新納が6つの好かれポイントで判断した世界に愛されている国ベスト3
目次
- 1 はじめに…強い国よりも好きで傍にいたい国ってどこだろう?~新納が考える愛される国の意味~
- 2 第1章…評価のモノサシはこうして決めた~政治も軍事もお金も外して6つの好かれポイントだけで並べる理由
- 3 第2章…第1位アメリカ合衆国~世界中の人が会いに行きたい・学びたいと引き寄せられる磁石の国~
- 4 第3章…第2位フランス~一生に一度は触れたい体験そのものがブランドになっている国~
- 5 第4章…第3位イタリア~普通の毎日までドラマに変えてしまう暮らしと美の国~
- 6 第5章…単独でも世界が惚れる国たち~日本・コスタリカ・フィンランドが見せた一点突破の愛され方
- 7 まとめ…人はどんな国を好きだと呼ぶのか~6つの好かれポイントと新納の最終判断~
はじめに…強い国よりも好きで傍にいたい国ってどこだろう?~新納が考える愛される国の意味~
世界にはたくさんの国があります。どの国にも歴史があって、文化があって、そこで暮らしている人がいます。けれど「この国が好き」「安心できる」「一度は行ってみたい」「ここで暮らしてみたい」と本気で思われる国は、じつはそれほど多くありません。つまり、ただ大きくて強い国と、「愛されている国」は違うということです。
このお話では、ただ力が強い国を褒めたいのではなくて、世界の人たちがその国をどんな気持ちで見ているのか、その気持ちの深さをそっと覗きたいと思います。言い替えると「世界が大事に思ってくれている国」を知りたい、ということです。ここでいう「世界」とは、難しい国同士の駆け引きではなくて、観光で来る人、学びに来る人、その国の文化を真似したい人、暮らし方に憧れる人、そういう普通の生活をしている人たちの目線を指します。
今回あえてはっきり宣言しておきたいことがあります。国を評価する時によく使われるものの中には「政治の力」「軍事の力」「お金の量」という、とても大きくて重たい物差しがあります。でもそれはこのお話からは外します。何故ならそういう力の話は、時々「怖いから従う」とか「強いから言うことを聞く」という気持ちを混ぜてしまうからです。それは「好き」とは違いますよね。
だから今回は、政治の強さは使いません。軍事の強さも使いません。どれだけ大きなお金を回しているかという数字も使いません。その代わりに見るのは、もっと人間らしいところです。例えば「その国の人は温かいと思われているか」「文化に憧れられているか」「実際に世界中から人が会いに来ているか」「ここで暮らしたい、勉強したいと思われているか」「毎日の生活そのものが魅力だと思われているか」。こういった気持ちの方向の数字だけを集めました。
この考え方をまとめて、ここでは「6つの好かれポイント」と呼びます。これはとてもやさしい物差しです。怖さではなく、憧れ。命令ではなく、親しみ。見下ろす力ではなく、隣に座って欲しいと思われる安心感。そういう空気を感じ取るためのものです。
もちろん、どんなランキングにも作った人の目線が入ります。だからこそ、ここでははっきり言います。このランキングは「新納が選んだ世界に愛されている国ベスト3」です。つまり「私はこう見ている」という責任を自分で引き受けた上でお届けします。これはどこかの役所の公式な発表ではありませんし、国を上下で並べて勝ち負けを決めるつもりもありません。むしろその逆で、「この国にはこんな素敵なところがあるよ」と温かく紹介したいという気持ちです。
これから続く第1章では、その6つの好かれポイントがどんなものなのかを丁寧に説明して、どうやって点数にしたのかをお伝えします。そして第2章・第3章・第4章では、ベスト3に入った国を1つずつ取り上げ、その国がどうして世界の人の心を掴んでいるのかをしっかり味わっていきます。さらに第5章では、惜しくもベスト3ではないけれど、単独で世界中から深く愛されている国たちもご紹介します。最後のまとめでは、「人はどんな国を好きと呼ぶのか」という問いそのものに、もう一度ゆっくり向き合います。
どうか肩の力を抜いて気楽に読んでみてください。ここに出てくる国は、どれも完璧ではありません。だけど、どの国にも「ここは本当に凄い」と胸を張って言える眩しい部分があります。その眩しさを見つけて伝えることこそが、今回の記事の一番の目的です。
[広告]第1章…評価のモノサシはこうして決めた~政治も軍事もお金も外して6つの好かれポイントだけで並べる理由
私達がある国を「好き」と言う時、その気持ちの中にはいろいろな色が混ざっています。憧れ、安心感、親しみ、楽しさ、やさしさ、一緒に過ごしたいという願い。そのどれもが人間らしい感情です。でも、世の中で国同士を比べるときに使われるのは、政治の強さや軍事の強さやお金の大きさという、力の数字ばかりになりがちです。けれどそれは「怖いから言うことを聞く」とか「従わざるを得ない」みたいな感情も混ざってしまうので、本当の「好き」とは少し違います。そこでこの記事では、そういった力の物差しは思い切って外しました。政治の力は使わない。軍事の力も使わない。どれだけ大きなお金を動かせる国かという話も使わない。その上で、どうすれば「世界から愛されている国」と呼べるのかを正面から考えてみました。
まず最初に用意したのが、6つの好かれポイントです。これはその国が世界の人たちからどんな風に受けとめられているのかを、できるだけ生活に近いところからそっと見るための、やわらかい物差しです。1つめは、その国そのもののイメージの良さです。丁寧そう、信頼できそう、安心できそう、と感じられている国は、それだけで「会ってみたい」「仲良くしたい」という気持ちを呼びます。2つめは文化の魅力です。食べ物、音楽、映画、アニメ、ファッション、暮らし方など、「こうなりたい」「真似したい」と思わせる魅力が強い国は、世界の日常の中に自然と入り込んでいます。これは憧れの気持ちそのものです。
3つめは「実際に会いに行っているか」という視点です。つまり、観光客として本当にその国に足を運んでいる人がどれくらいいるのかということです。頭の中の憧れではなく、「どうしても自分の目で確かめたい」という行動に変わっているなら、それはかなり本気の「好き」と言えます。4つめは「ここで暮らして学んでみたい」と思われているかという深い部分です。短い旅行ではなく、留学や長期の滞在を選ぶということは、その国の空気の中で呼吸したい、その土地の言葉で考えたい、その社会の中に身を置いてみたい、と心から願っている証拠です。これはもはや観光ではなく「この国の中に入りたい」という愛情です。
5つめは「受け入れてもらえそうだ」という安心感です。例えば外国から来た人に対して、その国の人達が温かく迎える雰囲気を持っていると、「行っても浮かないかな」「怖い思いはしないかな」という不安が下がります。安心して扉をノックできる国は、それだけでやさしさのイメージとつながり、世界中から大切に思われます。6つめは「普通の暮らしそのものの魅力」です。その国の人たちが自分の毎日をどれくらい満ち足りていると感じているか、幸せと感じているか。これは、派手さではなく日々の生活の心地良さを映す指標です。毎日の暮らしが穏やかで満足できる国は、「ああ、あの国みたいに暮らしてみたいな」という、静かな憧れを集めます。
こうして選んだ好かれポイントは、どれも「この国と仲良くしたい」と思う方向を見ています。力で相手を捻じ伏せる方向は入っていません。ここが一番大切です。逆に言うと、この6つの好かれポイントを高く評価された国は、「支配力」ではなく「一緒にいたい」と願われた国だと読むことができます。ここを明らかにしたくて、このやり方にしました。
次に、どうやって点数をつけたのかというお話をしておきます。6つの好かれポイントごとに、その分野で世界的に高い評価を受けている国たちを比べました。そして、それぞれの分野で上位に入った国に点を入れていきます。やり方はとてもシンプルで、ある分野で第1位になった国には3点、第2位には2点、第3位には1点という形にしました。これを6つ分足し算します。すると、1つの分野でだけ光っている国は大きな点をもらえますが、別の分野では点が入らないこともあります。逆に、最高位ではなくてもいくつもの分野で名前が挙がる国は、じわじわと合計点が積み上がっていきます。つまりこの方式は、「とがった魅力を持つ国」と「万遍なく愛されている国」のどちらも掬い上げる形になっています。
もちろん、この集計方法そのものも完全に中立というわけではありません。何故なら、あくまで新納が「これこそが人として好きになる気持ちだ」と思う部分だけを拾っているからです。例えば「政治的にどれだけ影響力があるか」という項目を入れれば、まったく違う国が上位に来るでしょう。でもそれはこの特集のテーマではありません。今回はあえてそこを切り落として、普段の会話に近い「好き」の温度だけを手の平に乗せました。この線引きこそが、新納の最終判断ということになります。
まとめると、第1章で伝えたいのはただ1つです。これからお見せするベスト3は、怖さでも、押しつけでも、力比べでもありません。礼儀正しさや憧れや安心感や暮らしやすさといった、人が人を好きになる理由だけを掬い上げて並べています。次の第2章からは、合計点で第1位に立った国が、何故そこまで世界の人を引き寄せてしまうのか。その魅力を1つずつ、丁寧に辿っていきます。
第2章…第1位アメリカ合衆国~世界中の人が会いに行きたい・学びたいと引き寄せられる磁石の国~
アメリカ合衆国が堂々の第1位になった理由は、1つの要素だけでは説明できません。アメリカ合衆国は観光で人を集める国であり、学びの場として選ばれる国であり、音楽や映画やグルメやストリートの空気そのものが世界中の憧れになっている国です。人は「あの場所を自分の目で見たい」と思い、実際に飛びます。人は「あの教室で学びたい」と感じて、人生の時間そのものを預けます。人は「この国の文化に触れて同じ温度で生きてみたい」と願って、言葉も習慣も丸ごと吸い込みます。つまりアメリカ合衆国は、外から見た時の夢と、現地で自分を試したいという本気の期待、その両方を纏めて吸い寄せてしまう国だと多くの調査で示されています。
世界中が「会いに行きたい」と思う場所であること
まずアメリカ合衆国は、旅行という一番素直でまっすぐな行動で選ばれている国です。フランスやスペインが観光客受け入れ数で世界の上位を走る一方で、アメリカ合衆国も毎年驚くほど多くの外国人旅行者を迎え入れる国として名前が上がり、世界トップクラスに並んでいます。
この「会いに行く」という気持ちは、ただ有名な写真スポットを回りたいというだけではありません。ニューヨークのストリートで聞こえる音、ロサンゼルスで肌に当たる夕方の温い風、ニューオーリンズの音楽の生の厚み、ハワイで感じるゆったりした時間、ナショナルパークの自然のスケールの大きさ。都市と自然の振り幅がそのまま「どんな自分にも会える場所」として語られ、その土地を歩いた本人の口からまた別の人へ伝わっていきます。つまりアメリカ合衆国は、観光地というより「体験の舞台」として世界から求められていると言えます。
学びたい気持ちがそのまま飛行機に乗ってくる
観光が短い出会いだとしたら、アメリカ合衆国への留学は深い関係の始まりです。アメリカ合衆国の大学や研究機関には、世界中からもの凄い数の学生が集まり続けています。2023年から2024年にかけては、海外からの留学生が100万人をこえて在籍しており、これは世界でも最大級の受け入れ規模と報告されています。
例えば理系の最先端の研究室、医療や公衆衛生を学べる大学院、新しい技術やビジネスモデルを実験できるキャンパスといったように、アメリカ合衆国の学校や大学は「今この瞬間に未来を作っている場所」というイメージを強く持たれています。
ここで大事なのは、これはただの観光ではなく「その国の空気の中に自分を置く」という選択だということです。長い時間をかけて言葉を覚え、友人を作り、自分のこれからを形にしようとする。その舞台にアメリカ合衆国を選ぶということは、「この国の中で成長したい」という気持ちそのものです。つまりアメリカ合衆国は、世界の若い世代にとって「未来を試せる場所」として愛されている、と読むことができます。
文化そのものが世界の標準になってしまう国
さらにアメリカ合衆国には、文化そのものが世界を巻き込んでいく力があります。映画、ドラマ、音楽、ゲーム、スポーツのエンターテインメント、ストリートファッション、SNSで広がる話し方や価値観。これらは最早、国内だけのものではなく、世界のどこにいても日常の会話の中に当たり前に入り込んでいます。ブランド評価会社などがまとめる国ぐるみの文化的な影響力や発信力では、アメリカ合衆国が世界の先頭に立つという評価が繰り返し示されており、「真似したい」「同じ空気を吸いたい」という気持ちを生み出す力が圧倒的とされています。
ただし、ここには少しだけ複雑さもあります。アメリカ合衆国はとても目立つ分、好き嫌いもはっきり分かれる国でもあります。国内の分断や治安イメージに対して不安を感じる声も世界から上がっており、「本当に安心できるのか」「暮らしやすいのか」という問いが付きまとうという指摘もあります。
それでも世界の人はアメリカ合衆国を見つめ続けます。なぜなら、ここには「成功したい」という夢だけではなく、「自分らしく生きたい」という願いも重なっているからです。尖った個性のまま表に立っていい、好きなものを好きなまま発信していい、そういう空気がまだ残っている場所として語られているからです。
アメリカ合衆国という国が世界に与えている感情
アメリカ合衆国が第1位という結果は、ただ「人気があるから」では終わりません。もっと個人的な次元の話になります。多くの国にとってアメリカ合衆国は「今の自分を変えられるかもしれない場所」として見られています。観光であっても、留学であっても、仕事のチャンスであっても、その一歩が人生を大きく動かすかもしれないという手触りを、世界中の人が知っているのです。
だからこの国は、年齢も国籍も生まれ育ちも関係なく、人を「いつかは行こう」「いつかは挑もう」と前のめりにさせてしまう。つまりアメリカ合衆国は、世界から見て「ただの観光地」ではなく「人生の転換点になりうる場所」として愛されているのだと、新納は考えました。
次の第3章では、第2位に選ばれたフランスへ向かいます。フランスは、アメリカ合衆国とはまったく違う形で世界を魅了しています。アメリカ合衆国が「夢と挑戦のステージ」だとしたら、フランスは「体験そのものが宝物になる国」です。その違いをゆっくり味わっていきましょう。
第3章…第2位フランス~一生に一度は触れたい体験そのものがブランドになっている国~
フランスは「行ってみたい」というあこがれが「本当に行く」という行動にまで変わってしまう、とても珍しい国だと言えます。観光分野の国際的な報告では、フランスはずっと世界を代表する旅先として語られていて、2024年には海外からの訪問者が1億人を越えるという発表が出ています。これはフランスが世界でもっとも多くの人を引き寄せる国の1つであり、その地位を2024年時点でも守り続けているという形です。
この「会いに来る人の多さ」は偶然ではありません。2024年に開かれたパリのオリンピックをはじめ、世界規模のイベントや祝祭の空気が重なったことで、「今この瞬間のフランスを肌で感じたい」という動きがさらに強まったと報じられています。パリだけでなく、地方のワインの産地、南仏の陽ざし、ブルターニュの海の香り、アルプスの雪といった、それぞれの土地ごとの表情が物語の舞台になり、その舞台が現実世界で人を呼びよせています。こうした流れは、フランスが単なる観光地ではなく「そこに身を置くこと自体が特別な思い出になる国」として受け止められているからだ、とまとめられています。
フランスという国は文化そのものが世界の憧れになっている
フランスが世界から愛される理由の中心には「文化がそのままブランドになっている」という事実があります。ブランド評価会社の分析では、各国の文化的な魅力、ライフスタイルの魅力、芸術的な存在感などをまとめた「ソフト・パワー」の評価で、フランスはいつも世界上位の常連です。例えばイギリスのコンサルティング会社として知られるブランドファイナンス社が公表するグローバル・ソフト・パワー・インデックスでは、フランスは世界の中でも高い順位に入り、2023年版では第6位という位置付けが示されています。これは「その国に憧れる」「あの暮らし方に近付きたい」と感じるイメージの強さを具体的に数え上げたもので、フランスが世界規模で発信している魅力が、ただの流行ではなく長く続く憧れとして受け入れられていることを示します。
その「憧れ」の代表が、フランスの食卓です。ユネスコこと国連教育科学文化機関は、フランスの「美食の食事」という文化的な作法そのものを、2010年に人類の無形文化遺産として正式に記録しました。これはフランス料理というメニューだけではなく、季節や土地を尊び、皆でテーブルを囲み、ゆっくり味わいながらその時間を祝う、というスタイルそのものが人類にとって守るべき宝だと認められた、という意味を持ちます。この評価は、フランスの食文化が世界から羨ましがられる「特別な時間の過ごし方」そのものだということを、国際的なお墨付きとして示しています。
フランスの場合、「食べたい」「着てみたい」「歩いてみたい」「写真を撮りたい」といった欲求がすべて日常の延長線上に置かれています。エッフェル塔を背景にした夜景、ルーヴル美術館の静かな回廊、石畳のカフェでカップを手に深呼吸する朝、地方の市場でチーズやパンを選ぶ時間。これらは特別な観光メニューではありますが、同時に「その国のふつうの暮らしの空気を自分も吸ってみたい」という、かなり個人的で繊細な願いにつながっています。だからこそ、世界中の人がフランスで過ごした一日一日を自分の人生の一部として語りたくなり、その語りがまた次の人を呼びます。この循環は「文化が人を呼び、人が物語を持ち帰り、その物語がまた文化を強くする」という形で回っており、フランスという国そのものをさらに魅力的に見せています。こうした魅力の強さは、国際的な文化的影響力ランキングでもイタリアやスペインと並んでフランスが上位に名前を連ねるという形で裏付けられています。
自分の物語の舞台にしたい国という愛され方
フランスが第2位になった理由を一言で表すなら、「自分の物語の舞台にしたい国」という愛され方をしているからだと新納は考えます。アメリカ合衆国が「未来を試す場所」というエネルギーで人を引き寄せるのに対して、フランスは「今の自分を美しく切り取ってくれる場所」として求められています。これはすごく優雅なようでいて、とても人間的です。何故なら人は、安心できる時間や、丁寧に味わう食事や、歴史と暮らしが同じ通りに共存している景色に触れると、「この瞬間の自分は大事だ」と実感できるからです。
その感覚は、一時の憧れで終わりません。世界からの訪問者が1億人規模というスケールに膨らんでいる、という事実は、ただ賑やかというだけではなく、「あなたと同じように、この国で自分の物語を撮りたい人がそれだけいる」ということを示しています。
だからフランスは、力で上に立つという意味ではなく、「人生の大切な場面をここで迎えたい」と思わせる力で世界から愛されている国です。第4章では、第3位に入ったイタリアへ向かいます。イタリアはまた別の形で、毎日の暮らしそのものをドラマに変えてしまう国です。
第4章…第3位イタリア~普通の毎日までドラマに変えてしまう暮らしと美の国~
イタリアが第3位になった理由は、とてもやさしく説明できます。イタリアという国は、見る人の心を震わせるために大声を上げたり、力を見せつけたりしません。朝のバールでエスプレッソをさっと飲んでから出勤する人たちの横顔、石畳の小さな広場で友だち同士がゆっくり話しこんでいる夕方、路地に干された洗たくものが風に揺れる昼下がり。そういった日常そのものが、もう既に映画みたいに感じられるのです。イタリアは「特別な舞台を用意する国」というより「普通の暮らしがそのまま物語になる国」として、世界中から愛されています。国のイメージを世界規模で尋ねる調査では、イタリアはとても好ましい国だという評価を高い位置で守り続けており、全体ランキングでトップ5に入るなど高い評価を受けています。
この「好ましい国だ」という評価は、ただの観光パンフレット的なお世辞ではありません。調査では、文化、観光の魅力、人の温かさ、物作りのセンスなどがまとめて聞かれています。イタリアはその中で「感じが良い」「魅力がある」と受け取られることが多く、世界の人たちから「行ってみたい」「仲良くなりたい」と本気で思われている国だと示されています。
世界そのものがあこがれる暮らしのスタイル
イタリアの強みは、文化がかっこいいとか、美術が凄いとか、そういう大きな話だけではありません。一番深いところでは「こうやって生きてみたい」という暮らしのリズムそのものにあります。少し遅めの昼食を大事にすること。家族や友人とテーブルを囲んで、食べ物をゆっくりわけ合うこと。小さな通りで足を止めて、ただ景色を味わうこと。その1つ1つが「こんな毎日がいいなあ」という理想の姿として世界に広まり、真似されます。
国際的なビジネス系メディアがまとめた「文化の影響力」の調査では、イタリアは世界の中で堂々の第1位という評価を受けています。そこでは、イタリアはお金の大きさや軍事の強さではなく、歴史、美術、ファッション、食、そしてライフスタイルの魅力こそが世界を惹き付けている国だと説明されています。
この「文化の影響力」という言葉は、難しく聞こえるかもしれませんが、本当はとても身近な意味です。例えばパスタのゆで方を家で真似すること。エスプレッソを小さいカップで短く楽しむこと。石造りの街並みの写真をまるで映画のワンシーンみたいに切り取って残したくなること。つまりイタリアは、観光ポスターの中だけで輝いているのではなく、普通の家庭のキッチンやリビングにまで入りこんで、「こういう生き方って素敵だよね」と思わせる力を持っているのです。
「会いに行く」という行動で証明される愛情
言葉だけの憧れではなく、実際の行動という面でも、イタリアは世界の人に選ばれています。国連世界観光機関がまとめた数値では、イタリアは2024年の国際的な旅行先として世界トップクラスに入り、凡そ6000万人近い海外からの訪問者を受け入れたと伝えられています。これは地球上の行き先の中でもほんの少しの国だけが入れる上位グループであり、フランスやスペインやアメリカ合衆国と並んで、イタリアが「どうしても行ってみたい国」として選ばれ続けていることを表しています。
この数字が教えてくれるのは、イタリアが「写真で見るだけの国」ではないということです。実際に歩きたい。空気を吸いたい。広場でジェラートを持って座りたい。石畳の路地で道に迷ってみたい。そういう願いが、毎年ほんとうに飛行機に乗って実行されているという事実です。これはとても大きな意味を持ちます。何故なら、人は自分が大切に思う場所に時間とお金と気力をかけるからです。イタリアはその「大切に思われる場所」の1つとして、地球規模で位置づけられていると言えます。
イタリアが第3位である理由~日常がそのまま愛されている国~
イタリアが第3位という結果になった一番の理由は、「日常まで愛される国」であるという点にあります。例えばアメリカ合衆国は、未来に挑戦したい人を惹き付ける大きなステージとしての力が高い国でした。フランスは「自分の物語の舞台にしたい」と思わせる特別な時間をくれる国でした。それに対してイタリアは、日常の暮らし方そのものが世界にとっての憧れになっています。これはとても穏やかなようでいて、じつは強い魅力です。
国としてのイメージも世界的に高い位置にいて、国際的なブランド力調査ではイタリアはトップクラスの好印象グループに入り、文化や観光、人々の温かさなどが高く評価されているとまとめられています。
同時に、文化の発信力においてもイタリアは世界の先頭に立ち、「美しさ」「歴史」「暮らしのセンス」そのものが世界中の人の憧れになっている、と報告されています。
さらに、実際の行動としてもイタリアは「行ってみたい国」ではなく「行く国」になっており、年間で何千万人という規模の人が現地の空気を求めて足を運んでいます。
この3つは、どれも政治の強さでも、軍事の強さでも、国全体のお金の大きさでも説明できない部分です。イタリアは「今ここにある暮らし」の説得力だけで世界から選ばれていて、その「今ここ」の積み重ねこそが、イタリアを第3位へ押し上げたと新納は考えます。
次の第5章では、ベスト3には入らなかったけれど、1つの分野だけを見ると世界中から強く愛されている国々を取りあげます。例えば日本は「礼儀正しそうで安心できる国」というイメージで世界の人々から高い評価を受けていますし、コスタリカは「来てくれた人をあたたかく迎える国」として名があがります。フィンランドは「毎日の暮らしの満足度がとても高い国」として知られています。それぞれの国の、ひと突きで心をつかむ魅力に触れていきましょう。
第5章…単独でも世界が惚れる国たち~日本・コスタリカ・フィンランドが見せた一点突破の愛され方
世界から深く愛される国は、必ずしもベスト3の中だけにあるわけではありません。ここでは日本、コスタリカ、フィンランドという3つの国に触れていきます。この3か国は総合点では上位3か国と並ばなかったものの、ある1つの分野では世界の誰もが羨ましがるほど眩しく光っています。言い替えると、1つの魅力だけで世界の心を攫ってしまうタイプの愛され方をしている国だということです。そこには政治の強さも軍事の強さもお金の大きさも関係ありません。ただ「こういう国であって欲しい」という素直な気持ちが集まっているだけです。
日本~礼儀正しそうで安心できる国としての信頼と本当に会いに来る熱量
日本は「礼儀正しそう」「安心できそう」「まじめで信頼できる」というイメージで、世界の人たちからとても高い評価を受けています。世界規模の国イメージ調査として知られる「アナルト・イプソス ネーション・ブランズ・インデックス(NBI)」では、日本は全体評価で世界トップに立ったと発表されました。ドイツは2位に下がり、イタリア、カナダ、イギリス、アメリカ合衆国などがそれに続きます。これは日本が「感じの良い国」「信頼できる国」という評価を世界的に勝ち取ったという意味であり、アジアの国として初めてその位置に立ったという点でも大きな意味があるとされています。
この「礼儀正しそうで安心できる国」というイメージは、頭の中だけのふんわりした好意では終わっていません。日本には実際に世界中から人が押し寄せています。日本政府観光局(JNTO)の集計では、2024年の1年間でおよそ3,690万人という過去最高の外国人旅行者が日本を訪れました。これはコロナ禍より前の最高記録である3,190万人規模を大きくこえており、「一度は日本に行きたい」という気持ちが、今は「今すぐ行こう」という行動に変わっていることを数字がそのまま示しています。
つまり日本は、「丁寧で安心できる国」というイメージを世界から受け取っているだけでなく、「あなたに会いに行きたい国」として現実に人を動かしている国でもあるのです。観光での人気はもちろん、食文化やアニメやゲームやデザインといった日常のカルチャーも世界的に強い関心を集めています。その結果、日本という国そのものが「好きだから近づきたい」「その場の空気を感じたい」と思わせる対象になっている、とまとめることができます。
コスタリカ~あなたもここにいていいよと伝える柔らかい受け入れ力
コスタリカは「来た人をそのままの自分として受け入れる」という温かさで世界から愛されています。海外生活者の満足度を追いかける大規模アンケート「エクスパット・インサイダー 2024」では、コスタリカが「馴染みやすさ」「暮らしやすさ」といった分野で堂々の第1位となり、世界のどこから来た人に対しても安心して溶け込める場所として評価されています。
この調査では、コスタリカの人々は他所から来た人に対してフレンドリーで、友達を作りやすく、日常生活の中で「ここにいていいんだ」と思わせてくれると語られています。メキシコが第2位、フィリピンが第3位に入っていることからも分かるように、評価されているのは軍事的な強さでも政治的な影響力でもありません。むしろ「話し掛けてくれるか」「困った時に助けてくれるか」「知らない土地でも肩の力を抜いて暮らせるか」という、人と人の距離そのものです。
コスタリカの魅力は、大きな声で自分をアピールしなくても伝わる種類のやさしさにあります。自分の国を見せびらかすのではなく、「ここで暮らしてもいいよ」「ここならあなただって馴染めるよ」と差し出してくれる。これは観光のパンフレットには書きにくい、けれど本音では一番嬉しいタイプの歓迎です。だからこそコスタリカは、特別な派手さを前に押し出さなくても、世界中の人から「いつか暮らしてみたい」と思われる国になっているのだと新納は考えます。
フィンランド~「毎日の満足度が高い国」として尊敬される静かな理想形
フィンランドは「そこに暮らしている人がどれくらい自分の人生に満足しているか」という、とても静かで深い指標で世界をリードしています。国連関連の専門機関や研究チームがまとめる「世界幸福度報告書」は、人びと自身の自己評価を元に「あなたの人生はどれくらい幸せ?」という率直な問いにこたえてもらい、その結果を国ごとに比べています。この報告書でフィンランドは、2024年の時点で7年連続の世界第1位という結果が示され、さらにその後の最新版では8年連続で1位を守ったという報道が出ています。
何故そこまで満足度が高いのかという点については、フィンランド社会には「信頼」という土台があると説明されています。隣に住む人を信じられる。公共のサービスを信じられる。自分の意見を言っても排除されないと感じられる。自分の時間を自分のものとして使える自由がある。こういった要素が、ゆっくりとした安心感を生んでいると紹介されています。
フィンランドが示してくれるものは、とても穏やかな「幸せの形」です。大声で注目を集める国ではなくても、そこに暮らす人が「自分の暮らしはいいものだ」と心から言えるなら、その国は世界から尊敬されます。「あんな風に落ち着いて生きられたらいいな」という思いは、国自体への憧れとほぼ同じ力を持っています。フィンランドはまさにそのお手本になっているのだと、新納は感じています。
ひとつの輝きで世界の心をつかむということ
日本、コスタリカ、フィンランドの3か国には共通点があります。それは「この国はこういうところが凄い」と、世界がはっきり言える場所を持っていることです。日本には礼儀正しさや安心感がある、そして実際に世界中から人が会いに来ているという事実があります。
コスタリカには「来た人を受け入れるあたたかさ」があり、これは移り住もうとする人にとっては命綱のような意味を持ちます。
フィンランドには「毎日の暮らしがちゃんと満たされている」という、静かな最高級の価値があります。
これらの国は、総合点ではベスト3に入らなかった場面もありますが、1つの分野では世界の憧れそのものになっています。そしてその憧れは、軍事力でもなく、政治の駆け引きでもなく、お金で押し切る力でもありません。もっとやさしくて、もっと生活の傍にあるものです。次の「まとめ」では、改めて「人はどんな国を好きと呼ぶのか」をもう一度見つめて、この特集全体の答えをはっきりさせていきます。
[広告]まとめ…人はどんな国を好きだと呼ぶのか~6つの好かれポイントと新納の最終判断~
私達は国のことを語る時、普段はとても大きな言葉を使いがちです。強いとか、強くないとか、影響力があるとか、勝っているとか、負けているとか。でも、そういう言葉の下には、もっと柔らかい気持ちがちゃんと生きています。「あの国の人は優しそう」「あの場所の空気を吸ってみたい」「あの街に立てば、今より少し好きな自分になれそう」。今回の特集はまさにその気持ちをすくい上げるためのものでした。
この特集では、政治の強さ、軍事の強さ、大きなお金の存在感という3つの物差しをわざと外しました。何故ならそれらは、時に「怖いから従う」という感情までも混ぜてしまうからです。そうではなく、「あなたと仲良くなりたい」「一緒に過ごしたい」「そこに身を置きたい」と思われている国こそが、世界から本当に愛されている国なのではないか。新納はそう考えました。
そのうえで、新納は6つの好かれポイントを用意しました。丁寧そうで信頼できる国だと思われているかどうか。文化やライフスタイルが世界から憧れられているかどうか。実際に人が旅行で会いに行っているかどうか。長く暮らす場所として選ばれているかどうか。来た人を温かく迎える空気があるかどうか。そして、そこに暮らす人自身が「自分の毎日は悪くない」としっかり言えるかどうか。これらはどれも、力ではなく親しみから生まれる指標です。
この6つの好かれポイントごとに、世界の中で評価の高い国を絞り込み、上位の国に点を入れました。第1位には3点、第2位には2点、第3位には1点。こうして点を重ねた結果、最も高い位置に立ったのがアメリカ合衆国でした。アメリカ合衆国は観光でも多くの人を引きつけ、年間で何千万人という規模の訪問者を受け入れる国として、フランスやスペインとならんで世界の上位に入っています。さらに大学や研究機関には海外から100万人をこえる留学生が集まっており、ここで学び、ここで未来を試したいという本気の気持ちを受け止めていることが報告されています。そして音楽、映画、ストリートの表現といった文化の発信力は世界有数で、憧れの対象そのものになっているとまとめられています。つまりアメリカ合衆国は「行きたい」「学びたい」「真似したい」という欲求を同時に集めている国であり、その吸引力が合計点でもトップにつながりました。
第2位のフランスは、「自分の物語の舞台にしたい国」という、極めて独特な愛され方をしています。海外からの訪問者は2024年に1億人を越えたと伝えられており、これは世界規模で見ても最高水準の数字です。フランスでは、パリだけでなく各地方の風景や食文化そのものが、人生の特別なワンシーンとして選ばれています。さらにフランスは「文化の力」を評価する国際的な調査で常に上位に入り、食、美術、ファッション、日々の暮らし方そのものが世界の憧れとして確立されていると紹介されています。 つまりフランスは「ここで過ごす時間そのものが宝物になる」という形で愛されており、一瞬一瞬を大切にしたい人の心にまっすぐ届いています。
第3位のイタリアは、「普通の毎日がもうドラマ」という国です。世界規模の国イメージ調査では、イタリアは好ましい国として高い評価を受け、文化や観光の魅力、人の感じの良さなどで上位グループに入っていると報じられています。 加えて、文化的な影響力に関する国際的なランキングでは、イタリアは世界の先頭に立つ存在として名をあげられており、美食、デザイン、歴史、ライフスタイルといった「こう生きてみたい」と思わせるエッセンスが強く評価されています。さらに観光という現実の行動でもイタリアは常に世界上位の目的地とされており、年間で何千万人という規模の人々が「その空気を吸いたい」と実際に足を運んでいます。イタリアは、特別な瞬間だけではなく、何気ない路地やひと皿のパスタまで丸ごと愛されている国なのだと言えるでしょう。いまや
そして、ベスト3には入らなかったけれど忘れてはいけない国たちもいます。日本は、丁寧さや安心感に対する世界の信頼を背景に、国イメージの総合評価で世界トップに立ったと発表されました。その上で2024年には、凡そ3,690万人という過去最高の海外からの訪問者が日本を訪れたと報告されており、「礼儀正しそうで、安心できて、是非会いに行きたい国」というイメージが、いまや本当に人を動かす力になっていることが分かります。コスタリカは、外国から来た人に対する温かさや暮らしやすさが世界的な満足度調査で第1位と評価され、馴染みやすい国として名が上がりました。 フィンランドは、国連関連の幸福度報告で世界第1位という結果を何年も守り続けており、「そこに暮らす人が自分の人生をちゃんと好きだと言えている国」として尊敬を集めています。これらの国は、1つの分野だけで世界中の心を掴んでしまうほどの魅力を持っています。
ここまで見てくると、「世界から愛されている国」という言葉が、ただの褒め言葉ではないことが分かってきます。アメリカ合衆国は「未来を試せる場所」として選ばれています。フランスは「自分の物語の舞台」として選ばれています。イタリアは「普通の暮らしごと愛したい場所」として選ばれています。日本は「安心して会いに行ける国」として、コスタリカは「そのままの自分で受け入れてくれる国」として、フィンランドは「落ち着いて幸せに暮らせる国」として、それぞれが世界のどこかの人の理想そのものになっています。
つまり、国が愛されるというのは、「この国なら自分が大切にされそうだ」と世界中の人が思える、ということなのだと新納は考えます。アメリカ合衆国、フランス、イタリアがベスト3に選ばれたのは、どの国も多くの人に「そこに行けば、今より少し前向きな自分に会える」と信じさせているからです。
最後に、これはランキングではありますが、決して勝ち負けの表ではありません。むしろそれぞれの国が、世界の人にとってどんな希望になっているかを静かに明らかにした記録です。新納としてはこれを読んだ人が「自分にとっての大切な国」をひとつ思い浮かべてくれたなら、それが一番の答えだと思っています。今回名前の出た国でも、まだ出ていない国でもかまいません。あなた自身が「ここに行ってみたい」「この空気にふれてみたい」と感じたその国こそ、あなたにとっての第1位なのです。
⭐ 今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m 💖
応援リンク:
ゲーム:
作者のitch.io(作品一覧)
[ 広告 ]
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。