どん底(ロックボトム)から静かに起き上がるための自己肯定と行動の設計図

[ 職場の四季と作法 ]

はじめに…落ち込みの理由が人それぞれでも回復の筋は共通していること

人が「これは流石にもう下だな…」と感じるところまで落ちる理由は、本当に人それぞれです。職場で少数派に回って押し出された人もいれば、家の中で自分だけ頑張っていて燃え尽きた人、体調不良が続いて社会とのテンポがズレた人、お金や人間関係が一度に重なってしまった人もいます。表からは同じ「どん底」に見えても、その道程はまったく違います。

それなのに世の中で語られる回復法は、どこかで「皆、同じ前提でしょ?」という顔をして近付いてきます。気分転換をしましょう、温かい物を飲みましょう、前向きな言葉を唱えましょう――もちろんそれで浮上できる人もいますが、背景が複雑だったり、長く我慢してきた人には「それで上がれるなら苦労しないよ…」と感じられてしまいます。

このページで目指すのは、そういう人たちに向けて「どのパターンで落ちた人でも、この中のどれかは効くはず」というより広い網をかけることです。どん底やロックボトムにいる時はいきなり大ジャンプはできません。出来ることは、今の自分をぞんざいに扱わないことと、ごく小さな前進を見える形で積み重ねること。この2つを同時にやると、坂を上る角度が緩くなります。

また、落ちた原因と立ち上がり方は必ずしもセットではありません。職場の力関係で沈んだ人でも、立ち上がりには生活リズムの調整が効いたりしますし、家庭内の摩擦が原因でも、外の人との緩い接点が切っ掛けになることがあります。だからこそ今回、後半では100個の「回復の鍵」をひとまとめにして載せておきます。自分の事情に近いものから使ってもいいし、逆に「これは今の自分には足りてないな」というところを1つ選んで試してもらっても構いません。

大事なのは、「落ちているから価値が下がる」と思わないことです。落ちているからこそ丁寧に扱う必要がある、その順序を本文で丁寧に書いていきます。ゆっくり読んで、ご自分に合うところだけを持っていってくださいね。

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第1章…どん底が生まれる背景は1つではないという前提を置く

どん底とかロックボトムという言い方をすると、どうしても「何か大きな失敗をしたのだろう」と人は想像しがちです。けれど実際には、落ち込む切っ掛けはもっと細かく、もっと生活寄りで、もっとジワジワしたものが重なって起きることが多いです。

職場で自分だけ考えが少し違っていた。
家族の中で自分だけ時間の余裕がなかった。
体調が落ち着かず、予定通りに動けない日が続いた。
このような「一見すると小さい差」が、周囲が多数で自分が少数という状況と重なると、実力や性格とは別に評価が下がっていきます。本人としては「そこまで悪いことはしていない」「むしろ頑張っていた」と感じているのに、立場としては不利になる。これが続くと、気づいた時には「私が悪いんだろう」という形で自分に向けてしまうのです。

ここでまず確認しておきたいのは、落ち込みの背景は大きく分けてもいくつかタイプがある、ということです。どのタイプで落ちたのかを自覚しておくと、後で回復の道筋を選ぶ時に迷いが少なくなります。

人の力関係で押し出されたタイプ

一番分かりやすいのはこれです。職場の人数配置や、チームの空気や、リーダーの価値観が自分と合わず、ほんの少しの違いが「やりにくい人」というラベルになってしまう。多数側には悪気がなくても、人数が多い方の価値観が正しいとされやすいので、少数側はだんだん発言を控え、役割が減り、最後には「戦力が落ちた人」のように見られてしまいます。

このタイプの辛さは、能力の問題ではなく「場の色」によって落ちたのに、本人だけが「自分が足りない」と解釈しがちなところにあります。場を変えれば再び力を出せる可能性が高いのに、その前に自信を失ってしまうのです。

家の事情やケアの負担で消耗したタイプ

介護や子育て、家族の看病などが長く続くと、外側からは見えないところで体力も気力も削られていきます。しかもこの種の負担は「それはあなたがやるしかないよね」と周囲にも本人にも納得されやすいため、助けを求めるのが遅れます。結果として、外では今まで通り働き、家では今まで以上に動き、気付けば休む場所がなくなっている。そうしてある日、急にすべてが重く感じられて「ここが底だ」と自覚するのです。

このタイプの辛さは、頑張った証拠が残りにくいことです。お世話や家のことは記録にも評価にもなりにくく、「やって当たり前」の中で消耗していきます。ここを理解してあげることで、後半の章で出てくる“進んだ証拠を残す”やり方が説得力を持ちます。

体調・メンタル・年齢の節目でペースが崩れたタイプ

病気が続いた、眠れない時期があった、更年期や加齢で疲れやすくなった――こうした体の事情が先にあって、そのせいで仕事や家事のペースが落ち、そこから「前ほど出来ない自分」に気持ちが落ちていくパターンもあります。
この場合、原因は体にあるのに、評価されるのは行動量なので、「やる気がない人」のように見られてしまいます。本人も「前は出来ていたのに」と過去の自分と比べてしまい、今のコンディションに合わない基準で自分を責めてしまいます。

ここでは「今の体調に合わせて基準を下げるのは甘えではない」という考え方を入れておくと、後で実行しやすくなります。

お金や仕事の躓きが続いたタイプ

収入が落ちた、急な出費が続いた、仕事が途切れた――生活の土台が揺らぐと、人は「自分の価値が目減りした」と感じやすくなります。しかもお金や仕事の話は人に打ち明け難いので、相談が遅れます。その間に遅れた分だけ焦りが膨らみ、焦りが判断を雑にし、さらに状況が悪くなるという悪循環に入りやすいのがこのタイプです。

このパターンへの一手は、心の話だけでは足りません。生活の方を先に整える・支出を見直す・相談の窓口を使うなど、現実の方をちょっとでも軽くしてあげると気持ちが上がりやすくなります。

複数の小さなことが同時にきてしまったタイプ

最後に、理由が1つに絞れないケースです。仕事で評価が落ちた時期に家でもトラブルがあり、さらに体調も崩してしまった。こうなると「どれが原因なのか」が分からなくなり、対処が遅れます。このタイプにとって大事なのは、原因を1つに決めようとしないことです。いくつかの要素が重なって底にいるのだから、回復の時もいくつかの方向から同時に少しずつ戻していく――そう考えたほうが現実的です。

――

このように、どん底に至る道筋は本当にバラバラです。だからこそ「私はどうしてこうなったのか」と一本の線で説明しようとしなくて大丈夫です。落ちた理由が違えば、効く方法も違って当然です。この記事の後半でまとめて示す100個の鍵は、こうした多様な背景を想定して用意したものです。自分のケースにぴったりはまるものだけを拾ってもいいし、「これは今はできないな」と思うものは飛ばしてもかまいません。

一番大事なのは、落ちた場所が人それぞれなら、立ち上がり方も人それぞれでいい、という許可を自分に出すことです。ここでその前提が共有できていれば、次の章で話す「自己肯定感を底抜けさせないライン」の話がすっと入ってくるはずです。


第2章…自己肯定感を底抜けさせないための基本ラインを作る

どん底にいる時に一番先に起きることは、「出来なかった自分」を毎日見ることです。昨日も家事が終わらなかった、今日も書類に手がつかなかった、また約束を後回しにしてしまった。こうした場面が積み重なると、人は「行動ができない=自分には価値がない」という式を勝手に作ってしまいます。
でも本当は、この2つは同じ場所にはありません。行動はその日の体調や環境に左右されますが、人としての価値はそこから切り離しておかないと、回復の足場そのものがなくなってしまいます。

ここでは、落ちている期間でも「ここだけは守る」と決めておく考え方をまとめておきます。後の章でたくさんの鍵を並べるのは、その足場があるからこそ意味が出るのだ、と意識して読んでいただけたらと思います。

「存在で見る日」と「成果で見る日」を分ける

落ち込んでいる時でも、全日程が同じように辛いわけではありません。少し動ける日もあれば、どうやっても体が起きない日もあります。ところが人は、どんな日でも同じ物差しで自分を測ろうとします。これを続けると、調子の悪い日は必ず減点から始まるので、気持ちが先に折れてしまいます。

そこで、まずは日を2種類に分けてしまいます。
1つは「存在で見る日」。この日は起きたことの大きさではなく、「今日も自分を粗末にしなかったかどうか」だけを確認します。朝ご飯を軽くでも食べた、顔を洗った、外気に当たった、誰かに一言でも返事をした――こうしたことが出来ていれば合格です。もう1つは「成果で見る日」で、少し体が楽な日に、作業や仕事や片付けを入れる日です。

この分け方をしておくと、「今日は存在の日だから、これでいい」と自分に言えて、落ち込みの深さが一定より下に落ちにくくなります。どん底期はこの“下限の設定”がとても大事です。

言葉の置き換えで自分を傷つけないようにする

自己肯定感は気合いで上げるものではなく、日々の言葉遣いで静かに守っていくものです。特に一人になった時の独り言は注意がいります。
「また出来なかった」
「どうせ私なんて」
「みんな普通にやってるのに」
こうした言葉は、実は事実を言っているようで、事実よりも強く自分を否定しています。

これを、すぐに実行しやすい言い回しに置き換えます。
「今日はここまでだった」
「今回は体力の方が足りなかった」
「この条件だと難しい」
どれも結果は同じ「出来なかった」なのに、心への刺さり方が全然違います。自分を責める癖が強い人ほど、言葉の調整を先にやっておくと、その日の終わり方が柔らかくなります。

さらに、人から言われたことをそのまま心に置かない工夫も必要です。多数側の基準で言われた言葉は、場が変わると価値が逆転することがあります。「もっとこうして欲しい」と言われた経験は、別の場所では「そこまで丁寧にやるなんて」と評価されることがあるのです。なので、その場で全部を飲み込まず、「これはあの環境用の基準」とラベルをつけて心に置いておくと良いです。

「今日の自分を採点する人」を自分に戻す

落ちている時ほど、人は他人の目を探します。あの人はどう思うだろう、会社はどう評価するだろう、家族はガッカリしていないだろうか。こうした外側の視線を基準にしている限り、自己肯定感は浮上してきません。人の評価は景気や職場の状況や家庭の事情でブレるからです。

そこで、1日の終わりだけは自分が自分を採点することにします。方法はなんでもいいのですが、短い文章でその日の自分を肯定しておくと続けやすいです。

今日は体調が悪いのに仕事に行った。
今日は誰かに迷惑をかけたけど、ちゃんと謝れた。
今日は泣きそうだったけど、怒鳴らなかった。

どれも、外から見たら「特別な成果」ではありません。でも落ちている時の自己肯定感は、このくらい小さい材料で十分育ちます。外側の評価に左右されない1行を夜に残しておく。これが続くと、「今日はダメだった」で終わる日が減り、回復に必要なエネルギーが逃げなくなります。

「助けを呼んでいい人間だ」という前提を許可する

どん底に長くいる人の中には、頼ることを禁止している人が少なくありません。過去に「自分で何とかしなさい」と言われ続けた人、いつも周りを支える側にいた人、介護や子育てで「迷惑を掛けない」を最上位にしてきた人は、特にそうです。
けれど、助けを呼べない状態は、自己肯定感を守る上で大きな弱点になります。何故なら、困った時に助けを呼ぶことは「自分は大事に扱われるべきだ」と信じている証拠だからです。これが出来ないと、どれだけ行動を重ねても「でも本当は私なんか」という感覚が消えてくれません。

ですから、この章の締めとして1つだけ決めておきましょう。
「私は、助けを求めてもいい側の人間である」
たったこれだけの一文ですが、これを心のどこかに貼っておくと、後の章で出てくる具体的な行動が取りやすくなります。自分を大切に扱っていいと思えている人の方が、小さな進捗を素直に喜べるからです。

――

ここまでが、落ちている最中でも守っておきたい土台の話です。
存在で見る日と成果で見る日を分けること。
言葉遣いで自分を切り刻まないこと。
その日の採点者を自分に戻すこと。
そして助けを呼んで良いと許すこと。

この4つがあると、後で100個の鍵を見たときに、「これは合わない」「これは出来る」と落ち着いて選べるようになります。自分を雑に扱わずに済むからです。次の章では、その選びやすさを作るために、一気に使える種を並べていきます。


第3章…どんな落ち方をした人にも試せる回復キー100選

どん底に来るまでの道は人によって違いますが、上がる時に使える道具はある程度パターンがあります。ここでは、体・心・人との繋がり・生活環境・考え方・前進の仕方を全部一緒に並べておきます。
「これは今の自分には合う」「これは今日は無理」という風に好きなところから拾ってください。全てをやる必要はありません。今の自分を少しでも楽に出来るものを、1つだけでも動かせたらそれで十分です。

1.起きた時間を毎日メモして、生活の土台を揃える。
2.朝に光を浴びて、気分の底を少しだけ浅くする。
3.朝いちばんで温かい飲み物を飲み、体を「動ける側」に寄せる。
4.短時間でも外気に当たり、部屋に籠る流れを切る。
5.首や肩のストレッチを習慣化して、体の強張りからくる落ち込みを減らす。
6.ベッドの中でスマホを見ないようにして、比べて落ちる切っ掛けを減らす。
7.食事を抜かないことだけを目標にして、体力の底割れを防ぐ。
8.その日の終わりに入浴して、「今日をここで終える」と区切る。
9.体を温める物を手元に置き、不安の高ぶりを和らげる。
10.感情が固まっている日は、泣ける作品を敢えて見て、内側の圧を外に出す。
11.他人の不安を拾いやすい時は、情報番組やニュースを減らす。
12.「〇〇さん今日はここまでできたよ」と自分の名前を呼んで声に出す。
13.前日の夜に「やることを3つだけ」書いて、朝の迷いを減らす。
14.鏡の前で身嗜みを整えて、社会と繋がるスイッチを入れる。
15.薬やサプリの時間を決めて、自己管理が出来ている感覚を持つ。
16.しんどい感情を3語で書き捨てて、頭の中で回り続けるのを止める。
17.紙に怒りを書いて破るなど、安全な場所で怒りを出す。
18.何もしない日を「回復デー」と名前を付け、罪悪感を下げる。
19.背筋を30秒だけ伸ばし、体勢から来る落ち込み癖を断つ。
20.「今日は生き延びた」と1行日記に書き、連続している自分を確認する。

21.短い挨拶だけでも誰かに送って、人との線を切らないようにする。
22.信頼出来る1人に現状を送って、「今はこういう時期です」と知らせる。
23.オンラインの場に見るだけ参加し、居場所を複数にする。
24.誰かの相談に小さく乗って、「役に立てた自分」を思い出す。
25.家族には「今は余裕が少ないだけ」と伝えて、誤解で傷つかないようにする。
26.職場で1回だけ雑談を増やし、存在が業務だけにならないようにする。
27.喜びの報告にスタンプだけ押して、反応できる自分を残す。
28.評価する立場ではない専門家に一度話して、見方をリセットする。
29.過去にもらった励ましのメッセージを見直し、「あのとき認められた」事実を再確認する。
30.同じ体験をした人の声を読み、「自分だけが落ちている」感覚を弱める。
31.比べて落ちる相手は一時的にミュートして、心を守る。
32.先に「ありがとう」を言う癖をつけて、受け取り拒否をしないようにする。
33.「返事はいらないから聞いて」と前置きして話しやすい関係を作る。
34.人が集まる場から早めに抜けて、疲れ切る前に帰る。
35.年齢や立場の違う集まりに顔を出し、評価の物差しを増やす。
36.自分が少数側にならずに済む場を探して、心を休ませる。
37.「最近どう?」に答える3行テンプレを用意し、説明の負担を下げる。
38.仕事と私生活の評価を分けて、どちらかが落ちても自分を保つ。
39.話を聞いてもらう相手と、こちらが励ます相手を分けて、関係を重くし過ぎない。
40.写真を撮ってもらって、今ここにいる自分を視覚で残す。

41.机の一角だけ片付けて、「ここからなら始められる」場所を作る。
42.家計をざっくり見直して、お金の不安を少しでも軽くする。
43.使っていないアプリを消して、心を散らす情報を減らす。
44.家族のいない静かな時間帯を決めて、心を戻すスペースを確保する。
45.仕事を朝・昼・夕に分けて、短い集中で進める。
46.買い物リストを固定して、日々の判断回数を減らす。
47.通知をまとめて受け取る設定にして、ずっと気を奪われないようにする。
48.安心できる服を1セット作り、急な外出でも自信を失わないようにする。
49.大事なカードや書類を1か所にまとめて、探し物から来る自己否定を防ぐ。
50.「やれたらご褒美」を見える場所に置き、行動に楽しみを残す。
51.今の自分には強過ぎる情報源は一時的に見ないようにする。
52.机の上には「今週やるもの」だけを置いて、過去や将来の負担を視界から外す。
53.相談や通院の予定を先に入れて、未来に受け皿を用意しておく。
54.明るめの照明を1つだけ置いて、気持ちを立て直す場所を作る。
55.テレビやBGMを常時点けっ放しにせず、静かな時間を作る。
56.片付けを5分だけにして、「全部できないからゼロ」になるのを防ぐ。
57.仕事用と自分用のフォルダを分けて、失敗の記憶と楽しみを混ぜない。
58.天気が悪い日は予定を軽くして、コンディションに合わせる。
59.移動時間は考えごとをしない時間にして、頭の中のグルグルを止める。
60.今の環境では出来ないことをリスト化し、「自分がダメだから出来ない」と思わないようにする。

61.原因と対処を別に書き、直せるところだけを見えるようにする。
62.今・近い未来・遠い未来に時間を分けて、全部を一度に考えて沈むのを防ぐ。
63.最悪の想定を一度だけ紙に書いて、頭の中で続けて想像しないようにする。
64.「皆と同じじゃないといけない」という前提を疑う。
65.自分を評価している人の数を数え、少数の意見を全体だと勘違いしない。
66.今日はこれでOKというラインを大きく下げ、無駄な減点をしない。
67.出来なかった日は「観察した日」と呼び、失敗日にしない。
68.これまで乗り越えたことを一覧にして、回復力の方を思い出す。
69.自分の機嫌を取ることを家事と同じくらい大事な用事にする。
70.比べる相手を昨日の自分に戻し、他人のスピードに振り回されない。
71.心が動いた瞬間だけメモして、感情がまだ生きていることを確認する。
72.仕事・家庭・お金・健康を一度に立て直そうとせず、順番を決める。
73.強過ぎる反省は「次回の自分へのメモ」に変えて、責め続けないようにする。
74.自分にだけ厳しい言葉を使っていないか確認し、他人に言わない言葉は自分にも言わない。
75.起きたことを「出来事」として書き、裏切られたなどの強い解釈を一旦外す。
76.「今は一時的に悪いだけかもしれない」という仮の考えを持っておく。
77.自分の強みを別の分野に持ち出す想像をして、場が合わなかっただけだと理解する。
78.自分のせいではない部分もメモに残し、全部を自責にしない。
79.「助けてもらって良い側の人間だ」と改めて言語化する。
80.今の自分を他人が見たらどう言うかを想像して、評価を柔らかくする。

81.1日1行でも日誌をつけて、「今日も止まってはいなかった」を見えるようにする。
82.週に1度だけ振り返る日を決めて、毎日重くならないようにする。
83.やったことだけを書くリストを作り、達成感から自己肯定感を上げる。
84.3か月後に出来ていたいことを1つに絞り、遠過ぎない未来を用意する。
85.気力がない日のメニューを予め決めておき、当日悩まないようにする。
86.作業を15分単位に分けて、「短くても進んだ」と感じられるようにする。
87.連続して出来た日数を見える形にして、途切れるのが惜しくなる仕組みを作る。
88.進んだことを送る相手を1人だけ作り、報告することで前に出やすくする。
89.出来なかった理由も書いておき、「怠けた」以外の説明を残す。
90.掃除や制作は写真で記録し、目で見て進んだことが分かるようにする。
91.毎月必ずやることを1つ決めて、季節の変化に飲まれない軸を作る。
92.学びを1日1つだけ登録して、「まだ成長している」感覚を途切れさせない。
93.中断してしまったら再開日を決めて、「やめたまま」にならないようにする。
94.その日の体調に合わせて点数を付け、しんどい日も高得点に出来るようにする。
95.半年に1回、ここまで戻れたという記録を書き、道程を自分に見せる。
96.やりたいことを今出来る小さな版にして、先延ばしを小さくする。
97.他の人の記録の仕方を調べて、真似できるところを真似する。
98.家や地域などで役割を1つ増やし、「必要とされている」場を増やす。
99.「これが出来たら次はこれ」と階段を描き、どこにいるかを分かるようにする。
100.最後は「ここまでやれた自分を許す」で締めて、翌日に自分を叩かないようにする。

――
ここにあるものは、全て「その日の自分を低くし過ぎないための工夫」です。体を整えるもの、人と繋がるもの、考え方を軽くするもの、少しずつ前に進めるもの。どれを選んでも、どん底に出来た穴をほんの少しずつ埋めていく力になります。次の章では、この中から日常に差し込みやすい形を拾って、沈んだ時の戻り道として残すやり方を書いていきます。


第4章…今日の生活に差し込む方法とまた沈んだ時の戻り道を残す

ここまでで、どん底に至る背景が人それぞれだということと、自己肯定感を守る基本の考え方、そして大きなかごに入れた100の鍵を並べてきました。
ただ、ここからが実は一番躓きやすいところで、「いいことがたくさん書いてあったけど、明日どれをどう使えばいいのか分からない」という状態になりがちです。特に落ち込みが慢性化していると、良さそうな方法を見ても「これは元気な人向けだな」と感じて棚に戻してしまうことがあります。

この章では、あの100個の中から自分に合ったものを選びやすくするための考え方と、また沈んだ時に戻る地点を予め用意しておくやり方をまとめます。目的はただ1つです。
「落ちたらまた上がれる」と自分に証拠を見せること。
これさえできれば、どん底にいても将来に線がつながります。

1.やることを3つの温度に分ける

まずは、あの100個をそのまま毎日やろうとしないことが大切です。人の調子には温度があります。体も心も温まっている日、普通の日、凍っている日。この温度によって、実行できる大きさは変わります。
そこで、自分が選んだ方法を「高めの日」「普通の日」「しんどい日」の3つに分けておきます。

高めの日は、部屋を片付ける・人に連絡をする・作業を15分やる、といった少しエネルギーのいるもの。
普通の日は、朝の飲み物・外気に当たる・日記を1行だけ書く、といった中くらいのもの。
しんどい日は、体を温める・名前を呼んで声に出す・助けていいと宣言する、といった最小のものです。

こうしておくと、「今日はしんどいから今日はこの段だけ」と選べるので、出来なかった自分を責めずに済みます。
毎日が同じ量でなくていい、という許可は、長く落ち込みと付き合っている人ほど効きます。

2.1日のどこに差し込むかを先に決める

「気が向いたらやる」は、どん底の時にはまず成功しません。気が向くほどの元気がないからです。
なので、先に場所を決めてしまいます。朝起きてすぐ、昼ご飯の後、夜お風呂の後――どこでも構いませんが、「このタイミングで自分を立て直すことをする」と決めておくことで、行動の方が自動になります。

例えば、朝は存在を守る時間にして、顔を洗う・光を浴びる・温かいものを飲むまでをセットにする。
夜は自分を採点する時間にして、1行日記・出来なかった日の呼び名をつける・明日の3つを書くまでを一気にやる。
こうして動作を固めておくと、気分に左右される部分が少なくなります。

3.「戻り地点メモ」を1つだけ作る

落ち込みが深くなると、一度読んで「いいな」と思った方法のことも綺麗に忘れてしまいます。だから、いざという時に見る専用のメモを1つだけ作っておきます。紙でもスマホでも構いません。ここに書くのは、元気な時の自分が「これなら最初にやれるはず」と思ったことだけです。

例を挙げると、
・今日は存在で見る日、と書く
・温かい飲み物を飲む
・今日も生き延びたと1行書く

このくらいで十分です。これは「いざというときの自分宛ての手紙」です。沈んでいる最中の自分は判断が雑になるので、先に落ち着いた自分が道を描いておくのです。

このメモには、もう1つ書いておきたいことがあります。それは「助けを呼んでもいい人の名前と連絡方法」です。人は落ちている時ほど、「こんなときに連絡したら迷惑だ」と思ってしまいます。けれど、元気な時の自分が「この人なら聞いてくれる」と決めておいたなら、その人に連絡しても構わないはずです。迷っている間に心が沈んでいくくらいなら、先に決めておきましょう。

4.“これが出来たら合格”を必ず用意しておく

元気がある時、人はつい完璧な回復プランを立てます。朝ランをして、家を片付けて、手帳に書いて、勉強もして――という具合に。しかし、実際に調子が落ちた日にはそのプランは回りません。そうなると「また出来なかった」となって、自己肯定感が底からさらに抜けてしまいます。

ですから、どんなに立派な計画を立てても、最後に必ず1つだけ「これが出来たら今日もよし」と呼べるものを置いておいてください。例えば「1行書いたら終わり」「顔を洗ったら終わり」「今日は生きて帰ってきたら終わり」。この最低ラインを自分で決め、しかもそれを毎日認めることで、「行動できなかったから価値が下がる」という悪い式を止めることができます。

ここを緩くしておくと、後の100の鍵が全部生きてきます。やる気のある日に多めに取って、しんどい日に小さく取る。どちらの日も「今日は合格」と言えるようにしておく。これが、回復を長く続けるためのコツです。

5.また沈んだ時に「前より早く戻れた」を体験する

最後に、とても大事なポイントを置いておきます。
人は一度浮上した後にまた沈むと、「またやってしまった」「やっぱり私は弱い」と思いがちです。でも、回復というのは1本の階段を上まで上がって終わり、ではありません。上がって、また少し落ちて、でも今度は前より短い時間で戻れる――この繰り返しで安定していきます。

ですから、再び落ちたときは「戻るのに何日かかったか」をそっと見ておいてください。最初のどん底から立ち上がるのに30日かかったのが、次は20日で済んだ、あるいは同じ30日でも途中で笑える日があった――そうした小さな違いはちゃんと大きな進歩です。
この「前より早く戻れた」を自分で確認できると、また落ちても怖くなくなります。恐怖が減ると、日々の行動量も少しずつ戻ってきます。

――

どん底から立て直すとき、必要なのは壮大な計画ではなく、今日に差し込める小さなサイズの行動と、その行動を選び直せる余白です。
温度に合わせて選ぶ。
時間帯を決めておく。
戻り地点のメモを用意する。
合格ラインを下げておく。
そして落ちたらまた同じ道を通って戻る。

この繰り返しが出来れば、落ち込むことそのものが人生の終わりではなく、「このルートで戻ればいいだけの状態」に変わっていきます。次の「まとめ」では、ここまでの話をもう一度、人を責めない言い方で束ね直しておきます。

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まとめ…どん底は自分の扱い方を更新するタイミングだったと振り返る

ここまで読んでくださって分かるように、どん底とかロックボトムと呼ばれる場所は、決して「同じ理由で落ちた人が集まる場所」ではありません。職場で少数派に回された人もいれば、家で役割を抱え過ぎた人もいて、体調の変化についていけなかった人もいる。背景は本当にバラバラでした。

それでも共通していたのは、落ちている間に「自分を雑に扱いやすくなる」という点でした。出来なかった日を0点にしてしまったり、人の言葉をそのまま心に入れてしまったり、「このくらいで弱るなんて」と自分にだけ厳しくしたり。これをそのまま続けてしまうと、立ち上がる力そのものが細ってしまいます。

だからこの記事では、先に土台を作る話をしました。
存在で見る日と成果で見る日を分けること。
自分に刺さる言葉を別の言い方に替えておくこと。
1日の終わりの採点者を自分に戻すこと。
助けを呼んでもいい側の人間だと許可しておくこと。
この辺りがしっかりしていると、その後に並んだ100の鍵が初めて活きてきます。

100の鍵を1度に使う必要はありません。むしろ、今の自分に合うものを1つだけ持って行って、明日の生活のどこかに差し込んでみる。それで少しでも楽に呼吸できたら、その日は成功です。落ち込みが長く続いた人ほど「これくらいじゃ変わらない」と思いがちですが、落ちたのが少しずつだったように、戻る時も少しずつで構いません。

そしてもう1つ大事なのは、また沈んでしまった時に自分を責めないことです。沈むこと自体は人間の自然な反応です。問題なのは「どう戻るかを忘れていること」の方です。今回用意したような戻り道のメモや、3つの温度で分けた行動が手元にあれば、前より短い時間で浮上できるはずです。前より早く戻れた、という経験はそのまま次の安心になります。

どん底にいたからこそ見えること、拾えること、寄り添える人がいます。あの場所を経験した人は、弱くなったのではなく、丁寧さの必要性を知った人です。この記事が、その丁寧さを自分自身に向けるきっかけになれば嬉しいです。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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