芒種のレクは穂先で広がる~触って描いて塗って楽しむ梅雨前のやさしい季節遊び~

[ 季節と行事 ]

はじめに…雨の前に机の上に小さな芒種を開く

6月の空は、少し気まぐれです。朝は晴れていたのに、昼には雲が厚くなり、夕方にはしっとり雨のにおい。洗濯物を外に出すか、部屋に入れるか、空とにらめっこする季節です。勝てそうで勝てない。相手は梅雨ですから、こちらもなかなか大変です。

そんな6月の入口にやって来るのが、二十四節気(季節を細かく分けた昔ながらの暦)の1つ、芒種です。読み方は「ぼうしゅ」。少し難しそうな名前ですが、米や麦などの穂先にある細い突起を「芒」と呼び、種を撒く頃という意味を持っています。

芒種と聞くと、田植え、麦刈り、カエルの声、梅雨入り、願い事の短冊のようなものがフワっと浮かびます。高齢者施設やデイサービスでも、昔の田んぼの思い出を語ったり、雨の日の過ごし方を話したりすれば、自然と和気藹々とした時間が生まれます。

ただ、芒種の楽しみ方はそれだけではありません。「種をまく日」と考えるだけでなく、「穂先に触れる日」と考えると、レクリエーションの扉がスッと広がります。

筆、刷毛、化粧ブラシ、料理用の刷毛、絵筆、綿棒、柔らかな毛糸。暮らしの中には、稲や麦の穂先を思わせるものがたくさんあります。フワフワ、チクチク、シットリ、コシのある感触。手の平に小さな刺激が届くと、頭の中にも昔の景色が開きます。

机の上に水田は作れなくても、筆先で雨を描くことは出来ます。泥に入らなくても、刷毛で初夏の味を思い出すことはできます。外へ出られない日でも、手元に小さな季節を呼び込むことは出来ます。

芒種のレクリエーションは、準備を派手にしなくても楽しめます。大事なのは、季節の言葉を暮らしの感覚へ繋ぐこと。雨の前の少し湿った空気の中で、触って、描いて、塗って、笑う。そんな小さなレクの芽が、梅雨前の一日を明るくしてくれます。

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第1章…田植えとカエルと願い事で芒種の入口は懐かしさで賑わう

芒種のレクリエーションを考える時、最初に浮かぶのはやはり田植えの景色です。田んぼに水が張られ、苗が並び、遠くからカエルの声が聞こえてくる。空はどんよりしているのに、何故かそこには夏へ向かう勢いがあります。雨の気配まで含めて、季節が働き者の顔をしているような頃です。

高齢者施設やデイサービスで芒種を楽しむなら、まずはこの懐かしい景色を会話に変えるだけでも十分に場が和らぎます。田植えをしたことがある方なら、腰をかがめた時の大変さ、水の冷たさ、苗をまっすぐ植える難しさを覚えているかもしれません。していない方でも、田んぼの横を通った記憶、カエルの合唱、雨上がりの土のにおい、学校帰りの水たまりなど、それぞれの記憶がポツポツと出てきます。

芒種の入口は、難しい説明よりも「そういえば、あの季節だね」と感じられることが大切です。田植えの写真を見せたり、折り紙で小さな苗を作ったり、緑の紙を田んぼに見立てて貼ったりすると、会話は自然に動きます。カエルの絵を添えるだけでも、場の空気が少し軽くなります。カエルが苦手な方もいるので、リアル過ぎる絵は控えめが安心です。可愛くし過ぎると今度は「こんな丸いカエルはおらん」と笑われるかもしれませんが、それもまた和気藹々として良いところです。

願い事を絡めるのも、芒種らしい楽しみ方です。種を撒く季節なら、紙に書く言葉も「今年の夏に育てたいこと」に出来ます。元気に過ごしたい、麦茶を美味しく飲みたい、家族に会いたい、転ばずに歩きたい。大きな夢でなくても構いません。手の平に乗るくらいの願いほど、毎日の暮らしにはよく似合います。

芒種のレクは、田んぼを再現する時間ではなく、心の中に残っている季節をそっと起こす時間です。

回想法(昔の出来事や生活の記憶を話すことで心を動かす関わり方)として見ると、田植え、カエル、梅雨、麦茶、願い事はとても扱いやすい題材です。ただし、昔話を引き出そうと力を入れ過ぎると、進行役の顔だけが田植え直後のように汗だくになります。話したい方は話し、聞いていたい方は聞く。沈黙があっても、雨待ちの空のようにゆったり受け止めるくらいがちょうど良いです。

一粒の種から芽が出るように、短い会話から笑顔が広がることがあります。正に「蒔かぬ種は生えぬ」です。季節の言葉を1つ置き、写真を1枚見せ、手元に小さな苗飾りを添える。その小さな始まりが、芒種の一日を穏やかに動かしてくれます。


第2章…フワフワでチクチクでシットリ~“穂先”で楽しむ肌触りゲーム~

芒種の「芒」は、稲や麦の穂先にある細い突起を思わせる言葉です。田んぼや麦畑まで出かけなくても、身近な道具の先を見れば、小さな“穂先仲間”は意外とたくさん見つかります。書道の筆、絵筆、料理用の刷毛、化粧ブラシ、掃除用の小さなブラシ、歯ブラシ、綿棒、毛糸の束。机の上に並べるだけで、ちょっとした芒種の博覧会です。博覧会と言うと立派過ぎますが、並んでいるのは筆と刷毛とブラシです。受付係はいりません。

肌触りの感触ゲームは、準備が簡単なわりに会話が広がりやすいレクリエーションです。目で見て名前を当てるだけでなく、手の平や指先でそっと触れて、フワフワ、シットリ、チクチク、コシがある、サラサラしている、と感じた言葉を出してもらいます。正解を急がず、感じ方の違いを楽しむところに面白さがあります。同じ化粧ブラシでも「羽みたい」と言う方もいれば、「くすぐったくて落ち着かん」と笑う方もいます。どちらも大正解です。

進め方は、まず机の中央に数種類の“穂先道具”を置き、見た目だけで何に使う道具なのか話してもらいます。書道の筆は思い出話に繋がりやすく、絵筆は学生時代や趣味の話へ広がります。料理用の刷毛なら、焼きとうもろこしやお好み焼き、照り焼きの話が出ることもあります。化粧ブラシは整容(身嗜みを整えるケア)の話題にも繋がり、昔のオシャレや鏡台の思い出がフワっと顔を出します。

目を閉じて触る遊びにすると、さらに場がやわらかくなります。手の甲に筆先をそっと当てて、「これは何でしょう?」と尋ねるだけで、集中する表情が生まれます。綿棒の丸み、歯ブラシの細かな刺激、毛糸のやさしさ、刷毛の少し平たい感触。道具ごとに触れ方が違うので、指先の感覚を使う良い時間になります。五感刺激(見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わう感覚に働きかける関わり方)の中でも、触れるレクは反応が見えやすいのが魅力です。

芒種の肌触りゲームは、当てる遊びよりも、感じたことを言葉にして笑い合う時間にすると明るく育ちます。

道具を選ぶ時は、安全と衛生を大切にします。先が鋭いもの、硬過ぎるもの、皮膚を傷つけそうなものは避けます。使用済みの化粧ブラシや料理用の刷毛を使う場合は、素材によって熱湯に向かないものもあるため、無理に再利用せず、レク専用として新品を数本を揃えると安心です。個別に使うもの、見本として見せるだけのもの、触れてもらうものを分けておくと、進行も右往左往しません。準備係が道具を探して施設内を走り回る展開は、別の意味で運動レクになりますが、そこは出来れば避けたいところです。

面白いのは、感触の好みが人によって違うことです。やわらかいブラシが好きな方もいれば、少しコシのある筆の方が落ち着く方もいます。歯ブラシの刺激を「これは目が覚める」と言う方もいるでしょう。十人十色の反応が出るほど、場は賑やかになります。道具の名前を当てるだけで終わらせず、「何に似ていますか?」「昔使ったことがありますか?」「この感触で思い出すものはありますか?」と声をかけると、単なるゲームが小さな会話の畑になります。

芒種は、種をまく季節の言葉です。けれど、手の平に届く小さな刺激も、心を動かす種になります。フワっと笑う、思い出して話す、誰かの答えに頷く。机の上の筆先や刷毛先が、梅雨前の部屋に穏やかな和顔愛語の時間を連れてきます。

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第3章…筆と刷毛が梅雨空を走る~手元から生まれる芒種アート~

感触ゲームで“穂先”に親しんだら、次はその先っぽたちに少し働いてもらいます。筆、刷毛、ブラシ、綿棒、毛糸の束。どれも同じように見えて、紙の上を走らせると表情がまるで違います。細筆はスッと細い線を残し、太筆は力のある穂を描き、刷毛は水面のような横線を広げます。化粧ブラシで色をのせると、梅雨空の雲がフワっと滲み、歯ブラシを使えば雨粒がパラパラと飛びます。あまり勢いよく飛ばすと、雨粒どころか机の上が夕立になります。タオルの準備は、静かなる名脇役です。

芒種アートは、絵が得意な方だけの時間にしなくて良いところが魅力です。真っ直ぐ描けなくても、色がはみ出しても、雨の日の空はそもそもキッチリしていません。緑の線が少し曲がれば苗になりますし、茶色を重ねれば湿った土になります。青をスッと伸ばせば水田、黄色を散らせば麦の穂、白を軽く重ねれば雲の切れ間。偶然の滲みも、芒種らしい柔らかな景色になります。

進め方は、まず大きめの画用紙を用意し、薄い青や緑を背景にします。刷毛で横にスッと引くと、田んぼに張った水のような広がりが出ます。その上に細筆で苗を一本ずつ描くと、手元で小さな田植えが始まります。太筆で麦の穂を描く方がいても良いですし、綿棒で雨粒や小花をポンポン置く方がいても楽しいです。スポンジブラシを使えば、土の湿り気や草むらの重なりも作れます。創意工夫が自然に生まれ、誰かの一筆が誰かの笑顔に繋がります。

化粧ブラシや柔らかい刷毛は、力の弱い方にも扱いやすい道具です。強く押さなくても色がふんわり広がるので、「描く」というより「撫でる」に近い感覚で参加できます。手指の動きが小さい方には、短い持ち手の筆や太めの柄を選ぶと安定しやすくなります。片手で紙が動いてしまう場合は、職員がそっと押さえるだけで十分です。主役の手元を奪わず、紙だけ支える。これがなかなか大事です。支え過ぎると共同制作ではなく、職員の個展になってしまいます。

芒種アートの良さは、上手に描くことより、手元から季節が立ち上がる楽しさにあります。

作品は一人一枚でも良いですし、全員で大きな一枚を作っても華やかです。大きな紙に水田を描き、そこへそれぞれの苗や雨粒や麦の穂を加えていくと、色彩豊かな壁面飾りになります。最後に「芒種の田んぼ」「雨待ちの麦畑」「6月の穂先便り」などの風情のある題名をつけると、作品に小さな物語が宿ります。題名を決める時間だけでも、思わぬ名作が飛び出します。「これは田んぼというより湖やな」と言われたら、それはそれで6月の大水面です。笑って採用しても良いくらいです。

材料は身近なもので十分です。絵の具が難しければ、色鉛筆や水性マーカーでも形になります。歯ブラシの飛沫を使う場合は、周囲に新聞紙を広げ、口に入れるものとは完全に分けます。料理用の刷毛も、制作用として使うものは食品用だけは戻さない方が安心です。アートの時間は楽しいほど道具が増えますが、終わった後の片づけまで見える配置にしておくと、職員の心も平穏無事でいられます。

6月の空は、晴れ切らず、雨だけでもなく、少し迷いながら夏へ向かいます。だからこそ、筆の線も刷毛の滲みも似合います。綺麗に整えた一枚より、誰かの手の跡が残る一枚の方が、芒種の季節にはよく馴染みます。机の上に広がった小さな田んぼや麦畑を眺めると、雨の日の部屋にも、外の季節がそっと入ってきます。


第4章…ぬりぬり刷毛仕事で初夏の味を思い出す

刷毛は、紙の上だけで働く道具ではありません。台所や屋台の傍にも、ちゃんと出番があります。醤油を塗った焼きとうもろこし、味噌ダレをまとった五平餅、こんがり焼けたおにぎり、田楽の上にのる甘い味噌。刷毛がスッと動くだけで、何故かお腹の奥が「知っているぞ」と返事を勝手にしてしまう場面です。食べていないのに香りが浮かぶ。人の記憶って、なかなか食いしん坊なんです。

芒種の「穂先」から刷毛の魅力に辿り着いたら、初夏の味を思い出すレクリエーションへと広げられます。実際に食材を扱わなくても、紙皿や厚紙に焼きとうもろこし、焼きおにぎり、田楽、みたらし団子、うなぎの蒲焼き、照り焼き、せんべい、パン、ホットケーキなどの形を用意して、刷毛で色を塗るだけで十分に楽しい時間になります。茶色を少し重ねれば焦げ目、黄色を足せばとうもろこし、艶のある色を載せればタレの照り。机の上に、ジワリと初夏の屋台気分が広がります。

このレクの面白さは、手首を使う動きと、味の記憶が一緒に動くところです。刷毛を持って、スッと塗る。もう一度、少し濃く塗る。ここ!重ね塗りの先にある味はとても大事です。端まで丁寧に伸ばす。動きはシンプルですが、力加減や方向が自然に出ます。作業療法(生活に必要な動きを楽しみながら引き出す関わり方)の視点でも、手指や手首を無理なく使いやすい活動になります。とはいえ、職員が「もっと端まで!」と熱くなり過ぎると、屋台の親方みたいになります。そこは笑顔で、のんびり営業です。なりきりと動作が連動して重ねるほど味覚と記憶がパンクする系です。

会話の種もたくさんあります。焼きとうもろこしなら、夏祭りや海辺の売店。五平餅なら、山の旅や郷土の味。焼きおにぎりなら、家の台所や残りご飯の楽しみ。田楽なら、味噌の甘さや地域の味。せんべいなら、醤油の香ばしさ。パンにジャムをぬる話になれば、朝食や喫茶店の思い出にも繋がります。刷毛1つで、東奔西走するように記憶の旅が始まるのです。

刷毛で塗る動きは、味を作る真似事ではなく、食べる楽しみを思い出す小さな入口になります。

実物の食品を使う場合は、衛生と安全を慎重に見ます。手指消毒、個別の道具、アレルギー、嚥下(飲み込む力)、食事制限、保存温度を確認し、無理のない範囲で行います。食品に使う刷毛と制作に使う刷毛は分けておく方が安心です。紙工作として楽しむなら、準備も片づけも軽くなり、食べられない方も参加しやすくなります。見るだけ、話すだけ、色を選ぶだけでも参加の形になります。

仕上げに、完成した“初夏の味カード”を並べて「食べたい順番会議」を開くのも楽しいです。焼きとうもろこし派、焼きおにぎり派、甘い味噌派、うなぎを見たら黙っていられない派。意見が割れても大丈夫です。食の話は、少しくらい賑やかな方が似合います。百花繚乱のご馳走の絵が並ぶと、部屋の空気まで少し香ばしくなったように感じます。

芒種は、田植えや麦刈りの季節の言葉です。けれど、暮らしの中へ入ってくると、刷毛の先から醤油の香りや味噌の甘さまで連れてきます。触って、描いて、塗って、思い出す。雨が近い6月の1日にも、机の上には小さな屋台が開けます。

と、ここまで解説すると分かりますよね。次に待っているのはお好み焼き、イカ焼き、とうもろこし、五平餅、焼きおにぎりの実演屋台レクです。これは事前レクが盛り上がるほど、確実に予測されたステップアップで避けて通れない道です。あ、ステップアップに切りがないと見切った判断、必ず高齢者さんの顔を見つめた上でやってみてくださいね。

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まとめ…小さな穂先から笑顔の芽が出る日

芒種という言葉には、少し硬い響きがあります。けれど、その中にある「芒」という小さな穂先へ目を向けると、季節の楽しみはグッと身近になります。田植えの思い出、カエルの声、雨の気配だけでなく、筆先、刷毛先、ブラシの毛先にも、6月らしい遊びの入口が隠れています。

高齢者施設やデイサービスのレクリエーションは、特別な道具をたくさん集めなくても育ちます。手の平にフワっと触れる化粧ブラシ、少しコシのある書道筆、紙の上を滑る刷毛、雨粒を散らす歯ブラシ、初夏の味を思い出させる料理用の刷毛。どれも暮らしの中にある小さな道具ですが、使い方を少し変えるだけで、触る、描く、ぬる、話す、笑う時間へ変わります。

芒種のレクは、田んぼへ行けない日にも、机の上で季節を感じられるやさしい遊びです。

大切なのは、上手に完成させることだけではありません。フワフワを気持ち良いと感じる方もいれば、チクチクを面白がる方もいます。筆で描いた苗が曲がっても、刷毛で塗った焼きとうもろこしが少し濃くなっても、それぞれの手元にその人らしさが残ります。失敗を直すより、笑って味わう。そうすると、部屋の空気も自然と明朗快活になっていきます。

芒種は、何かが育ち始める季節です。レクリエーションも同じで、最初から大きく盛り上げようとしなくて大丈夫です。小さな道具を1つを置いて、季節の言葉を1つ添えて、誰かの「懐かしいね」を待つ。その一言が出た時、場の中に小さな芽が出ます。

雨が近い6月の日。梅雨で外へ出るのが難しくても、逆手にとってみれば一段、素晴らしい世界が待っている。机の上と参加した全員の頭の中には田んぼも麦畑も屋台も秋バージョンまで作れてしまいます。筆先が走り、刷毛がすべり、ブラシが笑いを誘う。芒種は、静かな暦の言葉でありながら、手元から笑顔を育ててくれる季節の合図です。

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