目次
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8月19日。
朝からセミは張り切ってるし、冷たいお茶が美味しいし、
「なんか今日は俳句でも詠みたくなるわねぇ…」
――なんて言う人は、まずいない。
けれどこの日、あるおばあちゃんがつぶやきました。
「今日は“ハイク”の日だってさ、ワンちゃんの名前じゃないわよ?」
確かに。
“ハイクくん”が散歩してても違和感ないけれど、本当は“俳句”の日。
五・七・五で綴る、世界でいちばん短い、だけど奥が深い詩の記念日なのです。
そもそも、俳句って聞くと、どこかお勉強くさかったり、季語が難しかったり、「先生じゃないんだからムリムリ!」って声も上がるけど――
実はそれ、ちょっともったいないのです。
だって俳句って、**“感じたことを、ちょっとおしゃれに口に出してみる”**だけでいいんですもの。
スイカが冷たかったら、それを五・七・五にするだけ。
蚊に刺されたら、それを五・七・五に怒るだけ。
お昼のコロッケがうまかったら、それを一句、揚げてしまえばいいんです。
この日はそんな、「なんでもない日常」が“詩”に変わる特別な日🩷。
しかも、ペン1本いらない。
言ってみるだけ、聞いてみるだけで、じゅうぶん参加できます。
さて、今年の8月19日、あなたはどんな一句に出会いますか?
それとも――うっかり、自分で詠んでしまうかもしれませんよ?
「俳句なんてムリムリ。アタマ使うし、季語とかいるんでしょ?」
そんな風に言っていたおじいちゃんが、昼食後にこう呟きました。
「冷やし中華 始まってたのか 気づかなんだ」
……いや、それ俳句ですやん。
しかも、なんだか哀愁ただよう。
令和の夏の切なさ、たった17音で表現しきってる。
本人は気づいてないけど、立派な一句、誕生してしまってます。
そんなことはよくある話で、俳句って実は**“作ろうと思わない人のほうが名句を放つ”**という不思議な現象が起こりがちなのです。
おやつの時間、どら焼きを食べたおばあちゃんは言いました。
「やっぱこれよ どら焼きがなきゃ 午後じゃない」
……ほらまた、できてる。
しかも名句である。
そして確信しました。
これはもう才能というより、反射神経。
心が動いた瞬間に、口から出たことばが、気づいたら五・七・五になってる。
この現象に名前をつけるなら、「うっかり俳句症候群」とでも呼びたいところです。
むしろ、上手くやろうとすればするほど、文字数が狂ってきて、
「七・五・五になった!」「五・七・六になった!」と職員が真っ青になっている横で、「まぁ、いっか」で投げた一句が周囲をうならせる。
これが、俳句という世界の奥深さなのです。
決して難しいものじゃない。
むしろ「俳句です」と名乗らずに生まれた言葉の方が、よっぽど味わい深い🩷。
気取らず、考えず、感じたままをぽろっと言うだけ。
そう、あなたのそのひと言が、誰かの胸に届く――そんな日が、8月19日なのです。
「五・七・五って…ねぇ、あたし、勉強苦手だったから」と、そっと筆を置いたおばあちゃん。
そんな彼女のそばにいたおじいちゃんが、ぽつりと口にしました。
「書かんでいい。言えばええ。なんなら、黙っててもいい」
……え、達人?
っていうか、そのセリフがもう俳句っぽい。
実際、俳句の世界には“正解”がないんです。
季語が入ってないとダメ?
五・七・五じゃないと点数が低い?
――そんなこと言い出すと、急に楽しくなくなっちゃう。
むしろ「こんなんでいいの?」っていう一句が、思わぬ感動を呼ぶことがあるから不思議です。
たとえばこんな句が、掲示板にそっと貼られていました。
「朝ごはん 味噌汁しみる 今日もまた」
誰の句かわからないけど、なんだか泣ける。
うまくもないし、技巧もない。
でも、その人の生活がにじんでて、すごくいい。
まるで台所の湯気まで立ち上るような温もりが、たった17音のなかにある。
俳句って、うまいかどうかより、その人の「らしさ🩷」が出ているかどうかが大事。
字が震えてたっていいし、変な言葉づかいでもOK。
むしろ、クセがあったほうが味になる。
ある意味、俳句って「生活のつまみ食い」みたいなもので、その人がどんな1日を送ってるかが、ちょっとだけのぞけるのがいいところ。
だから、うまく詠まなくていいんです。
思ったまま、感じたままを、そのまんま17音にしてポイッと投げてみる。
そしたら、それが誰かの心に、すとんと落ちる。
上手さなんて後回し。
まずは「その人の言葉」であることが、何より素敵なのです。
ことの始まりは、職員さんの何気ないひと言でした。
「ちょっとだけ、壁に紙でも貼っておくか」
――それだけ。
季語も説明しない。
ルールも書かない。
お題も出さない。
ただ、白い紙とペンと「よかったら一句どうぞ」の貼り紙だけ。
まさかこれが、後に“壁面俳句バブル”を引き起こすとは、誰も思っていませんでした。
最初は無言の白紙たち。
ところが翌朝、1枚。
昼には3枚。
3日目には7枚に増殖。
まるで竹の子か、育ちすぎた豆苗。
まさに“成長する掲示板”。
貼った人の名前もなければ、賞もない。
何かを得られるわけでもない。
でも不思議なことに、みんな**「見てほしくて」貼っている。**
「なんか増えてるわねぇ」と言いながら、足を止める人たち。
「ちょっと書いてみようかな」とペンを取る人たち。
中にはこっそり自分の句に星マークをつけてる“謎の星職人”も発見されました。
気づけば、夕方には小さな人だかりが。
読まれてニヤッとする人。
「この句、うまいな」と真顔でうなる人。
「これ誰が書いたのよー!」と笑いながら探す人。
誰も司会をしていないのに、始まっていたのです。
“ゆるい句会”という名の、静かなブーム。
職員は?
おやつ配ってました。
その横で、利用者さんが他の利用者さんに書き方を教えてる。
なんなら、「字が書けないから代わりに書いて🩷」と頼まれる始末。
結果、職員は筆記係になりました。地味に忙しい。
でも、なんだかいい光景でした。
ルールも進行もない。
ただそこに、“ひとりひとりの心の声”がそっと貼られていく。
なんていうか――
俳句って、勝手に育つ植物みたいなものかもしれません。
水やりは、ほんの一滴。
あとは、風と光と、ほんの少しの気まぐれがあれば、咲くんです。
そして気づくと、壁が満開になっていた――そんな午後の出来事でした。
「この花、なんて名前だったっけ…えーっと、あれよ、ほら、アレのコレ」
そう言いながら、窓辺を見つめるおばあちゃんがいました。
名前は出てこない。色もあやふや。季節も少しズレてる気がする。
でも、そのあとに続いたひと言が、すごかった。
「赤い花 風にふわふわ 名前なし」
……最高じゃないですか。
季語、なんてのは風に飛びましたが、それよりも「心のまま」がしっかり詠まれてる。
何も思い出せなくても、今そこにある“感じ”は残ってる。
俳句って、それでいいんです。
過去の記憶より、“今、胸の中にあるモヤモヤやふわふわ”の方が、ずっと尊い。
他にも、こんな一句がありました。
「アレ取って アレってなにか わかんない」
……これはもう、“介護川柳”の傑作。
いや、もはや“介護俳句文学”と名乗っていいレベル。
字が書けなくたって、ことばがあやふやでも、誰かが代わりに書いてくれて、そばで聞いてくれて、「あんたのそれ、なかなかええ句やで」なんて笑いながら言ってくれたら、もうそれで大成功。
記憶ってね、あやふやでいいんです。
むしろ、“いま”感じたことをすぐにポロッと出す方が、味がある。
深みがある。あとからジワッと効いてくる🩷。
俳句は、おぼえてる人が詠むものじゃない。感じた人が詠むもの。
名前が出てこなくても、記憶がとびとびでも、そこに心がある限り、それは世界にひとつだけの詩になるんです。
「ちょっとお茶がぬるいねぇ」――
その何気ないつぶやきが、誰かの一句になるかもしれませんよ?
ある日の午後、壁に貼られた新しい一句が話題になっていました。
「ソフトクリーム ゆっくり食べて 落とす夏」
――うまい、うますぎる。
そして、ちょっと泣ける。
職員さんが声をかける前に、利用者さんたちはざわつき始めます。
「これ、誰が書いたのかしら?」
「たぶんAさんじゃない?甘いの好きだし」
「いやいや、あの人は“落とす”ような人じゃないわよ」
気づけば、ちょっとした名句探偵団が結成されていたのです。
それぞれが持っている“句主の性格情報”と“句の内容”を照らし合わせて、「この句の“夏”っていう季語のさりげなさが、あの人ぽいのよねぇ」などと盛り上がる。
いや…何その分析力。
そのうち、「あたしも詠んだことにしようかしら」と冗談を言い出す人が出てきて、「だめよ、あなたの句には“ぽい感”がないもの」と言われてふてくされる。
それを聞いて、またみんなで笑う。
もう俳句なんだかコントなんだか分からないけれど、とにかく人が集まり、会話が生まれ、笑いが転がっていく。
しかも、次の週になると、“匿名俳句”が急増。
「だれが詠んだかは、秘密」とだけ書かれた紙の下に、ちょっと照れくさい一句がそっと並んでいく。
「手をつなぐ その手がふるえ わたしもね」
「今日もまた あの人の席 空のまま」
「なす漬けて きゅうりもついでに 恋も少し」
もはや、愛と人間模様が詰まった“壁の小説”状態。
職員さんはこう言います。
「なんかもう、下手な週刊誌より面白いかもしれませんね」
毎日、新しい句を見に行く人。
ひそかに“ファン”の句を探している人。
「昨日の句、あれ私の!」と名乗ってからニヤニヤする人。
誰かが詠み、それを誰かが読み、また誰かが語る。
ひとりで完結するはずの俳句が、なぜか“つながり”を生み出しはじめたのです。
さて、今日もどこかで生まれているはずです。
名前のない一句。
けれど、心をあたためるには、名前なんていらないのかもしれません🩷。
あの日、壁に貼られた一句が話題になっていました。
とても静かで、とても優しい句。
「ひとつずつ 声をかければ 花が咲く」
誰が詠んだのかは書かれていない。
でも、読む人の顔がみんなふわっとやわらかくなる、そんな不思議な一句でした。
「これはあの人に違いない」
「いや、あの方かも」
「もしかしたら、あなたが書いたんじゃないの?」
しばらく誰にも名乗られず、まるで置き手紙のようにそこに残されたその句。
あるとき、車椅子の女性がその前に立ち止まり、ぽつりとつぶやきました。
「これ…娘に言いたかったのよ」
涙じゃなく、微笑みだったのが印象的でした。
遠く離れて暮らすご家族に、何も言えず、電話も照れくさくて、だけど俳句なら、なんとなく気持ちを託せる気がした――
そんな空気が、その人の背中にふわっと漂っていたのです。
そしてその翌日、また新しい一句が増えていました。
「読んだよと 誰かが言えば またひとつ」
今度は、誰が書いたのか分かりません。
でも間違いなく、“返事”でした。
声じゃなく、文字でもない。
たった17音の、返歌。
俳句って、独り言だと思ってた。
でもそれは、相手のいない会話じゃなかった。
思ってもみなかったところで、誰かが受け取り、また誰かに伝えようとしてくれる。
もしかしたら、それが届くまでに日数はかかるかもしれない。
でも、17音で心はつながる🩷。
やさしく、ゆっくりと。
きっと、あの日のあの句も、何気なく貼られたようで、本当は「誰かに読んでほしくて」そこにあったのかもしれません。
“届く”という奇跡は、手紙よりも、LINEよりも、案外、五・七・五の中にあるのかもしれませんね。
それは、昼下がりの静かな時間帯に起きた“事件”でした。
「カレーの日 あの人だけは 二度よそう」
たったそれだけの一句。
だけど、その貼り紙を見た瞬間――
職員さんの顔が、引きつりました。
「えっ……だ、誰のこと?」
「誰よ、“二度よそう”って!」
まずは厨房チームがざわつき、
「うちの配膳、間違えてないわよね!?」と書類チェックが始まる。
そのうち利用者さんたちも集まり始めて、
「私、見た気がする! あの人が2杯食べてた!」
「いや、そもそも“あの人”って誰よ?」
「え?“よそう”って“予想する”のよね?2回も予想された人なの?」
話がどんどんズレていき、
最終的には“名誉のカレーおかわり俳人”を探し出す大捜査会議が勃発。
なぜか紙とペンを持って職員室に集まり、“名指ししない一句”の書き方講座がその場で開かれる。
「個人が特定されそうな句は、なるべくぼやかして詠むようにしましょう」
「“あの人”は“誰か”に、“二度”は“もう一度”に…とかね」
もう完全に授業。
ところがその翌日、貼り紙に別の一句が追加されていたのです。
「食べすぎて 悪いかカレーは 愛なのだ」
……本人、名乗り出ました。
しかも、強めの開き直り句。
施設内にどよめきが走り、気づけば拍手が起きていました。
「潔いわぁ!」
「むしろ座布団2枚!」
「“愛なのだ”って言い切った勇気を称えたい!」
こうして事件は、“カレー句騒動”として笑い話に昇華し、その日の昼食は――まさかの本当にカレー。
そしてその日から、食堂のメニュー表にはちょこんと一句が添えられるようになったのです。
「ごはん前 この一句読めば 味しみる」
誰かが詠み、誰かが笑い、誰かがほんのり感動する🩷。
俳句って、こんなふうにして人の心を、じんわりほぐしていくのかもしれません。
はじめは、何もなかった白い紙。
そこにひとつ、ふたつと書き足された17音たちが、やがて壁一面をゆるやかに染めていきました。
気取らない言葉が、名もない詩になって。
上手じゃなくていい、忘れてたっていい、書けなくても、声に出せなくても、そばにいる誰かが、きっと受け取ってくれる。
それが、俳句のやさしさなのかもしれません。
おばあちゃんが詠んだ一句を、おじいちゃんが笑って読んで、となりの誰かがまた一句添える。
それはまるで、手紙のない文通みたいなもの。
俳句って、すごいんです。
ちいさくて、静かで、あっという間に読めるくせに、読んだあとは、なぜか心にそっと残る。
夕焼けみたいに、冷やしトマトみたいに、あの人の笑い声みたいに。
さて、次はあなたの番かもしれませんよ?
今日の気持ち、五・七・五で包んで、そっと紙に置いてみませんか。
読む人がいるかどうかは分からない。
でも、もし誰かが読んでくれたら――
そのときは、きっと言葉の花がひとつ、咲いています🩷。
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