飽きっぽいのは才能の芽?~子どもと大人に共通する次へ進む力~

[ 秋の記事 ]

はじめに…飽きることを悪者にしない準備運動

また飽きちゃったの?――そんな声をかけられると、ちょっぴり胸がチクッとしますよね。けれども、飽きるって本当にいけないことでしょうか。私は、飽きることを終わりの合図ではなく、次へ進むスタート音だと考えています。

例えば、子どもがおもちゃを次々と乗り換える時。それは「もうつまらないから捨てた」ではなく、「仕組みが分かったから次の謎へ行くよ」という合図かもしれません。分からないものには人は飽きません。飽きたということは、頭の中に理解がたまって“満タン”になった証拠です。

大人の世界でも同じです。恋がフッと冷める瞬間や、仕事に違和感を覚える瞬間は、心のコンパスが「向きを変えよう」と知らせてくれているサイン。無理に同じ場所で頑張り続けるより、1歩となりへ動く方が、うまくいくことだってあります。

飽きることを責めてしまうと、せっかくの気づきが小さくなってしまいます。反対に、「飽きた理由」をそっと見つめると、次に試したいこと、学びたいこと、会いたい人が見えてきます。これは立派な才能の種です。

このお話では、子どもの遊び、大人の恋、そしてお仕事の3つの場面を覗きながら、「飽きる=次へ進む力」という視点で、やさしく楽しく辿っていきます。読み終える頃には、「飽きっぽいね」と言われても、ニコッと笑って「それ、成長のサインです」と言える自分になっているはず。どうぞ肩の力を抜いて、ページをめくってくださいね。

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第1章…おもちゃを乗り換える理由~子どもが見せる理解が満ちた合図~

朝はブロック、昼はミニカー、夕方は折り紙。まるで駅に停まる電車のように、遊びが次々と乗り換わる日があります。大人の目には「落ち着きがない」と見えても、子どもの脳内では、遊びごとに違うスイッチがカチッと入っては、学びが満タンになっていく小さな音が鳴っています。飽きたのではなく、次のホームに着いた――そんな合図だと考えてみませんか?

おもちゃは小さな実験装置です。ブロックなら「形と重なり」、ミニカーなら「速度と摩擦」、折り紙なら「面が線になり線が点になる不思議」。子どもは触れて、壊して、直して、ため息をついて、目を輝かせて、また触れて――この往復運動の先に「分かった!」がやってきます。分からない物には、人はなかなか飽きません。だからこそ、フッと手が離れた瞬間は、「この遊びの謎は、今日のところは解けたよ」という前向きな区切り目なのです。

ここで叱ってしまうと、「次を試す勇気」まで一緒にしまい込んでしまいます。代わりに、「さっきのブロック、綺麗な塔だったね。次は何で遊ぶ?」と、やさしく“次の扉”を指さす声かけに変えてみましょう。子どもの心は安心して移動できます。安心があると、再訪も起きます。昨日置いていったミニカーを、今日は別の坂道で走らせるかもしれません。行きつ戻りつ――このリピートは、理解が深くなる前触れです。

「良いおもちゃって何だろう?」と迷ったら、少しだけ難しい階段を思い浮かべてください。段差が低過ぎると退屈、高過ぎると怖い。子どもにとって丁度良い段差は、年齢ではなく、その日のご機嫌や体調や閃きメーターで変わります。昨日は難しかったパズルが、今日はスウッとはまる――そんな日替わりの魔法に合わせて、おもちゃの候補を緩やかに入れ替えていくと、乗り換えは「逃避」ではなく「挑戦の更新」へと姿を変えます。

例えば、積み木職人のように塔ばかり作る日が続いたら、そっと鏡を置いてみましょう。映った塔を見ながら形を写す遊びが始まり、左右や対称の感覚が芽ばえます。車ばかりなら、布で凸凹の道を作ってみましょう。振動や音が変わり、速度の調整という新しい課題に出会えます。折り紙に夢中なら、完成品を飾る小さな「展示コーナー」を作ってみましょう。作品が並ぶと、次は色の組み合わせに意識が移ります。同じ遊びでも、視点を1つ足すだけで、世界はグンと広がります。

飽きやすさは、実は「切り替える筋肉」の強さでもあります。大人になってから役立つのは、この筋肉です。やり方を掴んだら、躊躇わず次の扉へ。うまくいかなければ、昨日の扉へ戻ってやり直す。この軽快な足取りは、学びの速度そのもの。だから、乗り換え上手な子を見つけたら、心の中でこう呟いてください――「もう1つ理解が満ちたんだね」。その一言が、次の好奇心の燃料になります


第2章…恋が冷める瞬間~心のコンパスが示す相性の学び~

恋の温度は、季節の空のように移ろいます。昨日は雲ひとつない快晴、今日はうす曇り。ふっと温度が下がった自分に気づくと、「私って飽きっぽいのかな」と不安になるかもしれません。でも、その一瞬は、心のコンパスが静かに向きを変えた合図。進む方角を教えてくれる、やさしい信号なのです。

小さなズレを見抜く微差センサー

会話のテンポ、笑いのツボ、約束の受け取り方――たったひと呼吸分のズレを感じ取れる人がいます。これは我儘ではなく、観察力の高さ。例えば、相手の「大丈夫だよ」の裏にある疲れを察したり、自分の「平気だよ」の奥で静かに鳴る違和感を聞き取ったり。微差を見抜く力は、二人にとって無理のない歩幅を探すための羅針盤です。温度が下がるのは、冷たさではなく調整の前触れ。速度を緩めて、もう一度、手をつなぐ方法を探す合図かもしれません。

恋は共同の実験のようなものです。仮説を立てて、試して、結果を受け取り、次の仮説へ進む。合わないと感じたときに早めに立ち止まれるのは、誠実さの表現でもあります。長く引っ張るより、温度が高いうちに「今の歩幅では苦しくなるかも」と伝えられる人は、実は思いやりの持ち主。早い決断は、相手の時間を大切にする選択でもあるのです。

終わりをやさしく置くということ

別れを選ぶ時、物語が台無しになるわけではありません。むしろ、良かった時間を言葉でそっと包むと、二人の物語は美しく閉じられます。「一緒に笑った景色が好きだった」「あなたの丁寧さに救われた」――そんな一文を手紙のように置いておくと、心はきちんと前へ進みます。終わり方の品は、次の始まり方の質をそっと引き上げてくれます。

そして恋には、再訪の扉もあります。季節がひと回りして、別の角度から会えば、かつてのズレが笑い話になることだってある。あの頃は見えなかった魅力が、今ははっきり見える――そんなことも起きます。だから「冷めた=断絶」ではありません。熟成の小休止、という見方を1つポケットに入れておくと、心はずっと軽くなります。

自分へのラベルも貼り替えてみましょう。「飽きっぽい」ではなく「羅針盤が敏感」。心の地図に、安心の北、尊敬の東、ときめきの南、生活の整合の西――この4つの方角を描いてみる。二人の時間が、少なくとも2つ以上の方角で重なる時、関係は緩やかに深まります。重ならない時は、地図の描き直し。それは敗北ではなく、誠実な航路変更です。

恋が冷める瞬間は、氷点下の宣告ではなく、体温計のささやき。今の温度で無理をしないでね。その声を聞ける耳は、未来の自分を大切にする力です。やさしく方向を変えられる人は、やがてピタリと合う歩幅の相手と出会います。そしてその時、あなたは知るでしょう。あの“冷めた”日こそが、本当の「始まり」の前日だったことを。


第3章…仕事が続かない?~小さな違和感が起業アイデアになるまで~

朝の電車でため息。デスクに着いても心が軽くならない。そんな日が何度も重なると、「私って飽きっぽいのかな」と不安になりますよね。けれど、仕事で感じる“飽き”は、ただの脱力ではありません。自分の得意や価値観と、いまの職場の仕組みとの間に生まれた小さな段差を、心が先に見つけたサインです。段差に気づけること自体が、既に才能の働き。見えない凸凹を言葉にできる人は、環境を整える力を秘めています。

違和感メモは未来の設計図

「ここがもったいない」「こうしたら速そう」――ふと浮かぶ改善の芽を、机の隅っこに小さく書き留めてみましょう。1日で3つ、1週間で10こ。点のメモは、そのうち線になります。線が面になったら、もう企画の形。上手に説明できなくても大丈夫。例えば、「朝一の確認を午後に回すと、午前は集中できる気がします」――この一文で十分に扉が開きます。違和感をやさしく言葉にすると、周りの人も一緒に段差を見つけられるようになります。

早い撤退は試作スピード

「合わない」と早めに判断して動く人は、逃げ足が速いのではなく試作スピードが速い人です。合う場所を見つけるまでの試行回数が多いほど、自分の得意がくっきりしてきます。例えば、同じ接客でも、静かな商品説明が好きなのか、賑やかなイベント運営が好きなのかで、適した現場はまったく変わります。合う場所に出会ったときの定着力は、思っているより強いもの。だからこそ、合わなかった場所からの早い撤退は、次の定着のための助走なのです。

小さな企てを日常に置く

いきなり大きな改革を狙う必要はありません。明日の自分が実行できるサイズで、そっと置いてみる。例えば、朝の10分だけ静かな時間を作る、終業前の5分だけ振り返りひとことを呟く。こんな小さな企てを1か月続けるだけで、仕事の景色はゆっくり変わります。続けるコツは、完璧を目指さないこと。3日抜けても、4日目にフワッと戻ればOKです。戻れる人は、結局一番遠くまで行けます。

仕事を辞める決断だって、物語の失敗ではありません。自分の物語を丁寧にめくるためのページ送りです。退職の手前で、「この職場で学べたこと」を心の中で1つだけ言葉にしてみましょう。例えば、「段取りの基礎が身についた」「挨拶の力を知った」。このお土産のような言葉は、新しい場所で最初に役立つ道具になります。

最後に、合言葉を1つ。――「飽きたから、おしまい」ではなく、「飽きたから、始まり」。小さな違和感は、明日の企画書。あなたの足は止まっていません。向きを変えて、歩み直しているだけ。そう気づいた瞬間、胸の中に、静かなエンジン音が聞こえてきます。


第4章…飽き=秋の例え話~季節が教えるやさしい切り替え術~

秋の空は高く、風は少し冷たく、夕暮れは早くなります。昨日と同じ道でも、照り方や匂いが違って見えるのが秋の不思議。人の心も同じで、同じ景色のはずなのに、フッと別の色に見えてくる瞬間があります。これを「飽きた」と言ってしまうと、なんだか残念な響きになりますが、秋はこう囁きます――「それは、切り替えの合図ですよ」と。

落ち葉は、木が弱ったから落ちるのではありません。次の芽を守るために、そっと手放しているのです。私たちの“飽き”も、同じ仕組みかもしれません。今の自分に必要な栄養はもう吸い切ったから、次の枝先へ光を届けよう――そんな、静かな決断。手放すのは負けではなく、育つ準備。木が葉を落とすたびに根は深くなり、春の芽吹きは力強くなります。

夕暮れの一歩手前で、灯りを点ける

日が短くなる秋は、少し早めに灯りを点けます。心の灯りも同じです。「前ほどワクワクしないな」と感じたら、真っ暗になる前に、小さな明かりを1つ用意しておくと安心です。例えば、作業の終わりに「今日のご褒美」をひと言つぶやく、帰り道を、ほんの少しだけ遠回りして秋の匂いを吸い込む。たったそれだけで、気分はやわらかく切り替わります。無理に燃やし続けず、やさしく灯す――秋はそのペースを教えてくれます。

稲刈りの後の田んぼは、いきなり冬眠するわけではありません。からっぽに見えて、土はゆっくり呼吸し、見えないところで次の季節の準備をしています。人の学びも似ています。夢中で駆け抜けたあとに“飽き”がくるのは、吸収を終えて沈みこむ時間に入ったから。ここで焦って新しい刺激を詰めこむより、温かいお茶の湯気を眺めるように、少しだけ余白を置く。余白はサボりではなく、次の芽が生まれるベッドです。

衣替えは、心の整理整頓

衣替えのたびに、去年のコートに手を滑らせますよね。「これはまだ着られる」「これはありがとう」。この感覚を、心の棚にも持ち込みましょう。飽きたと感じたものに、「嫌い」ではなく「ありがとう」をそっと添えると、手放し方がきれいになります。きれいに手放した場所は、次のときめきが居心地よく座れる席になります。席が用意されていれば、出会いは自然と早く、そして長持ちします。

秋は“間”の季節です。夏の勢いと冬の静けさの間で、呼吸を整える季節。だから、飽きることを笑って許すユーモアが似合います。「私の好奇心、今日は紅葉狩りコースだね」と、心の観光案内を呟いてみる。声に出すと、気持ちは不思議と整います。整った気持ちは、またすぐに温度を取り戻します。

やがて季節はめぐり、春が来ます。秋に手放した枝先から、新しい芽が顔を出すように、あなたの“飽き”の向こうにも、小さな芽が待っています。だから合言葉は、いつだって同じ。――「飽きたから、おしまい」ではなく、「飽きたから、はじまり」。秋は、その言い方をやさしく教えてくれる先生です。

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まとめ…終わりではなく始まり~飽きは次の扉のサイン~

子どものおもちゃ、大人の恋、仕事の景色――3つの場面を歩いてみると、「飽きた」という呟きは、実は理解が満ちた合図だったり、心のコンパスが針を振らせた瞬間だったり、小さな段差を見抜いた賢さだったりしました。秋が葉を手放して次の芽を育てるように、私達もそっと手を緩めることで、次の光が入りやすくなります。

大切なのは、飽きた自分を責めないこと。終わりに黒い丸を打つ代わりに、やわらかな読点を置いてみましょう。今日の自分に「ここまで、よく進んだね」と声を掛け、明日の自分に「続きは、ここから」と小さな矢印を渡す。たったこれだけで、心の足取りはフワリと軽くなります。

もし何かを手放す時が来たなら、「嫌いになったから」ではなく「たくさん学べたから」と言い換えてみてください。恋なら、交わした笑顔の温度を。仕事なら、身についた段取りの確かさを。遊びなら、「わかった!」の瞬間の煌きを。そうやって“ありがとう”を添えて離れると、次の出会いはやさしく着地します。

合言葉は、いつでも同じ。――「飽きたから、お終い」ではなく、「飽きたから、始まり」。読み終えた今、この文章を閉じるあなたの手が、次の扉のノブにそっと触れています。深呼吸を1つ。ゆっくり回して、一歩前へ。あなたの好奇心は、今日もちゃんと動いています。

⭐ 今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m 💖


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