五大介護は段取りで決まる!~在宅も施設も困らない基本の道標~

目次
はじめに…介護は根性じゃなくて設計図!五つの場面を一枚地図にしてみよう
介護って、外から見ると「体力勝負」「気合い勝負」に見えがちです。でも実際は、気合いで押し切ろうとすると、だいたい途中でコケます。しかもコケるのは介助する側だけじゃなくて、利用者さんも巻き込みます。これは笑い話にしたいけど、笑えないタイプのやつ。だからこそ、ここは声を大にして言いたいんです。介護は根性よりも、まず設計図。つまり、段取りです。
そして、その設計図が一番役立つのが、毎日の生活の中心にある「五大介護」。食事、排泄、入浴、移乗移動、更衣整容。名前だけ並べると「うわ、全部大変そう…」と思うかもしれませんが、安心してください。五つともコツはバラバラに見えて、実は同じ骨格で攻略できます。どれもが、段取り。準備。実践の工夫。この三つを押さえると、不思議なくらい場面が落ち着きます。
ここで大事にしたいのが、施設か在宅かで話を分け過ぎないことです。在宅はマンツーマンじゃないことも多く、利用者さんの独自行動がどんどん挟まってきます。「さっきトイレ行ったのに、また行く」「服を着替えたはずなのに、気づいたら違う服が重ね着になってる」など、日常が自由奔放です。一方で施設は、流れがシステム化されている分、時間や人数の都合で“パワープレイ”に見えてしまう場面もあります。でも、現場の本当の腕前って、力で押すことじゃなくて、力を使わずに済むように整えること。つまり、やっぱり段取りなのです。
この記事では、五大介護を1つずつ章に分けて、どの章でも共通する「段取り・準備・実践の工夫」を芯にして語っていきます。施設の視点も在宅の視点も、あくまで“味付け”として散りばめます。どちらかの世界の人だけが頷く話ではなく、どちらの人も「あ、これなら使える」と思える話を目指します。もしあなたが介護職でも、ご家族でも、「上手くいかない日」があるなら、それは才能不足じゃなくて設計図がまだ整っていないだけ。設計図は後からいくらでも描き直せるし、足せます。
さあ、五つの場面を一枚の地図にして、迷子を減らしていきましょう。まずは食事。ひと口の前に勝負あり、です。
[広告]第1章…ひと口の前に勝負あり!~食事介助は「段取り・準備・工夫」でラクになる~
食事介助って、一番“優しい時間”に見えませんか?美味しい物を食べて、ニコニコして、ホッとして。ところが現実は、咽込んだり、飲み込みに時間がかかったり、食事の途中で急に眠くなったり、場面によっては、いきなり怒り出したりします。食卓は平和の象徴のはずなのに、時々、「口の中に小さな台風が来ました」みたいな日がある。しかも、在宅だと家族も一緒に食卓にいるので、テレビの音、電話、来客、冷蔵庫の開閉など“生活の音”が全部参戦してきます。施設だと逆に、食事の時間がガチガチで決まっていて、同時進行でいろんな方を見守る必要があり、急に「はい次!」と流れが早くなることもある。だからこそ、余計に食事介助は根性で勝負してはいけません。段取りで勝負します。
段取り~食べる前に「勝ち筋」を作っておく~
食事介助の段取りは、最初に言ってしまうと「座らせ方」と「目標設定」です。どんなに良い介助をしても、姿勢が崩れていたら飲み込みは難しくなります。背中が丸くて顎が上がっていると、咽込みやすくなる。逆に、骨盤が立って足が床について、顎が少し引けると、それだけで食べやすさが上がります。ここが決まると、介助の難易度が一段下がります。食事の技術は、口に運ぶ前に始まっているんですよね。
もう1つの段取りは「今日はどこまでいけそうか」を決めることです。全部食べさせる日もあれば、半分で十分な日もあります。風邪気味の日、眠い日、薬の影響がある日、気持ちが沈む日。人間ですから、毎日同じじゃない。なのに「全部食べなきゃ」を毎回やると、介助する側の心が先に折れます。食事は勝ち負けじゃないけれど、勝ち筋がないと消耗します。だから、高齢者さんの場合は最初に「今日は安全に、落ち着いて、ここまで食べられたら合格」と決めておく。これだけで、途中の焦りが減ります。
準備~スプーンより先に環境を整える~
準備で一番効くのは、実は食べ物そのものより“周り”です。テレビの音が大きいと集中が切れる人がいます。逆に静か過ぎると不安になる人もいます。ここは「その人のいつもの安心」を探すのがコツ。例えば在宅なら、テレビを消すのではなく音量を少し下げるだけで十分なこともあります。施設なら、座る位置を変えるだけで落ち着くことがあります。戦わずに変えられる要素から手を付けるのが上手な準備です。
次に、食形態と一口量の準備です。軟らかさ、トロミ、温度。これは“食べる機能”に合わせるだけじゃなく、“気分”にも合わせると安定します。熱過ぎると急いで飲み込もうとして咽込んでしまう。冷た過ぎると口が動き難い。味が薄いと食べる気が消える。ここで大事なのは、理想を追い過ぎないことです。完璧な栄養バランスより、まず安全に食べられること。食べることは生活の喜びなので、喜びがゼロだと続きません。少しだけ味のポイントを作る、香りを立てる、見た目を整える。これも立派な準備です。
そして忘れがちなのが、介助する側の準備。手指衛生、スプーンの数、ティッシュ、飲み物、服を汚さないためのエプロン、そして自分の座る位置。途中で立ち歩く回数が増えるほど、利用者さんは不安になりやすいです。「あ、またどこか行った」「置いていかれた」と感じる方もいる。だから必要な物は最初に手の届く場所へ。食事介助は、実は食事の途中で“立たないための準備”が勝負です。
実践の工夫~ひと口は「量」より「リズム」で上手くいく~
実践に入ると、誰もがスプーンに意識が吸われます。でも、スプーンは道具で、本体はリズムです。ひと口を運んだら、待つ。飲み込むのを待つ。呼吸を整えるのを待つ。口の中が空になったのを待つ。この「待つ」が出来ると、咽込みが減ります。逆に、焦るとスピードが上がり、咽込みが増え、さらに焦る。食事介助の悪循環は、だいたいこのパターンです。だから、まずは自分の呼吸をゆっくりにする。これ、本当に効きます。介助する側の呼吸が速いと、相手も急かされます。人間って不思議ですよね。
声掛けも工夫の宝庫です。「飲み込んで」「ちゃんと食べて」は、普通は誰もが言われると苦しくなります。代わりに「今の一口、上手でしたね」「ゆっくりで大丈夫」「次はお茶いきましょうか」と、出来たことをしつこさを感じさせない範囲で言葉にしてあげる。施設でも在宅でも同じで、食事は“指導”より“伴走”が向いています。上手くいっている時ほど、介助は静かで、優しくあるべきです。
さらに、姿勢の微調整は最後まで続きます。食べているうちに疲れて、首が反ってきたり、体が横に傾いたりします。ここでいきなり大きく直すと驚いてしまうので、少しずつ戻す。背中にクッションを足す、足台を調整する、椅子の奥に座り直す。食事介助は、食べ物を運ぶというより「食べやすい形を保つ仕事」でもあります。
施設と在宅の“味付け”~違いはあっても勝ち方は同じ~
在宅の難しさは、生活の途中に食事があることです。途中でトイレに行きたくなることもあるし、電話が鳴ることもあるし、本人が席を立つこともある。だから在宅では「中断しても戻れる段取り」が効きます。途中で止まっても、再開した時に同じ姿勢に戻せる工夫、飲み物やおしぼりがいつも同じ場所にある工夫。これで混乱が減ります。
施設の難しさは、複数の方が同時進行で動いていることです。だから施設では「迷わない流れ」が効きます。最初に姿勢を整える順番を固定する、使う物を毎回同じ位置に置く、介助のテンポを一定にする。忙しいほど、流れを決める。これが結果的に安全に繋がります。
食事介助の本質は、いつもここに戻ってきます。段取りで姿勢と目標を作り、準備で環境と道具を整え、実践でリズムと待つ力を育てる。ひと口の前に勝負あり、というのはこういう意味です。
次の章は、排泄介助です。トイレは事件現場じゃないのに、事件っぽくなる日がある。だからこそ「静かに勝つ段取り」を、一緒に作っていきましょう。
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第2章…トイレは事件現場じゃない!~静かに勝つ排泄介助の「段取り・準備・工夫」~
排泄介助は、五大介護の中でも“気まずさ”が同席しやすい場面です。本人にとっては、出来れば誰にも見られたくない時間。介助する側にとっては、転倒の危険が高くて、時間も読み難くて、しかも急に呼ばれることが多い。「落ち着いてやろう」と思っているのに、呼び鈴はだいたい“今この瞬間”に鳴ります。まるで非常ベル。けれど現実は、火事じゃなくてトイレ。事件現場じゃないのに、空気が事件っぽくなる。だからこそ、排泄介助はパワーではなく、静かに勝つための段取りが命です。
在宅だと、独自行動が増える分「いつの間にか立っていた」「トイレまで行こうとして途中で止まっていた」など、こちらが追いかける場面が多くなります。施設だと、複数の方のタイミングが重なり、流れが詰まって“急ぎの空気”が生まれます。どちらも大変。でも、不偏的な本質は同じです。排泄介助は、段取りで安心を作り、準備で事故を減らし、実践の工夫で尊厳を守る。これが出来ると、トイレはちゃんと「生活の一部」に戻ります。
段取りの勝負は「行きたくなってから」ではなく「予告」で始まる
排泄介助の段取りで一番大事なのは、本人の中で「今からトイレに行く」という体のスイッチを入れてもらうことです。突然「トイレ行きましょう」と言われると、頭の中が追いつかずに体だけが動いてしまい、事故の予兆のふらつきが出やすくなります。そこで効くのが予告です。「このテレビが終わったらトイレ行きましょう」「お茶の前に一回行っておきましょうか」みたいに、少し先の予定として伝える。これだけで、立ち上がりが落ち着きます。介護の世界は不思議で、予告を入れるだけで転倒が減ることがあるんです。未来の一言は、最高の手すりです。逆に食後すぐのトイレは誰でも嫌ですよね。
もう1つの段取りは、成功の形を決めておくことです。トイレまで歩くのが目標の日もあれば、途中まで歩いて残りは車いすの日もある。便座に座れる日もあれば、体調的に難しい日もある。ここで「いつも通り」を無理に押しつけると、失敗の確率が上がります。排泄は生きる上で絶対に必要なのに、体調に左右されやすい。だから、段取りの時点で「今日は安全優先でいこう」と決める。これが静かな勝ち方です。
準備でトイレは短距離走に~だから道具と通り道が命~
排泄介助の準備は、道具より先に通り道です。足元に物がある、段差がある、床が滑る、暗い。これ、全部トラップです。ゲームなら「ここ踏んだらダメージ」って表示が出るのに、現実には表示がない。だからこちらが先に消す。特に夜間や夕方は、本人の注意力も落ちやすいので、照明の調整がかなり効きます。在宅なら、廊下の小さな敷物が躓きの原因になっていることもあります。施設なら、他の利用者さんの動きも含めて通り道が変わることがあります。とにかく、トイレの道は「まっすぐ・明るく・ひっかからない」。これだけで事故がグッと減ります。
そして、いざという時の準備もしておきます。間に合わない日、あります。本人は悪くないし、介助する側も悪くない。間に合わない日はただ発生する。だから、交換の道具、拭く物、捨てる物、着替えは、取りに走らなくて良い位置へ。取りに走ると、本人が一人になる時間が増えます。排泄介助で怖いのは、本人が立ち上がってしまう一瞬です。準備は「一瞬」を作らないためにあります。
実践の工夫~尊厳を守るのはスピードじゃなくて“言い方”と“手順”~
排泄介助は、手技も大切ですが、同じくらい“言い方”が大切です。例えば「漏れちゃったね」より「大丈夫ですよ、さっぱりしましょう」の方が、本人の心が折れ難い。注意や評価ではなく、次の行動を一緒に作る言葉が効きます。本人が恥ずかしい気持ちを持っている時ほど、こちらが淡々としている方が安心します。淡々といっても冷たくするのではなく、日常のテンポで進める。排泄介助は、ドラマチックにしないことが優しさになる場面です。
手順の工夫としては、焦って一気にやらないこと。ズボンを下ろす、方向転換、便座へ座る。どれも転倒ポイントです。小さく区切って「今はここだけ」と進めると、本人の体も心も追いつきます。特に立位が不安定な方には、手すりの位置や立つ場所を固定しておくと安定します。在宅なら、トイレ内の手すりや補助具を使うことで、介助量を減らしやすい。施設なら、本人に合う手すりの使い方をチームで共有すると、介助の質が安定します。
もう1つ大事なのが、終わった後の“リセット”です。排泄が終わったら、すぐに次の行動に飛ばさず「ふぅ、さっぱりしましたね」と一言入れる。これが本人の安心になります。次回のトイレへの抵抗が減ります。排泄介助は、終わった瞬間の印象が次回に持ち越されやすい。だから最後の一言は、次回への準備でもあるんです。
施設と在宅の“味付け”~独自行動とシステムの間に同じ落とし穴がある~
在宅は、本人の独自行動が多い分、予告と見守りの組み合わせが効きます。「今から行きますよ」と声を掛けて一緒に動く。もし本人が先に動いてしまうなら、動線を短くする、手すりを増やす、履物を変えるなど“環境で先回りする”。言葉で止めるより、環境で転ばせない。ここが在宅のコツです。
施設は、流れがある分、急ぎの空気が生まれやすい。でも急ぐほど事故が増えるのが排泄介助です。だからこそ、チームで「急ぐ時ほど手順は省かない」という共通認識が大切になります。道具の置き場所、誘導の言い回し、介助の手順を揃える。これはシステム化の良い使い方です。パワープレイじゃなくて、パワーが要らない仕組みにする。これが施設の強みになります。
排泄介助は、上手くいった日は目立ちません。何事もなく終わる。けれど、それが最高の成功なのです。トイレが事件現場にならず、生活の一部として静かに終わる。その静かな勝利は、段取りと準備と工夫で作れます。
次の章は入浴介助です。お湯が出る前に安心が湧く、そんなお風呂の作り方を一緒に整えていきましょう。
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第3章…お湯より先に安心が湧く!~入浴介助の「段取り・準備・工夫」で笑顔を守る~
入浴介助は、介護の中でも“ご褒美感”があるはずの場面です。さっぱりして、温まって、眠りも良くなる。なのに現実はどうでしょう。脱衣所で寒い、浴室で暑い、足元は滑る、湯気で視界がぼんやり、本人は恥ずかしい、介助する側は汗だく。しかも血圧の変化や、のぼせや、立ちくらみや、転倒の危険までセットで付いてくる。お風呂は回復イベントのはずなのに、時々、難易度が高い“ダンジョン”になります。
在宅だと、浴室が狭い、手すりが少ない、家族の生活動線と重なる、時間帯によって室温が極端に変わるなど、家ならではの癖が出ます。施設だと、入浴日が決まっていて流れがある分「時間内に終えたい」という圧が生まれやすい。どちらも一長一短。でも、ここでも本質は同じです。入浴介助は、段取りで体調を読む。準備で温度と安全を整える。実践の工夫で“恥ずかしさ”と“怖さ”を減らす。これで、お湯より先に安心が湧きます。
段取り~入浴は「体調チェック」と「見通し」で半分終わる~
入浴介助の段取りは、まず体調チェックです。体温、顔色、息遣い、食後すぐではないか、睡眠不足ではないか、便秘や下痢はないか。難しい話に見えますが、要は「今日はお風呂で元気が出そうか、それとも疲れそうか」を見極めること。お風呂は気持ち良い反面、体力を使います。元気な日なら回復。弱っている日なら消耗。ここを読み違えると、お風呂がご褒美から試練に変わります。
そしてもう1つの段取りが「見通し」を伝えることです。認知症の方でも、見通しがあると落ち着くことが多いです。「今から脱いで、体を洗って、湯船は短めで、出たらすぐ暖かい服を着ましょうね」みたいに、短い言葉で流れを先に渡す。ゴールが見えると人は安心します。逆に、何をされるかわからない状態だと抵抗が出やすい。入浴介助は“突然始めない”が鉄則です。
準備~浴室より先に「脱衣所」を制する者がお風呂を制する~
入浴介助の準備で、一番効果が大きいのは脱衣所の環境です。浴室の安全対策に目が行きがちですが、実は脱衣所が寒いと、そこで血圧が上がったり、動きが急になったりします。寒さは焦りを生み、焦りは転倒を呼びます。だから、脱衣所を暖かくする。これだけで入浴の難易度が下がります。施設なら暖房が整いやすいですが、在宅は部屋ごとの温度差が大きいことがあります。脱衣所と浴室の温度差を小さくするだけでも、安心感が上がります。
道具の準備も大切です。タオル、着替え、保湿剤、下着、履物、必要なら飲み物。全部、取りに戻らない位置へ。入浴介助中に取りに戻る回数が増えるほど、本人が一人になる時間が増えて危険になります。さらに、入浴は“濡れる”ので、床の拭き取りや滑り止めマットの準備も重要です。ここでのコツは「安全を増やす」というより「滑る要因を減らす」発想です。何かを足すより、まず余計なものを減らす。床の小物、濡れたタオルの放置、引っかかる物。お風呂は、濡れた瞬間に性格が変わる場所です。
そして、本人の準備もあります。入浴前のトイレ、湯温の好みの確認、疲れやすい動きの把握。特に「湯船に入る・出る」は体力を使うので、ここをどうするかを先に決めておく。湯船は短く、シャワー中心、部分浴にする。選択肢を持っておくことが準備です。入浴はフルコースだけが正解じゃありません。
実践の工夫~“洗う”より先に“安心させる”と動きがスムーズになる~
入浴介助の実践で大切なのは、洗う順番より安心の順番です。いきなり頭からシャワーをかけると驚く方がいます。だから、まずは手足から少しずつ温度に慣らす。声かけも「冷たくないですか」「次いきますね」と短く、予告を入れる。入浴介助は、予告が多いほど優しい。意外ですが、言葉が少ないより、短い予告が積み重なる方が安心に繋がります。
恥ずかしさへの配慮も、動きを良くします。全部丸見えの状態だと、本人は力が入って動きが硬くなります。タオルで隠す、洗う場所だけ露出する、視線を必要以上に向けない。ここは介助する側の“当たり前”が強いほど、本人にとっては辛いことがあります。本人の尊厳を守ると、結果的に介助がスムーズになります。人間は安心すると力が抜ける。力が抜けると転び難い。入浴介助は、心と体が直結している代表技能です。
湯船に入る場合は、時間より“様子”で決めます。「何分」より「顔色」「息」「反応」。湯船でボ~っとしてきたら、気持ち良さと危険が同居しているサインです。のぼせは気持ち良い顔で近づいてくるので、こちらが気づく役になります。出る時も急がせない。立ち上がった瞬間にふらつく方が多いので、座って一呼吸置く。お風呂は、入るより出る方が危ないことが多い。これ、現場ではあるあるです。
施設と在宅の“味付け”~時間と空間のクセを読んで同じ骨格で整える~
在宅は空間の癖が強いです。浴室が狭い、段差がある、手すりの位置が合っていない。だから在宅では「動きの数を減らす」工夫が効きます。タオルや着替えを手の届く範囲に置き、移動を最小限にする。椅子を活用して立つ時間を減らす。湯船に拘らず、シャワーと部分浴で成功を積む。家のお風呂は、勝ち方を変えられるのが強みです。
施設は時間の癖が強いです。入浴の流れがあり、次の方が待っている空気が出やすい。だから施設では「手順を揃える」工夫が効きます。準備物の位置、声掛け、洗う順番の基本形をチームで揃えると、誰が担当しても安全が保ちやすい。これはシステムの良い使い方です。急ぐほど、基本形に戻る。焦るほど、段取りに戻る。ここが出来る施設は強いです。
入浴介助は、体を綺麗にするだけじゃありません。温まり、さっぱりし、今日を終える準備をする。人によっては「生きてる感じがする」時間でもあります。だからこそ、危険を減らして、安心を増やす。お湯より先に安心が湧くように、段取り・準備・実践の工夫で整えていきましょう。
次の章は移乗・移動介助です。立つ・座るは小さな引っ越し。転ばないための“準備が八割”を、ここで一緒に固めます。
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第4章…立つ・座るは小さな引っ越し!~移乗移動の「段取り・準備・工夫」で転ばせない~
移乗・移動介助は、五大介護の中でも一番“物理法則”が顔を出す場面です。食事や入浴は気分や体調で波がありますが、移乗移動はそこに重力が加わります。重力は遠慮しません。こちらが「今日だけ優しくして」と頼んでも、「いや、平常運転です」と言ってくるタイプです。だから、移乗移動で気合いを出すと、だいたい腰が先に泣きます。利用者さんも、ふらつきや恐怖心で動きが硬くなり、転倒リスクが上がる。ここははっきり言いましょう。移乗移動はパワー勝負ではなく、準備勝負です。立つ・座るは小さな引っ越し。引っ越しは、段取りが悪いと地獄になります。
在宅では、本人の独自行動が突然始まることがあります。気づいたら立っている、トイレに行こうとしている、ソファからずり落ちそうになっている。施設では、時間と人数の都合で“流れ”が出来る分、急ぎの空気が混ざりやすい。どちらも「危ない瞬間」が生まれやすいのが移乗移動です。でも、ここでも不偏な本質は同じです。段取りで状況を読む。準備で環境を整える。実践の工夫で怖さと負担を減らす。これだけで、重力に振り回され難くなります。
段取り~まず決めるのは「やり方」じゃなくて「やらないこと」~
移乗移動の段取りで最初に決めたいのは、「今日はこれをしない」という線引きです。例えば、ふらつきが強い日なら、歩行での移動はしない。立位保持が不安なら、方向転換を減らす。急に眠いなら、無理に立たせない。移乗移動は、無理の瞬間が一番危ない。だから段取りの段階で「今日は安全優先」と宣言する。これが出来ると、介助する側の迷いが減って、動きが安定します。迷いが減ると、声かけも手の添え方も落ち着きます。
次に決めるのは、本人の“得意な動き”です。右足は出やすい、左側は怖がる、手すりがあると立ちやすい、声掛けがあると動ける。人によって得意と苦手が違うので、段取りはその人の取扱説明書を思い出す時間です。在宅では家族がその説明書を持っていることが多いので、短く確認すると強いです。施設ではチームで共有している説明書が命。移乗移動は、情報の共有量が安全度に直結します。
準備~靴とブレーキと距離で八割決まる~
移乗移動の準備は、驚くほど地味です。でも地味なほど効きます。まず足元。靴下だけ、スリッパ、踵が浮く靴。これらは、重力が暴れる原因になりやすい。滑らない、足に合う、踵が安定する。ここが整うだけで、立ち上がりが安定します。本人の足はエンジンではなく、地面との接点です。接点が安定すれば、体も安定します。
次はブレーキ。車椅子を使うなら、ブレーキは“儀式”ではなく命綱です。慣れた頃ほど忘れます。忘れた頃ほど危ない。だから「ブレーキ、ヨシ」と自分の中の確認を固定化する。声に出すのが恥ずかしければ心の中でも良い。とにかく毎回同じ手順にする。施設だと忙しいほど抜けがちなので、忙しいほど儀式化しておくと事故が減ります。在宅でも同じで、家族がちょっと手伝うだけの時ほど抜けます。短い介助ほど危ない。これもあるあるです。
そして距離。ベッドと車椅子の距離、角度、足台の位置。遠いと体が伸びてふらつき、近過ぎると足が引っかかります。ちょうど良い距離と角度を作ることが準備の核心です。移乗移動は、介助する前に家具を動かしている時点で勝負が決まる。ここを軽く見ない。準備が八割というのは大袈裟じゃありません。
実践の工夫~合言葉は「一緒に」「ゆっくり」「止まっていい」~
実践の工夫でまず効くのは、立ち上がりのタイミングを合わせることです。介助する側が先に引くと、本人は引っ張られた感じになって怖がります。本人が先に動くと、介助する側が追いかけて支える形になって不安定になります。だから「せーの」で一緒に動く。これは単純ですが強い。声かけは短く、「せーの」「いきますよ」「ゆっくりで大丈夫」。長い説明は、動きの途中では邪魔になります。移乗移動は、動き始めたら説明よりリズムが大事です。
次に、方向転換を減らす工夫です。立ったまま回るのは難易度が上がります。出来るなら、立つ前に角度を作る。立ったら、最小限の回転で座れる位置にしておく。どうしても回る必要があるなら、小さく刻む。大きく回るほど、足が追いつかずにふらつきやすい。ここも、重力が厳しい場面です。
そして大切なのが「途中で止まって良い」という空気です。止まると悪い気がする、急がなきゃいけない気がする。そう感じると、本人も介助者も無理をします。でも、止まって良いんです。止まって息を整える。足を置き直す。手すりを握り直す。移乗移動は、止まることが安全に繋がる場面が多い。止まれる介助は上手い介助です。
介助する側の体の使い方も、工夫の1つです。腰で持ち上げない。自分の足と体重移動を使う。体を近づけて支点を短くする。ここは本当に大事で、腰を守ることは介護を続けるための大前提です。介助者が壊れると、現場が困ります。本人も困ります。つまり、腰を守るのは利用者さんを守るのと同じくらい重要です。
施設と在宅の“味付け”~独自行動と流れの中に同じ危険が潜む~
在宅の難しさは、本人の独自行動が突然始まること。だから在宅では、危ない動きを始め難い環境作りが効きます。立ち上がりやすい椅子の高さ、手すりの位置、足元の整理。言葉で止めるより、立っても転び難い環境にしておく。これが在宅の静かな勝ち方です。家族が「ちょっと目を離した隙に…」となり難くなります。
施設の難しさは、流れがある分、急ぎの空気が出やすいこと。だから施設では、手順を揃えて急ぎを減らすのが効きます。ブレーキ、足台、距離、角度、声掛け。これをチームで同じ形にすると、誰がやっても安全が出やすい。忙しいほど、型が必要になる。これが施設の強みです。システム化は、パワープレイのためではなく、パワーを使わないためにある。そう思えると、移乗移動の空気が変わります。
立つ・座るは小さな引っ越し。引っ越しを成功させるコツは、物を持ち上げる力ではなく、運び方の設計図です。段取り・準備・実践の工夫で、重力と仲良くやっていきましょう。
次の章は更衣・整容です。着替えは心のスイッチ。たった一枚の服が「今日の自分」を連れてくる、その仕組みを一緒に整えていきます。
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介護技術の移動介助を失敗しない!ベッド上➡車椅子➡外出の安全あるある完全版
ベッドと車いすの移乗介助は声掛けと距離感で決まる~介護の現場と試験で失敗しないために~
椅子がつらい離床はリハビリじゃない~特養と在宅で考える座る時間とお金の話~
第5章…着替えは心のスイッチ!~更衣整容の「段取り・準備・工夫」で“その人らしさ”を復活~
更衣・整容は、五大介護の中で一番「軽そう」に見られがちです。食事や排泄や入浴に比べると、命に直結しなさそうに見える。だから後回しにされやすい。けれど実際は、ここが整うと一日の流れが変わります。本人の表情が変わり、姿勢が変わり、声が出やすくなり、行動が落ち着く。逆にここが崩れると、何となく不機嫌、何となく落ち着かない、何となく拒否が出る。更衣整容は、体を整える行為でありながら、心のスイッチでもあるんですよ。
在宅では、生活のペースに合わせて更衣整容が「いつの間にか省略」されやすいことがあります。寝間着のまま午前が終わる、髪は後回し、口の中は何となく。家はリラックス出来る場所だからこそ、本人の「まぁいっか」が増える。施設では逆に、時間の流れがあるので更衣整容がルーチン化しやすい分、本人の好みやこだわりが置いてけぼりになることがあります。どちらも起きがちな偏り。でも、ここでも、不偏的な本質は同じです。段取りで“本人の意志”を引き出し、準備で“楽に出来る形”を整え、実践の工夫で“出来た感”を作る。すると更衣整容は、作業から「その人らしさを戻す時間」に変わります。
段取り~服は布じゃなくて「今日の役割」を連れてくる~
更衣整容の段取りで最初にやることは、本人の中に「今日の自分」を呼び戻すことです。難しく聞こえるけれど、要は“何を着たいか”を一緒に決めること。自分で選べる人には選んでもらう。選ぶのが難しい人には、2つに絞って「どっちが良いですか」と聞く。選択肢が多いと疲れる人もいるので、二択はかなり強いです。施設でも在宅でも、本人が一回でも選べると、その後の動きがスムーズになります。何故なら、介助が「させられる」から「自分で決めた」に変わるからです。
もう1つの段取りは、タイミングです。更衣整容は、体が疲れていると難易度が上がります。食後すぐは眠い、排泄の後は気が抜ける、入浴の後は怠い。だから、本人のリズムの良い時間帯を見つける。朝が弱い人なら、朝は最小限で、少し落ち着いてから整える。逆に朝に整えると一日が安定する人もいます。段取りは「いつやるか」を決めるだけで、半分終わります。
準備~“着せやすさ”は本人のためと同時に介助者のため~
準備で効くのは、服の選び方そのものです。ボタンが多い服、伸びない服、袖が細い服。見た目は良くても、動きがしんどいことがあります。だから、本人の動きに合った服を準備する。伸びる素材、前開き、着脱しやすい形。これだけで、本人の疲れが減ります。疲れが減ると拒否が減る。拒否が減ると介助が楽になる。更衣整容は、服の準備がそのまま現場の平和に直結します。
そして整容の準備も重要です。ブラシ、髭剃り、爪のケア、口の中のケア。道具が散らばっていると、途中で探して中断が増えます。中断が増えるほど、本人の集中も切れます。だから、使う物はまとめて、手の届く場所へ。ここは排泄や入浴と同じで「取りに走らない準備」がコツです。
それから、環境の準備。更衣は寒いと進みません。肌の露出が増えるので、室温は大切です。目の前の鏡も、使い方次第で味方になります。鏡を見ると安心する人もいれば、鏡に驚いてしまう人もいる。本人の反応を見て、鏡を使うかどうかを決める。準備は、本人の安心を育てる材料集めです。
実践の工夫~「急がない」だけで上手くいく日が増える~
更衣整容の実践で一番効く工夫は、急がないことです。急ぐと、腕が引っかかる。引っかかると本人が痛がる。痛いと拒否が出る。拒否が出るともっと急ぐ。こうして小さな渋滞が大きな事故になります。だから、1つずつ区切る。袖は袖、首は首、次はボタン。短い声かけで「今ここだけ」を共有する。更衣は大きな動きに見えて、実は小さな工程の積み重ねです。
声掛けも、命令より実況が効きます。「腕、通りますよ」「ここ少し持ち上げますね」「次は反対側です」。実況は安心を作ります。本人が自分の体の動きを理解しやすくなるからです。特に麻痺がある方、関節が硬い方、痛みがある方は、突然動かされると怖い。だから実況。これは入浴や移乗移動と同じで、予告が多いほど優しいんです。
整容は、仕上げが大事です。髪を整える、髭を整える、口の中をサッパリさせる。ここで本人が鏡を見て「お、悪くない」と思えると、一日が変わります。更衣整容のゴールは“終わらせる”ではなく、“出来た感”を残すこと。出来た感が残ると、次もやりやすくなります。更衣整容は、次回への貯金ができる介助です。
施設と在宅の“味付け”~ルーチンにも自由にも落とし穴はある~
在宅は自由がある分、「今日は良いや」が積み重なりやすい。だから在宅では、小さく成功させる工夫が効きます。全部やろうとしない。顔を拭く、髪を梳かす、上だけ着替える。小さくても整うと、本人の気分が変わります。気分が変わると動きも変わります。家は完璧を目指すより、継続を目指す方が強いです。
施設は流れがある分、個別性が薄くなりやすい。だから施設では、「その人の好き」を1つだけ守る工夫が効きます。いつもの帽子、好きな色の服、髪型のこだわり、口紅や香り。全部は無理でも、一つ守ると本人の納得が増えます。納得が増えると、介助がスムーズになります。ここは施設のパワーではなく、施設の丁寧さが光るところです。
更衣整容は、小さなことのようで、生活全体のスイッチです。服を整えるのは体だけじゃない。心も整う。だからこそ、段取り・準備・実践の工夫で、作業から“その人らしさの復活”へ。今日の自分を、ちゃんと連れてきましょう。
次はまとめです。五大介護を五本立てで語ってきたけれど、コツは一本に束ねられる。その結論を、明日から使える形でしっかり締めますね。
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まとめ…五大介護は5本立てでもコツは一本化できる!~明日からの動きが軽くなる結論~
ここまで、五大介護を1つずつ歩いてきました。食事、排泄、入浴、移乗移動、更衣整容。どれも場面が違って、道具も違って、本人の反応も違う。だからこそ最初は「全部が別物」に見えます。けれど、章を跨いで眺めると、共通点がくっきり浮かびます。五つとも、結局は同じ一本の道に戻ってくるんです。段取り、準備、実践の工夫。この3つを揃えると、在宅でも施設でも“介護が落ち着く確率”が上がる。これは気合いではなく、設計図の力です。
食事介助で言えば、スプーンの前に姿勢を整え、目標を決め、環境を整え、リズムを作りました。排泄介助では、急な呼び出しに巻き込まれないように予告を入れ、通り道と道具を整え、尊厳を守る言葉と手順で静かに勝ちました。入浴介助では、体調を読み、脱衣所から温度差を消し、予告を積み重ねて安心を湧かせました。移乗移動では、パワーではなく距離と角度とブレーキで重力と握手し、止まっていい空気で安全を作りました。更衣整容では、服を“今日の自分”として選び、着せやすさで平和を呼び、出来た感を残して心のスイッチを入れました。場面は違っても、やっていることは同じ方向です。
ここで大事なのは、在宅と施設の違いに振り回され過ぎないことでした。在宅は独自行動が多く、生活の音が介助に割り込んできます。施設は流れがあり、複数の方を同時に見守ります。でも、違いは“味付け”であって、骨格は同じ。骨格が同じだから、どちらでも使える。「在宅だから無理」「施設だから仕方ない」と思う前に、段取りと準備を見直す余地が必ずあります。ここに気づけると、介護はグッとラクになります。
そして、もう1つだけ最後に。介護がうまくいかない日は、あなたのせいではないことも多いです。体調、気分、天気、睡眠、痛み、環境、タイミング。人間は毎日変わります。だから、毎日完璧な介助は必要ありません。必要なのは、崩れた時に戻れる“設計図”です。設計図があれば、上手くいかなかった日も「次はここを直そう」と前に進めます。設計図がないと、上手くいかなかった日がただのダメージになります。五大介護を地図にする意味は、そこにあります。
明日からの合言葉はシンプルで良いんです。「段取り、準備、工夫」。食事でも、トイレでも、お風呂でも、立つ座るでも、着替えでも。まず段取りで見通しを作り、準備で事故の種を消し、工夫で安心と尊厳を増やす。これを積み重ねると、介護は“根性の連続”から“整える仕事”に変わっていきます。
五大介護は五本立て。でもコツは一本化できる。あなたの明日が少し軽くなるように、この一本の道しるべが役に立てば嬉しいです。
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