高齢者レクリエーション~秋だからこそしたい観る運動会計画~施設が1日だけスタジアムになる

[ 秋が旬の記事 ]

はじめに…秋の行事を見る楽しさで膨らませるお話

秋になると、施設でも「今年はどんな運動会にしようか」と考える場面が増えます。元々、運動会は、走ったり、投げたり、力比べをしたりと、体をたくさん使う行事です。ところが実際の現場では、歩行がしっかりしている方もいれば、ベッド上の生活が中心の方、座位をとるだけでとても頑張っておられる方もいて、「全員で同じ競技をする」という形に落とし込むのがどうしても難しくなります。無理に全員参加型の競技にすると、出来る人だけが活躍してしまったり、逆に出来ない方が気を使ってしまったりして、「お祝いの日なのに疲れただけ」ということも起こりやすくなります。

そこで今回の提案は、子ども向けの運動会をそのまま真似るのではなく、「観ることを中心にした大人の秋の行事」にしてしまおう、というものです。スポーツは「する」だけが楽しみではありません。「見る」「応援する」「一緒に盛り上がる」も立派な楽しみ方ですし、年齢を重ねた方にこそ合いやすい形でもあります。しかも、観戦型にすると、認知機能の差や体力の差があっても、同じ場面を同じタイミングで味わうことができます。これは集団での生活が多い高齢者施設にとって、じつは大きなポイントです。

もう1つ大事なのは、観るだけでも心と体はけっこう動く、ということです。懐かしい相撲の取り組み、地元出身の選手の試合、昔ご自身がしていた競技に近いものが目の前にあると、人は自然に前のめりになり、声を出し、手をたたき、表情が和らぎます。これらはすべて、日常ケアの中で「もう少し出てほしいな」と感じている反応に直結します。つまり、観戦型の秋レクは、楽しみながら、姿勢・発声・離床の時間を少しずつ伸ばすことができる、実用的な仕組みにもなりやすいのです。

さらに、外部の方をお招きしたり、地域の小さなクラブに協力してもらったり、オンラインの映像を上手に使ったりすると、施設の中だけでは作りにくい「特別な1日」が作れます。こうした1日は、後から写真や動画、お便りにしてご家族にお届けすることで、ご本人の頑張りが伝わりやすくなり、施設の取り組みも伝えやすくなります。今回の記事では、そうした「観る運動会」を、現場で実際に回せる形に落とし込みつつ、秋らしい華やかさも持たせるやり方をまとめていきますね。

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第1章…高齢者施設の運動会を参加型から観戦型に緩く切り替える理由

高齢者の方が暮らす場で行う行事は、どうしても「全員が同じことをできるかどうか」が最初のハードルになります。ところが実際には、歩ける方・車椅子の方・ベッド上での生活が中心の方・その日によって体調が変わる方など、状態は本当に様々です。若い頃のように「はい、赤組はこのリレーに並んでください」と一列に並んでもらうやり方は、体の負担が大き過ぎますし、職員側も付き添いや見守りで精一杯になってしまいます。楽しいはずの時間が「こなすだけの時間」になってしまうと、行事そのものの価値が下がってしまいます。

ここで視点を変えて、「動ける人だけが頑張る行事」から「皆で同じ場面を味わう行事」へと寄せていくと、状況が変わります。スポーツは、する人と見る人を同じ空間に置いても成立します。むしろ、見る人がいることで熱が上がり、普段よりも盛り上がるという面があります。応援の声や拍手があると、会場の空気は一段明るくなります。高齢者施設で大事なのは、この「同じ場面を一緒に味わえた」という経験を作ることです。体を殆ど動かさなかった方でも、「あの時のあの人、凄かったね」「あの技、昔テレビで見たね」と、後で同じ話題を共有できます。これが、後々の会話や回想に繋がり、生活にリズムを生みます。

観戦型にすると、もう1つ良いことがあります。それは「安全に興奮できる」ということです。スポーツにはどうしても転倒や転落の心配が付き纏います。秋は外に出やすい季節ですが、足元に落ち葉があるだけでも危険度は上がります。そこで、無理に走らせたり、立たせたりせずに、座ったまま・車椅子のまま・ベッドのまま「本気の競技を目の前で見る」形にしてあげると、リスクを抑えたまま心拍だけを少し上げることができます。表情が動く、声が出る、手が上がる──これは、そのまま機能訓練的な価値にもなります。体をほぐす前段階として、目と耳で刺激を入れる、という考え方です。

また、観戦型にすれば、競技をする人の幅もぐっと広がります。施設の若手職員さんがミニ試合を見せてもいいですし、デイサービスの男性利用者さんの中に昔野球をしていた方がいれば、軽いキャッチボールを披露していただくこともできます。地域の少年団や中学生、高校生に来てもらっても構いません。つまり「高齢者さん自身が動けないから行事ができない」という壁を越えることが出来るのです。観る側と見せる側を分けてしまうことで、行事全体の質を落とさずに済みます。

ここまでをまとめると、観戦型に切り替える理由は、身体状況がまちまちでも同じ時間を楽しめる、安全を優先させつつ興奮や感動はしっかり残せる、外部の人や若い世代の力を借りやすくなる、という三つに集約されます。秋は元々スポーツの話題が出やすい季節ですから、この三つを組み合わせて「今日は見る日です」と最初に伝えてしまえば、利用者さんも職員さんも無理のない形で参加できますし、準備する側の負担も見通しやすくなります。次の章では、この観戦型をどうやって当日の流れに落とし込んでいくのかを、具体的に組み立てていきますね。


第2章…施設をミニスタジアムにする準備と当日の流れ

観ることを中心にした秋の行事を成功させるコツは、当日だけ張り切るのではなく、前日までに「これは特別な日だ」と皆が分かるように段階を作っておくことです。特に高齢者の方は、当日の説明だけではイメージがまとまりにくいことがありますので、前もって写真や動画をお見せしたり、玄関やホールを飾ったりして、ゆっくりと気持ちを温めていくと参加しやすくなります。ここでは屋内で行う場合を基本にしつつ、天気の良い日に外部の会場を借りる場合にもそのまま応用できるように流れを組んでおきます。

まず、行事名は分かりやすく、そしてちょっと大げさなくらいで大丈夫です。「秋のスポーツ観戦会」「〇〇ホームスタジアム開幕の日」「推し選手を皆で応援する日」など、読んだだけで内容が浮かぶものにしておくと、職員さん同士の準備もブレません。告知は1週間ほど前から食堂や廊下に貼っておき、当日に登場する競技の写真やイラストを一緒に掲示しておくと、利用者さん同士の会話が自然に始まります。「昔は〇〇をよく見てたよ」「あの選手、まだやってるの?」といった回想が事前に出ていれば、当日も反応が出やすくなります。

当日の会場作りは、普段の体操やカラオケとははっきり雰囲気を変えます。椅子や車椅子の向きを全てスクリーンやコートの方向に揃え、前列と後列の高さを出来るだけ段差で付けると、前の人の頭で見えなくなる問題を防げます。床にテープを貼って「ここは選手が通ります」「ここは道具置き場です」と区分けしておくと、子どもさんや地域の方を招いた時にも安全に導線を守ってもらえます。紅白の布や幟を1本でも立てておくと一気に行事らしくなりますので、ここは少しだけ手を掛けたいところです。

観戦する内容は、施設の人手や時間に合わせて3段階に分けて考えると、毎年回しやすくなります。映像のみの日……大型モニターやプロジェクターで試合の見どころを流し、職員さんが実況風に説明する日。施設内ミニ試合の日……若手職員さんや通所の男性利用者さんに簡単な玉入れ・輪投げ・ラダーのような動きのある競技をしてもらい、他の方は応援に回る日。外部ゲストを招く日……地元のクラブ、学生、OBの方などに協力をお願いし、短時間でも本気のパフォーマンスを見せてもらう日。これらを全部一遍に行う必要はなく、ことしは1つめ、来年は2つめというように、施設の体力に合わせて育てていけば良いのです。

時間の配分は、午前を「見る時間」、午後を「余韻を楽しむ時間」に分けると無理がありません。午前中にメインとなる試合や映像をまとめて見ていただき、拍手や声出し、鳴り物を使って盛り上がってもらいます。午後は、午前中の様子を写真でスライド表示する、ゲストと一緒におやつを食べる、来られなかったご家族に向けてメッセージカードを作る、といった静かな活動に切り替えます。高齢者の方は午前と午後で体力の差が大きいことがありますので、予め流れを緩やかにしておくと、途中参加・途中退席があっても行事が崩れません。

屋外の会場を借りる場合は、時間を必ず短く区切ります。例えば、午前10時開始であれば、11時30分にはメインの観戦を終えて、12時には屋内や送迎車に戻れるようにしておくと安心です。秋と言っても日射しが強い日や風が冷たい日がありますので、観客用のテントと膝掛けは前日までに揃えておきます。飲み物は溢しにくい容器にして、配る人と回収する人を決めておくと、介助が必要な方にも目が行き届きます。屋外の場合でも、室内で前日までに「どんな人が来るのか」「どんな競技なのか」を映像で見ておくと、当日の理解がグッと早くなります。

こうして準備をしておくと、当日は司会役がゆっくり説明するだけで、全体が自然に流れていきます。重要なのは「今日は見て、声を出して楽しむ日です」と最初にはっきり伝えることです。そうすれば、体を大きく動かせない方も安心して座っていられますし、元気な方には「この後、選手と一緒に写真を撮りますからね」と次の楽しみを示しておくことができます。観戦型の行事は、派手な道具を使わなくても、座席の向きと映像の見せ方、それにちょっとした飾り付けだけで、ちゃんと「スタジアムの日」に変わります。次の章では、この観る時間をどうやって発声やリハビリの場にしていくかを掘り下げていきます。


第3章…声を出す・たたく・一緒に食べる~観戦をリハビリに変える仕掛け~

観ることを中心にした行事は、「座って見るだけだから楽だよね」と思われがちなのですが、実はここに少しの工夫を入れると、機能訓練の時間としてもちゃんと役に立つ場になります。ポイントは声を出す場面をはっきり用意する、手や腕を動かすグッズを配る、終わったら味覚でしめるという3本立てにすることです。どれも難しいことはなく、道具も少なくて済みますが、高齢者の方の反応がグッと大きくなります。

まずは声です。スポーツ観戦は元々「オォーッ」「イケーッ」「頑張れーっ」と声を出しやすい場面が続きます。普段の体操や発声練習だと声が小さい方でも、相撲の決まり手やゴールの瞬間など「いま!」というところを示してあげると、驚くほど通る声が出たりします。ここをレクリエーションの側から少し演出してあげるのです。例えば、司会役が「次の技が決まったら全員で『やったー!』と言いますよ」「〇〇選手が登場したら『お帰りなさーい!』で迎えましょう」と前振りをしておきます。そうすると、見ている方は「言っていいんだ」と安心出来ますし、職員さんもサポートしやすくなります。声を合わせること自体が呼吸の調整になりますから、嚥下が弱くなっている方や、言葉を出す切っ掛けが欲しい方にも良い刺激になります。

次に手や腕です。観戦中はどうしても同じ姿勢になりがちなので、手に持つだけで動きになる物を予め配っておきます。手作りの小さな応援バット、拍子木、ガラガラと鳴るマラカス、色紙を丸めたスティックなど、軽くて落としても危なくない物が良いでしょう。これを「得点が入ったら3回たたきましょう」「選手が退場するときは頭より上でふってください」とルール化しておくと、上肢の挙上になりますし、座位のままでもリズム運動になります。車椅子の方にはテーブルに布を張っておき、そこを手の平でたたいてもらうだけでも十分です。複数人で同じリズムをとると、一体感が生まれて、会場の空気もグッと明るくなります。

そして、観る・声を出す・たたく、まで来たら、最後は味覚です。スポーツ観戦には昔から「ちょっとしたおやつ」が付き物でした。小袋に入ったお煎餅、喉に優しいゼリー、秋らしいさつまいもやかぼちゃの茶巾など、片手で摘まめて水分と一緒に摂れる物を用意しておきます。午前中に盛り上がった後で同じメンバーと同じ場所で食べると、「さっきの試合凄かったね」「あの若い人上手かったね」と自然に会話が出ます。食べながら話す時間は、心理的な力が抜けるので、普段あまり前に出てこない方がポツリと昔のことを話し出すこともあります。行事の記録を付ける職員さんにとっても、この時間はとても大切です。

こうした仕掛けを入れると、「今日は見ていただいただけです」では終わらない行事になります。声を出した時間は発声・呼吸の練習として記録できますし、手を上げた・たたいた時間は上肢の活動として書けます。会話や笑顔が増えたら、心理面での変化としてまとめることもできます。つまり、楽しむこととケアの視点が同じラインに乗るのです。観戦型の行事が良いところは、ゴールの瞬間や勝敗の決まる場面など、自然に「盛り上がる切っ掛け」が何度も来ることです。介護側が無理に「はい、ここで笑いましょう」「ここで大きな声を出してみましょう」と指示しなくても、画面の中や目の前の選手が切っ掛けを作ってくれます。これは職員の負担を軽くしながら、利用者さんの反応を底上げする大きな利点になるのです。

さらに言えば、観戦型の行事は、体調によって参加の深さを変えやすいという良さもあります。その日はベッドで過ごされる方には、午前中だけ車椅子で前列に出てきていただき、メインの見どころを一緒に見てもらいます。午後は居室で写真のスライドを見てもらうだけ、でも構いません。それでも「同じ行事に参加した」という事実は残ります。これが、季節の行事に参加しているという自信や家族に伝えられる話題として生きていきます。次の章では、この1日をどうやってご家族や地域へ広げて、施設の取り組みとして残していくかをまとめていきます。


第4章…写真・動画・お便りでご家族と地域に広げるアフタープラン

観ることを中心にした秋の行事は、当日の盛り上がりだけで終わらせてしまうと本当にもったいない取り組みになります。高齢者の方は、行事の後に「今日は賑やかだったね」「あの若い人上手かったね」と振り返ることで、記憶にしっかり残していきますし、ご家族にとっては「施設でこんなことをしてくれているんだ」という安心材料にもなります。ですから、企画の段階から「後で届けるもの」をセットで考えておくと、行事全体の価値がグッと高まります。

一番簡単なのは写真です。職員さんのうち1人は、介助よりも記録を担当する役にして、カメラやタブレットを持って動き回ります。撮る時のポイントは、競技そのものよりも、見ているご本人の表情を残すことです。手をたたいているところ、前のめりになっているところ、ゲストと目が合って笑っているところ──こうした瞬間は、後から見返した時に「ちゃんと参加していたんだな」と伝えやすくなります。可能であれば、ゲストの方と利用者さんを並んでいただき、スタッフも一緒に入って記念の1枚を撮ると、秋のご挨拶に使いやすい写真になります。

写真が撮れたら、その日のうちにホールや廊下にミニギャラリーを作ります。A4の用紙に数点を貼るだけでも十分に雰囲気が出ますし、説明文を短く添えておくと、翌日来られたご家族にも状況が伝わります。説明文には「〇〇さんは相撲の取り組みで大きな声を出されました」「〇〇小学校の皆さんに手を振っておられました」など、事実と様子が分かる一言を書いておきます。文を添えることで、介護記録にも転写しやすくなり、職員さん同士の情報共有にもなります。

もう少し手を掛けられる施設さんなら、短い動画を作るのもお勧めです。スマートフォンで撮ったものをそのままテレビに映すだけでも、行事に参加出来なかった方にとっては立派な参加の代わりになります。外出が難しいご家族には、面会時にタブレットでお見せしたり、許可のある範囲でご家族用の連絡アプリに静止画を数枚送ったりすれば、「離れていても顔が見られた」という実感に繋がります。動画は長くし過ぎず、2~3分で1本、という形にしておくと、高齢者の方も集中して見られます。

紙のお便りにする方法も、秋の行事とは相性が良いです。紅葉のイラストを入れた季節便りに、当日の写真を1枚貼り、簡単な文章を印刷してご家族にお配りします。「この日は地域のクラブチームにお越しいただき、皆さま大きな声で応援されていました」「〇〇様はお孫様世代の演技を見て手を振っておられました」など、実際の様子が1行でも書かれていると、とても温かいお便りになります。施設内にも同じ物を貼っておくと、家族が見た物と利用者さんが見た物が揃い、話題が生まれやすくなります。

さらに広げるなら、施設のHPや広報ページに「秋のスポーツ観戦会を行いました」として活動報告を載せておきます。写真はお顔がわからないように加工したものを使用するか、ご家族の同意をいただいたものだけを使います。ここで大事なのは、単に「行事をしました」と書くのではなく、「声を出すことで呼吸が深くなり、表情が和らぎました」「外部の方との交流で離床時間が延びました」「地域の方に来ていただいたことで、普段とは違う空気が流れました」と、ねらいと結果をきちんと並べておくことです。そうしておくと、次の年に同じ企画をする時に「昨年はこういう良い変化があったから今年もやりましょう」と説明しやすくなります。

また、来てくださったゲストへのお返しも忘れずに用意しておきます。写真を数枚プリントして、利用者さんの手書きメッセージを1枚添えるだけで、グッと心のこもったお礼になります。職員さんの名前だけでなく、ご利用者さんのお名前が1つでも入っていると、「また来たいな」と感じていただきやすくなります。スポーツを見せる側は、観客の反応があると、とても励みになります。ですから「施設での観戦は盛り上がりますよ」という印象を残しておくと、次に声を掛けた時の返事が早くなります。

このように、写真・動画・お便りをうまく組み合わせると、当日だけのイベントだったものが、家族・地域・職員にとっての共有財産に変わっていきます。高齢者の方にとっては、「自分もちゃんと参加した」「姿を見てもらえた」という手応えが残り、職員にとっては「秋の行事はこれで行こう」という定番が1つ増えます。行事が終わった後のこのひと手間こそが、観るだけの秋レクを「またやって欲しい行事」に育てる仕上げの部分になります。

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まとめ…見ているだけで元気が続く秋のレクリエーションへ

ここまでのお話を振り返ると、ポイントはとてもシンプルでした。まず「皆が同じようには動けない」という現実を出発点にしたこと。次に「それでも同じ時間を楽しむことは出来る」という視点に立ったこと。そして最後に「楽しんだ様子を外に伝えるところまでを行事とする」と決めたこと。この3点がそろうと、高齢者施設の秋の行事はグッと大人らしい、落ち着いた、でも熱気のある1日に変わります。

従来の運動会のように、全員で列に並んで、順番に玉入れやリレーをするやり方は、出来る方には達成感がありますが、出来なかった方には「見ているだけで終わってしまった」という心残りを生みがちでした。今回の「観る運動会」は逆で、最初から見ることを中心に組んであるので、座っていても、車椅子でも、体調があまり良くない日でも、同じ場面に立ち会えます。いわば「百聞は一見にしかず」を、施設の行事として再現した形です。迫力のある演技や競技を間近で見れば、それだけで話題ができ、表情が動き、声が出ます。これは高齢者の方にとって、生活リズムを少し起こす大事な刺激になります。

また、見ているだけではなく、声を出す・手をたたく・最後に一緒に味わう、という流れを入れておくことで、行事とケアが自然に重なります。「今日は楽しかったね」で終わりにせず、「今日は声がよく出ていました」「今日は普段より長く座っていられました」という形で職員のケア記録にも繋げられますから、現場としても続けやすい取り組みになります。特に秋は、食欲が戻りやすい季節でもありますので、観戦後のおやつや軽食を組み合わせると、参加の満足度がさらに上がります。

そして、行事はやりっ放しにしないことが大切です。写真や動画をその日のうちに掲示し、ご家族に向けたお便りにして届けることで、「〇〇さんはこんな場面に参加されていましたよ」と伝えられます。これが積み重なっていくと、施設での生活が「ただ過ごしているだけ」ではなく「季節ごとに楽しめている」という見え方に変わります。地域の方やゲストの方にも記録をお渡しすれば、「また呼んでください」と言っていただける土台になります。行事が毎年繋がりやすくなり、施設の中に「秋はこういうことをする場所」という温かなイメージが定着していきます。

高齢者の方にとって、若い頃のように全力で走ることはもう難しいかもしれません。けれど、誰かの頑張りを見て心が動く力は、年齢を重ねてもそう簡単には小さくなりません。だからこそ、秋の1日を「見る喜び」で満たすことには意味があります。大きく動けない方にも、今日は胸を張って「参加しました」と言ってもらえるように。職員さんも「今年はちょっと良い行事ができたな」と感じられるように。そんな秋のスポーツ企画を、どうぞ施設のカラーに合わせて育てていただけたらと思います。これでひとまず、今回の「観る運動会」のお話はお終いです。また別の季節でも、同じ考え方で膨らませていきましょう。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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