特養アセスメントは眠らない!~理事長&事務長の“ご指名2時間未満”個別レク作戦~
目次
はじめに…年1回だけ~あなたのために全力で“特別時間”を作る話~
特養のアセスメントって、入居前に丁寧に書いて、入居後も生活に合わせてちょこちょこ直していくのに、気づくと「綺麗に整った書類」として棚の奥で眠ってしまうこと、ありますよね。無駄とは言わない。むしろ大事。けれど、せっかく集めた“その人らしさ”が、日々の楽しみや希望に変わらないままだと、なんだかもったいない。そんな気持ち、現場にいる人ほど、ジワッと分かるんじゃないでしょうか。
そこで今回の提案は、シンプルだけど強い作戦です。年に1回だけで良い。毎月じゃなくて良い。だからこそ「とことんその人のため」に振り切る。2時間未満の“ご指名レクリエーション”を、施設の公式イベントとして用意してしまおう、という話です。孫の卒業、娘と花見、お彼岸の墓参り、自宅で納豆をひとくち、海に触れる、妹に会う。どれも派手じゃないのに、人生の芯を温かくする願いばかり。これを「叶えられる形」に整えて、毎年ちゃんと誰かの番が来るように回していくんです。
しかも今回は、理事長と事務長も登場します。何故なら、この手の取り組みは“良い話”で終わりやすくて、意識しないと予定表に入らないから。そこで、外出が必要な回は「理事長もしくは事務長+職員1〜2名が付き添う」という、ちょっと大胆で、でも現場が安心できる看板を立てます。もちろん、毎回ど派手にやる必要はありません。大事なのは「施設として本気で応援する姿勢」が見えること。それだけで、本人も家族も、そして職員も、不思議と前向きになれるからです。
春の3月に希望を集めて、新年度の空気に乗せて計画するのも相性抜群です。「来年度、私はこれをやるんだ」と言えるのって、何歳になってもワクワクしますからね。さあ、アセスメントを“眠る書類”から“生きた地図”に変える準備を始めましょう。次の章から、願いの拾い方と、2時間未満でドラマを起こす段取りを、理事長&事務長の小芝居も混ぜつつ(たぶん本人たちは真面目です)、楽しく整理していきます。
[広告]第1章…アセスメントは書類じゃない~「その人の地図」に描き直す~
特養のアセスメントって、書く側はけっこう本気なんですよ。入居前に生活歴、家族関係、好き嫌い、これまでの役割、体の状態、心の癖、困りごと、安心できる環境……いろんな情報を集めて、「この人がこの施設で暮らすなら、どう支えるのが良いか」を考える。だから最初のアセスメントには、実は“宝”が詰まっています。
ところが不思議なもので、運用が落ち着いてくると、宝箱が宝箱のまま棚に乗るんですね。書類としては整っている。監査にも耐える。申し送りにも使える。けれど、その人の楽しみや希望に変換される前に、日々の業務の波に呑まれていく。ここで起きているのは、「情報が足りない」じゃなくて、「情報が行き先を失っている」という現象です。
この章で提案したいのは、アセスメントを“完成品”として保管するのをやめて、敢えて“地図”に描き直すことです。地図って、読むためにあるじゃないですか。旅に出るためにあるじゃないですか。つまり、「この人の暮らしを良くするための道しるべ」として使える形に整える。その作業を、年に1回の“ご指名2時間未満”個別レクに直結させるんです。
ここで理事長と事務長に登場してもらいましょう。ええ、呼びます。呼ぶんです。何故なら、現場が一番、分かっている。「良いアイデアほど、勝手には予定表に入らない」ってことを。なので、こう言わせます。
理事長「アセスメントは、立派に書いたら終わりではない。使って、初めて価値になる」
事務長「書類の束は、温かいお茶にはならんのです。お茶会にして、初めて香りが出ます」
……と言いつつ、二人とも内心ちょっと緊張しています。だってこの後、自分たちが“外出同行枠”の顔になる可能性があるから。でも、ここが肝です。施設のトップが「これはやる」と言葉にして行動するだけで、現場は動きやすくなる。現場が動けると、利用者さんの願いは現実になりやすくなる。ここは、ちょっと芝居がかっていても、効果は絶大です。
では「地図に描き直す」とは、具体的に何をするのか。難しいことはしません。アセスメントの中で“その人らしさ”が強く出る部分を、レクリエーション設計に直結する形に並べ替えるだけです。例えば、家族や友人の中で「会うと顔が変わる人」。季節で気持ちが上がる行事。昔の役割や誇り。食べると機嫌が良くなるもの。逆に、これをされると一気に不安になるポイント。疲れやすさやトイレの心配。こういう情報は、介護計画の文面に埋め込むより、レクを設計する時にスッと取り出せる場所に置いてあげる方が生きます。
ここで大事なのは、「豪華なレクを考える」ことではありません。むしろ逆です。「この人は何をしたい人か」を見失わないこと。外出が難しい方もいます。長時間が負担になる方もいます。だからこそ、“2時間未満”という時間の枠は賢い。短いからこそ、集中できる。安全の設計が出来る。準備も絞れる。そして何より、成功しやすい。成功したら、次の年もやりたくなる。これが継続のコツです。
さらに、地図化の最大のメリットは、アセスメントの「微修正」と相性が良いことです。入居後1年、暮らしに合わせて少しずつ情報が更新されていく。その更新が、地図にも反映される。すると、“その人の今”に合った願いの叶え方が選べるようになる。昔は外出が大好きだったけれど、今は人混みがつらい。以前は甘いものが好きだったけれど、今は咽込みやすい。そういう変化も、地図に書き足していけば良いんです。地図はいつでも描き直せる。だから地図は強い。
この時点で、理事長と事務長は気づきます。
理事長「つまり……アセスメントを地図にすることで、年1回の個別レクが“思いつきイベント”ではなく“施設の方針”になるわけだ」
事務長「そして理事長、我々が同行するのは……その方針が本気だと伝えるための“旗印”ですな」
はい、その通りです。旗は大事。旗が立つと、人は安心して歩けるんです。
次の章では、その地図に“願い”を書き込む作業に入ります。3月のアンケートで拾うのは、立派な希望じゃなくて良い。「納豆が食べたい」「海に触れたい」みたいな一言こそ、地図の宝物。そこからどうやって「2時間未満で叶える設計」に落とすのか、いよいよ現実的な段取りを作っていきます。
第2章…3月アンケートで拾う「叶えたい一言」~花見も納豆も全部の入口~
3月って、施設の空気がちょっと変わるんですよね。桜の話題が出て、卒業や異動の話が聞こえてきて、「今年度もお疲れ様」「来年度はどうしようか」と、自然に前を向く季節になる。だからこそ、このタイミングで“願いの回収”をやるのは大正解です。年に1回だけ、しかも「その人のための2時間未満」を本気で用意するなら、スタートラインはここ。願いを拾えた時点で、もう半分勝っています。
ただし、ここで集めたいのは「立派な目標」じゃありません。むしろ逆で、「ポロッと出た一言」を宝物として扱う。例えば「孫の卒業式を見に行きたい」「娘と花見に行きたい」「お彼岸にお墓参りをしたい」みたいな分かりやすいものもあれば、「自宅に戻って納豆を食べたい」「自宅でコップ一杯だけお酒が飲みたい」「海に触れたい」「妹に会いに行きたい」みたいに、言葉にした瞬間に胸がキュッとなる願いもある。こういう一言は、アセスメントという“地図”に書き足すと、急に道が見えてくるんです。どこへ向かえば良いか、誰に会えば良いか、何が大事かが、はっきりするから。
そして3月アンケートの強みは、本人だけじゃなく家族の声も同時に拾えるところです。本人は遠慮したり、思いつかなかったり、照れて言えなかったりする。でも家族は覚えているんですよ。「本当はこれが好きだった」「昔はこれを大事にしてた」「最近こう言ってた」と。逆に家族の側も、施設の都合や安全面が分からないから、遠慮して言わないことがある。だから両方の声を並べて見られる形にしておくと、「本人の願い」と「家族の願い」と「今の生活」が擦り合って、現実的な計画に落ちやすくなります。
ここで、理事長と事務長が顔を出します。ええ、また出ます。何故なら“願いを集めるだけ”だと、集めて満足して棚に戻りやすいからです。
理事長「よし、今年もやるぞ。3月は“ご指名の願い回収月間”だ」
事務長「理事長、言い方が釣り大会みたいですが、方向性は合っております。集めた願いは、必ず新年度の予定表に落とし込みます」
理事長「その代わり、願いは遠慮なく出してもらおう。納豆でも、海でも、妹でもだ」
事務長「“妹でも”は雑ですが、はい。むしろ大事です」
この小芝居が、実は効くんです。トップが「願いは集めるだけじゃなく、叶えるところまでやる」と言い切ると、現場が動きやすい。家族も「言って良いんだ」と思える。本人も「我儘じゃないんだ」と思える。結果として、アンケートの中身が豊かになります。
さて、お願い事って、想像以上に多様です。毎年同じような希望が並ぶと思ったら大間違いで、生活の延長線にある“小さな拘り”が出てきます。「昔の店のコロッケをもう一度食べたい」「お気に入りの神社で手を合わせたい」「自分の布団で昼寝だけしたい」「猫に会いたい」「庭の土を触りたい」「川の音を聞きたい」「子どもの頃の駄菓子を買いたい」「理容室で顔剃りをしてもらいたい」「母校の前を車で通りたい」。派手じゃないのに、その人の人生がちゃんと入っている。こういう願いこそ、2時間未満で設計しやすいんです。短い時間で、ギュッと“その人らしさ”だけを叶えられるから。
ここで私からの提案も混ぜますね。アンケートで出てきた願いは、最初から「外出する・しない」で仕分けない方が上手くいきます。先に「その願いの核は何か」を見つけるんです。卒業式なら“孫の晴れ姿を見届けたい”。花見なら“季節を娘と共有したい”。墓参りなら“節目の手合わせをしたい”。納豆なら“自宅の台所の匂いを感じたい”。お酒なら“乾杯の儀式をしたい”。海なら“潮の匂いと冷たさを思い出したい”。核が分かると、叶え方が増えます。会場に入れないなら写真と合流でも良い。人混みがきついなら車から桜並木を眺めても良い。自宅に上がれないなら玄関先で納豆おにぎりでも良い。海が遠いなら水族館や海辺の風でも良い。核が守れたら、願いはちゃんと“叶った”になるんです。
そして3月の終わりには、集まった願いを月内にまとめて、新年度の個別レクリエーション枠へ落とし込みます。ここで大事なのは「特別な人だけが当たる抽選会」にしないこと。年1回、全員に番が来るように回す。予定表に入った時点で、願いは“夢”から“計画”になります。
次の章では、いよいよ段取りの話です。理事長か事務長が同行し、職員1~2名が付き添う外出回は、どう安全に組み立てるのか。2時間未満で、ちゃんとドラマを起こすには何を決めておけば良いのか。ここを押さえると、この企画は「良い話」で終わらず、毎年ちゃんと続く“施設の文化”になります。
第3章…理事長&事務長がまさかの同行決定~2時間未満で安全にドラマを起こす段取り~
個別レクリエーションの弱点って、「良い話ほど、予定表に入らない」ところなんですよね。現場は忙しい。急変もある。会議もある。書類もある。だからこそ1人の入居者さんに“年に1回だけ”“2時間未満”と決めて、さらに「外出回は理事長または事務長のどちらか1人が同行する」と旗を立てる。この旗が立つだけで、企画が“気分”ではなく“施設の方針”になります。
理事長「よし、外出回は私が出る。話は早い」
事務長「理事長、言い方が武将です。でも効果は絶大です」
理事長「うむ。現場の『忙しくて無理かも』を、私が背負う」
事務長「背負い方が重い。でも、こういう時こそトップの出番です」
ここ、ちょっと笑えるように書いていますが、狙いは真面目です。外出って、本人にとっては最高に嬉しい反面、施設側からすると“転倒・体調変化・迷子・トイレ・気温差・感染”など、いろんな心配が同時に動き出します。だから「やりたい」だけだと止まりやすい。そこで、最初から仕組みにしてしまう。理事長・事務長が同行枠になることで、職員の不安が下がり、家族も安心し、本人も「本当にやって良いんだ」と胸を張れる。これが一番大きいメリットです。
そして次に大事なのは、“2時間未満”の使い方です。2時間って長いようで、外出だと一瞬で溶けます。玄関を出て、車に乗って、移動して、目的を果たして、戻ってきて、落ち着くまでを含めたら、時計はいつも正直。だからこそ、段取りは「盛りだくさん」より「成功しやすい一点突破」が強いんです。卒業式なら会場で長居するより、式の前後に合流して写真と握手だけでも十分なドラマになる。墓参りなら長い滞在より、手を合わせて深呼吸して帰ってくるだけでも“節目を越えた”実感が残る。海なら砂浜を歩くより、潮風に当たって手で海水に触れて、帰りに温かい飲み物を飲むだけで胸が満ちる。2時間未満は、人生のハイライトを切り取る時間なんです。
2時間未満を成立させる「三つの合言葉」
ここで、現場で回すための合言葉を3つだけ置きます。難しい話ではなく、覚えやすくするための呪文みたいなものです。
1つめは「願いの核を守る」です。卒業式に行きたい、の核は“孫の晴れ姿を見届けたい”。花見の核は“娘と季節を共有したい”。納豆の核は“自宅の匂いと台所の気配を感じたい”。核さえ守れれば、叶え方は増えます。会場に入れなくても、外で待って写真が撮れれば叶う。自宅に上がれなくても、玄関で納豆をひと口だけ食べられれば叶う。核が見えていると、2時間未満でも満足度が落ちません。
2つめは「行程は短く、安心は厚く」です。移動距離を欲張らない。立ち寄り先を増やさない。代わりに安心の準備を厚くする。トイレの見立て、車の乗り降り、寒暖差、疲労のサイン、帰ってきた後の休憩。ここを押さえると、外出は“怖い行事”から“やれる行事”に変わります。
3つめは「もしもの道を先に用意する」です。これは不吉な意味じゃなくて、安心の意味です。体調が微妙なら施設内の再現に切り替える。天気が悪ければ車窓花見に変更する。混雑がすごければ玄関先合流にする。最初から「同じ願いでも叶え方は複数ある」と決めておくと、当日の判断が臨機応変に早くなるし、本人も家族も「中止」ではなく「形を変えて実施」と受け取れます。
この辺りで、事務長が現実を一言添えます。
事務長「理事長、つまり“外出の成功”は、派手さではなく、変更の上手さです」
理事長「うむ。予定通りより、本人が笑って帰ってくる方が勝ちだ」
事務長「名言っぽいですが、本当にその通りです」
同行の体制についても、書き方をシンプルにしておくと強いです。外出回は「理事長または事務長+職員1~2名」。これで十分伝わります。職員の人数は、歩行や移乗が必要か、認知面の不安があるか、医療的配慮があるかで変わるので、「状況により」としておけば無理がありません。大事なのは、2時間未満の枠を“確保する覚悟”が施設の中で共有されることです。
そして最後に、ちょっとした演出の話もしておきます。個別レクって、本人のための時間だけど、同時に施設全体の空気も変えるんです。理事長や事務長が「行ってらっしゃい」と声を掛ける。帰ってきたら「おかえり」と迎える。たったそれだけで、周りの入居者さんも「次は私かもしれない」と目が輝く。職員も「やって良かった」と思える。2時間未満の出来事が、施設の一年を少し明るくする。これが“旗印”の力です。
次の章では、その旗印の下に集まった「お願い」を、もっとたくさんのパターンとして広げていきます。会いたい、行きたい、触れたい、食べたい、帰りたい。想像以上に多様な願いを、2時間未満で叶えるアイデアに変換して、読みながらニヤッとできるくらい盛りだくさんにしていきましょう。
第4章…「お願い」は想像以上に多様~会いたい・触れたい・食べたい・帰りたいパターン大放出~
3月のアンケートを回収して、机の上に並べてみると分かります。「人は、こんなにも違う願いを持っているのか」と。しかも、どれも“贅沢”じゃないんです。むしろ「その人の人生の続きを、ちょっとだけ取り戻したい」という、静かで強い願いが多い。ここを見誤ると、個別レクは「特別な人だけの特別イベント」になってしまう。でも、今回の記事が目指しているのはそうじゃない。年に1回、全員に番が来る“その人のための2時間未満”。だからこそ、願いのパターンをたくさん持っておくと、企画はグッと回りやすくなります。
理事長「事務長、願いの種類が多過ぎて、もう図鑑が作れそうだ」
事務長「理事長、それは良い兆候です。願いが多い施設は、暮らしが生きています」
理事長「よし、図鑑の名前は……『ご指名2時間未満の旅』」
事務長「タイトルが既に旅番組です。でも中身は真面目ですな」
会いたい~人に会うと顔が変わるあの瞬間~
「妹に会いたい」「息子と手を繋いで歩きたい」「昔の近所の友だちとお茶したい」「孫をギュっとしたい」。こういう願いは、2時間未満と相性が最高です。何故なら、ポイントが“会うこと”そのものだから。長く一緒にいなくても良い。会って、顔を見て、声を聞いて、手を握れたら、それだけで胸がいっぱいになる人がいる。
ここで大事なのは「会いに行く」だけが答えじゃないことです。相手が来られるなら、施設の玄関先で待ち合わせでも良い。施設内のいつもの場所に、ちょっとだけ“特別席”を作っても良い。写真やビデオ通話だけでも、うまくハマる人はいます。願いの核が「会って安心したい」なのか、「直接触れたい」なのか、「謝りたい」「ありがとうを言いたい」なのか。核が分かると、叶え方は増えるんです。
理事長「会って、手を握って、ひと言『元気だった?』が言えれば勝ちだな」
事務長「理事長、急に良いことを言いました。今のは掲示しても大丈夫です」
行きたい・触れたい~場所が心を起こす記憶のスイッチ~
「娘と花見に行きたい」「海に触れたい」「お彼岸にお墓参りをしたい」「母校の前を通りたい」「家の庭の土を触りたい」。場所って、人の心を動かす装置みたいなところがあります。しかも、この手の願いは“達成条件”が意外とシンプルで、2時間未満でも十分に成立します。
花見は、桜の下で宴会をする必要はありません。車窓から桜並木を眺めるだけでも良いし、混雑を避けて平日の朝に短時間だけ公園へ行って、ベンチに座って温かいお茶を飲むだけでも良い。海も同じで、砂浜を長く歩けなくても、潮風を吸って、手を濡らして、「冷たいね」と笑えたら、それはもう“海に行った”で良いんです。墓参りだって、長く滞在できなくても、花を手向けて手を合わせる数分が叶えば、気持ちは整います。
私からの新しい提案を1つ混ぜるなら、「触れる」が難しい人ほど、“触れた感覚に近い体験”が効くことがあります。海が遠ければ、大きめの洗面器に塩水を作って手を浸し、貝殻や海藻の香りの小物を添えて、波の音を流すだけでも、驚くほど表情が変わる方がいます。もちろん本物に勝るものは無いけれど、「その人の核」が“潮の匂いと冷たさ”なら、工夫で近づける。こういう「核を守る代替案」を本人と談話を重ねた結果、施設側が多く持っていると、天候や体調で予定が変わっても、がっかりが減ります。
事務長「理事長、外出できない時の代替案を先に用意しておくと、当日の心が軽くなります」
理事長「うむ。心が軽いと、判断が早い。判断が早いと、安全に繋がる」
事務長「急に名将みたいになりましたね」
食べたい・帰りたい~暮らしの“いつもの”こそ最強~
「自宅に戻って納豆を食べたい」「自宅でコップ一杯、お酒が飲みたい」「台所の匂いをかぎたい」「いつもの湯のみでお茶を飲みたい」。これ、すごく大事な願いです。派手じゃないから後回しにされがちだけど、本人にとっては“暮らしの芯”だったりします。特に「家に帰りたい」は、寂しさだけじゃなく、誇りや役割の記憶がくっついていることが多い。だから雑に扱うと、心がしぼむ。でも丁寧に叶えると、ものすごく満たされます。
納豆だって、ただ食べるだけじゃないんです。「あの冷蔵庫の位置」「あの食卓の高さ」「あの醤油の匂い」「箸の音」。それが“自分の家”の感覚を呼び起こす。だから自宅滞在が可能なら、2時間未満で「座る場所」「トイレ動線」「休む場所」を先に決めて、短時間だけ“暮らしの続きを体験する”のが効果的です。難しければ、家族に「いつもの納豆」「いつもの器」「いつもの薬味」を持ってきてもらって、施設内で“家の食卓”を再現するだけでも、グッと満足度が上がります。事前に下見に行くのもありですが、困難でぶっつけ本番となる場合、このポイントをご家族にテレビ通話で見せてもらうということも打ち合わせ過程で大切でしょう。
お酒の願いは特に、施設ごとの考え方があるので、無理に押し通す必要はありません。ただ、核は「酔いたい」ではなく、「乾杯したい」「祝いの儀式をしたい」「人生の味をもう一度感じたい」のことが多い。そこを丁寧に扱うと、ノンアルや香りの飲み物でも“儀式”は成立します。本人の体調や薬の状況、家族の同意、看護の確認。その上で可能なら、コップ一杯を“特別時間の一部”として扱う。難しければ、別の形で核を守る。ここも「核を守る設計」が効きます。
理事長「納豆が主役の外出回……いや、外出しない回もあるのか」
事務長「むしろそこが良いのです。2時間未満は“移動の時間”ではなく“本人の時間”です」
理事長「そうか。移動で溶けない分、本人の時間が濃くなる」
事務長「理事長、今日はずっと良いことを言っています。どうしました?」
理事長「たぶん納豆の力だ…」
まだまだ出てくる「小さくて深い」お願いたち
ここまででも十分多様ですが、実際のアンケートでは、さらに広がります。「昔通っていた理容室で髪を切りたい」「お気に入りの服を買いに行きたい」「神社の鈴を鳴らしたい」「昔の職場を車で見たい(元社長さんなんかでよくあります)」「近所のスーパーで自分で選んで買い物したい」「猫に会いたい」「川の音を聞きたい」「畑を眺めたい」「子どもの頃の駄菓子を食べたい」「写真を撮って家族に配りたい」。こういう願いは、一見バラバラに見えるけれど、実は“その人の地図”のどこかに必ず線が繋がっています。
だから、企画側がやることは単純です。願いを「無理かも」で止めずに、「核は何か」を探して、2時間未満に切り出して、安全と安心の段取りを添える。そして外出回なら、理事長か事務長が旗を持って同行し、職員1〜2名が支える。これだけで、願いは“実現可能な計画”になります。
次はいよいよ最後のまとめです。年1回の“ご指名2時間未満”が、本人と家族だけじゃなく、施設の空気までフワっと変える理由を、ちょっと笑えて、でも真面目に着地させます。
[広告]まとめ…年1回の“ご指名レク”が施設の空気をフワっと変える
特養のアセスメントは、ちゃんと取っている。入居前に丁寧に書いて、入居後も一年かけて生活に合わせて微修正していく。なのに、「その人らしさ」が“楽しみ”や“希望”に変わる場面が少ないと、どうしても書類は金庫の奥で眠ってしまう。だから今回の作戦は、眠らせないための仕掛けでした。1人に年に1回だけで良い。だからこそ、全力で「その人のための2時間未満」を用意する。これを施設の文化として回していく。それが、アセスメントを“地図”に変える一番の近道です。
この取り組みが面白いのは、特別なイベントを増やす話ではないところです。むしろ逆で、月に何回も頑張って燃え尽きるのではなく、年に1回の“ご指名枠”を、確実に成功させる設計にする。だから続く。続くから意味が出る。本人も「来年もある」と思えるし、家族も「お願いして良い」と思えるし、職員も「やって良かった」を積み重ねられる。2時間未満っていう枠は、現場の現実を知っている人ほど、ジワっと効く良い設定です。
そして、理事長と事務長が登場するのは、ただの賑やかしではありません。個別レクリエーションは、意識しないと予定表に入らない。その現実をひっくり返すために、外出回は「理事長または事務長+職員1〜2名が付き添う」と旗を立てる。すると、職員の不安が減り、家族の安心が増え、本人の胸が張れる。施設としての“本気”が見えると、願いは我儘ではなく、暮らしの一部として扱われるようになります。
願いの中身は、想像以上に多様でした。卒業式、花見、墓参り、納豆、海、妹。どれも派手さではなく「人生の芯」に触れるものばかり。ここで大切なのは、願いをそのまま叶えることより、「願いの核を守る」ことでした。会場に入れなくても、晴れ姿が見られれば叶う。長居できなくても、手を合わせられれば叶う。自宅に上がれなくても、あの器でひと口を食べられれば叶う。核が見えていれば、2時間未満でもちゃんと満足できる。むしろ短いからこそ、成功しやすい。成功は次に繋がる。これが一番の強みです。
最後に、私はこの企画の“一番の価値”は、実は外出そのものではなく、施設の空気が変わることだと思っています。誰かの特別な時間が実現すると、周りの入居者さんの目が少し明るくなる。「次は私かな」と思えるから。職員も「自分たちは生活を支えているんだ」と実感できる。家族も「ここに預けて終わりじゃない」と感じる。たった年1回、たった2時間未満なのに、施設全体がフワっと前を向く。こういう小さな波が、現場をじわじわ強くします。
理事長「事務長、来年度の“ご指名枠”、もう始めるか」
事務長「理事長、早いです。でも早いくらいが丁度良いです」
理事長「よし。納豆も、海も、妹も、全部受け止める」
事務長「最後の“妹も”が雑ですが、はい。そこが本気の証です」
年に1回だけ。だからこそ、とことんその人のために。その人だけの特別な時間をトップ主導で真心を込めて真剣に取り組む。アセスメントを地図にして、願いを拾って、2時間未満に切り出して、旗を立てて、実行して、また地図を描き直す。これが回り始めた時、特養は「ただ暮らす場所」から「その人の人生が続く場所」へ、確かに近づいていきます。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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