目次
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夏の食卓に現れる、細長くてぬるりとした影──それは鰻、穴子、そして鱧。
見た目こそ似ているけれど、その性格は三者三様。
脂っこいけどパワフルな鰻、あっさりしてて懐の深い穴子、職人泣かせのくせに高級な顔をしている鱧🩷。
それぞれが自分こそが「夏の主役だ」と思っているわけで、これはもう、一度きちんと比べてみるしかない。
「鰻は丑の日だけの一発屋じゃない!」「穴子だって寿司ネタの座を守ってきた!」「いやいや鱧の骨切りをなめるな!」と、どこからか聞こえてきそうな主張を受け止めながら、今回はこの三種のニョロ系魚たちを、味・栄養・食文化・料理法…あらゆる角度から比べていく。
そして最後には、とある高齢者施設で「ニョロニョロ選手権」をやってしまおうという誰得な妄想まで暴走していく予定なので、覚悟してお読みいただきたい。
さぁ、ぬるっと、でも熱く。
夏のニョロニョロ頂上決戦、いざ開幕!
夏バテ?
そんなもの、うな丼の一撃で吹っ飛ばしてしまえ──そう言わんばかりに、日本の食卓にドカンと現れるのが、脂ののった鰻だ。
蒸してから焼く、あるいは直火でぶち抜く。
背から捌くか、腹からか。
そんな東西の流儀を超えて、ひとたびタレに浸されたその姿は、まさに“茶色い暴力”。
どんな食欲不振も、蒲焼の香り一発で立ち直るというのだから、これはもう栄養というより兵器に近い。
しかも、鰻の底力は香りだけじゃない。
ビタミンA、DHA、EPA、たんぱく質、鉄分……と、並みいる健康食材が裸足で逃げ出すレベルの栄養パンチを隠し持っている。
カロリーが高い?
いいじゃないか、夏だもの。
バテるよりマシだ。
というか、バテるから食べるのだ。
こんな理由づけが許されるのは、鰻かアイスくらいなものである。
もちろん、価格の方もなかなか威厳がある。
庶民の財布にはやや厳しい。
けれど、年に一度の「土用の丑の日」という名の合法的な浪費イベントが、全国でそれを正当化してくれる。
つまるところ、鰻は食材というよりも行事であり、ある種の“夏の儀式”として君臨している存在なのだ。
それにしても、タレの力とは恐ろしい。
蒲焼の鰻からあのタレを抜いたら、果たしてそこまでの人気を維持できただろうか?
白焼き派が渋く手を挙げたとしても、多くの人は「え、タレなし?」と戸惑うはず。
つまり、鰻は“鰻+タレ”で初めて鰻になる。
あの甘辛い液体こそが、夏の主役に必要な魔性…いや、“妙技”である。
タレの力でご飯がすすむ、炭火の香ばしさで記憶に残る、そしてお会計で現実に戻る。
これが鰻という生き物のフルコース。
三大ニョロニョロの中でも、鰻はやっぱり王様キャラ。
濃さと重さと高級感で、他を一歩リードしているのは間違いない🩷。
だが、まだ勝敗を決めるのは早い。
次に登場するのは、軽やかであっさり、でも芯のある実力者──穴子の登場である。
鰻がパワフルな王様タイプなら、穴子はまさに“気配り上手な中間管理職”。
脂はほどほど、味はあっさり、見た目も優しい。
ガツンとは来ないけれど、ふんわりと心に残る──そんな存在だ。
高齢者から子どもまで、万人に好かれる優等生ぶりは、まるで和食界のオールラウンダー。
寿司ネタにしても、丼にしても、天ぷらにしても、「そこにいてほしい」と思わせてくれる、なんとも懐の深い存在である。
穴子のすごさは、やりすぎないところにある。
脂っこさで勝負せず、でも旨味はしっかり。
ふんわりとした食感と、ほのかな甘みが絶妙に絡む。
蒲焼きにしても、鰻ほど主張が強くないぶん、タレの味に依存せずに素材の良さを生かせるのがポイントだ。
江戸前寿司の世界では「煮穴子こそ真髄」と語られることもあり、その上品さは職人たちの間でも一目置かれている。
しかも穴子は、意外にも栄養のバランスがいい。
高たんぱくで、脂は控えめ、DHAやEPAも含みつつ、ビタミンAやカルシウムもきちんと持っている。
つまり、鰻ほどの派手さはないけれど、健康志向の現代人にはちょうどいいバランス食材。
ダイエット中でも安心して食べられる、そんな魚が他にどれほどいるだろうか。
また、価格帯も見逃せない。
鰻ほど高価ではないが、安っぽくもない。
この“中間の絶妙さ”が、穴子の真骨頂なのだ。
特売のうな丼に疑問を感じた日には、穴子丼のほうが安心感がある。
ご飯の上でふわっと香る穴子の優しさに、「これこれ、今日はこれでいい」と妙に納得してしまう。
とはいえ、穴子の地味さが仇になる場面もある。
どうしても鰻の派手さに押され、「土用の穴子」なんて言葉は聞いたことがないし、夏の風物詩のポスターでも真ん中でぼんやり写っていることが多い。
でも、地味は悪じゃない。
むしろ“ちゃんとしている”穴子がいるからこそ、鰻も鱧も引き立つのだ。
気づけばそこにいて、何度食べても飽きない安心感🩷。
これこそが穴子の最大の武器であり、まさに“真ん中代表”たるゆえんである。
ニョロニョロ三兄弟の中で、最も調和とバランスを象徴する存在──それが穴子。
さて、次に出てくるのは、その対極ともいえる、京都生まれの“繊細職人魚”である。
三大ニョロニョロの中でも、ひときわ扱いが面倒なのがこの鱧である。
骨が多すぎて包丁が折れそうになるし、見た目はなかなか地味だし、スーパーで気軽に買えるわけでもない。
なのに、夏の京都ではなぜか主役級。
祇園祭の季節には、京の料亭から「鱧の湯引き」の注文が殺到し、骨切り職人の手元が秒単位で忙しくなる。
もはや祇園祭に出るには鱧の顔パスが必要なんじゃないかと思うほど、京都の夏と鱧は深く結びついている。
でもこの魚、実はとても“気難しい”素材だ。
骨を切る技術がなければ、まるでトゲ付きマットを食べているかのような食感になる。
骨が多いだけでなく、細かくて鋭い。
中途半端な処理では「喉がチクチクする魚代表」になりかねない。
だからこそ、プロの包丁仕事が問われる。
骨切りができる人が少ないというのもあって、なんとなく“高級魚”というイメージが定着しているが、実際、手間がかかるぶん価格もそれなりに上がってくる。
鱧が本気を出すのは、湯引きというシンプルな料理においてだ。
熱湯でさっと火を通し、氷水に落とすだけ。
そこに梅肉が添えられれば、もう立派な料亭の一皿。
飾り気がないのに上品、主張しすぎないのに記憶に残る。
ここまでシンプルでいながら格調高い仕上がりになる魚も珍しい。
しかもこれが、あのニョロニョロした見た目から生まれるとは思えない上品さ。
まさに“見かけによらぬ実力派”である。
栄養面で言えば、鱧はかなりあっさりしている。
脂はほとんどなく、たんぱく質は豊富だが、DHAやEPAのような脂溶性栄養素は少なめ。
つまり、夏の暴飲暴食で疲れた胃腸にはやさしい救世主。
あっさりと食べられて、上品で、胃にも財布にも少し優しい──というか、財布にはあまり優しくないが、なんとなく納得できる価格感なのが不思議だ。
そして、鱧には“ご飯に乗せてドーン”という使い方がない。
うな丼、穴子丼という定番はあれど、鱧丼という言葉を聞いたことがある人は少ないはず。
ちらし寿司の中にも、鱧の姿はなぜかない。
この魚はどうやら“横並び”を嫌うらしく、丼や寿司という団体戦には参加せず、単品勝負にこだわる職人肌。
梅肉という名バディとともに、ひっそりと舞台に立つ──それが鱧の流儀だ。
そんな孤高の魚が、関西では夏の定番となっているあたり、日本の食文化の多様さを改めて感じさせられる。
ニョロニョロ三兄弟の中で、いちばん扱いづらく、いちばん繊細🩷。
でも、そこにしかない味がある。
鰻や穴子と比べて地味?
いやいや、むしろそれが鱧の誇りなのである。
さて、ここまでで三種三様の個性が浮き彫りになってきたところで、次はちょっと視点を変えて、料理法の棲み分けという謎に迫ってみよう。
見た目はそっくり、どれも細長くて、ヌルヌルで、捌くのが大変で…なのに、どうしてこんなにも料理法がバラけてしまったのか。
ニョロニョロ三兄弟の調理の世界には、なんとも言えない不可侵領域が存在するらしい。
とりあえず言えるのは、鰻の天ぷらを見たことがある人は、ほぼいない。
もし存在していたとしても、それはSNS映え狙いの企画料理であり、日常には出てこない幻のメニューだろう。
一方で、穴子の天ぷらは堂々たる定番。
天丼の主役にもなるし、天ぷらそばの上にも乗ってくる。
衣をまとっても、ふんわりとした食感と程よい油が美味しさを引き立てる。
油と仲良し、でもべたつかない。
天ぷら界では優等生ポジションを確立している。
さらに鱧。
京都では鱧の天ぷらもごく自然に登場する。
衣の下に骨切りの技が潜んでいて、サクッとした中に柔らかさがある。
梅塩で食べるなど、あくまで上品さを忘れない。
こちらは「天ぷらなのに上品」という謎ジャンルの筆頭である。
それにしても、なぜ鰻は天ぷらになれなかったのか。
最大の理由は、やっぱり脂だろう。
鰻はそのままでも十分に脂がのっていて、さらに蒲焼にすればタレで仕上げるため、わざわざ衣をつけて揚げる意味がない。
揚げ油と自前の脂が喧嘩をして、食べる前から胃もたれが始まりそうだ。
それに、あのタレがない鰻は、正直ちょっと寂しい。
衣のサクサクより、タレの照りが命。
そこを崩すわけにはいかないのだ。
寿司ネタにしても、ちらし寿司にしても、穴子と鰻はよく登場するが、鱧はほぼ不在。
これも不思議だが、考えてみれば、鱧には“単体で完成している”という美学がある。
湯引き梅肉があまりに鉄板すぎて、他の料理に出張する必要がないというか、むしろ「出しゃばらない美しさ」を極めた感じだ。
穴子は協調性があり、鰻は圧倒的なリーダー気質、鱧は一匹狼。
この性格がそのまま料理法に反映されているようで、もはや魚たちの性格診断を見ているような気分になる。
結果的に、それぞれが自分の土俵で輝くスタイルを貫いているというわけだ。
天ぷらには天ぷら向き、丼には丼向き、そして湯引きには湯引きにしかない輝きがある。
似たような姿形をしていながら、ここまで料理法が分かれているというのは、世界的に見ても珍しいかもしれない。
しかもその違いが、日本の食卓ではごく自然に受け入れられているというのだから、和食文化の奥深さには舌を巻く🩷。
さて、ここまでで味・性格・料理法の違いを語ってきたが、ここからは少し遊んでみたい。
もし高齢者施設でこの三匹が本気で対決したら…そんな想像、誰が得するんだという声を振り切って、次の章へと進もう。
高齢者施設で「今日はニョロニョロ三兄弟の勝負です」と宣言したら、職員さんの眉間には確実にシワが寄る。
厨房はざわつき、管理栄養士は書類の山に埋もれそうになる。
「うなぎ!?高いでしょ!」「鱧!?骨切りできるの誰!?」「穴子…それはまぁいいか…」と、各所からため息と笑いが混在する空気が流れるに違いない。
だが、やってみたら面白いのではないか。
たとえば、昼食に三種の食べ比べプレートを用意する。
うな丼のひと口サイズ、煮穴子の握り寿司、鱧の湯引き梅肉添え。
それぞれ一口でいい。
量よりも質、というかイベント性。
名前だけで十分にワクワクさせられるこの三品、実は高齢者の皆さんにとっても特別感がある。
鰻を前に「昔は川で獲ったのを蒲焼きにしてねぇ」と話し出す人がいれば、穴子の握りを見て「若い頃、銀座で食べたっけ」と懐かしむ人もいるかもしれない。
そして鱧が出れば、「これは京都の料理だろ。あんた、京都行ったことあるか?」と、やたら詳しい語り部が登場する可能性もある。
味覚は記憶と強く結びついていて、こんなニョロニョロたちが思い出の扉を押し開けてくれることだってあるのだ。
しかし当然ながら、現場は大変だ。
鱧の骨切りなんて一歩間違えたら食中事故になりかねないし、鰻を使えば食材費の帳尻が合わない。
穴子だけが「うん、いけそう」と安心を与えてくれる存在だが、それでは対決にならない。
けれど、そこをあえて“仮想イベント”として記事に仕立てるからこそ、楽しいのである。
食べたあとは、利用者さんたちに投票してもらう。
「一番うまかったのは?」という真剣な問いに、笑顔で答える高齢者たち。
結果発表は拍手喝采、なんなら司会の職員が「ニョロニョロ王は誰だ!?」と叫んでもいい。
そして最後に誰かがぼそっと「やっぱ、どれもうまいよな」と言えば、それで全員納得の引き分け成立。
うなぎの力強さ、穴子の親しみやすさ、鱧の上品さ──どれも違って、どれも美味い。
そんな着地点に向かうのが、ニョロニョロ対決の正しい終わり方なのかもしれない。
それに、こんな企画が実際に実現したら…もしかすると、食事がいつも以上に楽しくなるかもしれない。
笑いが起きて、思い出話が弾んで、誰かの食欲がちょっと戻ったりするかもしれない。
それだけで、この三兄弟の存在意義は十分だ🩷。
次回の施設イベントは「刺身三銃士対決」か「きのこ大乱闘」か、なんて妄想がまた広がってしまいそうだが、まずはこの夏のニョロニョロ三つ巴に拍手を送ろう。
見た目は似てる、名前も似てる、なんなら生き方までニョロニョロしている三匹が、ここまでくっきりと個性を放っているのは驚きだ。
脂の王様・鰻はタレの力とともに圧倒的な存在感を見せつけ、さっぱりヘルシーな穴子は懐の深さと食べやすさで日常に寄り添い、気難しい職人肌の鱧は、丁寧な仕事が引き立つ上品路線を突き進む。
どれが一番かなんて、もはやナンセンス。
好みの違いが、そのまま正解になる世界がここにはある。
そして何よりも面白いのは、この三兄弟が“誰かの記憶”をやさしく引き出す力を持っていること。
丑の日に食べたあの鰻、江戸前寿司で出会った穴子、京都旅行で味わった鱧。
季節と地域と人をつなぐ役割を、彼らはちゃんと果たしてきた。
そんな存在だからこそ、寿司でも丼でも、湯引きでも揚げ物でも、食卓に出てくるだけで場が和む。
高齢者施設でのニョロ対決なんて、たぶん本気でやったら怒られる。
でも、記事の中でなら自由に遊べるし、「こんなイベント、あったら楽しいかもね」と誰かが微笑んでくれたら、それでもう勝ちなのだ。
夏のニョロニョロ三兄弟、誰も主役じゃないけど、誰も脇役でもない🩷。
みんな違って、みんな美味しい。
だから今年の夏は、ちょっと気分を変えて「鰻じゃなくて穴子にしてみようか」とか、「鱧って一度食べてみたかったのよね」と、ひとくち勇気を出してみるのもいい。
暑さに負けず、ニョロッと元気に乗り切る。
それが日本の夏の、ささやかで楽しい食卓術かもしれない。
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