人事考課と360度評価をその先へ~新納評価という毎日の小さな光はどう思う?~

[ 職場の四季と作法 ]

はじめに…中道の筆で評価を描き直す~ごり押しでも放置でもない道を~

人事考課とか、360度評価って言葉をご存じですか?人事考課は、現場の汗と上層の判断が綱引きする不思議な縦割り評価法です。360度評価が登場してからは、見物客まで増えてにぎやかになりましたが、肝心の綱はときどき空回りします。点数は動かないのに、説明だけはやたら達者――そんなこともあります。そこで新納は、押し付けでも放置でもない“中道の匙加減”で、もう一度この場面を照らし直してみようかと思います。

新納評価は、誰かをやっつけるための仕組みではありません。毎日の勤務の中で「助かった」「すごい」と感じた瞬間を、小さな灯りとして拾い上げ、翌月にそっと並べるだけ。数字や肩書よりも先に、人の手触りを残しておくこと。そうすれば、理不尽が顔を出しても、まっすぐ立ち上がる根拠が生まれます。

もちろん、経営の独断という壁は消えません。けれど、新納評価は“通過点”として正々堂々と今回、提案を置いておきます。称賛は実名で、改善は匿名で。温度は高く、口調はやさしく。日々のメモが積み重なれば、職場はいつのまにか「叱りやすさ」ではなく「学びやすさ」で回りはじめます。

新納は信じています。褒め言葉をもらって歩みを止める人はいないことを。毎日1枚の気づきが、やがて月ごとの景色を変えることを。理想は遠くても、足元は今日から軽くできる――そんな実感を、この記事でご一緒に育ててみましょう。

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第1章…トップダウンの壁~声が数に変わらない現場のモヤモヤ~

人事考課の季節になると、現場はちょっとだけ背筋がのびます。書類はピシッと整い、言葉遣いも妙に丁寧になって、空気はうっすら張りつめる。けれど、いざ蓋を開ければ、最終の点数は上の方で静かに決まり、下から積み上げた自己評価は「読みました、ありがとう」で終わることもしばしば。説明は長いのに、数字は微動だにしない――この“ズレ”が、現場の心にじわじわと溜まっていきます。

そもそも上位の立場は、組織全体の整合を第一に見ます。対して現場は、汗と時間の手触りを第一に見ます。どちらも嘘ではないのに、視点が違うからすれ違う。すると、現場の「こんな支援をした」「この工夫で間に合った」といった具体的な努力が、採点表の枠に入り切らず、いつの間にか“参考意見”に格下げされてしまうということが起こるのです。せっかくの好プレーが、スコアボードに載らないまま試合が終わる感じです。そりゃあ、拍手の音もだんだん小さくなってしまいます。

ここに、360度評価の「聞く力」が呼ばれます。上司だけでなく、同僚や後輩の視点からも集めて、点ではなく面で人を見るやり方です。ただ、これも万能ではありません。たくさん集めた声が、最後に1つの数に押し込まれるなら、やっぱりどこかでこぼれる。人気投票みたいに傾く日もある。だから新納は、「決める仕組み」と「聞く仕組み」を分けるところから始めたいと思ったのです。前者は組織の舵取り、後者は現場の呼吸。混ぜるから濁る。分ければ澄むでしょう?

そして、もう1つ。介護の仕事は、記録に残る行為だけでできているわけではありません。予定表にない一言、たった数分の寄り添い、誰かの穴をそっと埋めた判断。そういう“周囲の支え”が、中心のケアを輝かせています。けれど、その光はとても測りにくい。だからこそ、新納評価では、毎日の終わりに「今日のありがとう」と「今日の気づき」を小さく拾い上げていきます。点数よりも先に、日々の温度を残す。すると、不思議なことに、現場の表情が少し柔らかくなるのです。

トップダウンの判断が要る場面は、もちろんあります。緊急の時、責任を取るのは上の役目です。ただ、平時まで全部を上から決めてしまうと、下にいる人ほど息が浅くなる。新納は、上が舵を取り、下が息を整える――そんな関係をもう一度丁寧に編み直してみたい。声が数に変わらない夜を、声のまま大切にできる朝へ。ここから、次の章の“聞き方の再設計”へ進みます。


第2章…360度の功と罪~聞くための道具と決めるための道具を分ける~

360度評価は、名前の通りぐるっと一周の視点を集められるところが魅力です。上司の見た景色、同僚の見た背中、後輩の見た頼もしさ、お客さまや関係者の見た所作まで、点描が集まって一枚の絵になる。新納はここに、現場の息遣いを救い上げる力を感じています。特に介護のように、記録に残らない温度で仕事が回っている世界では、この“面で見る”やり方が眩しく見えるのです。

ただ、良いところと同じだけ、困ったところもくっついて来ます。声をたくさん集めると、いつの間にか人気投票みたいに傾く日がある。人間ですから、好みも相性もある。さらに、その山ほどの声を最後に1つの点数へ押し込むと、せっかくの温度が平盤になってしまう。おでんをミキサーにかけたら、味はあっても具材の存在感が消える、あの感じです。じつにもったいない。

だから新納は、ここで思い切って役割を離します。360度は「聞くための道具」。人事考課は「決めるための道具」。2つを同じ鍋で煮込まない。聞く方は、日々の小さな称賛や気づきをそのままの形で残す。決める方は、責任と整合を扱う。混ぜるから濁る。分ければ澄む。これだけで、現場の会話はずいぶんと軽くなります。

では、「聞く」はどう運ぶのが良いか?新納は、毎日の終わりに一枚、実名の称賛と匿名の改善を書き留める方式をお勧めします。今日は誰に助けられたか、どんな所作が光ったか、どんな工夫が次につながるか。顔文字も笑いも大歓迎の記録です。翌月、それらが丁寧に整えられて、皆の前に並ぶ。点数ではなく物語で届くから、読んだ人が自然に真似できる。真似が起きれば、文化が育つでしょう?文化が育てば、点数に頼らない芯となる強さが身につく。少し時間はかかりますが、土壌は確実に肥えていきます。

一方で、「決める」は淡々と、しかし誠実に。緊急時の判断や配属の整合は、やはり上が舵を取るしかない。ここで任せ場所を間違えたり濁してはいけません。そのかわり、360度で集めた物語は、評価の議論に持ち込まない。あくまで面談の材料、育成の燃料として使う。ここを守ると、現場は“点数付けのために書かされている”感じから解放されますし、上も“全部を数で語れ”というプレッシャーから解き放たれます。どちらも少し笑える。それが1番の進歩のポイントとなるのです。

360度の功は、声が集まること。360度の罪は、声を数に押し込めてしまうこと。功は伸ばし、罪は避ける。方法はシンプルに、「聞く」と「決める」を離すだけ。新納はその間に、日々の灯りを並べる棚を置くことを勧めたいのです。次の章では、その棚に何をどう並べるのか――新納評価の具体を、やさしく楽しく語っていきます。


第3章…新納評価の核心~毎日1枚の称賛と匿名の改善で心を可視化する~

新納評価の真ん中に置くのは、難しい理論ではなく、勤務の終わりにそっと書く「今日のひとこと」です。たった1枚、けれど侮れない1枚。誰かの所作に救われたなら実名で「ありがとう」を、気づいた課題は匿名でやわらかく伝える。声はそのまま温度で残し、点数に押しつぶさない。これだけで、明日の現場は少しだけ背伸びしたくなります。

紙はB5くらいがちょうどよい大きさ。顔文字も絵文字も歓迎で、肩の力は入れません。手書きは筆跡が気になりますから、ここは全員揃ってパソコン入力。投函ポストにポン、と入れたら、封は開けずに外部の受け皿へ提出。そこで丁寧にシャッフルされ、翌月には実名の称賛が明るい掲示に、匿名の改善はテーマ別のメモとして静かに整えられます。

面白いのは、毎日の小さな光が、月の終わりに並ぶと「この職場らしさ」が星座のように浮かんで見えてくるところです。ある日は「声かけの妙」、別の日は「段取りの呼吸」。点では見えなかった優しさが線になり、線が面になり、文化として定着していく。新納はこれを、現場が自分たちで自分たちを磨くための鏡になると思っています。

もちろん、厳しい局面だってあります。ときには称賛が偏る日も、改善の声が増える週もある。それでも大丈夫。偏りは悪者ではなく、伸び代の地図です。経営はそこで慌てて採点表を取り出すのではなく、「なぜ今、この声が集まるのか」を一歩引いて眺める。数より文脈、判断より対話。ここで舵を急に切らないのが、新納評価での礼儀です。

実名の「ありがとう」は、真似されやすい簡単で良い習慣を大きく広げます。匿名の「気づき」は、個人攻撃にならないよう外部で角を丸め、構造の改善へと橋を架け替えます。この両輪がかみ合うと、現場は「叱られないために働く」から「学び合うために働く」へと、静かに重心が移っていきます。気づけば、昨日より少し笑い声が増えている。それが合図です。

新納評価は、完璧な判定機械ではありません。むしろ人肌の温もりを残すために、手送りする装置です。毎日1枚の灯りを集め、翌月にそっと並べるだけ。なのに、空気が変わる。人が変わる。変わった人が空気をまた変える。そんな小さな好循環を、ここから回しはじめましょう。次の章では、この灯りを受け取る側――経営がどう向き合うと現場の歩幅が揃うのか、その温度の読み方を語ります。


第4章…数字とお金では読めないもの~経営が向き合うべき温度~

経営の机には、いつも「数字」と「お金」が整列しています。頼もしい味方ですし、舵取りには欠かせません。けれど、現場の空気はじつはグラフの外でも揺れています。例えば、朝の一声で不安がほどけた日。入浴介助の段取りが、さりげない一言でなめらかになった日。そういう“温度”は、桁の揃った表にはけっして入りません。新納評価が集めるのは、まさにこの温度です。経営がこの温度を読み取れると、判断の芯にやわらかな弾力が生まれます。急ブレーキを踏まなくてもスムーズに曲がれる、あの感じです。

新納は、ここで1つ大事な約束を置きます。集まった声は、管理の道具ではなく対話の窓に活用すること。称賛は実名で堂々と、改善は匿名で角を丸めて、翌月にそっと並べること。これらを人事考課などの採点に流用しないこと。つまりお金とも結びつけないこと。この約束を守るだけで、現場は「書いたら損」を疑わなくなり、「書けば伝わる」を信じ始めます。信じられる仕組みは、それだけで半分成功です。

外部封印という「最後の歯止め」

温度を歪ませないために、投函された用紙はそのまま外部へ渡し委ねます。封は開けずに運ばれ、到着時刻がしっかり刻まれ、内容はシャッフルされてから整えられます。施設に戻るのは、実名の「ありがとう」と、匿名の「気づき」をテーマごとに束ねた読み物です。誰が何枚出したかという個人の追跡はしませんし、提出の有無で人を測ることも禁じます。これが“最後の歯止め”。もし上からの圧がかかれば、声の偏りや沈黙の塊として必ず揺れが現れます。こうすることで温かい温度計が嘘を挟む隙間がなくなります。

「沈黙の権利」を内蔵する

毎日1枚が原則でも、個々の事情は揺らぎます。夜勤明けにふらふらの日、端末の不調で涙目の日、言葉にしたくない出来事が胸に残る日。新納評価は、そんな日々の揺れを“怠慢”とは呼びません。提出率の個人管理はしない。代わりに時間帯や部門の偏りを外部がやわらかく示し、必要なら環境を整えます。「書かない自由」があるから、「書く勇気」が育つ。ここを間違えると、温度が一気に冷えます。逆に言いますと提出が1枚もない日が続く…これは誰も感動しない寂しい現場とも言えます。逆に提出率100%これも経営陣の無言有言の圧が強すぎることを示します。

経営にとって、この温度の読み方は新しい技術です。例えば称賛が特定の人に集中した月は、その人が星のように光った証ですが、同時に周囲が光を譲り過ぎている兆しかもしれません。改善の声が同じ場所に集まった月は、叱るのではなく仕組みの継ぎ目を見直す合図です。大事なのは、結論を急がず「なぜ今、この声が集まったのか」を物語として謎解きすること。数字は速度をくれますが、温度は方向をくれます。方向を誤らなければ、速度は必ず後から味方になります。

新納評価は、経営者の独断を消し去る魔法ではありません。けれど、独断が独走にならないための“減速帯”にはなります。毎日集めた灯りが翌月に並び、季節が変わる頃には「この職場の歩き方」がうっすら見えてくる。そこに舵を合わせれば、判断は鋭さを失わずに、優しさを帯びます。冷たい正しさより、温かい正確さ。新納が願うのは、その手触りです。

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まとめ…理想ではなく前進~不完全だけど人が救われる制度へ~

人事考課は上から下の整合、360度評価は周囲の息遣い。どちらも大切なのに、混ぜると濁る――ここが長年の躓きでした。新納評価は「聞く」と「決める」をあえて離し、毎日の終わりにそっと拾う「今日のひとこと」を中心に据えます。称賛は実名でまっすぐに、改善は匿名でやわらかく。声は点数に押し込めず、温度のまま残す。たった1枚でも、明日の背伸びには十分です。

外に向けては、外部封印という最後の歯止めを置きます。封は開けずに届け、到着の刻を残し、内容はシャッフルしてから整える。施設に戻るのは、実名の「ありがとう」とテーマ別に丸くした「気づき」。提出の有無で個人を追わない「沈黙の権利」も内蔵します。参加は監視ではなく、安心の習慣に。ここを守れたとき、声はようやく息をしはじめます。

経営が読むべきは、速さではなく方向です。称賛が偏る月は「光り方の学びどころ」、改善が重なる月は「仕組みの継ぎ目の合図」。結論を急がず、「なぜ今、この声なのか」を物語としてほどけば、判断は鋭さを保ったまま、やさしさを帯びます。冷たい正しさより、温かい正確さ――新納が願うのは、その手ざわりです。

完璧な制度は、たぶん来ません。だからこそ、今日から始められる小さな循環を回しましょう。「〇〇さんのひと言で、朝の不安がほどけた」「△△さんの段取りが、入浴介助を軽くした」――そんな1枚が翌月に並び、季節が変わる頃には「この職場の歩き方」が見えてきます。理不尽は消えないかもしれない。それでも、歩みは軽くできる。新納評価は、通過点であっても、通り過ぎた後に振り返れば道になっているはずです。

さあ、今日の1枚をどう書きましょう?あなたの言葉が灯りになり、誰かの明日が少しだけ歩きやすくなる。その瞬間こそが、組織が本当に強くなる瞬間です。

⭐ 今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m 💖


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