目次
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「パパ、山のうえでごはん食べてみたい!」
8月のある朝、小学2年生の娘が急にそんな夢を語り出した。
いつもなら寝ぐせを直すのに全力な朝時間に、妙にキラキラした目で。
しかもタイミングが絶妙すぎる。
なんとその日は「山ごはんの日」――8月5日。
「や(8)まご(5)はん」の語呂合わせで決められた記念日だという。
まさかの山とごはんのコラボ記念日。
これは運命なのか?
陰謀なのか?
いや、きっと今年の“夏休み一番の思い出”が今まさに始まろうとしているのだ――そんな気がした。
普段はインドア派のパパも、このときばかりはスマホの検索窓にこう打ち込んでいた。
「小学生 親子 登山 初心者 おすすめ」
「山ごはん 簡単レシピ バーナーなし」
「登山 虫 いない」
そして目に飛び込んできた、もうひとつの記念日。
8月11日――そう、「山の日」。
つまりこういうことだ。
「山ごはんの日」に計画を立てて、「山の日」に実行する。
しかも相棒は、やる気満々の娘。
バナナとチョコを主食にしそうなノリだが、やる気だけは満点。
というわけで、我が家の【親子てっぺん大作戦🩷】が始まった。
舞台は標高〇〇メートル、予算は少なめ、でも満足度はきっと100点。
夏の空の下で、ちょっとだけ勇者になったパパと娘の、てんやわんやの“山ごはん冒険記”。
さあ、てっぺんめざして――いただきます!
「よし……まずは装備だ」
父という生き物は、娘のひとことにめっぽう弱い。
そのひとことが「山でおにぎり食べたい」だった場合、迷うヒマはない。
仕事の合間にスマホを開き、「親子登山 初心者セット」と検索。
どうやら「バーナー」「アルファ米」「シェラカップ」なんていう、なんだか秘密基地っぽい道具が必要らしい。
「ほう、山ごはんってやつは、どうやら気合が要るな…」と口にしつつ、頭の中ではすでに『パパと娘の冒険レポート』が新聞の一面に載っていた。
帰宅してすぐ、パソコンを立ち上げ、通販サイトにログイン。
ポチッ。ポチッ。ポチポチポチッ……。
気がつけば、段ボール箱3つ分が明後日届く予定。
娘に報告すると、テレビを観ていた彼女が振り向きざまにスキップで近寄ってきた。
「え!ほんとに行くの!?やったーっ!」
そして続けて放った一言が、なぜかやたら具体的。
「おやつはチョコとバナナとラムネね!あとパパ、虫よけ絶対!」
ここでパパは初めて気づく。
あれ?これは“パパ主導の山登り”ではなく、“娘主導の山ピクニック”では?
とりあえず冷静を装って、「ああ、わかった。あと、山で食べたいものある?」と聞くと、彼女はキラキラした目で答えた。
「おにぎりと、お味噌汁と、カレーと、ウィンナーと、チーズと、…あ、あとクッキーも!」
……どう考えても、登山の荷物じゃない。遠足を超えたパーティーだ。
だが、ここで止めるわけにはいかない。パパは覚悟を決める。
そして次の日、会社の昼休みに「軽量 登山飯 持ち運び簡単」と検索しながら思った。
これはきっと、山ごはんというより――「親子のわがままを叶える大人の挑戦」なのだと。
娘の夢を叶えるには、少しばかりの筋肉痛とクレジットカードの出費は…まぁ、しょうがない。
なにせ、8月5日は山ごはんの日。
準備するには、ちょうどいい日なのだから🩷。
登山まであと6日。
おやつ係の娘と、装備係のパパが、夕食後のテーブルで顔を突き合わせる。
そこはまるで、某国家レベルの作戦会議。
違うのは、出てくるのがミサイルではなく、カレー味のスナックということだけだ。
パパが地図を広げ、「この山が初心者向けでね、標高はだいたい――」と語り始めると、娘はすかさず「それよりも、山のうえって、トイレあるの?」と、現実的な突っ込み。
続けて「虫いたら、テントに逃げる?」と聞かれ、パパは黙って検索。
「山頂 虫対策 テント必要?」
そしてまたひとつ学ぶ。子どもは山の高さより、虫の多さが大問題なのだ。
いくら検索結果に「絶景スポット」「親子登山に最適!」と書いてあっても、娘が「虫、ムリ!」のひと言を発したら、それは終戦である。
それでも、ふたりの作戦は少しずつ形を帯びていった。
パパの装備リストには「携帯トイレ」「虫よけスプレー」「冷却タオル」などが追加され、娘のリクエストには「バナナ2本」「ラムネ5粒」「パパのカレー多め」など、やや偏った栄養バランスが書き込まれた。
「で、結局なに食べる?」という最大の議題にたどり着いたとき、娘が放った提案が、妙に本格的だった。
「ごはんはカレー、でもウィンナーは焼いて。あと、味噌汁にはワカメいれてね」
パパは内心「ここは山の上だぞ…」と思いつつ、「了解、シェフ」と敬礼。
娘は嬉しそうに、「やった~、わたし、デザート担当にするね!」と宣言。
その後、チョコ、グミ、アイス(!)、そして謎の“冷えたゼリー”が議題に上がり、パパは心の中で叫んだ。
「なにを、どうやって、山頂まで冷えたまま運べと!?」
しかし、そこでまたひとつ学ぶ。
子どもは夢を語るのが仕事。
大人はその夢を背負って登るのが役目らしい。
娘は寝る前に、画用紙に「やまのぼりごはんけいかく」とタイトルを書き、ウィンナーの絵にハートマークを添えていた。
それを見たパパは、こっそりカートに「クーラーバッグ 軽量」と打ち込んでいた。
こうして作戦会議は、無事終了……したのかどうかはわからない。
ただひとつだけ、確かなことがあった。
それは――すでにこの時点で、夏の思い出は始まっていたということ🩷。
8月11日、山の日。
天気は快晴、気温は32度。
パパの心の声はひと言。
「暑い…でも行く…やるしかない…」
娘はリュックを背負って、テンション全開。
「ねえパパ、ウィンナーって途中で食べたらだめ?」
「それ、山頂ごはんの主役だよ…やめて…」
駅からバスに乗って、登山口に着くと、すでに汗だくの父娘。
まだ何もしてないのに、ふたりともスポドリを半分消費しているという状態。
登山開始から15分――
「パパ、もう頂上?」
「まだ2合目にも達してない…」
それでも、道ばたのアリに「こんにちは~」とあいさつし、
木陰で見つけたセミの抜け殻を宝物のように持ち歩く娘の姿に、パパはなぜか元気が出てくる。
35分経過。
突然の発言。
「パパ、虫さされ、かゆい…」
ここでパパ、即座に取り出す“ムヒ”。
このときだけは、まるで戦隊ヒーローのようにキメ顔で応戦。
娘の「ありがと~!」が、もうご褒美すぎる。
そしてようやく、1時間後――
目の前に広がる絶景と、ちいさな山頂のベンチ。
娘「すごーい!わたしたち、ここまで来たんだね!」
パパ「そうだね……ふぅ、なんか涙出そう…」
でも感動してる暇はない。
なぜならここからが本番、山ごはんタイムなのだ。
まずはお湯を沸かすために、ポケットからバーナーを取り出す。
娘は「火ぃつけるの!?やばっ、テンションあがるーっ!」と、なぜかテンションMAX。
火が点いた瞬間、「わーっ!おとなってかんじー!!」と大はしゃぎ。
その後は、パックごはんにお湯を注ぎ、味噌汁を戻して、ウィンナーをカップで軽く炙る。
味噌汁の湯気が顔にあたった瞬間、娘がポツリと一言。
「これ、レストランじゃないけど、今日いちばんのごちそうだね」
うん、それ、パパも同じこと思ってた。
そしていよいよ「いただきます」。
おにぎり、ウィンナー、味噌汁、そしてカレー。
娘のほっぺたは、もはや落ちる一歩手前。
「おいしい~!パパ、100点満点中…100億点っ!」
その笑顔の隣で、パパはそっとスポドリを飲んだ。
たぶん今まで飲んだどんな高級ドリンクより、うまかった。
山の上でのごはんは、風の音がBGM。
見えるのは街じゃなくて空。
そして隣には、小さな冒険者がいる。
この瞬間のために、登ってきたんだ。
そう思ったとき、パパの心は、娘よりも先に“てっぺん”に到達していた🩷。
ごはんを食べ終わると、山の上の空気がすこしひんやりしてきた。
娘はデザートのチョコレートを一粒、パパにも「ほら」と差し出してきた。
パパは無言で受け取り、口の中でゆっくりとかみしめた。
甘い。チョコもだけど、この時間そのものが甘い。
娘は空を見上げながら、「パパ、今日ほんとにありがとう」なんて、いっちょまえなことを言い出す。
おい、急にどうした。パパの涙腺、今、全開モードだぞ。
「うん、こちらこそありがとう」と照れながら答えると、娘が小さな声でつぶやいた。
「ねぇ、また来ようね。ママも誘ってさ」
そのときパパは、そっとリュックの底にしまっていた保冷ゼリーのことを思い出した。
暑さでちょっとぬるくなってたけど、「これ、冷えてるってことにしとこうか」と笑いながら差し出すと、娘はぱくっと食べて、「うん、ちゃんと冷たい気がする!」とにっこり。
この“ちゃんと”って言葉に、パパは不思議と救われた。
完璧じゃなくてもいい。全力じゃなくてもいい。
ただ、いっしょに登って、いっしょに笑って、いっしょにおなかいっぱいになれば、それが正解なんだと教わった気がした。
帰り道は、のぼりよりもおしゃべり多めで、歩くスピードはなぜかちょっとだけ速くなっていた。
途中の木陰で、娘が「パパ、カレー、またつくってね」とポツリ。
山じゃなくてもいい。家のキッチンでも、あの味が作れるなら、それもきっと“思い出の続き”になる。
登山口に戻ると、パパの背中はもう汗でぐっしょり。
だけど心の中は、爽やかすぎる山風で乾いていた。
駅前のコンビニでアイスを選びながら、娘が言った。
「ねぇ、山の日って毎年あるの?」
「あるよ、8月11日。来年もまた、てっぺん、目指す?」
「うん!つぎは、おばあちゃんも来る?」
その想像の広がり方に、パパはこっそり検索した。
「親子三世代 登山 初心者コース」
夏の空が少しだけ、オレンジ色に染まっていた。
それは夕焼けか、それともパパの心の充電ランプか。
どっちにしても、満点だった。
この日のことは、きっと娘が大きくなっても覚えている。
なにを食べたかより、だれと食べたかを。
なにを登ったかより、なにを感じたかを。
夏の空と、ごはんと、ふたりの記念日🩷。
これ以上ないくらい、あったかい“てっぺん”でした。
8月5日、「山ごはんの日」に計画を立てて、8月11日、「山の日」に親子でてっぺんをめざした――
たった6日間のちいさな物語。
でも、その6日間には、ワクワクがつまってた。
パパがポチった登山道具。
娘が描いたウィンナーの絵。
出発前の「虫がいたらテントに逃げる」宣言。
山頂で食べたカレーの湯気と、汗まみれで聞いた「100億点っ!」のひと言。
そのどれもが、ただの登山じゃなくて、人生でいちばんおいしい家族イベントだった。
道具が完璧じゃなくてもいい。
ルートが最短じゃなくてもいい。
味がレトルトでも、心があったかければ、それはもうごちそう。
今回の体験を通して、パパはひとつだけ確信した。
「山ごはん」は、単なる野外ごはんじゃない。
それは“心がひらく食卓”、空の下に広がる、世界一自由なレストランだ。
次の山の日、またどこかのてっぺんで、ウィンナーとおにぎりをほおばる親子がいるかもしれない。
そのとききっと、パパは思い出す。
あの夏、自分が背負ったリュックの中に入っていたのは、ただの道具じゃなかった。
娘の夢と、自分のやさしさと、ちょっとした覚悟だったんだと。
夏休みは、まだ終わらない。
来年のカレンダーには、もう「山ごはん計画」のメモが入りそうだ。
あなたもぜひ、8月5日に準備をしてみてほしい。
きっとその6日後、てっぺんで出会えるよ。
景色も、ごはんも、家族の笑顔も――すべてが、いつもよりおいしくなるはずだから🩷。
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