて味噌汁を机にダイブ。
まさに“箸にも棒にもかからない”朝が、我が家には毎日起きている。
だけど、ちょっとだけ嬉しいのは、娘が「自分で食べる」をがんばってくれてること。
はじめはフォークだったけど、今では「お箸の子になりたい!」って、自主的にトレーニング。
キャラ箸だっていい、補助付きだっていい。
今日も彼女なりに一歩前進してる。
それって、食育の入口としては、最高のスタートじゃない?
朝の食卓には、今日も落ちたごはん粒、箸の持ち方トラブル、笑い声と軽い怒号。
でもそのすべてが、我が家の“箸文化”の第一歩なのだと、わたしは思う🩷。
「それじゃダメなのよ、箸の先っぽでグリグリ押しつぶしたら、お豆腐が泣くわよ」
――ばぁばが語ると、娘は急に姿勢を正した。
そう、ばぁばはこの家の“箸番長”。
見た目はふわっとした60歳、でも心は昭和の“躾道場”を生き抜いた鉄人。
箸の持ち方に関しては、三度の飯よりうるさい。
「昔はね、箸がちゃんと使えないと、お嫁に行けないって言われたもんよ」そんな話をしながら、おもむろに引き出しから取り出したのは、漆黒に金の花模様が施された、いかにも“塗り箸の名品”といった風格の一膳。
「これはあたしが結婚祝いにもらったお箸。小浜の職人さんの手仕事よ。今じゃ珍しいのよ」と、しみじみ眺めるその目には、わずかに遠い日々の光が滲んでいた。
「当時は、“箸を知らぬは育ちが出る”って言われたもんだよ。茶碗にお箸突き刺したら、それこそ母ちゃんの箸が飛んできたんだから」その言葉に、娘が目を丸くした。
「本当に飛ぶの?箸、ビューンって?」
「そりゃあもう、正座してるひざにピシッと来たもんさ。おかげで、今でも茶碗にお箸立てられないんだわ」
それを聞いたパパが小声で、「それ、墓場スタイルですよね…」とぼやきながら、お皿の端に箸をポン。
すると即座にばぁばが、「お皿の上に箸置いたら、マナー違反!お箸は“箸置き”に戻すか、正しく揃える!
それが日本人の魂ってもんよ」と喝を入れた。
まるで道場主。
「昔はね、食べる姿ってのは、その人の人格を表してたのよ。今みたいに“早食い選手権”とか“デカ盛りチャレンジ”なんてなかったもんね。箸を持つ姿に、品格を映すっていうのかね。まぁ、アンタらにはちょっと荷が重いかもしれないけど」と言いながら、ばぁばは自分の湯豆腐を美しくつまみ、口元へと運んだ。
その手元の動きのなんと静かで、丁寧で、きれいなことか。
まるで茶道の一挙手一投足のような、箸の所作。
娘がぽそっと言った。
「ばぁばって、箸の魔法使いみたい…」
「違うわよ。魔法じゃなくて、毎日の積み重ねよ」
その一言が、なぜだか少し胸に残った。
箸はただの道具じゃない。
心の姿勢も、想いも、一緒に持つものなのかもしれない。
ばぁばの話は、箸についてのマナーだけじゃなく、どこか“生き方”について教えてくれるような気がした。
食べることは、生きること。
そしてその一膳には、その人の歩んできた時間が宿っている🩷。
そう思うと、目の前の箸が、なんだかいつもよりすこし重たく見えた――でもそれは、悪い意味じゃなくてね。
「今日はね、わたし、もう“おはし名人”だから!」と、朝からドヤ顔で宣言したのは5歳の我が家のエース。
最近、保育園で“箸トレーニング”が始まり、先生から「上手になったね」と言われたその日から、彼女の“箸に対するプライド”は、富士山の5合目を軽く超えている。
そんな彼女の目の前に登場したのは、ツヤツヤのタコさんウインナー。
わたしが朝4時半から茹でて切って顔まで描いた、渾身の一品。
いざ、そのタコさんに箸をのばした瞬間――スルッ。
まるで氷上のフィギュアスケーターのように、お皿の端からつるりと滑って、机を経由し、床へと転がっていった。
ピアノの下で静かに微笑むウインナーと、それを見下ろす娘の絶望の顔。
まるで青春ドラマのワンシーンだ。
「もっかいやる…」とつぶやくその声は、アイドルの卒業コメントよりも重い。
次の挑戦では、両手でお箸を持ち、「“ぴんくの指”がバッテンにならないように」と、昨日YouTubeで見たという動画の知識を活かすも、なぜか中指が“にんじんスティック”に向かって走り出す始末。
見てるこっちが息をのむ緊張感。
お箸の使い方って、まるでバランスゲームだ。
「ママぁ、どうしてもウインナーがつかめないよぉ…」と涙目の娘に、わたしはそっと手を添えた。
「じゃあ一緒にやろうか。ほら、人差し指は力を入れすぎないで、お箸の“お休みポーズ”よ」まるで忍者の手裏剣練習のように、二人でお箸を握って、そっとタコ足に再チャレンジ。
数秒後、ようやく箸の先にぷるぷる震えるウインナーが乗り、「とれたぁぁぁぁ!」の大歓声。
家中が拍手と称賛で包まれた。
横で見ていたばぁばが、「それでこそ日本の心だわ」と感涙。
パパも「すごいね!パパなんて今朝、納豆が顔に飛んできたよ」と、全然フォローにならないエピソードを挟んで場を和ませる。
そのあと、娘がぽつりとつぶやいた。
「ママ、あたしね、お箸ってすごいと思う。フォークより優しいの」その言葉に、家族みんながちょっとだけ、静かになった。
確かに、お箸は刺さないし、切らない。
そっとつかんで、やさしく運ぶ。
日本の食文化は、この“やさしい道具”から生まれているのかもしれない。
失敗しても、転がっても、めげない心と、家族の笑い声🩷。
今日もまた、我が家の箸トレーニングは、成功のタレをまとって、ひとつ進んだ。
「なぁ、オレって、箸の持ち方…変かな?」朝食後のテーブルを片づけながら、突然そんなことを聞いてきたのは、27歳の我が家のパパ。
パリッとした仕事着に身を包んだその姿は、外では“できる男”に見えるらしい。
だが、家族は知っている。
彼の箸が、たまに“武器”に見えることを――。
今朝も、納豆ごはんをかき込もうとして、豆を“挟む”ではなく“突く”という古武道スタイルを披露。
「ちょ、ちょっと…!それ“握り箸”っていうマナー違反だよ!検索したら“箸のNG使い方まとめ”の筆頭に出るやつ!」と私が慌てて指摘すると、パパは「え?これ、オレの実家じゃ“男の箸”って言われてたんだけど…」と、まさかの“実家ルール”持ち込み。
「男の箸」って、それ、もしかして“力で全部解決する”系じゃない?と思いつつ、ばぁばが横から「箸ってのは、力じゃなくて品格よ。箸にも武士道があるのよ」とさらっと言い放つ。
“箸道”が我が家に正式に存在してしまった瞬間である。
でもパパは不思議とくじけない。
「よし、今日から本気出すわ。昼休みに“正しい箸の持ち方”ググって練習する!会社の給湯室で!」
……給湯室で?
想像してしまう、スーツ姿の大人男子がひとり、コンビニ弁当を相手に箸をチョキチョキ練習している光景。
その“箸より重い野望”が叶う日は近いのか、遠いのか。
「でもさ、箸って、奥深いよな。箸置きの位置とか、箸の置き方とか。オレ、結婚して初めて知ったこと多いかも」そう言いながら、今度はお椀の右に、箸をきれいにそっと並べた彼の姿に、私はほんの少しキュンとした。
家族になって、日々の食卓をともにして。たった一膳の箸を通して、文化が交わり、価値観が溶け合っていく――それって、すごく素敵なことだと思う。
箸の持ち方がぎこちなくても、箸の置き方がカクカクでも、そこに「学ぼう」とする心があれば、それが一番美しい。
うちのパパは、きっとそのうち“箸の似合う男”になるはず。
いや、なる。
なってもらう。
そう決めた🩷。
そういえば、今朝パパがつまもうとして跳ね飛ばした納豆。
あれ、カーテンに付いてたけど……まぁ、いいや。
きっと今夜もまた、練習あるのみ、なんだから。
その日、夕食の片付けを終えた私は、流し台の前でふと立ち止まった。
ふだんはどっと疲れが押し寄せてくる時間なのに、今日はどこか心が温かい。
それは、朝から繰り広げられた“家族の箸劇場”のせい――いや、おかげ、かもしれない。
ふと思い出すのは、私が働く高齢者施設での出来事。
92歳の男性利用者さん、通称“お殿さま”。
昔ながらの気骨あるおじいちゃんで、若い職員には“厳しめ”、でも箸に関しては特に厳格だった。
「箸を正しく持たん者とは、戦(いくさ)はできん!」と、介護職員の中で唯一“剣道の掛け声”みたいな注意を飛ばしてくる人だった。
そのお殿さまが、ある日を境に突然、スプーンでの食事に切り替えられた。
理由は、手の震えでうまく箸が扱えなくなってきたから。
でも、彼は言った。
「スプーンでは、味が死ぬんじゃ…箸が生きていない料理は、ただの燃料だ」
その一言に、なぜだか胸がつまった。
そこで私は、作業療法士さんと相談して、少し太くて滑りにくい箸、手にフィットするようなグリップ付き箸を用意してみた。
握力が弱くても、震えていても、掴める奇跡の道具。
それを手渡した瞬間、お殿さまは声を震わせて言った。
「これは…わしの刀じゃな…!」
そこからは、見違えるようだった。
食事の時間には背筋を伸ばし、箸先で丁寧に豆腐をつまみ、「よし、今日も勝ったぞ」と、まるで武士の勝ち戦のように語る姿。
周囲もつられて笑顔になる。
たかが箸、されど箸。
そこには“自分らしさ”という尊厳が、確かに宿っていた。
介護士として、母として、そして日本人として。
箸はただの道具じゃない。
その人の生きてきた道を、そっと支える相棒なのだ。
「箸で人生を救う」なんて言ったら大げさかもしれない。
でも、あのときのお殿さまの笑顔を思い出すたびに、私は思う。
食べるという行為は、命を繋ぐこと。
そしてその命のリズムを刻むのが、一膳の箸🩷。
今日、娘が“タコさんウインナー”をつかんだことも、パパが“箸置き”に手を伸ばしたことも、すべてが未来へ繋がる練習のひとつなのだと。
箸が語るのは、文化であり、心であり、そして人生そのものだ。
そんなことを、台所でひとり、思いながら――私はまた、家族分の箸を静かに揃えた。
さて、8月4日――“箸の日”に始まった、わが家のドタバタ食卓劇。
娘は箸トレーニングでウインナーを追いかけ、パパは納豆と格闘し、ばぁばは塗り箸片手に昭和の箸マナーを語る。
そしてわたしは、台所でちょっと深呼吸しながら、「今日もよく転がったなぁ」としみじみ笑う。
箸の日とは、ただの語呂合わせじゃない。
割り箸組合の想い、藤本商會の取り組み、日枝神社の箸供養祭――そんな背景にあるのは、“食べる”という行為を大切にしようという願い。
そこには、「箸の正しい持ち方」だけでなく、「箸を通して誰かと心をつなぐ」という、日本らしいやさしさが詰まっている。
箸を上手に使うって、たしかに大事。
だけど、それ以上に大事なのは、その一膳に込める想いなのかもしれない。
家族のこと、自分のこと、いただく命のこと。
箸を通して、たくさんのことが見えてくる。
時には、箸が転んだだけで大爆笑する日もあるし、箸の先にしずくを感じて泣きそうになる日もある。
箸は、食べるための道具でありながら、心を運ぶツールでもある。
子どもにとっては、自立の一歩。
高齢者にとっては、自尊心を支える杖。
そして、家族にとっては、笑いと会話のきっかけそのもの。
これからもきっと、我が家の食卓では箸が飛び、転び、笑いが起こる。
でもそれでいい。
正しくなくても、完璧じゃなくても、今日も箸を手にすることで、わたしたちはちゃんと“生きている”のだから🩷。
さぁ、あなたの箸は、今日は何をつかみましたか?
家族の笑顔?
それとも最後のタコさんウインナー?
どちらでも、大正解です。
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