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梅雨が終わると、いよいよ夏。
青空の下、セミの声が本格的に聞こえはじめる頃――つるんと涼しげな顔で登場するのが、夏のぬめり姫こと「じゅんさい」さんです。
なめこと間違えられる運命を背負いつつも、「私はきのこじゃありません。水草です」と言い続けて幾星霜。
ツヤッツヤの透明ゼリーに包まれ、まるで妖精の卵のように水面に揺れるその姿は、夏の風物詩というより、もう芸術品。
しかもその誕生日――いや、記念日が「7月1日」ってご存じでした?
なんと「June(6月)31日=じゅんさい」というシャレから来たんです。
でも、6月31日はどこを探しても存在しないので、仕方なく7月1日に落ち着いたというあたり、なんともじゅんさいらしい、控えめで奥ゆかしいエピソードじゃありませんか。
今回は、そんなじゅんさいさんを主役に据えて、
「じゅんさいって何者?」「どこで育ってるの?」「どう食べるの?」「おじいちゃんおばあちゃんにもいいの?」
といった疑問を、つるんと丸呑みできるように優しくご紹介していきます。
夏の一品に、じゅんさい――悪くないですよ?🩷
じゅんさいとは一体何なのか。
名前は聞いたことがある。
見たことも…あるようなないような。
でも「食べたことある!」と胸を張って言える人は、ちょっと少ないかもしれません。
なぜならこのじゅんさい、非常に控えめ。
静かに水面に揺れる姿は、まるで人の目を避けるようにひっそりとたたずみ、主張というものをまるで知らない。
芸能人でいえば、朝ドラで農村の村人役を延々と演じ続ける名脇役…そんな印象かもしれません。
でも実はじゅんさい、かなりすごい存在なんです。
まず、これは野菜じゃありません。
正確にはスイレン科の水草、つまり植物。
ですがその若芽部分だけを人の手でつまんで収穫し、ゼリーのような膜につつまれた状態で食べるという、まるで自然がつくった涼味の宝石なのです。
このゼリー状の膜、ちゅるんとしたぬめりがたまらないのですが、胃腸にやさしい多糖類。
消化器官をやさしくなでてくれるような舌ざわりに、高齢者はもちろん、胃もたれした現代人にもそっと寄り添ってくれます。
見た目はつるつる。
味は淡泊。
でも、これが出汁やポン酢と合わさると一気に変身します。
まるで氷の上に花が咲くように、冷たい一品料理として食卓に登場すれば、「あれ?今日のごはん、ちょっと上品じゃない?🩷」と家族の声も変わるかもしれません。
いや、変わらなくても、じゅんさいは文句を言いません。
だって、そういう控えめな植物なんです。
ちなみに「じゅんさい鍋」なる料理もあるにはありますが、ぬるぬるが熱で消えちゃったりして、「あれ…君の魅力ってそこだっけ?」となることも。
やっぱり冷たくして、つるんといただくのが一番美味しい。
そう、じゅんさいは冷蔵庫で輝くタイプのスターなのです。
じゅんさいといえば、秋田県。
これ、旅館の献立でもスーパーのラベルでも、お取り寄せグルメでも、じゅんさいを見れば大体「秋田県産」って書いてある。
どこ行っても秋田、いつだって秋田、もう秋田が独占してるんじゃないかってくらいの偏りっぷり。
実際その通りで、全国の9割以上のじゅんさいが、秋田県の三種町(みたねまち)で生産されているのです。
じゃあなぜ秋田なのか。
それは「たまたま生えていたから」なんて理由じゃありません。
まず、じゅんさいという植物にはかなりワガママな一面がありまして、「きれいな淡水の、しかも静かで浅めの沼じゃないとヤダ」「水温が高すぎるともうムリ」と、まるで高級旅館にしか泊まらないわがままセレブのようなこだわりがあります。
そんなじゅんさい様にぴったりの環境が整っていたのが、秋田県三種町。
ここには冷たく澄んだ湧き水が豊富に流れ込み、夏でも過ごしやすい水辺が広がっていたのです。
でも、自然があるだけじゃ成り立ちません。
じゅんさいの収穫は、ひとつひとつ、小舟に乗って手で摘み取るという、超アナログ作業。
地味で大変、腰にもくる、でもじゅんさいのゼリーを傷つけないためには、どうしても機械じゃダメなんです🩷。
この大変な仕事を、地元の人たちが何十年も、いえ何百年も続けてきた結果として、秋田が“じゅんさい王国”となったわけです。
観光シーズンには「じゅんさい摘み体験」もできるとかで、水面に浮かぶ小舟から、ひとつずつ若芽をつまむ。
まるで風景の中に自分が溶け込むような静かな時間。
子どもは「これなに〜?」とつぶやき、大人は「…これが日本の夏か」としみじみする。
そんな非日常が広がる場所で、じゅんさいは今日もぬるっと育っているのです。
さて、せっかくじゅんさいを知ったのだから、どうせなら美味しくいただきたい。
でもここで困るのが、「どうやって食べるの?」という素朴な疑問。
なんせ見た目はツヤツヤで可愛いのに、味の自己主張がほとんどない。
まるで合コンで静かにお茶をすする文学少女のような存在、それがじゅんさい。
でも実は、そんな控えめ女子(?)が、料理界ではかなり使えるんです。
たとえば一番人気なのが、「ポン酢でちょん」。
冷たくして器に盛って、上からポン酢をかけるだけ。
もうこれで、ほぼ完成。
え、簡単すぎ?いえいえ、これこそがじゅんさいの真骨頂なんです。
主張がないからこそ、調味料の風味をうまく受け止め、つるんとした喉ごしとともに、夏の清涼感を届けてくれる。
そこに刻みネギや柚子皮なんて添えてしまえば、もう高級料亭です。
ちょっと頑張りたい日には、お吸い物や冷製スープの具材として登場させてみましょう。
汁物の中で揺れるじゅんさいの姿は、もはやアート。
涼を感じるおもてなし料理としても上等ですし、急な来客に出したら「まあ、こんな上品なものを…」と驚かれること請け合いです。
冷やし茶碗蒸しの上にそっと乗せてみる、なんて上級アレンジもおすすめです。
見た目の美しさが引き立つので、写真映えもバッチリ。
SNS映えするじゅんさいなんて、なんだか時代を超えたスター性を感じます。
意外と知られていませんが、じゅんさいは和風だけでなく洋風とも相性がいいんです。
コンソメスープに浮かべても邪魔にならず、ドレッシングで和えればサラダにもなじむ。
むしろ「何とでも仲良くできる」性格の良さが、料理人にとってはありがたい。
それでいて、「今日はじゅんさいがあるんだよ」と言えば、食卓全体が少し格上げされたような気分に。
まさに料理界の名脇役、いや、ひと皿限定のヒロインです。
どう食べても正解。
けれど、つるんと冷やして食べるのが、いちばんのごちそう。
まるで夏そのものを味わうような感覚が、そこにはあるのです🩷。
じゅんさいは、若者のトレンドではない。
キラキラ映えるスイーツのように騒がれたり、コンビニで手軽に買えるわけでもない。
けれど、そんなじゅんさいこそ、高齢者の体に、心に、すっとなじむ不思議な力を持っているんです。
まず、見た目がやさしい。
透明で、つるりと丸い形。
ギラギラしていない。
ドカンと主張しない。
お皿の中にちょこんといるだけで、なんだかほっとする。
「おや?これは昔、どこかで食べたことがあったような…」そんな記憶の引き出しを、そっと開けてくれるような佇まいです。
そして何よりも、食べやすい。
ぬるぬるしているのに、ベタつかず、喉にひっかからず、つるんと入っていく。
嚥下(えんげ)が気になる方でも安心して口にできる、というのはとても大きな魅力です。
ただし、よく冷えている場合は、喉ごしが良すぎて「もう飲んじゃった」なんてこともありますので、ゆっくりじっくり味わう時間も忘れずに。
味つけも濃くしなくていい。
むしろ、ほんのりとした酸味や出汁の香りがあれば十分。
出汁のきいたお吸い物にそっと浮かべるだけで、まるで懐石料理の一品のようになるのです。
たくさん食べる必要はありません。
小鉢にちょっと。椀にちょっと。
それだけで、食卓に涼しさと季節が添えられます🩷。
また、見た目の美しさも、実は高齢者にとってはとても大切です。
目で見て、「食べたい」と思えることは、食欲のスイッチを押す第一歩。
じゅんさいの清らかなつやと透明感は、そのスイッチに静かに手を添えてくれるのです。
じゅんさいは、派手じゃない。
でも、必要なやさしさを持っている。
それはまるで、長く人生を歩んできた方々のような、奥ゆかしくも芯のある存在。
そんなじゅんさいを、夏のひとときにそっと添えてみてはいかがでしょうか。
さて、ここまでじゅんさいの魅力をつるんつるんと滑らせながらご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
もしかするとこの記事を読み終える頃には、「あれ?冷蔵庫にじゅんさいってあったっけ?」なんて、冷たいガラスの扉を開けに行っているかもしれません。
じゅんさいは、主役じゃないかもしれません。
派手な味もないし、インパクトも少ない。
けれど、水面でそっと揺れるその姿は、どこか人の心に残るんです。
ぬるっとしてるのに嫌われない。むしろ、「つるん」とした食感が心地よい。
そんな不思議な存在って、そうそうないんじゃないでしょうか。
高級料亭でいただけば、涼味の逸品として。
家庭の食卓に出せば、「あら、今日はちょっと粋ね」と言われるような一品に。
しかも高齢者にもやさしくて、体にも胃にも気を遣ってくれるという万能型ぬめりエリート。
そりゃあもう、季節の特別待遇を受けて当然です。
7月1日は「じゅんさいの日」。
「June 31」なんて無理やりな由来に、思わず笑いながら、それでも、この時期だけの旬の味覚としての存在感は確かなもの。
日本の夏にそっと寄り添う、透明な宝石のような食べもの――それがじゅんさい。
スーパーで見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。
もし誰かに聞かれたら、こう言いましょう。
「ええ、今日はぬめりを食べる日なんです」と🩷。
※2025.7.2読者様のご指摘によりムチンという誤表記があり、訂正いたしました。
ご指摘、ありがとうございましたm(__)m
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