空元気は悪者じゃない!~「強がり」を今日を渡る小さな技に変える~
はじめに…「元気そうだね」の裏で、心が小さく手を挙げる日
「元気そうだね」と声を掛けられて、「うん、大丈夫!」と笑った直後。心の中では小さな自分が、「いや、今日はそこまで元気じゃないぞ」と手を挙げている。そんな日、ありますよね。
朝から気分爽快、意気揚々と出発できれば申し分ありません。でも実際の暮らしは、眠い朝もあれば、気が重い予定が待っている日もあります。それでも顔を洗い、服を着て、人に会えば少し笑う。人間は思っている以上に、「今の自分を少しだけ動かす工夫」をしながら暮らしています。
そんな時の空元気は、必ずしも悪いものではありません。
空元気は、本当の気持ちを消すためではなく、今日の自分を崩さず次の一歩へ運ぶために使えます。
ただし、「大丈夫!」を何日も何週間も貼りっ放しにすると話は別。心が「そろそろ外してくれません?」と言っているのに、本人だけ元気係を続投していたら、流石に配役会議が必要です。
元気がない日は、元気100点を目指さなくて良い。少し背筋を起こす、いつも通り挨拶する、やることを1つだけ始めてみる。それで動き出せる日もあります。そして、空元気が必要だった自分に気づいたら、帰る場所と休む時間も用意しておく。
空元気は、弱さを隠す仮面ではなく、時には自分を守る小さな上着になります。着る日があって良いし、脱ぐ時間もあって良い。その加減が分かってくると、「今日もちょっとやってみるか」と、自分に無理のない声を掛けられるようになります。
[広告]第1章…空元気は心の上着~本音を消さずに今日を動かす小さな支度~
朝、鏡を見た瞬間に「今日は顔がまだ起きてないな」と思う日があります。
髪を整えても、服を着替えても、心だけは布団に置いてきたような感じ。それでも仕事や用事があれば玄関は待ってくれません。そんな朝に必要なのは、気分を無理やり絶好調まで持ち上げることではなく、「外へ出られる自分」に少し整えることです。
空元気は、そんな時に羽織る心の上着に似ています。
寒い日に上着を着るからといって、「私は寒くありません」と自分を騙しているわけではありません。寒いから着る。それだけです。気持ちが沈んでいる日に、表情や声、姿勢を少し整えるのも同じ。心の状態を否定せず、今いる場所に合わせて身支度をしているだけなのです。
まず整えやすいのが、顔、声、姿勢です。
満面の笑顔を作る必要はありません。口元をほんの少し柔らかくする。声も無理に明るくせず、相手に届くくらいにする。そして胸を張って仁王立ちするのではなく、肩の力を抜いて背筋を起こす。
これだけでも、心と体の間に小さな変化が生まれます。
人の気持ちは、いつも心が先頭を走るわけではありません。体を動かした後から、「あ、今日は動く日なんだな」と気持ちが追いついてくることもあります。朝から意気軒昂とはいかなくても、玄関まで行ければ十分。靴まで履けたら、もうかなり前進です。
……そこで靴を履いたまま「やっぱり今日はやめようかな」と座り込む朝もありますけどね。人間ですから、そういう日もあります。
大切なのは、空元気を豪華に作り込まないことです。
元気そうに見せようとして笑顔を盛り、声を張り、動きを大きくすると、それだけで疲れてしまいます。外へ出る前から全力疾走では、1日が始まる前に息切れします。必要なのは勇猛果敢な突撃ではなく、静かな準備運動くらいで十分です。
洗面台の前で一度息を吐く。肩を上げて、ストンと落とす。鏡の中の自分に「まあ、行ってみるか」と小さく声を掛ける。
その程度なら、心も「それくらいなら付き合います」と動いてくれるかもしれません。
空元気は、自分を立派に見せるためではなく、今日の自分を雑に扱わず次の一歩まで連れていくための支度です。
そして、上着には脱ぐ時間があります。
帰宅した後まで同じ顔、同じ声、同じ姿勢を続ける必要はありません。玄関を閉めたら肩を落としても良い。「疲れた」と口にしても良い。上着を脱ぐように、外向きの自分を緩める時間があるからこそ、空元気は便利な道具になります。着たまま布団へ入ったら、心より先に布団が「脱いでください」と言いそうです。
元気がない自分と、少し元気そうに動く自分。その二人は敵同士ではありません。
どちらも同じ自分です。片方が「今日はしんどい」と知らせ、もう片方が「じゃあ少しだけ進もう」と支える。そんな二人三脚なら、無理を増やすのではなく、今日という1日をちょうど良く渡っていけます。
第2章…「大丈夫です!」に上限をつける~頼られ過ぎない明るさの使い方~
職場で朝から元気に「おはようございます!」と言いながら、心の電池表示だけは残り23%。そんな日でも、不思議と周囲からは「今日も元気ですね」と言われたりします。
「はい、元気です!」
……いや、電池23%ですけどね。
仕事をしていると、こんな小さな空元気が役立つ場面があります。誰かがミスをして空気が固まった時に、「まず落ち着きましょう」と少し明るく声を掛ける。忙しそうな人へ柔らかく返事をする。険しい表情が並ぶ場面で、自分だけ少し肩の力を抜いてみる。
それだけで場の緊張がほどけることがあります。臨機応変に明るさを使える人は、職場にとってありがたい存在です。空元気にも、ちゃんと人を助ける働きがあります。
ただ、頼られる人ほど注意したいことがあります。
「大丈夫です!」には、自分を守るための上限をつけておく方が良い。
「大丈夫です」で会話を終えると、相手には「まだ余裕があります」と伝わりやすくなります。すると仕事が1つ増え、もう1つ増え、「あの人ならお願い出来る!」が積み重なる。気づけば机の上だけ繁盛店。本人だけ閉店時間を知らされていません。
そんな時は、明るさを捨てなくても構いません。
「出来ます。ただ、今日はここまでなら大丈夫です」
「明日までなら出来ます」
「こちらを先に終わらせてから取り掛かります」
こうして範囲や時間を添えるだけで、「断る」ではなく「出来る条件を伝える」に変わります。人は相手の限界が見えないと頼み過ぎることがあります。反対に、境界が分かれば仕事を組み替えやすくなります。
スマートフォンだって、電池が減れば残量を表示します。「私は根性で100%に見せます」なんて機能はありません。人間だけが残量8%で画面をピカピカに光らせ続ける必要もないでしょう。
それでも真面目な人ほど、孤軍奮闘になりやすいものです。
「忙しいのはみんな同じだから」「私が言ったら迷惑かな」「もう少しだけなら」
この「もう少し」が毎日続くと、空元気が一時的な道具ではなく通常運転になっていきます。笑っている自分を見て、本人まで「まだ平気なのかも」と思い始める。そこが少し怖いところです。役立つ空元気は必要な時だけ使えますが、苦しくなった空元気は外すタイミングが分からなくなります。
そこで、自分だけが分かる小さな警報を決めておくのも手です。
昼休みに座った瞬間、何も考えたくなくなる。普段なら気にならない一言に妙に腹が立つ。帰宅して鞄を置いた後、しばらく動けない。そんな変化を「気合い不足」で片づけず、「今日は残量が少ないな」と受け取る。
セルフモニタリング(自分の状態を自分で観察すること)が出来れば、空元気を出したまま限界まで走り続けるのを防ぎやすくなります。
そして、元気を出せない日は、感じよく働けば十分です。
声を張れなければ丁寧に話す。笑顔が難しければ、きちんと頷く。冗談が浮かばなければ、相手の話を落ち着いて聞く。
職場で必要なのは、毎日ハイテンションで走り回ることではありません。静かな日にも仕事は出来ますし、穏やかな人がいることで助かる場面もあります。
「今日はここまでなら出来ます」と言える人は、弱いのではありません。自分の残量を知りながら、周囲と一緒に仕事を回そうとしている人です。
空元気に上限がつくと、「何でも出来る人」を演じなくて良くなります。明るさは残す。でも、自分まで置き去りにはしない。そのくらいの加減が、働く日の空元気にはちょうど良いのです。
[広告]第3章…元気は後からついてくる~小さな動作と言葉で心をそっと動かす~
朝、目覚まし時計が鳴った瞬間、布団の中で会議が始まることがあります。
「起きなければ…」
「でも眠い」
「あと5分なら問題ない」
そして議長である自分が、「では5分延長で」と全会一致の採決を出す。
朝から見事な民主主義です。問題は、5分後にも同じ議案が提出されることでしょう。
気持ちが乗らない時、人は「元気になったら動こう」と考えがちです。けれど実際には、順番が逆になる日もあります。顔を洗ったら少し目が覚める。着替えたら外へ出る気になる。動き始めた後から、心が「しょうがない、私も行きますか」と追いついてくる。
空元気は、体力そのものを増やす燃料ではありません。疲れている体を一瞬で元気にするものでもありません。それでも、小さな行動を始める点火役にはなれます。
そこで役立つのが、短い独り言です。
「よし、起きよう」では少し立派過ぎる朝なら、「とりあえず座る」。
「今日も頑張ろう」が重ければ、「顔を洗うか」。
玄関まで来たら、「靴を履こう」。
これくらいで十分です。
壮大な応援演説を始める必要はありません。朝から自分へ「君なら出来る!未来は輝いている!」と熱弁しても、眠たい本人から「どなたですか?」と返されてしまいそうです。
短い言葉なら、今やっていることと食い違いません。「立つ」「着替える」「水を飲む」といった実況中継なら、気持ちが沈んでいる日でも使いやすくなります。
これは一気呵成に自分を変える方法ではありません。むしろ一進一退で構いません。
1つ動く。
ちょっと止まる。
また1つ動く。
「千里の道も一歩から」と言いますが、元気が出ない朝ほど、その一歩をやたら小さくしてしまえば良いのです。千里を考えたら遠過ぎます。まず洗面所まで。それなら随分と現実的です。
元気を待ってから動くのではなく、動ける小ささまで行動を縮めると、元気が後から追いついてくる日があります。
そのための型を1つ持っておくと、さらに楽になります。
深呼吸を1回する。肩を上げてストンと落とす。次にすることを短く声に出す。
大切なのは、毎日完璧に続けることではありません。試行錯誤しながら「これなら自分は動きやすい」という組み合わせを見つけることです。大掛かりな習慣にすると、出来なかった日に新しい反省材料が増えてしまいます。心の倉庫に、そんな在庫まで抱える必要はありません。
そして、どうしても元気そうに振る舞えない日もあります。
そんな日は、笑顔を作らなくても大丈夫です。明るく話せなければ丁寧に話す。長く話すのがつらければ短く伝える。「今日は少し静かです」と周囲に知らせるだけでも、立派な工夫になります。
空元気の目的は、元気な人に見せることではありません。
今日の自分を雑に扱わず、出来るところまで連れていくことです。
元気いっぱいで進む日もあれば、「まあ、1個だけやるか」で始まる日もある。その小さな始動を何度か経験すると、自分なりの動き方が少しずつ分かってきます。
心はいつでも先頭を走ってくれるわけではありません。
たまには体を先に一歩出して、「こっちだよ」と呼んであげる。
すると少し遅れて、気持ちが追いついてくることがあるのです。
第4章…空元気には「出口」がいる~頑張り上手ほど先に覚えたい休み方~
空元気が上手な人には、少し困ったことがあります。
周りから見ると、本当に元気そうなのです。
頼まれれば返事が出来る。人と会えば笑える。仕事もいつも通り進めている。すると周囲は、「あの人なら大丈夫」と安心します。
ところが本人の内側では、少しずつ余裕が減っていることがあります。
笑ってはいるけれど、前ほど楽しくない。返事は出来るのに、会話が妙に疲れる。休んだはずなのに、朝からもう重たい。
大きな音を立てて崩れるのではなく、日常が静かに小さくなっていく。空元気の難しさは、そんなところにあります。
そこで覚えておきたいのが、空元気の「出口」です。
頑張る方法ばかり増やして、終わらせ方を持っていないと、心はずっと勤務中になります。家に帰っているのに気持ちは職場、布団に入ったのに頭の中では反省会。もう閉店しましたよ、と看板を裏返したいところです。
休むことは、何もしない時間ではありません。
走った自分を整備する時間です。
車なら走り続ければ点検します。スマートフォンなら充電します。それなのに人間だけ、「まだ動くから大丈夫」と使い続けるのは少々無茶があります。しかも限界というものは、暇な日を選んで丁寧に訪れてくれるとは限りません。
休む時間は、頑張れなかった日の埋め合わせではなく、頑張る自分を明日へ戻すための時間です。
長い休暇だけを「休み」と考える必要もありません。
温かい飲み物をゆっくり飲む。スマートフォンを置いて少し目を閉じる。椅子にもたれて肩の力を抜く。
短くても、「さっきより少し戻った」と感じられる時間なら立派な休息です。緊張と休息を行き来する一張一弛くらいの暮らしの方が、ずっと付き合いやすいでしょう。
そして、自分の「いつもと違う」にも目を向けます。
寝ても休んでも重さが抜けない。普段なら流せる小さな一言が妙に残る。好きだったものを目の前にしても気持ちが動かない。
そんな日まで「元気、元気!」で押し切る必要はありません。
上着のボタンを1つ外すように、空元気も緩めれば良いのです。
仕事なら、「今日は少し余裕が少ないです」「ここまでなら今日中に出来ます」と伝える。家庭なら、「今日は静かにしていたい」と言ってみる。
これは敗北宣言ではありません。自分の状態を知らせるだけです。周囲に見えない疲れは、少し言葉にして初めて伝わります。
帰宅した後に、もう何もしたくない日もあるでしょう。
そんな時は、「今日はここまで」と言ってしまう。
そこから減速です。
声の調子を落とす。1人になれる時間を少し作る。温かいものを飲む。明る過ぎる照明を少し落とす。好きな音を流しても良い。
空元気を突然投げ捨てるのではなく、ゆっくり役目を終わらせるのです。
頑張った自分へのご褒美も、「頑張った人だけが受け取れる賞品」にしなくて構いません。
今日はよく出来たからお茶。
今日は全然出来なかったから、お茶なし。
……そんな厳格な茶道は誰も望んでいません。
空元気は、いつまでも着続ける制服ではありません。必要な時に少し借りて、役目が終わったら返す。その出口まで用意しておくと、空元気は自分を追い込むものではなく、自分を守りながら暮らすための便利な技になっていきます。
[広告]まとめ…強がりは人生の調味料~少し使って、ちゃんと自分に戻ろう~
「今日はちょっと元気が出ないな」
そんな朝があっても、人は意外とちゃんと暮らしていけます。
顔を洗って、服を着て、「まあ、行ってみるか」と玄関を出る。気持ちは少し遅刻しているのに、体の方が先に1日を始めてくれることもあります。
そんな時の空元気は、決して悪者ではありません。
少しだけ背中を押してくれたり、気まずい場を和らげたり、沈みかけた気持ちを次の一歩まで運んでくれたりする。空元気にも使いどころがあります。
ただし、一長一短です。
「大丈夫」と言えることと、本当に大丈夫であることは同じではありません。笑えているから疲れていないとも限らないし、仕事が出来ているから余裕があるとも限りません。空元気を使うなら、自分だけは舞台裏の事情を知っておきたいところです。
「今日は少し無理して笑ったな」
「思ったより疲れているな」
「もう今日は終わりにしよう」
そんな小さな気づきがあれば、強がりは自分を追い込むものではなくなります。
元気なフリをした日は、その分、本当の自分を休ませる時間も忘れないでください。
空元気とは、ずっと笑って生きるための技ではありません。
喜怒哀楽がある自分のまま、それでも今日は少し進みたい。そんな時に、ほんの少し借りる力です。
料理のスパイスだって、瓶ごと全部入れれば大惨事です。少しだから香りが立ちます。空元気も同じでしょう。
今日は明るく「大丈夫!」と言えるかもしれない。
明日は「今日は静かめです」と言うかもしれない。
別の日には、「今日はもう休みます」と言ったって良い。
どれも、その日の自分に合った立派な選択です。
毎日を100点の元気で走らなくても構いません。60点の日には60点の歩き方があり、30点の日には30点で帰ってこられる道があります。
空元気を少し借りて一歩進み、疲れたらちゃんと自分へ戻る。
その繰り返しなら、「強がり」も案外、人生を少し歩きやすくしてくれる調味料になってくれるのではないでしょうか…。
[ 広告 ]今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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