冬至を温めて過ごす日~柚子・南瓜・光りで楽しむ高齢者向けレクリエーション集~

[ 12月の記事 ]

はじめに…年末にのみ込まれない冬至の味わいを施設でも穏やかに取り戻すために

冬の行事は、どうしてもクリスマスや年末年始の準備が主役になります。ところが暦の上では、その少し前――12月22日頃にやって来る「冬至」が本来の節目でした。昼が一番短くなる日であり、ここから太陽が少しずつ高くなっていく日でもあります。言い換えれば「寒さは深いけれど、ここから上向きますよ」という合図の日です。この“上向く”という感覚は、高齢の方にとってもとても伝えやすく、優しいテーマになります。

今回は、この冬至を施設やデイサービス、グループホームなどの場で、ホッとする1日に仕立てることを考えていきます。お風呂が難しい方がいるなら手浴にする、かぼちゃが食べづらい方がいるなら彩りだけ借りる、創作が得意でない方には“香りをかぐだけ”を用意する――そうやって一つの行事を何段階かに分けておくと、参加する人の状態が少し違っても同じ「冬至の輪」に入ってもらえます。季節の行事は「全員が同じことを出来るかどうか」よりも、「同じ季節を一緒に味わえたかどうか」の方が大事ですから、冬至もその考えで組み立てていきましょう。

冬至といえばゆず湯、かぼちゃ、小豆、といった定番がありますが、これらは全て“体を温める”“邪気を払う”“来年に向けて運を呼び込む”という同じ向きを向いています。つまり、季節と健康の話を自然に結びやすいのです。職員が「今日は一年で一番昼が短い日なんですよ」「ここから日が延びていきますからね」と声をかけるだけで、そこに小さな会話が生まれますし、昔の家でしていたやり方を思い出してくださることもあります。

このあと、まずはあたためる、食べて季節を感じる、光を飾る、昔話で締める、という流れでお話ししていきます。どれも大がかりな準備をしなくてもできるものばかりです。年末の忙しい時期でも、ほんの一角に「今日は冬至なんだ」と感じられるやさしい時間を置いておけるように、一緒に組み立てていきましょう。

[広告]

第1章…まずは温めるから始める冬至の日

冬至と聞いていちばん思い浮かびやすいのは、やはりゆず湯です。日本では昔から「この日を境に日が長くなるから、体も気持ちも上向きにしておこう」という考えがあり、香りの良い物や体を温める物が好まれました。ただし、施設の現場では全員を本格的なお風呂に連れていくことが難しいことも多いので、ここでは“ゆず湯の気分を味わう”“お湯で手足を温める”“香りで冬至らしさを感じる”という3段階に分けて考えてみます。どの段階でも「今日は一年でいちばん昼が短い日なんですよ。ここからは日が延びますからね」と声を添えると、ただのお風呂ではなく「冬至の温め」に変わります。

手浴・足浴で作るゆず湯ごっこ

まず一番取り入れやすいのが、洗面器やバケツにお湯を張って、輪切りのゆずやゆずの香りの入浴剤を浮かべる手浴です。お湯の温度はぬるめにして、職員が横に座り「香りしますか? この香りを入れると風邪を引きにくいって昔は言いましたね」と話しながらゆっくり浸けてもらいます。ゆずの黄色は見た目にも明るく、手をお湯に入れた瞬間に血色が戻るので、ご本人も「おお、あったまるなぁ」と言葉が出やすくなります。足浴に出来るなら、タオルとバスタオルを多めに用意して、順番に入っていただくだけでも十分に行事らしくなります。

香りをかぐだけの参加席を用意する

体調によってはお湯を使えない方もおられます。その場合は、小皿や小さなカゴにゆずを1つ置き、爪楊枝で表面をつついて香りを立ててから「これが冬至の香りです」と鼻先に近づけます。香りの刺激は記憶を呼び起こしやすいので、「家でもおばあちゃんが入れてた」「昔は風呂が五右衛門だった」などの思い出話が自然と出てきます。話が出たらすぐ拾って、「そうそう、冬至は体を清める日と言ったんですよ」「ここから良くなるって意味で“一陽来復”って言葉もあるんです」と続けると、1つの物語としてまとまります。お湯を使わない参加席を最初から用意しておくと、全員が同じ話題に参加できます。

温めながら日付の話をする

冬至レクの良さは、身体を温める時間とお話の時間を同時にとれるところです。お湯に手を浸けている1~2分の間に、「今日は12月22日頃にあたる冬至で、ここから1月5日頃までが本当の冬至の期間なんです」「外は寒くても、太陽はここから高くなるんですよ」と季節の話を入れます。これは高齢の方にも理解しやすく、「じゃあお正月の頃にはもう日が長くなるのね」と前向きな言葉が返ってきやすい内容です。行事らしさを出すのに、特別な飾りや大道具がなくてもいいのはこのためです。温める、香りをかぐ、季節の話を聞く――この3つがあると、冬至の気分が自然に場に広がります。

このように、1章でやっておきたいことは「体を少し温めて、今日はいつもとは違う日だと知ってもらう」ことです。ここがふんわりと成功すると、次の章で出てくるかぼちゃや小豆、工作や飾りつけにも「さっきの冬至の続きですね」と入りやすくなります。年末でバタバタしている施設でも、まずは洗面器とゆず1個から始めてみてください。冬の底に、小さな陽だまりができます。


第2章…冬至の食材を主役にしたゆっくりレク

冬至のいいところは、使う食材にちゃんと意味があることです。なんきん(かぼちゃ)、小豆、れんこん、きんかん、ぎんなん……地方によっては「冬至の七種」といって、ことばの最後に「ん」が付くものを並べる風習もありました。「ん」が2つ付くと運が重なる、というやさしい言い伝えです。これなら高齢の方にも説明しやすく、「じゃあ今日は“ん”が付くものを眺める日にしましょう」と声をかけるだけで、場が柔らかくなります。ここでは、食べる人・見て楽しむ人・作るのを手伝う人に分けても進めやすい冬至レクの形を紹介します。

彩りプレートで“今日は冬至です”と伝える

まずは見た目で季節を伝える方法です。大きめのトレーに、少量ずつ冬至らしい色の食品を並べて見せます。例えば、かぼちゃの煮物を小皿に1つ、赤い小豆を炊いたものをガラスの小鉢に少し、輪切りにしたれんこんを軽くゆでて並べる。黄色・赤・白が並ぶと、冬の低い光にとてもよく映えます。食べるのが難しい方には「今日はこういうものを使う日なんですよ」と見てもらうだけでも行事になりますし、写真に残しておけばご家族にも様子を伝えやすくなります。

ここでひとこと、「冬至は12月22日頃で、ここから1月5日頃までが本当の冬至の期間なんですって。だから今日は、冬の中で元気を付ける色を集めました」と添えておきます。料理の説明だけでなく、日付の話が入ることで、1章で温めた“冬至の時間”と繋がります。

かぼちゃを“切る・渡す・盛る”に分けて役割を作る

調理レクは、すべてを利用者さんにお願いしようとすると無理が出ます。冬至の日は「かぼちゃを使う」という目的がはっきりしているので、職員が予め柔らかくしておき、参加してもらうのは安全な部分だけにします。例えば、
・皮をむいたかぼちゃを一口大に分けてもらう
・お椀に盛りつける
・最後にゆずの皮をちょっと乗せる
といった手元の作業です。これなら座ったままでもできますし、「この黄色は風邪を防ぐんですよ」「冬の野菜なのに甘いですね」といった会話が続けやすくなります。ゆずの皮をそっと載せるだけで色も香りも出るので、行事感がグッと増します。

小豆を使って“邪をはらうおやつタイム”にする

冬至と小豆の組み合わせは、赤い色で悪いものを遠ざけるという考えが元にあります。お粥にするのが難しい現場なら、市販のゆで小豆を使ってやわらかい白玉に少し載せるだけでも十分です。この時も「今日は一年の中で一番夜が長い日なので、赤い色で良くないものを遠ざけるんです」と一言添えておきます。おやつの時間に季節の意味を添えるだけで、参加した方の中に「今日は特別な日だった」という記憶が残ります。

また、嚥下が気になる方には、小豆の量をほんの小さじ1にして、代わりにかぼちゃのペーストやムースを多めにするなど、見た目の色だけ借りる方法もあります。無理なく口に入れられるかどうかを優先しながら、色と香りで冬至らしさを足す。これが高齢者向けの季節レクのコツです。

思い出を聞き出す“台所トーク”を忘れない

食べ物を前にすると、子どもの頃の冬の話や、お正月準備の話が自然と出てきます。「うちの地方ではかぼちゃじゃなくて里芋だった」「柚子は庭からとってきた」「風呂をたくのが楽しみだった」――こうした話は、冬至の料理を並べている間が一番出やすい瞬間です。職員が「それ、ちょっと詳しく教えてください」とすぐ拾ってあげると、次の年にも使えるネタになりますし、施設としての冬至レクにも“その場所ならでは”の色がつきます。

この2章でやりたいのは、冬至の食べ物をただ食べるだけでなく、「なぜ今日この食材なのか」を一緒に味わってもらうことです。色・香り・言い伝えを揃えておくと、先ほどの温めレクと自然に繋がり、「今日は冬至をしているんだ」という実感が利用者さんの中に育ちます。


第3章…ひかりを呼び込む創作と飾り付け

冬至は「ここから太陽が高くなる日」ですから、飾り付けも明るい色を選ぶと物語が繋がります。
十二月の施設内はどうしてもクリスマスカラーの赤・緑が多くなりますが、冬至だけは敢えて黄色・橙色・白を前面に出すと「今日は違う行事をしているんだな」と分かりやすくなります。
特にゆずの黄色は、見ただけで冬至を思い出せる色です。実物がなくても、色画用紙やフェルトで代用できます。

ゆず色・橙色でそろえた卓上飾り

もっとも簡単なのは、丸く切った黄色の画用紙を、卓上の小さな花器や紙コップに貼って“ゆずの実”に見立てる方法です。
利用者さんには、予め下書きしておいた丸に色を塗ってもらう、葉っぱだけ緑で塗ってもらう、といった軽い作業をお願いすれば十分です。
手指の動きが小さくて済むので、座位が安定しにくい方でも参加しやすくなります。

出来上がった“ゆずの実”は、1章で手浴をしたテーブルや、2章でかぼちゃを盛りつけたワゴンの側に並べておきます。
行事の動線に同じ色が見えるだけで、全体がひと続きの冬至プログラムに見えてきます。

南天とあわせると年末らしさが出る

もし南天の造花やプリントが用意できるなら、ゆず色に赤をほんの少し足してあげると「難を転ずる」の意味が加わります。
冬至の“ここから良くなる”という考え方とぴったり重なるので、職員が
「ゆずで温まって、南天で年越しの準備をする感じですね」
と一言添えると、行事の説明がグッとやさしくなります。

実物の南天がなくても、赤い丸シールを2~3枚ずつ貼るだけでそれらしくなります。
細かい葉の形が難しければ、枝を描いた紙にシールを貼ってもらうだけでも作品として成立します。

陽の光りを集める“窓周り”の演出

冬至は日の高さが一番低くなるので、窓から差し込む光りが横から入ります。
この光りを活かして、透明な下敷きやクリアファイルに黄色とオレンジのセロハンを貼り、窓辺にさげておきます。
午後の光りが差し込むと、床やテーブルに温かな色が落ちて、利用者さんの表情もやわらかく見えます。

この時も、飾っただけで終わりにせず、
「今日は冬至なので、光りを呼び込む色にしてあります」
「ここから日が延びていきますよ」
と声をかけておきます。
装飾が“意味のある飾り”に変わる瞬間です。

作れなくても“触れるだけ”の席を作る

創作が苦手な方や、細かい作業が難しい方には、完成品を触っていただく席を用意しましょう。
フェルトで作ったゆずや、フワッとしたリボンのついた南天飾りを手渡して、
「これは冬至の色ですよ」「この黄色はゆずの色です」
と伝えれば、その方も同じ行事を味わえます。

この3章でやりたいのは、施設の中に「今日は光りを呼びこむ日」という空気を目に見える形で置いておくことです。
1章の温めと、2章の食材にもう1つ“見て分かる明るさ”が加わると、冬至の一日がやさしくまとまります。


第4章…昔ばなしと暦で繋ぐ冬至から立春までの語らい

冬至レクを温かく終わらせるには、最後に「話す時間」を入れておくと綺麗にまとまります。
高齢の方にとって季節の行事は、子ども時代・若い頃・子育て期に体で覚えた記憶と繋がっています。
そこをゆっくり掘り起こしてあげると、1章~3章でやった「ゆず」「かぼちゃ」「光りの飾り」が、すべて“昔の暦とつながった一日”として心に残ります。

「冬至が過ぎたら日が延びるんです」を合図に話を開く

語らいを始める時は、職員の方から季節の一言を投げます。

「今日は12月22日頃にあたる冬至で、ここから1月5日頃までが本当の冬至の期間なんですよ」
「この後、節分が来て、2月4日頃には立春になります。昔はここをお正月にしてたんですって」

こう言うと、「へえ、そうだったの」「うちは節分に豆をまいたよ」といった話が自然と出てきます。
暦の順番を口に出してもらうだけでも、季節を生きてきた実感が戻ってきます。

家ごとの“冬の決まりごと”をひとつずつ聞き出す

次に「冬に家でしていたこと」を尋ねていきます。

「冬至にお風呂に何か入れましたか」
「柚子は買ってましたか、庭で採れましたか」
「年越しの前に、おじいちゃんおばあちゃんがしていたことはありますか」

この辺りは地域差が大きいので、必ず誰かが違うことを言ってくれます。
「うちはこんにゃくだった」「小豆を炊いてた」「火鉢の炭を替えた」など、どれも冬至~年末の台所と繋がる話です。
聞けたらすぐにホワイトボードやメモに書きとめておき、
「この施設の冬至の思い出は、こういうのが多いですね」
とまとめてあげると、利用者さん自身の生活史がそのまま行事の材料になります。

「一陽来復」ということばをやさしく添える

冬至は「これから陽が戻ってくる日」なので、最後に“よくなる言葉”を添えておきましょう。

「昔の人は、冬至を過ぎると“一陽来復”って言って、今よりも良い方に行きますようにって願ったそうです」
「だから今日あったかくして、黄色いもの食べて、家を飾ったんです」

こう説明すると、先にやった手浴やかぼちゃレクが「ただのケア」ではなく「いい年を迎えるための支度」だったと伝わります。
言葉の意味が分かると、行事はグッと記憶に残ります。

歌で締めて“冬の底”にあかりを灯す

時間にゆとりがあれば、この語らいの最後に短い歌を入れます。
冬の唱歌や、年末に向かう時によく歌われる童謡でも構いません。
歌は声を出すので体も温まり、先ほど話した「日が延びる」「ここから良くなる」という内容とも相性が良いです。

歌い終わったらもう一度だけ、

「今日は冬至をしてみました。これから日が延びて、節分が来て、立春になります。ここから先も一緒に季節を進んでいきましょうね」

と声を掛けて終えると、冬至が“単発のイベント”ではなく“年末の入口”として心に収まります。

この4章でやっていることは、とてもシンプルです。
暦の順番を伝える
各自の昔話を拾う
良い方向の言葉を添える
歌で感情を温める
この流れがあると、賑やかな装飾がなくても「冬至をきちんとした」と感じてもらえます
年末の慌ただしさの中でこそ、こうした静かなレクリエーションが効いてきます。

[広告]


まとめ…冬至を一日イベントにせず年末への入口として静かに根づかせるために

今回の冬至レクは、ゆずで温め、冬の食材で彩りをつけ、光りの飾りで気持ちを明るくし、最後は昔話で締める――という、ゆるやかな4段階で組み立てました。
どれも難しい道具を使わず、12月22日頃という日付の意味をそっと添えることで、“今日は特別だった”と思ってもらえる流れになっています。

ポイントは、冬至を「ゆず湯だけの日」にしないことです。
身体の温めが出来る人は手浴を、食べられる人はかぼちゃや小豆を、手作業ができる人は黄色い飾りを、難しい方には香りをかぐだけ――と、参加の入り口をいくつも用意しておくと、利用者さんの状態がバラバラでも同じ時間を共有できます。行事を皆で味わえると、職員側も「来年はここを足そう」と振り返りやすくなります。

もう1つ大事なのは、「冬至から小寒の前日までが本来の冬至期」という暦の考えを一言だけでも伝えておくことです。
そうすると、年末の掃除や節分の準備と緩く繋がって、季節の行事として感じやすくなりますし、施設の年間カレンダーにも自然に組み込めます。冬の底でいったん体を清め、色と香りで気分を上げ、ことばで未来に向ける――この順番が入っていれば、冬至はとてもやさしい行事になります。

年末はどうしても慌ただしくなりがちですが、その中に半日でも「今日は陽が戻る日だから、少し温かく過ごしましょう」と置いておくと、利用者さんの心も職員の空気もやわらぎます。
冬至だからこそ出来る、静かで明るいレクリエーションを、毎年の恒例にしていきましょう。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


[ 応援リンク ]


人気ブログランキングでフォロー

福彩心 - にほんブログ村

[ ゲーム ]

作者のitch.io(作品一覧)


[ 広告 ]
  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。