目次
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泡にまみれて走るなんて、正気の沙汰じゃない――そう思っていたのは去年の話。
気がつけば、あの子もこの子も頭からつま先まで泡だらけで、ついでに先生のメガネも白く曇っていたっけ。
そう、8月26日はバブルランの日。
その日がどんな日かって?
それはもう、誰もが堂々と“びしょ濡れになっていい日”。
濡れても怒られないどころか、濡れなきゃ損をする、唯一無二の公式泡解禁デー。
大人も子どもも、髪の毛のすき間から耳の穴まで泡を詰め込んで、ただひたすら笑い合う日が、あってもいいじゃない。
泡に包まれると、人ってどうやら優しくなれるみたいで。
おじいちゃんが笑えば孫も笑うし、孫が笑えば先生が泡をかぶる。
そんな素敵な連鎖反応が、この一日には詰まっているのです。
今回は、とある保育園と、とある小学校、そしてちょっぴり静かな高齢者施設で起こった、泡まみれのとびきり愉快な一日をご紹介しましょう。
最後にはふわりととろける、あのごちそうも待っていますよ。
どうぞハンカチのご準備を。
ええ、泡を拭うためじゃありません。
笑いすぎて涙が出るかもしれませんからね。
さあ、泡の中へ一緒にダイブしましょう。
ふわっしゅわっと、心も体も軽くなる、そんな夏の終わりの物語が、今はじまります――🩷。
その朝、園庭に突如現れた謎の白い山。
誰よりも早く気づいたのは、年長さんのけんたくんだった。
「なんか、白くて、ふわふわしてて、おいしそう……」
寝起きのパンダみたいな髪型でつぶやいたその一言が、保育園史上最大の勘違いイベントの幕開けだった。
先生が泡マシンをセットしている間に、子どもたちはもう靴を片方しか履いていない状態で整列。
整列と言っても、半数は勝手に泡山に突撃済みである。
「先生、これってホイップ?アイス?マシュマロ?」
「違います!食べないでください!」
何度叫んでも、ちびっこたちは泡を鼻の穴に詰めようとしたり、頭に乗せて“雪だるまごっこ”を始めたり、ある子は泡に顔を突っ込んで“しーん……”としていた。
怖い。可愛いけど、ちょっと怖い。
泡トンネルを走り抜けるゲームが始まると、彼らの動きは完全にフリーダム。
前に走る子もいれば、泡に夢中で四つん這いになる子も。
年少さんのあかりちゃんは、なぜか泡に話しかけていた。
「ねえ、あなた名前は?」
泡が答えたかは謎だが、その場にいた全員が静かに頷いた気がする。
泡って、なんか…語りかけられる存在だったのかもしれない。
そして、事件が起きた。
ひとりの男の子が泡まみれの状態で突然叫ぶ。
「せんせい!泡って、たべたらおなかのなかでパンになるの!?」
園児たちが一斉に泡を見つめる。
先生たちも一瞬沈黙。
「えーっと、ならないよー!」と返したが、既に子どもたちの目には、泡=成長促進食材という新たな伝説が刻まれていた。
遊び尽くして、濡れて冷えた体を拭いていると、調理室からいい匂いが漂ってきた。
待っていたのは、ふわふわのスフレチーズケーキ🩷。
それを一口食べたとき、けんたくんがまたつぶやいた。
「やっぱり、泡って食べられるんだね……」
違う、それは泡じゃない。
でも、その顔があまりにも幸せそうだったので、誰も訂正できなかった。
こうして、保育園の夏の終わりは、笑いと泡と“ちょっと勘違いしたスイーツ”で幕を閉じたのでした。
先生はあれから泡の夢を三日間見続けたらしいが、それはまた別のお話。
夏休みの静かな校舎に、異変が起きたのは朝の八時。
誰もいないはずの校庭に、泡マシンがブォォオオと唸りながら稼働を開始。
最初に現れたのは、校庭を独占するつもりだったサッカー少年たち。
だがそこに広がっていたのは、白くもくもくと積もった泡のじゅうたんだった。
「なにこれ、雪?いや…食べれる?いや…走れるやつだ!」
彼らの脳内でなにかがスイッチオンされ、気がつけばクラスLINEで“泡が校庭に発生中”という謎の速報が拡散されていた。
わずか一時間で校庭はにぎやかな夏祭り状態。
「泡かけ鬼ごっこ」を提案した四年生男子が泡だらけの顔で叫ぶ。
「これは逃げる方が負けるやつだ!」
逃げる間もなく、みんなで泡に飛び込み、鬼も泡、子も泡、気づけば全員がホイップされた生クリームみたいになっていた。
高学年女子は泡を使って“ヘアアレンジ選手権”を開催。
片側だけ泡モヒカンにしたみくちゃんが優勝した。
泡は頭に塗るものじゃないよ、と誰かが言いかけたが、誰も聞いていなかった。今は泡が主役なのだ。
お昼が近づいた頃、校庭の片隅に「泡スライダー」が設置された。
業者など呼んでいない。
六年生男子がブルーシートと石鹸水で自作したものである。
「これ、安全か?」と先生がつぶやいた直後、その先生が一番ノリで滑っていった。
泡にまみれて立ち上がり、「よし、これは体育にしよう」と叫ぶ。誰も異を唱えなかった。
午後一番、泡まみれの顔をぬぐいながら体育館に移動すると、そこにはお楽しみランチ。
ふわふわ卵のオムライス。
メレンゲを混ぜ込んだ特別仕様で、スプーンを入れるとふわっと湯気が上がる。
誰かが言った。「今日の泡、こっちのが美味しいな」
正直者の感想だが、泡の食レポとしては難易度が高い。
泡と卵を混同しないように願うばかりである。
食後には謎の“泡表彰式”が行われた。
最も華麗に転んだで賞、最も泡を持ち帰ったで賞、最も泡っぽい名前で賞(受賞者:しろくまくん)。
表彰状も泡にまみれて読めなかったが、本人たちは大満足。
だって、笑って遊んで食べて、怒られることもなかったのだから🩷。
夏休みのある一日、泡はただの飾りではなく、思い出を運ぶ主役だった。
汗をかくのも、濡れるのも、走るのも、すべてが許される泡の祝日。
また来年、同じ校庭で、泡より速く走れるヒーローが生まれるかもしれない。
泡のかたちをした伝説として。
午前十時、介護職員の佐藤さんは小さなため息をついた。
今日のレクリエーション予定表にはこう書かれていた。「泡イベント(仮)」。
(仮って何だよ……)と心で突っ込みながらも、施設長の“やってみよう精神”が止まらないことは、もう何年も前から知っていた。
準備されたのは、泡マシン2台、泡ハンマー(柔らか素材)、そしてバブルのれんと書かれた謎のカーテン。
これが高齢者施設で本当に行われるのか……と全職員がやや後ろ向きに泡マシンを起動した瞬間。
ひとりの利用者、ツルっとした頭が眩しい市川さん(御年84)が立ち上がった。
「ほう……ついに来たか、泡との戦いが」
意味は不明だったが、その姿に全員がつられて動いた。
お昼前にはもう、車椅子のまま泡合戦に参戦する方が3名、うち2名は職員を泡で撫でて遊び、残りの1名は泡のベレー帽を被ってなぜかフランス語っぽく喋りだしていた。
「ボンジュール!泡って素敵ね!」
発音は怪しかったが、テンションは完璧だった。
なかでも一番盛り上がったのは、“泡うちわ大会”。
職員が手作りした布うちわを使って、泡を飛ばし合うという極めて平和なバトルである。
最初はそよ風のように飛ばしていたはずが、なぜか途中から「風圧勝負」になり、おばあちゃん2人がうちわで扇ぎすぎて前髪が逆立っていた。
「この感じ、昔の盆踊りみたいでいいねぇ」と笑う声に、みんながふわりと頷く。
施設に響く笑い声の音量が、いつもよりちょっとだけ大きく感じた。
そしてお昼は、管理栄養士さんが泡イベントに合わせて用意したスペシャルメニュー。
その名も「泡ムース御膳」。
主菜の白和えは、まるで泡のようにふわっとしていて、舌にのせるとすぅーっと消える。
「これ、まるで“食べる風”だわね」
そう言って微笑んだのは、90歳の渡辺さん。
その笑顔を見て、誰もが“泡イベントやって良かった”と確信したのだった。
午後、泡風呂風の足湯に足を入れながら、皆が同じ方向を見つめていた。
そこには、泡まみれの職員が「アワアワ体操」とかいう謎の踊りを披露しており、完全に今日という一日は記憶に深く刻まれる運命だった。
「またやろうね」と言った利用者に、佐藤さんはにっこり笑って答えた。
「“仮”がついてたけど、次からは本番ですね」
こうして、泡とともに笑いが舞い、そしてほんのりと心がほどける一日が過ぎていった🩷。
大人になっても、いや、年を重ねたからこそ、童心に戻ることが時には大切なんだと、誰もが泡越しに感じていた。
事件は、夕食後のお風呂タイムで起きた。
小学二年生のりこちゃんが、泡風呂にしてみたいと言ったのがきっかけだった。
パパはにっこり笑って言った。
「任せなさい」
ママはちょっと心配そうに「入れすぎ注意ね」と念を押した。
……が、パパは聞いてなかった。
いや、聞いたうえで、むしろ入れた。
まずは入浴剤をひと袋。
続いて泡用バブルソープを2杯、……3杯、……4杯。
「うおおお!泡が……育ってきてる!」
なぜ育ててるのか不明だが、浴槽はすでに見えない。
りこちゃんは大歓声。
「うちがラグジュアリーホテルになった~!」とタオルをマントにして舞っていた。
数分後。
「ちょっと、ねぇパパ……これ、排水口ってどこ……」
ママの声が遠くなった。
浴室のドアの下から、もくもくと泡が……出てきた。
いや、出てきたというより、「流れ出した」と言った方が正しい。
床を這う泡が廊下を渡り、靴箱の前に白い山を築いたとき、パパはつぶやいた。
「これは……もはや風呂じゃない。イベントだ」
ママは笑っていたが、目は笑っていなかった。
りこちゃんは「泡雪かきしよう!」とモップで応戦。
パパは「この家、明日には海の中かもね」と完全に浮かれていた。
風呂から上がる頃には、家族全員の頭が泡まみれ。
天井に向かって飛ばした泡が照明に当たり、ふわふわと舞い落ちる光景はまるで泡の天使の舞。
「来年は脱衣所に滑り台つけよう」とパパが言ったとき、ママはそっとタオルを顔面に投げた。
愛情のこもった、もはや泡仕立ての制裁である。
夜、泡まみれの洗濯機を眺めながら、りこちゃんがポツリとつぶやいた。
「今日って、最高の夏休みだったね」
その一言で、ママもパパもふにゃっと泡のようにとろけた。
自宅の小さなお風呂場が、世界で一番贅沢なステージになる日🩷。
それが八月二十六日だったなんて、誰も想像していなかった。
でもきっと、またやる。
やる気がする。
いや、やるだろうな、あのパパだし。
あの泡まみれの一日から、まだ数日しか経っていないのに、保育園ではすでに“来年の泡”について真剣会議が行われていた。
主任の先生が言う。
「次は泡が踊るとか、空飛ぶとか、ないですかね?」
それを聞いた年長さんのけんたくんは真顔で「バブルジェット!」と叫び、段ボールをかぶって飛び出していった。
飛んではいなかったが、夢は飛んでいた。
小学校では、あの泡スライダーが体育教材として正式に採用され、先生が本気で「泡体育理論」なるものを語り始めていた。
「泡には運動の楽しさを高める化学的な…まあ、知らんけど!」と満面の笑みで走り回る先生の背中には、泡製のマントがひらひらと。
“泡で走る学び舎”は、子どもたちにとってすでに伝説級のキャンパスになっていた。
高齢者施設ではというと、なんと“泡劇団”が誕生していた。
「泡うたかた一座」と名乗り、第一回公演『泡の向こうに見えた夕焼け』は涙と泡で視界が曇る名作に。
観劇中に泡マシンが稼働し、客席にまで泡が届いたことで「五感で楽しめる介護エンタメ」としてSNSならぬ“泡ネス”で話題になったとかならないとか。
そして、そのすべてが交差したある日の合同イベント。
保育園児が泡の輪をくぐりながら高齢者と握手し、小学生が泡メレンゲで作った看板を掲げて“ようこそ未来のバブルフェスへ!”と叫んだ。
その瞬間、誰かがホースで泡を打ち上げ、空には虹がかかった。
泡の中で笑い合う人たちは、みんなちょっとだけ若返って見えた。
あるいは、童心が年齢を飛び越えていたのかもしれない。
イベントの締めはもちろん“泡スイーツ”。
保育園ではスノードーナツ、小学校ではふわとろ卵ライス、高齢者施設では炭酸泡の白和え🩷。
でも一番人気だったのは、みんなで一緒に食べた「レインボーかき氷ON泡エスプーマ」。
カラフルで、冷たくて、優しくて、そして口の中で“ふわっ”ととろけた。
泡って、ただの遊びじゃない。
泡って、誰かの記憶にとどまる形のない手紙みたいなものなのかもしれない。
夏が終わっても、泡の残り香はきっと、どこかの心の中にふわりと漂っている。
また来年、誰かが言う。「ねぇ、今年も泡、やる?」
そのひと言から、世界はまたシュワっとはじけていくのだ。
保育園では、泡に話しかける子どもたちが、まるで世界の秘密にふれているかのようにキラキラしていた。
小学校では、泡より速く走ると叫ぶヒーローたちが、転んで、笑って、スプーンでふわふわの卵をすくっていた。
高齢者施設では、白い泡が記憶のページをふんわりとめくり、みんなが昔の夏に戻っていた。
そしてある家庭では、浴室から泡が逃走をはかり、廊下で雪崩を起こし、家族全員が笑いながらびしょ濡れになった。
それぞれの場所に、それぞれの泡があった。
でも、共通していたのはたったひとつ――“日常とは違う弾け方”が、そこにあったこと。
泡って、不思議だ。
触れようとすれば消えてしまうのに、心にはちゃんと残る。
服を濡らしても怒られない。
大声で笑っても変な目で見られない。
そんな一日があるってだけで、人はちょっとだけ元気になれる。
仲間と一緒に、顔も名前も泡まみれになって笑い合うこと。
誰かの泡を頭に乗せて逃げ回ったり、泡を踏んづけて転んで一緒に笑ったり。
それって、大人だって子どもだって、きっと必要な瞬間なんじゃないかな。
心のストレッチみたいな、そんな時間。
そして、最後に待っていた“とろけるような美味しさ”があったなら、もうそれ以上は何もいらない。
ふわっと消えるスイーツでも、湯気と一緒に心がゆるむ泡仕立ての料理でも、体だけじゃなく心までほぐれていくような味わいで締めくくる。
泡と笑いと、ちょっとのごちそう。
それは、贅沢でもなんでもない。
“とびっきりの夏の思い出”を完成させる、最後の魔法。
もし、あなたの近くでバブルランが開催されていたら、ちょっとのぞいてみてほしい。
そして、泡を手に取ってみて。
誰かと一緒に笑ってみて。
何かが変わるわけじゃない。でもきっと、何かが軽くなる。
泡の中でしか生まれない笑顔がある。
そして、泡が消えたあとにも、ちゃんと残るものがある。
それは、いつもよりちょっと素直な笑い声と、やわらかい記憶のかけらたち🩷。
来年もまた、夏の終わりに――
誰かが言う。「ねえ、泡やろうよ」
その一言から、また、楽しい夏がはじまるのだ。
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