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梅雨入り目前、カエルは合唱、洗濯物は悲鳴、空気はしっとり。
そんな6月の真ん中、しれっとやってくる記念日がひとつ。
6月16日は「麦とろの日」。
そう、むぎ(6)とろ(16)という語呂合わせの魔法で選ばれた、夏のはじまりを告げるちょっと涼しげで優しいご飯の日です。
暑さに負けた身体をそっと労わってくれる、あのツルツル、サラサラっとしたのどごし…。
子どものころ、麦とろご飯をかきこむ音が、なんとも心地よく響いた記憶があるという方も多いはずです。
けれど、月日は流れ、気づけば腎臓の調子を気にするようになった方々にとって、この麦とろ、少々厄介な存在に。
なんせ、とろろの主役・山芋はカリウムをたっぷり含んだ元気印。
透析をされている方には「食べすぎ注意」の赤札つきです。
でもね、だからといって「麦とろ禁止!」と門前払いにするのは、ちょっと早合点すぎやしませんか?
食べる楽しみは、人生のごほうびです。
ならば、どうにかしてこの一膳を、誰もが安心して、しかも笑顔で味わえるようにしてみたい…。
そんな気持ちから生まれたのが、「四色麦とろ丼」。
名付けて、“制限があっても、美味しさは無制限”な丼です。
ええ、言ってみたかっただけです。
でも、ちょっとワクワクしませんか?
それでは、ここから先はその誕生秘話を、ゆるやかに、にこやかに、そしてちょっぴり本気でご紹介いたしましょう🩷。
麦とろを「食べちゃだめ」と言われたとき、高齢の方がふと見せるあの表情。
言葉にはしないけれど、瞳がね、「あぁ…もう、あれは無理なんだね」って、しんみり語ってくるんです。
とろろが食べられないくらいで、なんて軽く思ってはいけません。
とろろの滑らかさって、あれはもう、青春の思い出の食感なのです。
「とろろはカリウムが多いから気をつけてくださいね」なんて、栄養士さんが丁寧に教えてくれるその横で、患者さんはうっすら微笑みながら心の中でこう叫んでいるのかもしれません。
「知ってる。でもさ、それでも一口くらい…いいじゃんか」って。
だから施設やご家庭で、麦とろの日に合わせて少しだけ出してあげよう、なんて優しさを見せてくれる場面もあるのですが…ここで問題発生です。
ほんの一口。
いや、スプーン半分。
小さな器にちょこんと盛られた“気持ち程度の麦とろ”。
それを前にして、周囲の皆さんが大盛りでスルスル食べている中、本人だけが“ちょっぴり”を味わう光景は……どうにも、寂しいのです。
「みんなと同じメニューだけど、量だけ違う」──これ、意外とこたえるんですよね。
子どもの頃、おかわり禁止されて泣きそうになったことがある方、きっと思い出してしまうはずです。
大人になっても、ましてや高齢になっても、「自分だけちがう」って、ほんの少しの量がもたらす寂しさは、とても深いんです。
でもだからといって、とろろをたっぷり出せば良いかといえば、それはそれでカリウムの落とし穴。
結局、“ほんの少し”の葛藤は続くばかり。
さぁ、ここで私たちは考えました。
悲しい「ほんの少し」にしない、楽しい「ほんのちょっと」を作ればいいんじゃないかと🩷。
そして、丼は回りはじめるのです──四色のアイデアとともに。
とろろを諦めなきゃいけない?――いやいや、そうとは限りません。
魔法使いじゃなくても、ちょっとした工夫で“麦とろっぽさ”は取り戻せるんです。
大切なのは「それっぽくて嬉しい」「やさしい口当たりで元気が出る」――その2つさえ満たせば、味は立派な麦とろの仲間入り。
まず最初に活躍するのが大根おろし。
すりおろしたてのシャリッとした冷たさと、ほんのり甘みのあるさっぱり感。
そこに少し出汁や醤油を垂らせば、あら不思議、口あたりはとろろに近づきながらも胃袋にはずっと軽やか。
カリウム量も山芋の半分以下ときてるから、腎臓さんにもやさしい。
次に、とろろをどうしても使いたい派には“茹でてからすりおろす”という裏技があります。
食感は少し変わりますが、熱を通すことでカリウムを減らせるので、少量使うぶんには十分アリ。
そしてこの時、山芋を“ちょびっと”だけ使って、ほかの素材と混ぜてしまうのもポイント。
たとえば、茹で山芋に少しだけ大根おろしを混ぜるとか、それにしらすを合わせて塩気を足すとか。
おいしくて、しかも罪悪感が少ない。
さらに、「味で麦とろ感を演出する」作戦もあります。
出汁の香りをきかせて、ほんの少しのとろみを加えれば、どこか懐かしい、あの“麦とろ気分”が戻ってきます。
白米と押し麦を混ぜて炊くのも忘れずに。
麦ごはんのプチプチ感は、それだけでも十分「麦とろを食べたような気分」になるのです。
これらはどれも、いわば“麦とろ風”の優しい代替えメニュー。
とろろがNGな日も、「今日は代わりにこれでね」と笑顔で出せる選択肢があれば、食卓の空気はふわっと明るくなります。
そして何より、食べるご本人が「わたしのこと、考えてくれたんだなぁ」と思ってくれることこそ、最高の栄養かもしれません🩷。
ついに、その蓋が開かれるときがきました。
麦とろの日に贈る、特別な丼――その名も「四色麦とろ丼」。
これがまた、ただの麦とろではないのです。
見た目よし、香りよし、そして何より、**“みんなと一緒に食べられる”**という最大のごちそうが盛り込まれているのです。
この丼、何がすごいって、ちゃんと色がそろっているんです。
緑、白、赤、黒――まるで和食の四天王。
まず緑の陣を張るのは、清涼感ばっちりの青じそ。
夏のじめっとした空気を切り裂くような爽やかさで、気分まで涼しくしてくれます。
そして白のポジションには、ふわっと優しいしらすと、ひんやり大根おろし。
この白は二枚看板。
胃にやさしく、目にも涼やか。
心の汗をぬぐってくれる頼れる存在です。
赤の担当は、梅干しの赤紫蘇。
これがね、ちょこっと添えてあるだけでお洒落な気分。
しかもこの赤、食欲のスイッチをさりげなく押してくれるから侮れません。
そして最後、忘れちゃいけないのが黒――そう、海苔です。
香ばしく、やわらかく、全体をやさしくまとめ上げるこの存在。
まさに丼の指揮者。
ちぎっても、巻いても、ふわっと乗せても、いい味出してくれるんです。
そしてそのど真ん中に、とろろ。
ほんの少し、ちょこんと。たくさんはいらないんです。
「ある」という事実だけで嬉しい。
それを知っているから、主役の座を譲らず、それでいて控えめ。
ちょっぴりの名演技、まるで助演男優賞です。
この四色の競演は、「あれも食べられる、これも味わえる」という心の充実を生み出します。
そして、何よりも大切なのは、「誰かと同じものを、一緒に食べられる」その喜び。
制限があっても、そう感じさせない。
むしろ、“今日はこれがいい”と思わせてくれる。
それが、この丼のいちばんの魔法なのです。
食べる人だけじゃないんですよ、笑顔になるのは。
作った人も、「これなら安心して出せる」「本人も嬉しそうだった」そんな手ごたえが返ってくる。
そんなやり取りがある食卓って、実はけっこうすごい。
四色の力は、見た目だけじゃなく、心の栄養バランスまで整えてくれるようです🩷。
とろろの量を調整して、四色に彩って、味も見た目も工夫して、よし、これで完璧。
――いえいえ、実はここからが本番なんです。
だってね、食事というのは「食材」と「味」だけでできているわけじゃないんです。
その丼が置かれる場所、その周囲に流れる空気、そこで交わされる言葉と笑顔。
それこそが、食卓を“生きたもの”にするんですよね。
たとえば、介護施設の昼食時。
今日のメニューは麦とろ丼。
でもちょっと違うぞ?
いつものお茶碗じゃない…なんだか深めの器?
そして見た目がカラフル。
なんだなんだと視線が集まり、スタッフが「今日は麦とろの日です~」と声をかけると、場の空気がふわっとやわらかくなるんです。
本人はきっと最初、不安だったと思います。
「どうせ自分のは制限メニューなんだろう」って。
でも蓋を開けてみれば、隣の人と同じ器、同じ彩り。
むしろ「あれ、なんか今日のご飯おしゃれじゃない?」って。
目がほころんで、手が伸びて、ひとくち運んだ時に聞こえるあの言葉。
「…これ、けっこう、うまいなぁ」
周囲にいた他の人も、「何これおいしそう!」なんて言いながら食べていて、その中で“特別な制限メニュー”だったことが、自然と溶けていく。
それは、工夫の力であり、優しさの演出であり、そして何より**“同じものを囲む喜び”のチカラ**なのです。
ご家庭でも同じです。
麦とろの日に「今日は四色丼にしてみたの」と食卓に並べれば、「なにそれ〜おいしそう」「お店みたいじゃん」と盛り上がる。
制限のある本人が「これ、自分用?」って不思議そうに笑ったその表情、それだけで作った側も「やってよかったなぁ」って心から思えるんです。
味や栄養はもちろん大切。
でも本当に届けたいのは、「あなたのことを思って、こんな工夫をしたよ」という気持ち🩷。
そしてその気持ちは、丼の上だけじゃなく、食卓の端っこにも、空気にも、ちゃんと染み込んでいくのです。
麦とろは、ただのご飯じゃありません。
夏の暑さを忘れさせてくれる涼やかな味であり、子ども時代の懐かしい記憶であり、誰かがすりおろしてくれた優しさそのもの。
だからこそ、食べられないかもしれないと思ったとき、人はちょっと寂しくなるのです。
でも、「食べられない」で終わらせない工夫があれば、それはちゃんと心に届く一膳になる。
制限があることは悪いことじゃない。
むしろ、その制限をどう越えていくかに、愛情と創意工夫が生まれるのです。
大根おろしをそっと添えてみたり、器を変えて気分を盛り上げてみたり、いつもよりほんの少し彩りを加えてみたり。
麦とろが食べられない日だって、“麦とろ気分”は、ちゃんと作れるんです。
四色丼は、そんな“麦とろ気分”の集合体。
とろろが少しでも、いや無くたっていいんです。
見た目が楽しく、味が広がって、なにより食卓がちょっぴり笑顔になる。
それがあれば、栄養と一緒に、心にも栄養が届いていきます。
もちろん、カリウムや塩分の管理には注意が必要です。
ご本人の体調やお医者さんの指導に沿って、無理のない範囲で工夫することが大前提。
でも、だからこそできる範囲で、できる形で、“みんなと同じ”楽しさをそっと差し出す。
その一膳が、今日という日をちょっとだけ特別にしてくれるのなら、それはもう立派な“麦とろの日”の祝いごはん。
そして、もしできることなら――この丼は、遠くの厨房でまとめて盛っておしまい、ではなくて。
できれば目の前で、食べるその瞬間に合わせて、そっとよそってあげてください。
湯気と香り、そして「今あなたのために作っています」というあたたかな空気ごと、丼の中に込めて届けてほしいのです。
それはまるで、昔お母さんが台所でよそってくれたあの味。
手元のぬくもりには、レシピに書かれていないスパイスがちゃんと入っているのです🩷。
ご家庭であれば、最近は低カリウムの調味料や、腎臓病対応のレトルト食品なども増えてきています。
今回の丼のように、様々なアイデアをうまく取り入れながら、食べる楽しみを諦めない安全安心な毎日の食事を組み合わせてみてね。
さあ、今年の6月16日は、麦とろの魔法をもう一度。
職員さんは思い出の味に、新しい優しさをひとさじ添えて――高齢者さんは、おかわりがしたくなったら、こっそり相談しましょうね。
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