天の川はどっちに流れる?~七夕の夜に君と星空の間で迷子になった話~

[ 8月の記事 ]

はじめに…浴衣とラムネと天の川の所在不明問題

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七夕って、ロマンチックだよね――と、クラスの女子が口にしたのは、たぶん5時間目の古典の時間だった。

俺はといえば、そのとき「短冊って筆ペンで書く派? シャーペン派?」という疑問をひたすら脳内で繰り返していた。

そんな俺が、その数時間後に浴衣姿の彼女と屋台を回り、チョコバナナを片手に「天の川って、どこにあるの?」という壮大なテーマを背負って夜の住宅街を歩くことになるなんて、誰が予想しただろうか。

毎年7月7日、テレビでは「今夜は七夕ですね〜」「織姫と彦星が出会うロマンチックな日です〜」と軽やかに言ってのける。

でも、ちょっと待ってほしい。

外は曇り、いや小雨。

肝心の空はまっしろで、星も月もなにも見えない。

そしてそもそも俺たち、高校生の分際で星を探すなんてキャラじゃない。

なのに彼女が言った。

「見に行こうよ。天の川」。

ラムネの瓶を片手に、きらきらした目で。

これは断れない。

いや、断ったら人としての何かを失いそうだった。

というわけで、祭りのあとに始まった俺と彼女の“天の川探索ナイト”。

スマホの明かりを頼りに、方向音痴な俺が天体観測をするという地獄の予感しかないこの夜。

でもこの話、ただの迷子で終わらなかった。

なぜなら俺たちは途中で知るのだ。

天の川は時間で動くし、そもそも今の七夕は“本当の七夕”ではないという、歴史の陰謀。

そう、これはただの星探しじゃない。

18歳男子が、ひょんなことから七夕という名の時空と科学と恋の迷宮に足を踏み入れた、夏の一夜の冒険譚なのである。

星が見えようと見えまいと、俺の記憶には間違いなく光っていた🩷――あの夜、あの空、そして、隣にいた彼女が。

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第1章…織姫と彦星には会えるのに俺らは星を見失う


七夕祭りが終わって、帰り道。

夜風が少しひんやりしていて、浴衣の袖がふわっと揺れる。

俺は屋台で買った焼きそばと、ラムネのビンをリュックに突っ込んで、隣を歩く彼女を見た。

髪をアップにした彼女は、昼の教室では見たことない表情をしていて、なんだかもうそれだけで空を見上げる理由になる気がしていた。

「天の川、見に行こうよ」

言ったのは彼女のほうだった。

まるで「明日の天気どうかな」みたいなテンションで。

いやいや、見に行こうよって、どこに!?

天の川って、どこから始まって、どこに流れてるの!?

こちとら天体知識ゼロの文系男子、せいぜいわかるのは「織姫=こと座のベガ」「彦星=わし座のアルタイル」って名前くらい。

なんなら「それって今夜も出勤してるの?」って聞きたかったくらいだ。

とりあえず東の空だと彼女が言うので、俺たちは街灯を避けながら、校舎の裏手の空き地へと歩いた。

街の明かりが少ない場所の方が見えるらしい。

途中でコンビニの明かりを見て「これが銀河の敵だね」と言う彼女に、「敵は意外と身近にいるもんだ」と返した俺、ちょっとイケてた気がした。

「スマホのアプリで星座探せるらしいよ」と彼女。

なんだと?

俺の必死な目視努力が、テクノロジーで一撃解決されるとは。

さっそく彼女のスマホに表示された空の地図を見ると、そこには“ベガ”と“アルタイル”の名が輝いていた。

なるほど、あの辺を結んで…その真ん中あたりに“天の川”がある、ってことらしい。

……って、見えない。

全然わからない。

星ってこんなにたくさんあるのに、どこが天の川!?

あのモヤモヤした感じ?

雲じゃないの?

いや、そもそも今どっちが東?

地図は北が上?

俺は?

俺の人生の方角は!?

そんな俺を見て、彼女はくすっと笑った。

「大丈夫。私も最初そうだった。でも、目を慣らせばだんだん見えてくるよ。10分くらい、暗いとこで」

たしかに。

目が慣れてくると、だんだん見えてきた。

星の帯。

まるで空にふわっと絹糸をかけたような、淡くて広がる光の流れ。

ああ、これが天の川ってやつか。

すごく…静かだ。派手さはない。

でもずっと見ていられる。

織姫と彦星が年に一度だけ出会う場所――たしかにここにある。

でも俺と彼女は、年に一度どころか、今日がはじめての“ふたりきり”だ。

やばい、俺の方がドキドキしてる。

星より、目の前の彼女のほうがずっと眩しい。

結局、最初に見つけたのは天の川じゃなくて、たぶん“ふたりの距離感”だった気がする。

距離、ゼロじゃない。

でも、ちょっと縮んだ。

星の力、恐るべし🩷。

第2章…天の川って実在してたんですね(感動)


目が慣れるって、すごい。

人間の進化ってここまで来たかと思った。

暗い空の下でじっと10分、しゃべらずに立っていたら――ようやく空の上の「もやっと白い線」が、それっぽく見えてきた。

彼女の「ほら、あれ」って指差した先に、うっすらと光の帯。

そう、それが俺の人生初・天の川との遭遇だった。

第一印象としては、「あれ? 意外と地味?」って思ったのは、俺だけじゃないと思いたい。

もっと、こう…銀色の光がビーーンって走ってると思ってた。

勝手にアニメみたいなのを想像してた俺が悪いんだけど、あれね、現実の天の川は、どちらかというと“夜空ににじんだ牛乳”みたいなビジュアルだった。

なんていうか、やさしい。

控えめ。でも、すごく広がってる。

「雲じゃないんだよ、それ」

俺が「これ雲?」って聞いたら、彼女が笑った。

あの子、笑いながら少しずつ教えてくれる。

星のこととか、方向とか、あとスマホの星座アプリの操作方法まで。

なんなら「今日、月出てるからちょっと見えづらいかも」って、もはや天体予報士じゃん。

かっこいい。

俺の知識、「北斗七星は飲み屋の名前に多い」くらいで止まってたのに。

そのあと、彼女が言った。

「ベガとアルタイルの間にあるのが天の川なんだって」

まじで!?

じゃあ、そのふたつを見つければ、天の川の真ん中を特定できるってこと?

ちょっとテンション上がる。

見つけ方がわかると、探すのも楽しくなるよね。

俺のテンションも気圧も急上昇。

「ベガはこと座で、アルタイルはわし座だよ」

説明が完全にガイド。

彼女のスマホを見ながら空に目を凝らして、ようやくふたつの星を認識できたとき、俺はちょっと感動した。

教科書でしか見たことない星たちが、ちゃんと空の上で輝いてて、俺たちの話を聞いてる気がした。

「でも…この星たち、ホントに出会えてるのかな」

彼女がポツリと言ったその一言に、なんかドキッとした。

織姫と彦星は年に一度だけ会えるっていうけど、そもそもそれは“見える位置”にくるだけの話で、実際には何百光年も離れてるらしい🩷。

なるほど、遠距離恋愛ってレベルじゃない。

むしろ時空を超えたすれ違い。

なのに、俺たちは同じ場所に立って、同じ空を見上げてる。

それって、すごいことなんじゃないか。

祭りのあとの帰り道に、ちょっと遠回りして見た空。

その中にちゃんと存在してた天の川。

目をこらさないと見えない、でも確かにそこにあるっていう感覚。

それがなんだか、彼女のことにも重なって見えて――うん。

俺、たぶん今、ちょっと本気で感動してる。

もしこの記事を読んでる誰かが「天の川って本当に見えるの?」って思ってるなら、声を大にして言いたい。

見える!

実在する!

ただし、雲じゃないかと疑ってしまうくらいには、やさしい見え方をしてくるぞ!

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第3章…新暦の七夕と旧暦の本気


「でさ、実はさ……今日、ほんとの七夕じゃないらしいよ」

突然のカミングアウトに、俺のラムネが鼻に入りそうになった。

「え? 七夕って7月7日じゃないの? 七夕祭りって、今日だよ? 今日、短冊に“バズりたい”って書いたよ?」

「それ、新暦の七夕だよ」って、彼女はさらっと言う。

こっちは衝撃なのに、彼女の口調はもう、唐揚げにマヨネーズかけるくらい自然だった。

「昔は旧暦で7月7日だったんだけど、今は太陽の動きに合わせて新暦でカレンダー組んでるでしょ? でも旧暦の7月7日は、今のカレンダーだと8月になるの」

え、なにその時空のズレ。

つまり俺たち、公式には七夕ってことで盛り上がってるけど、星的には“まだ準備中”ってこと?

「うん、本当の意味で星が一番見やすいのは、8月7日あたりなんだって」

……マジか。まさかの一か月前倒し。

俺、さっき天の川見てちょっと感動したけど、まだ本番じゃなかったの!?

じゃあ今夜のベガとアルタイル、リハーサル? 前撮り? それとも早朝バイト?

「明治時代の改暦で、旧暦が使われなくなったときにさ、伝統行事もぜんぶ新暦の日付にあわせちゃったらしいよ。でも、それだと季節感が合わないってことで、一か月遅れで祝う“月遅れ七夕”ってのが広まったんだって」

すげえな、彼女。

話してる内容がもう文化人類学。

俺の頭の中はもはや短冊と焼きそばで埋まってるというのに、彼女の知識は天文学から明治政府まで網羅してる。

「だから北海道とか東北では、8月に七夕祭りやるとこもあるんだってさ。仙台の七夕まつり、有名だよね」

……知ってた? と聞かれたら、俺の答えはもちろん「うん、テレビで見た」しかなかった。

でも本音は、「旧暦と新暦のズレがそんなにロマンに直結するとは思ってなかった」です。

でも思う。

今夜、俺たちがこうして天の川を探して、微妙に見えたり見えなかったりしてるのも、ある意味、七夕らしいのかもしれない。

年に一度しか会えないふたり。

会えるかどうかも天気や時間次第。

すれ違いとタイミング、そしてほんの少しの運。

昔の人たちは、そんな切ない空の下で短冊を吊るしてたんだろうな。

ちょっとだけ、その気持ち、わかった気がする。

で、隣を見たら彼女が言った。

「じゃあ来月、もう一回ちゃんと見に行く?」

……おい、俺の心がまたドキドキし始めたんだが。

7月の七夕は仮スタートで、8月が本番?🩷

じゃあ俺ら、夏の間に2回もロマンチックイベント発生するの?

これ、恋愛フラグってやつでは!?

星よりも俺の心が流星群状態なんですが!?

第4章…空が回って気持ちも回って星も移動する


「なあ…さっき見た天の川、もう場所ズレてない?」

と俺が言うと、彼女はスマホをスッと見て「うん、ズレてるよ。空って回るからね」と当然のように答えた。

空が回る。

地球が回ってるとはよく聞くけど、星も一緒にくるくる回ってるとは…知らなかった俺、完全に宇宙の置き去り。

「20時のときは東の空だったでしょ? でも今は22時すぎたから、天の川は真南の方にきてるの」

天の川って、流れてるんじゃなくて、回ってるのか。

なるほど。

ロマンよりも物理だった。

でもちょっと待って、方角ってなに基準?

こっちが東?

じゃああっちが西?って言いながら、その場でぐるぐる回ってたら彼女が「地球より回ってどうするの」と笑った。

いや、だって星って動かないって習わなかったっけ?

なんで空の川が引っ越してんの!?

「ほら、スマホのアプリ見て。今の天の川は南の方に広がってるから」

画面に映る空の地図には、確かにモヤモヤした帯が南へ流れてた。

なるほど、星空は時間とともに移動するらしい。

ってことは、深夜になったら今度は西の空に行くのか?

星の川、忙しすぎない?

年1回のデートなのに、めっちゃ移動させられてるじゃん、織姫と彦星。

「0時過ぎたら、天の川は西の空に傾くよ」

彼女の言葉を聞いて、俺は考える。

つまり、タイミングを逃したら天の川はもう頭の真上から去っていく。

あのふたりも、ほんのわずかな時間だけ接近して、またすぐ離れていく。

なんか切ない。

でも今、俺たちはその“わずかな時間”に立ち会ってるんだと思うと、ちょっとだけ胸が熱くなる。

彼女の声が近い。

目の前には夏の夜空。

そしてその上には、ちゃんと流れてる、星の川。

「なんか、星ってずっと同じところにあると思ってたけど…違うんだね」

俺がぽつりと言うと、彼女が返す。

「気づいた? だから見たいなら、見ようって決めたときに行動しないと、どんどん流れてっちゃうんだよ」

その言葉が、なんか妙に刺さった。

星の話なのに、まるでチャンスとか恋とか、そういう“今この瞬間を逃すな”って意味に聞こえてくる🩷。

俺は空を見上げた。

天の川はもうさっきより少し傾いてて、やっぱり流れてる。

でもそれは、遠く離れていく感じじゃなくて、ずっと続いてる道みたいに見えた。

この道の上に立ってるなら、俺たちもどこかで出会える気がする。

たとえ星じゃなくても、誰かと。

いや、たとえば彼女と――とか考え始めたら、もう俺の思考がロマンチックに全振りしてて恥ずかしい。

でもまあ、しょうがないよな。

だって星が流れる夜だ。

気持ちくらい揺れて当然じゃんか。

第5章…月が邪魔で街灯が明るくて俺はひたすらにまぶしい


「見えにくくなってきたね」

彼女がぽつりと言った。

俺たちがさっきまで「これぞ天の川だ!」と指差していたその場所が、なんだかぼやけてきた。

視力のせいか?と思ったけど、そうじゃなかった。

空に浮かぶ月が、ちょうど満月手前。

めちゃくちゃ明るい。まぶしい。

なんなら、天の川より目立ってる。

お前、夜空の引き立て役じゃなかったのかよ。

「満月近いと、星って見えづらくなるんだよ。特に天の川は、すごく淡いからさ」

彼女の口から出てくるのは、もう完全に天文学クラブの指導者レベル。

横で俺は「へぇ〜…」としか言えない。

なんなら、天の川がぼやけてきたことより、彼女の知識と浴衣の柄のほうに目を奪われてる俺の集中力こそ問題だと思う。

「あと、街の明かりもね。空気がキレイでも、光が強いと星って消えるんだって」

なんだよ光害って。

害とか言うなよ、俺たちが今いるこの空き地のすぐ後ろ、コンビニ明るいし、道沿いに車バンバン走ってるし。

さっき通った自販機コーナーなんて、まるで太陽。

俺ら、光に囲まれすぎてる。

しかもここ、田舎でもなければ山でもない。ただの住宅街の裏。

「都会って、星見るのに向いてないんだね」

彼女のその言葉に、ちょっとだけ胸がキュッとする。

じゃあ、もっと暗いところに行けばよかった?

あの時、遠回りしてでも高台まで行けばよかった?

そんな後悔を始めそうになった俺に、彼女が言った。

「でも、なんか…ちょっとだけでも見えたのが、逆に良かったかも。全部くっきりじゃないから、想像できるし。あの辺が天の川で、って指差してさ」

うわ、この人やっぱり強い。

空が見えにくくても、心の中にはちゃんと星が見えてるタイプの人だ。

俺なんて、空が曇ったら即「ゲームでもしよ」ってなるのに、彼女はこの瞬間を大事にしてくれてる。

月が明るい。

街も明るい。

なのに彼女の横顔がその中で一番、やわらかく光ってる気がして、俺はなんだか変な気持ちになった。

ああもう、こっちは恋心が光害なんですが🩷。

どうすんのこれ。

そして、ふと思った。

天の川が見えにくいこの街で、俺がこうして“彼女といる時間”だけは、他の何よりもはっきりしてた。

そう考えたら、星がぼやけてても、この時間はくっきり覚えていられる気がした。

第6章…スマホの中の銀河に恋をした


「ほら、こっち見て」

彼女がスマホの画面を差し出してきた。

そこには、夜空に星座が浮かぶ映像。

いや、正確にはスマホ越しの空にCGで星座が浮かんでるっていう、現実とデジタルの混在空間。

「このアプリ、空にかざすと今どの星があるか表示されるんだよ。ほら、ここがこと座で、こっちがわし座」

すげぇ……現代ってすげぇ。

俺の知ってる星って、小学校のころに作ったペットボトルプラネタリウムくらいだったのに、今じゃ空を見上げなくてもスマホで宇宙が見えるとか。

ロマンチックの外注。星すらAR。時代、来てる。

「今、天の川はこの辺かな」

彼女の指がスマホの画面をなぞる。

その細い指先が動くたび、空の星々がゆっくり回転する。

もう、天の川なんてどうでもいいからずっと見ていたいと思った俺の心は、すでに銀河系脱出寸前。

「でもさ、すごくない? さっきまで“どこ?”って探してたものが、ここにはちゃんと見えるんだよ」

わかる。

めちゃくちゃわかる。

これが文明の力か。

さっきは肉眼で探して“もしかして雲!?”って騒いでたのに、今じゃスマホの中に織姫も彦星も揃ってて、しかもちゃんと再会してるっぽい。

っていうか、それをふたりで覗き込んでるこの状況がいちばんドラマチックだって気づいた。

距離、近すぎない?

あと10秒で耳鳴り始まりそう。

「アプリによっては、流星群の時期とかも教えてくれるんだって。あと月の満ち欠けとか、人工衛星の位置まで」

お、おう。

すごいな……っていうか、そんなに星好きだったのか、君。

俺はその情報よりも今の距離感と彼女の横顔のほうが気になって仕方ないけどな。

ふたりの顔が、スマホの小さな画面の上でぴたりと寄り添う。

天の川を見てるはずなのに、俺の視界の中心には彼女の睫毛と、少し光に照らされた頬。

そしてたまにこっちを見る瞳。

……天の川?

うん、スマホの中にあるよ。

リアルの空?

ちょっと明るくて見えにくいけど、心の目で見えるよ。

でも俺は今、君の顔ばっかり見てるから大丈夫。

宇宙の奇跡より、今のこの距離が一番まぶしいから。

「こういうの、毎年でもやりたいね」

彼女の一言に、俺はもう「毎年どころか毎晩でもいいです」と心の中で100回うなずいた。

アプリが教えてくれる星の位置より、隣の人の気持ちがどこを向いてるかのほうが、やっぱり難しい🩷。

でも、今夜は少しだけ、その答えに近づけた気がする。


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まとめ…来年もまた空のどこかで


「ねぇ、あれって…ほんとに天の川だったのかな」

帰り道、ふたりで並んで歩きながら、彼女が言った。

スマホのアプリを閉じて、もう星座の名前も表示されない、普通の夜空を見上げながら。

曇ってるのか、光が強すぎるのか、さっきまであった星の帯は、もうどこにもなかった。

「たぶん、違ったかもね」って俺は答えた。

でもその後に、ちょっとだけ言葉を足した。

「でも、あれが天の川だって言った君の声が嬉しかったし、俺はあれでよかったって思ってる」

天の川って、実はそんなに簡単には見えない。

街の明かりが強すぎたり、月が明るかったり、空がちょっと霞んでたり。

タイミングを外せば、そこにあるはずのものすら見えなくなる。

それでも俺たちは、東の空を見て、南の空を見て、スマホで星を探して、ちゃんと“あった”って言える時間を過ごした。

これはもう、間違いなく七夕だった。

7月7日はカレンダーの七夕、でも8月7日は空が教えてくれる七夕。

旧暦と新暦がズレてるなんて、明治の人が勝手に決めたことかもしれないけど、それでも誰かと空を見上げて「これが天の川だよね」って言えるなら、日付なんてちょっとぐらいズレてたっていいと思う。

きっと昔の人も、今の俺たちみたいに、見えたり見えなかったりする空を見て、織姫と彦星のことを考えたんだと思う。

すれ違い、運命、再会。

そういう言葉が、いつの時代も夏の夜空に似合ってるのは、天の川が“見えるようで見えない”からかもしれない。

「また来年も、見に行こうね」

そう言った彼女の声は、あの夜空よりもずっとやさしくて、俺の中ではいまだにくっきり光っている。

天の川がどこにあるかなんて、もう関係ない。

あの夜、彼女と見た空が――俺にとっての“本物”だったから🩷。

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