一年で集める美の一瞬!介護現場フォトアルバム術~思い出を超える写真集の作り方~

[ 介護現場の流儀 ]

はじめに…なぜ今「美の一瞬」を残すと現場がやさしく回り出すのか

介護の現場って、毎日が忙しくて、気づけば「今日、何したっけ?」が連続になりがちです。そんな中で、フッと心がほどける瞬間があります。窓の光が床に伸びた時、湯気がス~ッと立った時、タオルを畳む手つきがやけに丁寧だった時。笑いのドカンも大事だけど、静かな「綺麗だなぁ」は、胸の奥にじんわり残る力があります。

今回の記事は、その“じんわり”を一年かけて集めて、「思い出写真」ではなく「美の瞬間写真集」を作ってしまおう、という提案です。しかも、写真が苦手でも大丈夫。手が震える、タイミングがずれる、構図が決まらない――それ、あるあるです。だからこそ、短い動画で撮って、後からスローで止めて、一番美しい一瞬を切り抜く。これなら「よし、撮れた!」という満足感が増えます。カメラが得意な人だけの趣味じゃなく、現場みんなの“美の採集”になります。

そしてこの写真集は、ただの自己満足で終わりません。アルバムをめくる時間が、会話の切っ掛けになったり、気持ちを整える小さな儀式になったり、家族との共有の種になったりします。言葉が上手く出ない日でも、「これ、綺麗ですね」で場が温かくなる。そういう力が、美にはあります。

さぁ一年後、棚に並んだアルバムを見て「私たち、こんなに美しい瞬間を拾ってきたんだな」って笑えるように。まずは肩の力を抜いて、今日いちばんの“きれい”を一枚だけ。欲張らないのが、続くコツです。

[広告]

第1章…写真が苦手でも大丈夫~動画から切り出す“止まる美”という近道~

「写真、苦手なんだよねぇ」。現場でこう言う人、けっこういます。手が震える、タイミングが遅れる、シャッターを押した瞬間に相手が目を瞑る、何故か指が画面に侵入して空を覆う。あるいは、撮れたと思ったらブレていて、被写体が“伝説の未確認生物”みたいになっている。うん、分かります。写真の神様は、忙しい現場ほど試練を与えてくるもんです。

でも、ここで発想を変えます。写真が苦手なら、写真で勝負しない。短い動画で撮って、後から一番良い一瞬を「拾う」。これが一番、心が折れません。動画はね、いわば“美の鉱脈”みたいなものです。5秒とか10秒撮っておけば、その中に必ず「お、今だ」という一瞬が混ざっています。そこをスローで止めて、静止画として切り抜く。つまり、シャッターチャンスを自分の手で作るわけです。

例えば、湯気がフワッと立つ瞬間。写真だと、狙ったつもりが「湯気が出る前」か「出終わった後」になりがちです。でも動画なら、湯気が立ち上がって、光に透けて、ちょっとだけ揺れた最高の瞬間が必ず入る。そこを止めれば、アッという間に“それっぽい一枚”が生まれます。これが「止まる美」です。

しかも、これには現場向きのメリットがもう1つあります。撮影の時の緊張が減るんです。「今だ!止まらないで!」と焦ると、手も心も揺れます。でも動画なら「取り敢えず回しておこう」でいい。焦りが減ると、自然に手ブレも減る。あれ、精神論みたいに聞こえるけど、本当です。人間、焦ると肘が浮いて、画面も浮きます。

では、どんな動画を撮ると「切り抜き向き」になるのか。コツは難しくありません。まずは短く、5秒から。長いと見返すのが面倒で、宝の山が“未開封の段ボール”になります。短い動画をたくさんの方が、後の自分が助かります。そして光です。美の半分は光で出来ています。窓際の明るさ、昼の柔らかい光、室内なら照明を1つ足す。それだけで、スローにして止めた時の「綺麗」が全然違います。

次に、手ブレの対策。ここは道具がなくても何とかなります。両手でスマホを持って、肘を体に寄せる。可能なら机や椅子の背に手首を軽く当てる。立つより座る。これだけで「震えて無理」が「いけるかも」に変わります。三脚があればもちろん便利ですが、現場はいつも三脚を連れて歩けるわけじゃない。だから“体が三脚になる”発想が強いです。

切り抜き自体は、難しい編集をしなくても大丈夫です。一番簡単なのは、動画を再生して、いい瞬間で止めて、その画面をスクリーンショットする方法。これなら誰でも出来ます。もっと綺麗に残したい人は、動画編集アプリで「静止画として保存」できるものを使うと、画質が安定しやすいです。ただ、ここで頑張り過ぎないこと。最初は“スクショで十分”くらいの軽さが、続くコツです。続けば勝ちです。美は、量が正義の時があります。

そして、ここからが面白いところなんですが、動画で撮って止めて切り抜くと、だんだん「美の瞬間」が見える目が育ちます。最初は“たまたま当たった一枚”だったのに、次は“狙って当てられる一枚”になる。湯気が光る角度、手の動きが美しく見える距離、布がフワッと遅れて揺れるタイミング。これが分かってくると、現場の空気がちょっと変わります。忙しいのは同じでも、「今の、綺麗だったね」と言える余裕が生まれる。余裕って、時間じゃなくて“視点”から生まれることもあるんです。

もちろん、現場で撮る以上、気をつけるところもあります。顔が映るなら同意のルール、撮影範囲、保存の扱い。ここは施設ごとに違うので「安全第一」でいきましょう。逆に言えば、手元だけ、後ろ姿だけ、物だけでも、美は十分に撮れます。むしろ物と光と所作だけの方が、「美の写真集」っぽくなります。人が主役じゃなく、瞬間が主役になりますから。

さて、ここまで読んで「私、写真苦手なんだよね」と言っていた人ほど、実はこの方法が合います。苦手だからこそ、動画で逃げ道を作る。逃げ道があると、挑戦できる。挑戦できると、1枚残る。1枚残ると、次が楽しみになる。美の写真集作りって、こういう小さな成功の連鎖で進みます。

次の章では、その「美の素材」を一年分拾うために、どこを見ればいいのか。光、所作、手仕事――日常の中の宝探しを、もっと具体的にしていきます。これ、やり始めると本当に“見える世界”が変わってきますよ。


第2章…美はどこにでも落ちている~光・所作・手仕事を一年分拾うコツ~

「美の写真集を一年で作る」と聞くと、なんだか特別な場所へ行って、特別な景色を撮らなきゃいけない気がしてきます。でも、ここで大事なのは逆です。遠くへ行かなくていい。むしろ行かない方が続きます。美はね、観光地より現場に落ちてます。落ちてるというか、日常が既に美の素材で出来てます。気づいてないだけで。

介護現場って、実は“美の宝庫”なんです。整ったベッド、フワッと乾いたタオル、湯気の立つお茶、窓から入る光、静かな歩幅、丁寧な手つき。どれも、派手さはないけれど、ちゃんと撮ると「綺麗だなぁ」が出てきます。しかも、こういう美は「自分たちの営み」そのものなので、写真集にしても誇らしい。思い出というより、暮らしと仕事の品格が写ります。

まず、一番撮りやすくて裏切らないのが「光」です。光は主役になってくれます。被写体が派手じゃなくても、光が綺麗だと絵が成立する。だから一年を通して、光を“季節の手紙”として集めるのが強いんです。春の柔らかい朝の光、梅雨の窓の水滴に滲む光、夏の白い眩しさ、秋の傾いた夕日、冬の透明な日差し。これを同じ場所で撮り続けると、写真集が勝手に物語になります。「同じ廊下なのに、こんなに表情が違うのか」と気づいた瞬間、あなたの目はもう一段階レベルアップしています。

次に「所作」。ここが今回のテーマに一番似合うところです。所作って、いわば“人の中の美”です。大声で笑う美もあるけれど、静かな美もある。例えば、椅子に座る時に一瞬だけ手が膝に添えられるとか、コップを持つ手がゆっくりと安定しているとか、歩く速度がやさしいとか。そういう瞬間は、動画で撮って止めると、本当に「止まる美」になります。派手な動きがないからこそ、スローにした時に美が浮き上がる。逆に、派手さで誤魔化せない分、撮れた一枚の品が上がります。

ただし所作を撮る時は、恥ずかしさが出やすいんです。「撮られてる」と思うと動きが硬くなる。そこでおすすめなのは、“顔を主役にしない”撮り方です。手元、背中、足元、影。顔が映らないだけで、グッと自然になるし、現場の取り扱いも楽になります。美の写真集は、誰かを晒すものじゃなくて、瞬間を拾うもの。ここがブレないと、続けやすいです。

そして「手仕事」。これはもう、写真集作りの勝ち筋です。何故なら手仕事は、撮る側も見せる側も気持ちが落ち着くからです。タオルをたたむ、シーツを整える、ラベルを貼る、折り紙を折る、季節の飾りを作る、配膳のトレーを拭く。こういう作業は、ただの“作業”で終わらせるのは勿体ない。手元のアップで撮ると、指の角度、布の折れ目、光の当たり方で、美が出ます。しかも手仕事の写真は、見る人に「整う感じ」を与えます。アルバムを開いた時に心が静かになる。これは立派な価値です。

一年分ひろうコツは、欲張らないことに尽きます。全部を撮ろうとすると、撮れなかった日が「失敗」になります。でも、“一日一枚”ですら重いなら、“一週間に一枚”でいい。大事なのは量より継続。継続さえすれば、季節が勝手に変化を持ってきてくれるので、写真集が勝手に育ちます。自然は編集者として優秀です。こちらがサボっても、春は勝手に来て、秋は勝手に色を変えます。ありがたいですね。人間の努力より季節の努力がすごい。

もう1つ、続くための秘密があります。それは「美のテーマを小さく決める」ことです。例えば今月は“光だけ”、来月は“手だけ”、その次は“湯気だけ”。テーマが小さいと、見つけるのが簡単になるし、撮るのも迷わない。迷いが減ると、続く。続くと、集まる。集まると、楽しくなる。ここでもやっぱり、連鎖です。

ちなみに、「美が見つからない日」もあります。ありますよ、普通に。そういう日は、無理に“美っぽいもの”を探さなくていい。代わりに、静かな“整い”を撮ります。まっすぐ並んだスリッパ、綺麗に畳まれたタオルの角、磨かれたテーブルの反射。これ、地味に見えるけど、写真集に入ると強いです。何故なら、写真集は一枚だけで勝負しないから。地味な一枚が挟まることで、次の一枚の美しさが跳ね上がる。料理で言えば、口直しの大根おろしみたいなものです。大根おろしがあるから唐揚げが映える。美も同じです。

そして、最後に「一年の楽しみ方」を1つだけ。季節の節目で“同じ場所”を撮ってください。例えば、窓辺の椅子。廊下の角。食堂の一角。そこを春夏秋冬で撮ると、写真集に時間が流れます。時間が流れる写真集は、強い。見返した時に、ただの画像の集まりじゃなく「一年を生きた感じ」が出ます。これが“思い出写真”と違うところです。思い出は出来事で出来てるけど、美の写真集は、日々の質で出来てる。あなたの仕事の丁寧さが、そのまま写ります。

次の章では、集めた一枚一枚をどうやって宝物にしていくか。アルバム作りの手順と、途中で挫折しない仕組みを、楽しく現実的に組み立てていきます。ここまで来たら、写真集はもう半分できたようなものです。残り半分は「続ける仕掛け」。これがあると、棚に並ぶ未来が現実になります。


第3章…集めた一枚を宝物にする~アルバム化の手順と続けられる仕組み~

一年かけて美しい一瞬を集めるぞ、となった時に最初に立ちはだかるラスボスがいます。そう、スマホの「カメラロール」です。フォルダの方が分かりやすいですか?気づけば写真と動画が山になって、「美の写真集」どころか「思い出と未整理の大運動会」になりがち。しかもカメラロールは、何故かどんどん勝手に増えます。夜中に増えるんです。たぶん妖怪です。

だから3章では、撮るより大事かもしれない「まとめ方」を、なるべく簡単に、でも“続く仕組み”として整えます。ポイントは、気合いで頑張らないこと。頑張ると続かないので、仕組みに任せます。

まずは「選ぶ日」を先に決めると勝てる

写真集が完成しない理由の大半は、撮れていないからではなく「選べていないから」です。撮るだけなら楽しい。でも選ぶのは地味。地味なことは、予定に入れないと消えます。

おすすめは、週に一度、たった10分だけ「美の選別タイム」を作ることです。コーヒーを飲みながらでいい。仕事終わりの休憩でもいい。ルールは一つ、「今週の一枚」を決めるだけ。これだけで一年後、最低でも52枚は集まります。52枚って、もう立派な写真集です。しかもこの方法は、途中で忙しくなっても壊れにくい。週に一枚の約束は、現場向きの強さがあります。

そしてここで大事なコツがもう一つ。「完璧な一枚」を探さないことです。完璧を探すと、いつまでも決まりません。美の写真集は、金メダルだけ集めるものじゃなくて、“その週を代表する一枚”を集めるもの。これに切り替えると、選ぶのが急に楽になります。

切り抜きと保存は「同じ型」でやると迷子にならない

動画から止めて切り抜く方法は、もうあなたの中で勝ちパターンになりつつあります。ここで次に起こるのが、「どこに保存したっけ問題」です。これも現場あるあるで、探しているうちに休憩が終わります。

迷子を防ぐには、保存の型を一つに固定します。たとえば「月ごとにフォルダを作って、そこに入れる」。これだけで強いです。ファイル名も凝らなくて大丈夫で、日付と短い言葉があれば十分です。たとえば「1月_窓の光」「6月_雨の粒」「11月_湯気の塔」。最後のはちょっと盛りましたが、ネームの言葉はがっつり盛っても良いんです。だって写真集は楽しいほど良い。

そして、切り抜いた一枚に“ひと言”を添えます。これが宝物化の決定打になります。長い文章はいりません。「綺麗」「静か」「落ち着く」「丁寧」「今日は助かった」。この短さが良いんです。ひと言があるだけで、写真が「ただの画像」から「その日の気持ちのカケラ」になります。

アルバムは「分厚いほど偉い」わけじゃない

アルバム作りというと、立派な冊子を想像しがちですが、最初から豪華にすると続きません。一番強いのは、軽く始めて、気づけば増えている形です。

例えば、まずは小さめのプリントで始める。月に4枚だけプリントして、ポケット式のアルバムに入れる。あるいは、季節ごとに1冊にする。春夏秋冬で4冊に分けると、「今年の春は光が柔らかいね」みたいに、見返すのが一気に楽しくなります。重くない、扱いやすい、見せやすい。現場に向くのはこのバランスです。

「でも印刷が面倒なんだよね」という声も出ます。分かります。そこでおすすめなのが、まずは“デジタル版のアルバム”を完成させることです。フォルダに並べて、ひと言を添えて、月ごとにまとまっていれば、もう写真集の中身は完成しています。印刷は、余裕がある月にまとめてやれば良い。美の写真集は、締め切りに追われると美しくなくなるので、ここはのんびりで大丈夫です。

続けるための仕掛けは「小さな役割分担」と「見える化」

一人で全部やろうとすると、だいたいカメラロール妖怪に食べられます。なので、出来る範囲で“役割”を分けると強いです。撮る人、選ぶ人、ひと言を書く人。もちろん全部一人でも良いけれど、誰かと分けられると続きやすいし、写真集の味も増えます。ひと言のセンスって、人によって全然違って面白いんです。

もう1つの仕掛けは「見える化」です。例えば、今月の採用枚数をカレンダーに小さく丸をつける。これだけで、続ける力が上がります。人は数字に弱い。丸が増えると嬉しい。増えないと悔しい。悔しいと撮る。撮ると増える。完全に丸の支配です。でもこの支配は、健全です。

現場で扱うなら安心のラインを先に引いておく

美の写真集は、優しい効果のあるものですが、撮影が絡むと急に現実が出ます。顔が写るか、写らないか。個人が特定されるか、されないか。扱いのルールは、施設ごとの約束が最優先です。

ただ、ここで覚えておくと便利なのは、「手元」「後ろ姿」「影」「物」「光」だけでも十分に美は成立する、ということです。むしろその方が“作品っぽい”ことも多い。写っているのは誰かではなく、その瞬間の気配。これなら、見せる相手が広がっても安心しやすいです。美は、無理に前に出さなくても伝わります。

さて、ここまで来ると、写真集作りはもう半分完成しています。撮って、切り抜いて、ひと言を添えて、月にまとめる。これだけで一年後、棚に並ぶ現実が見えてきます。

次の章では、そのアルバムが実際に現場で何を起こすのか。会話が増える、気持ちが整う、家族とも繋がる。美の写真集が「ただの趣味」では終わらないところを、楽しく深掘りしていきます。


第4章…写真集が現場を変える~会話が増える・気持ちが整う・家族とも繋がる~

「美の写真集」って聞くと、なんだか優雅な趣味っぽく見えるかもしれません。でも、いざ現場で続けていくと、これは趣味というより“空気の調律器”みたいな働きをします。忙しさは変わらない。人手も、急な出来事も、季節の流行も、相変わらずやってくる。でも、その中で人の心がちょっとだけ落ち着いて、言葉が少し優しくなって、空気がほんの少し丸くなる。そんな変化が起こります。

しかも不思議なことに、美の写真集は「頑張って良いことをしよう」ではなく、「気づいたら良いことが起きていた」に寄りやすい。現場に向くのは、こういう“自然に効く”ものです。気合いの健康法ほど続かない、ってやつですね。

会話が増えるのは美が「正解のいらない話題」だから

現場で会話が途切れる時って、話題がないというより「何を言えば良いか分からない」時が多いです。相手の体調、気分、認知の状態によって、言葉の選び方が変わる。職員側も疲れていると、上手い言い回しが出ない。そんな時に強いのが、美の写真です。

美の写真は、正解を求めません。「これ、綺麗だね」で成立します。「なんで?」「理由は?」と言われても、「なんか、良い」で通る。これは会話のハードルをグッと下げます。しかも感じ方が人によって違うので、同じ写真でも話が広がる。「私は光が好き」「私は手が好き」「私は湯気が好き」。湯気派の誕生は意外と熱いです。湯気は裏切らない。

さらに、写真を一枚めくるだけで話題が生まれるので、スタッフ同士の雑談にも効きます。忙しいと雑談は罪悪感になりがちですが、雑談がない職場は息が詰まる。写真集は、雑談に“意味”を与えてくれます。「この一枚、今週のベストだったね」と言えるだけで、チームが少し整います。

気持ちが整うのはスローの視点が「呼吸」を戻すから

あなたが最初に気づいた「動と静の中間」、あれはつまり“呼吸のある瞬間”です。人は忙しいと呼吸が浅くなります。浅い呼吸のまま仕事を続けると、焦りやイライラが増える。そこでスローの一瞬を切り抜いた写真を見ると自然に呼吸が深くなることがあります。これは気のせいじゃなくて、ゆっくりした動きや柔らかい光を見ると、体がそれに合わせて落ち着くからです。

写真集は、現場の中に「一瞬だけ立ち止まる場所」を作ってくれます。休憩室でもいいし、廊下の片隅でもいい。見る時間は30秒でも十分です。30秒で世界が変わるわけじゃないけれど、30秒で自分の顔つきは変わります。顔つきが変わると、声のトーンが変わります。声のトーンが変わると、相手の表情が変わります。こういう連鎖が、現場ではわりと本気で効きます。

そしてね、これは声を大にして言いたいんですが、美の写真集は「気分が良い時に見るもの」じゃなく「気分が落ちている時に助けてくれるもの」になりやすい。疲れ切った日に、窓の光の一枚を見るだけで「ああ、今日はこれでいいか」と思えることがある。現場は毎日が勝負ですから、この“ヨシとする力”は侮れません。

家族と繋がるのは美が「説明不要の共有」だから

家族との関係って、難しいこともあります。会いに来る頻度、期待、心配、罪悪感、距離感。説明しようとすると、言葉が足りなくて誤解が生まれたりもする。そんな時、美の写真集は強いんです。何故なら、美は説明不要だから。

例えば、手元だけの写真。タオルを丁寧にたたむ手、湯気の立つお茶、窓辺の椅子に落ちる光。そこに「今日の一枚です」と添えるだけで、現場の空気が伝わる。誰かの顔が写っていなくても、「ここで大切に暮らしている感じ」が伝わる。これが“安心”に繋がることがあります。

もちろん、写真の扱いにはルールが必要です。顔が写るなら同意、個人が特定されない工夫、保管の方法。そこは慎重に。でも、物と光と所作の写真なら、グッと扱いやすい。家族に見せる時も、相手を選ばない。これは現場にとって大きな強みです。

そしてもう1つ、家族との共有で良いのは、「話すネタが出来る」ことです。面会の時に会話が続かないと、気まずさが残ります。でも写真があると、「この光、綺麗ですね」「この手仕事、落ち着きますね」と言える。会話が“心配”だけにならないのは、家族にとっても救いになります。

写真集は現場の価値を「静かに」外へ届ける

ここは少しだけ現実的な話をします。介護の良さって、派手に見え難いです。誰かを助けた話も、すごい改善も、日々の丁寧さも、外に伝わり難い。だからこそ、現場の価値が誤解されやすい。けれど美の写真集は、派手な宣伝じゃなく、静かな説得力を持ちます。

「整っている」「丁寧」「優しい」「落ち着く」。これを言葉で説明するのは難しいのに、一枚の光の写真で伝わってしまうことがある。しかも、誰かを前に出さなくても伝えられる。美は、声を張らなくても届きます。これは、現場の品格にとても合っています。

さらに言うと、この写真集作りは職員の自己肯定感にも効きます。「私は今日も雑務に追われた」ではなく、「私は今日、綺麗な一瞬を拾った」と思える。仕事の意味を大袈裟に盛る必要はないけれど、仕事の中に“美”があると、人は折れ難いんです。折れ難い人が増えると、現場が安定する。安定すると、利用者さんも安心する。結局、美は回り回ってケアの質に戻ってきます。

さて、ここまでで「美の写真集」がただのアルバムではなく、現場を変える小さな装置になり得ることが見えてきたと思います。次は最後のまとめです。明日から一枚、気負わず始めて、一年後に棚に並べる。そのための“最初の一歩”を、楽しく締めくくります。

[広告]


まとめ…明日から一枚~「美の一瞬写真集」を一年で完成させるために~

ここまで読んで、「よし、やってみよう」と思った人もいれば、「理想は分かったけど、忙しいんだよねぇ」と思った人もいるはずです。大丈夫です。忙しい人ほど向いています。何故なら、この写真集作りは“時間を増やす”のではなく、“見え方を変える”からです。時間が増えなくても、見え方が変わると心の余白が増える。余白が増えると、優しくなれる。優しくなれると、現場の空気が整う。結局、一番得をするのは現場の自分たちです。

この写真集の主役は、特別なイベントでも、豪華な景色でもありません。主役は「一瞬」です。窓の光が床に伸びた一瞬。湯気がフワッと立った一瞬。タオルの角がピシッと揃った一瞬。誰かの手が丁寧に動いた一瞬。派手じゃないけれど、そこには確かに“美”がある。そして、その美は人を落ち着かせ、会話を生み、気持ちを支えます。笑いがドカンと効く日もあれば、静かな美がじんわり効く日もある。現場には両方が必要で、後者は意外と不足しがちです。その匙加減を自分たちが作る立場になりやすい。

写真が苦手でも問題ありません。むしろ苦手な人のために、動画という近道があります。短く撮って、スローで止めて、一番良い一瞬を切り抜く。これなら「撮れない」が「拾える」に変わります。拾えるようになると、目が育ちます。目が育つと、日常が宝探しに変わります。宝探しになると続きます。続くと一年後、棚にアルバムが並びます。怖いくらい、理屈が通っています。怖いので、まずは軽く始めましょう。

続けるコツは、完璧を狙わないことです。1週間に1枚でいい。月に四枚でもいい。選ぶ日を先に決めてしまえば、あとは流れで回ります。写真にひと言を添えると、画像が宝物になります。アルバムは豪華じゃなくていい。小さく始めて、気づけば増えている。それが一番強い。現場は“続いたもの勝ち”の世界ですから。

そして、この写真集が密かにすごいのは、誰かを主役にしなくても現場の価値を伝えられるところです。光と所作と手仕事だけで、空気が伝わる。説明しなくても、見る人が感じ取る。家族とも共有しやすい。会話が増える。スタッフの気持ちも整う。美は、声を張らなくても届きます。だからこそ、介護の現場に合うんです。

最後に、明日からの一歩を、とても小さく提案します。今日、帰る前に5秒だけ動画を回してください。被写体は窓の光でも、湯気でも、タオルでもいい。撮ったら、一番良い一瞬で止めて、スクリーンショットして、ひと言だけつける。「きれい」「静か」「落ち着く」。それで十分です。その一枚が、あなたの一年の1ページ目になります。

一年後、アルバムを捲った時に、思い出だけじゃなく「私たちの仕事は、ちゃんと美しかった」と言える写真集になっているはずです。棚に並んだ冊数は、あなたが拾ってきた“優しい一瞬”の数。きっと、見るたびに少し笑えて、少し誇らしくなります。さぁ、明日から一枚。美は、だいたい足元に落ちています。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


[ 応援リンク ]


人気ブログランキングでフォロー

福彩心 - にほんブログ村

[ ゲーム ]

作者のitch.io(作品一覧)


[ 広告 ]
  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。