特養閏年大祭の第2弾~4年の秘密稽古が本番より面白い件~

[ 2月の記事 ]

はじめに…メモリアルムービーは稟議書より先に回り始めた

特養の会議室には、いろんな音がします。ペンの走る音、ため息の音、そして理事長の「思いついた!」という声。これが聞こえた瞬間、事務長の心の中で別の音が鳴ります。「稟議書のプリンターが、今日も忙しくなる音」です。

今回の話は、あの2月29日――つまり閏年の“追加日”を、特養が勝手に大祭にしてしまう計画の第2弾。第1弾では「当日をどう盛大にするか」を描きました。理事長のムーンウォーク、事務長の落語、職員のダンスや剣舞、手品に科学実験、そして入居者さんの投票ボール。安全第一で、距離を取り、見慣れた顔が舞台に立つからこそ、テレビより心に刺さる。あの設計図は、確かに夢がありました。

でも、正直に言うと――本当に面白いのは、そこじゃあないんです。

祭りの当日は60分×2。けれど祭りの“燃料”を作るのは4年間。しかも特養の場合、その4年の中身が濃い。濃過ぎて、当日より笑える。これは理事長も最初は気づいていませんでした。理事長は「当日が派手なら勝ち」と思うタイプです。ところが事務長は、当日が派手になるほど“裏側が修羅場になる”ことを知っているタイプ。つまり、この企画は始まった瞬間から勝負が決まっていました。勝負というか、事務長が勝手に勝ちます。だって現実に勝てるのは、現実を握っている人だけだからです。

第2弾は、その“裏側の4年”を、メモリアルアルバムムービーみたいに追いかけます。プロの先生探しから始まり、何故か紹介が紹介を呼び、理事長の謎の人脈メカニズムが作動して、「剣舞の先生」が本当に現れる。そこからは、華麗な舞い――の前に、ストレッチ。体幹。姿勢。フォーム。筋肉痛。湿布。理事長の「俺の腰、舞ってる?」という迷言。先生の「腰は舞う前に起きてください」という名言。事務長の無言の頷き。こういう積み重ねが、4年分あります。

もちろん、笑って終わりではありません。特養の入居者さんは要介護度が高く、日々の体調が揺れます。だからこそ「4年後にまた会おう」という約束が、けっして軽くない。その重みを知っている現場で、職員が4年かけて準備を重ねることには意味があります。入居者さんに無理をさせない。距離と安全を守る。その上で「見慣れた職員が全力で挑む姿」を見てもらう。それは笑いでもあり、励ましでもあり、「今日を生きる」力になる。

そして今回は、当日の舞台だけでなく“映像”も主役です。4年間の稽古を、短いクリップで繋いでいく。初年度のガチガチの動き、2年目の理事長の汗、3年目の完成の兆し、4年目の衣装合わせ、照明チェック、音響のリハーサル、そして本番直前の静かな顔。ムービーが流れた瞬間、入居者さんの目が「いつもの職員」を「舞台の人」に変えてしまう。ここで、もう勝ちです。勝ち負けというより、心が動いた時点で大祭は成立します。

さて、ここから先は、4年の秘密稽古という名の珍ドキュメンタリー。理事長の無茶が、事務長の翻訳で現実になり、現場の人たちが何故か少しずつ強くなっていく物語です。笑いは第1弾より強めにします。安心してください。稟議書より先に、笑いが回り始めていますから。笑い、ここ大事。

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第1章…理事長の一言「コストは度外視」で会議室が氷点下になった日

理事長が会議室に入ってくる時、たまに空気の温度が下がります。暖房は動いているのに、何故か下がる。原因はだいたい同じで、理事長が“思いつき”を持っている時です。事務長はその足音だけで分かります。新人職員は分かりません。だから新人は笑顔で「おはようございます!」と言い、事務長は無言でプリンターの電源を入れます。勝負はもう始まっています。

その日、理事長は席に着くなり、資料も見ずに言いました。

「閏年大祭、第2弾だ。今回は4年だ。秘密稽古だ。衣装はレンタルで統一。音響照明もちゃんとやる。プロの先生につく。で、コストは度外視だ。」

会議室は一瞬、音が消えました。誰かが息を吸う音だけが、やけに大きく聞こえた気がします。栄養士さんがペンを落とし、介護職が目を泳がせ、総務が遠くを見る。事務長だけが、静かにメモを取る。何故かというと、事務長はもう知っているからです。この「度外視」という言葉は、理事長の中では“魔法の呪文”ですが、事務長の中では“翻訳が必要な方言”並みの文句だということを。

事務長はゆっくり顔を上げて、理事長にだけ聞こえる声量で言いました。

「理事長、翻訳します。『度外視』は、『正しい根拠を揃えて通す』という意味ですね。」

理事長は一瞬黙って、何故か満足そうに頷きました。たぶん自分が賢く聞こえたと思っています。違います。事務長が賢いんです。

ここから、特養特有の“理事長メカニズム”が動き出します。理事長は不思議な人脈を持っています。普段は何も出てこないのに、こういう時だけ出てくる。まるで収納が無限の引き出しみたいに、「あ、そういえば…」が連続で出てくるんです。「昔、剣舞をやってた先生がいる」「ダンス教室の知り合いがいる」「音響の人を知ってる」「衣装レンタルのルートがある」。事務長はそれを聞きながら、心の中で拍手します。拍手しながら、同時に“現実の地雷”も数えています。

何故なら、特養の現実は、派手さの反対側にあるからです。入居者さんは要介護度が高く、体調は日々変わる。音が大き過ぎれば驚く方がいる。光が強過ぎれば疲れる方がいる。導線が悪ければ転倒に繋がる。演者だって同じで、無茶な練習は怪我に繋がる。だからこの企画は「派手にするための企画」ではなく、「安全に派手を成立させるための企画」でないといけない。理事長が度外視するのは財布であって、リスクではない。ここを間違えると大惨事です。

事務長はその場で、会議のルールを決めました。と言っても、紙に書いて「はい決まり」とするような堅い話ではありません。事務長はこういうことを、妙に軽い口調で言うのが得意です。

「皆さん、今回の秘密稽古は、上手になることが目的ではありません。『安全に見せられるか』を4年かけて判断する企画です。上達はその結果としてついてくるものです。危ないと判断した演目は、本番でやりません。練習の努力は、ムービーに残します。」

理事長が即座に食いつきます。「ムービーに残す? それ良いな。努力の映像は泣ける。」事務長は頷きます。「泣けます。ただし、転んだ映像は使いません。」理事長が小さく「ケチだな」と言い、事務長が小さく「安全です」と言う。ここがこの企画のテンポです。笑いながら、ちゃんと守る。

そして、その瞬間から第2弾のテーマが決まりました。4年の秘密稽古は、ただの準備ではなく、既に“作品”なんです。プロを探すところから、先生に出会うところまでが第1幕。稽古の汗と筋肉痛が第2幕。完成の兆しと挫折が第3幕。本番前夜の静けさが第4幕。そして本番の60分は、エンドロールの後のオマケみたいなもの。いや、理事長は絶対に「本番が主役だ!」と言いますが、読者さんにはもう分かってしまうはずです。本番より面白いのは、そこへ辿り着く道程だと。

次の章では、いよいよ“プロ探し編”に入ります。理事長の人脈引き出しが開き、紹介が紹介を呼び、何故か剣舞の先生が現れる。ここから先は、特養の会議室ではなかなか見られないタイプのドラマが続きます。しかも、笑い多めで。だって、稟議書より先に回り始めたムービーが、もう止まらないんですから。


第2章…プロ探し編~先生を探す旅がいちばん面白い~紹介・偶然・ご縁

理事長が「プロの先生につくぞ」と言った瞬間、職員の頭に浮かぶのはだいたい2つです。1つ目は「先生って、どこにいるの?」。2つ目は「先生って、いくらするの?」。そして事務長だけは、3つ目が浮かびます。「先生って、契約書にサインしてくれるの?」。この3つが揃った時、初めて“現実のスタートライン”に立てます。

理事長はここで、例のメカニズムを発動します。正式名称は「理事長メカニズム」。内容は単純で、理事長の口癖「そういえば…」から始まる不思議な連鎖です。

「そういえば、昔うちの行事で司会やってくれた人がいたな」
「そういえば、その人の知り合いにダンス教室があったような」
「そういえば、そのダンス教室の先生の親戚が武術をやっていた気がする」

……こうして話が進むうちに、何故か“剣舞の先生”が候補に上がってきます。職員側は最初、半信半疑です。「剣舞って、どこにあるんですか?」と聞きたくなる。理事長は自信満々に言います。「ある。ご縁はだいたい、ある。」事務長は静かに言います。「ご縁は、確認します。」

先生選びで大事なのは「上手さ」より「安全に魅せられるか」

ここで事務長の“現実の翻訳”が入ります。派手な芸ほど、先生の技術だけでは足りません。特養でやるなら、もっと大事な条件が増えます。会場は限られる。床は体育館みたいに整っているとは限らない。演者はプロではなく職員。しかも仕事の合間に練習する。だから必要なのは、テレビみたいな無茶を教える先生ではなく、「安全に見せる型」を作ってくれる先生です。

理事長が言います。「剣舞は、キレだ!」
事務長が言います。「剣舞は、まず転ばないことです。」

この会話だけで、先生選びの方向性が決まります。理事長が求めるのは“見た目の華”。事務長が求めるのは“成立する華”。そして両方が揃う人は、案外少ない。だからこそ、探す旅が面白いんです。

まずは「体験」をお願いする~理事長はすぐ本契約したがる~

理事長の悪い癖は、気に入るとすぐ決めたくなることです。「この先生だ!」と目を輝かせて、名刺を握りしめて、もう本番の曲まで決めようとする。事務長はそれを、笑顔で止めます。

「理事長、まずは体験です。」
「体験? 俺は本気だぞ。」
「本気だから体験です。」

これ、事務長の名セリフです。本気ほど、段取りが必要。段取りほど、失敗が減る。失敗が減るほど、安全にふざけられる。特養の舞台は“安全にふざけた者勝ち”なので、ここは譲れません。

体験の日、先生が来ます。凛とした雰囲気、でも笑顔は柔らかい。衣装の話になると、民族衣装の要素や刺繍の意味までサラッと説明できるタイプ。理事長はその時点でもう心を掴まれています。「うちの舞台、全部任せたい。」事務長は小さく咳払いして、こう言います。「先生、4年計画です。無茶はしません。無茶は理事長が言いますが、実行はしません。」

先生が一瞬だけ理事長を見て、微笑んで言います。「分かりました。まずは立ち方からですね。」
理事長が聞き返します。「剣じゃないのか?」
先生は笑顔のままです。「剣の前に、腰を起こします。」
事務長が深く頷きます。「最高です。」

この瞬間、会議室の氷点下が少し溶けます。先生が“現実の味方”だと分かったからです。

ご縁が繋がると施設の空気が変わる

不思議なもので、良い先生に出会うと、施設の空気が少し変わります。職員が「自分でも出来るかも」と思い始める。参加したい人が増える。見学だけの人も出てくる。控え要員として支える役に回る人も現れる。理事長は嬉しくて、つい大きなことを言います。「全員、舞台に立てる!」事務長はすかさず言います。「全員、立つ必要はありません。全員で、支えれば勝ちです。」

そして先生側も、特養の空気を知っていきます。入居者さんが驚かない距離。音量の上限。床の滑りやすさ。動線の確保。途中で座ってできる所作も取り入れられないか。こういう“舞台の条件”を共有していくと、先生の指導が「格好良い」から「格好良く成立する」に変わっていきます。ここが、4年計画の強みです。

理事長は最後に、決め台詞を言います。「これで勝ったな。」
事務長は言います。「勝ってません。まだ契約書です。」
理事長は言います。「契約書? そんなの心で――」
事務長は言います。「心は大事です。書類も大事です。」

この掛け合いで、全員が少し笑います。笑った時点で、もう企画は動き出しています。

次の章では、いよいよ秘密稽古が始まります。華麗な剣舞の前に、地味な立ち方。キレの前に、体幹。衣装の前に、汗と湿布。けれどその地味さこそが、後でムービーの宝物になります。4年の笑いは、こうして一歩ずつ貯金されていくんです。


第3章…秘密稽古編~上達より先に筋肉痛がやって来る~そして事務長が笑う

プロの先生が決まり、いよいよ秘密稽古が始まりました。理事長はこの時点で、もう頭の中が本番です。音楽、照明、衣装、拍手、入居者さんの笑顔、そして自分のムーンウォークが床に吸い付く未来。理事長は未来を見ます。事務長は現実を見ます。先生は、その間にある「地味」を見ます。つまりこの3人が揃うと、完璧に進むはず――と思うでしょう? ところが現実は、地味が強い。地味が強過ぎて、最初の敵は“自分の体”でした。

初回の稽古、理事長は意気揚々と剣を握ろうとします。先生は笑顔で止めます。

「今日は剣は使いません。」
「え? 剣舞だぞ?」
「剣舞は、立ち方からです。」

理事長は一瞬、納得がいかない顔をします。事務長は納得し過ぎて頷きます。職員は少し安心します。「良かった、いきなり剣を振り回さないんだ」と。先生は淡々と、足の置き方、重心、骨盤、肩の力の抜き方を教えます。みんな真面目です。真面目にやればやるほど、次の日が怖い。そう、筋肉痛です。

翌朝、現場に静かな異変が起きました。廊下を歩く職員の動きが、なんだかぎこちない。立ち上がる時に、一瞬ためる。腰が鳴る。誰かが「うっ」と言う。理事長がいつもよりゆっくり歩いている。事務長がそれを見て、何も言わずに湿布を増やしました。無言の増産。事務長は優しいんです。優しいけど、ここで小さく笑っています。何故なら事務長は知っているからです。上達より先に筋肉痛が来る時、人は「やるしかない」モードに入る。これが一番、継続に強い。

1年目~地味の王様は「体幹」~見た目が変わらないのに地獄~

稽古が進むと、みんな気づきます。剣舞って、派手そうに見えて、実は地味の集合体です。特に体幹。見た目は変わりません。鏡の前でやっても、派手さがない。なのに、効く。効き過ぎる。理事長は言います。

「俺の体幹、今、育ってるか?」
先生は言います。
「育ってます。顔が真剣だからです。」

理事長は何故か満足します。先生の言葉は、理事長にとって栄養です。事務長はすかさず補足します。「理事長、栄養は食事です。」理事長は「心の話だ!」と返します。稽古場に笑いが起きます。笑いが起きると、場は続きます。これが大事です。

そして1年目の終わり、まだ剣は“振り回さない”。ここが面白いところです。剣舞なのに剣が主役じゃない。主役は姿勢。主役は歩幅。主役は「転ばないこと」。事務長はこの時点で確信します。これは特養に向く。派手に見せるために、基礎で安全を積む。現場の考え方と同じだからです。

2年目~ついに剣~だが先生が言う「剣は軽いほど危ない」~

2年目、ついに剣が登場します。理事長の目が輝きます。職員も「やっと来た!」となります。ところが先生が最初に言うのが、これです。

「剣は、軽いほど危ないです。」

皆が一瞬固まります。軽い方が安全だと思っていた。ところが軽いと勢いがつき過ぎて止め難い。止め難いとフォームが崩れる。フォームが崩れると肩や手首を痛める。先生は、その場で“止める練習”から始めます。剣を振るより先に、止める。これが本物の指導です。

理事長が言います。「止めるのは苦手だ。」
事務長が言います。「理事長は人生も止まりません。」
理事長が言います。「止めろ!」
事務長は言います。「止めません。」

このやりとりだけで、稽古場の空気が明るくなります。明るい空気は、継続の燃料です。特に長期計画は、燃料がないと途中で止まります。燃料の名前はだいたい“笑い”です。

3年目~危ない技は捨てずにムービーに回す~それが大人の勝ち方~

3年目に入ると、皆が上達します。ここで一番危ないのが、「調子に乗る」ことです。理事長が言い出します。「ここで回転したら映えるだろう?」先生は即答します。「映えますが、やりません。」理事長が食い下がります。「4年ある!」先生は言います。「4年あっても、リスクが残るならやりません。」事務長がすぐに助け舟を出します。

「理事長、捨てません。ムービーに入れます。」

この一言で空気が変わります。やりたかった気持ちは否定しない。でも本番ではやらない。努力は映像で輝かせる。これは、大人の勝ち方です。しかも入居者さんにとっても優しい。本番では安全な型だけを見る。裏側の努力はムービーで味わう。泣けるのに安全。最高です。

理事長はここでしみじみ言います。「事務長、お前…天才だな。」
事務長は淡々と言います。「理事長、気づくのが遅いです。」

職員が笑います。先生も笑います。稽古場が“チーム”になります。これが4年計画の強さです。

そして4年目目前、秘密稽古はもう秘密じゃないほど、現場の空気に溶け込んでいきます。疲れている日でも「ちょっとだけ」稽古する人がいる。見学だけだった人が、控え要員として支える側に回る。職員同士がフォームを見て声を掛け合う。介護の現場に必要な“声掛け”が、稽古場でも自然に起きる。稽古は芸のためだけじゃない。現場の空気も育てているんです。

次の章では、撮影と本番準備に入ります。音響、照明、衣装レンタル、導線、リハーサル。ここから先は「舞台の人たち」が一気に増えて、事務長の目がさらに光ります。理事長はまた言うでしょう。「コストは度外視だ!」事務長はまた言うでしょう。「翻訳します。根拠を揃えて通します。」稟議書が滑り、ムービーが回り、そして本番が近づいてくる。さあ、ここからが“準備の本番”です。


第4章…撮影&本番準備編~音響照明と衣装レンタルが“神”に見える瞬間~

4年目に入ると、空気が変わります。稽古場の笑いが、少しだけ静かになる。皆の動きが、少しだけ揃ってくる。そして何より、「本番」という言葉が冗談じゃなくなる。理事長は相変わらず大きなことを言いますが、言い方が変わります。前は勢いだけだったのが、今は覚悟が混じる。

「さて、いよいよ“本番の環境”を作るぞ。」

この瞬間、事務長の目が光ります。ここから先は、事務長の守備範囲です。稽古の4年は長い。でも、本番準備の数週間は、体感では4年より長い。何故なら、やることが一気に増えるからです。衣装レンタル、音響、照明、撮影、会場設営、導線、座席、休憩、水分、そして“控え要員の配置”。理事長の夢は舞台の上。事務長の夢は舞台の裏。先生はその両方に「転ばない魔法」を掛けに来ます。

まずは撮影です。メモリアルアルバムムービーを作るために、4年間の稽古の映像を繋ぐ。ここが第2弾の心臓部。しかも撮影は、ただ回せば良いわけじゃありません。入居者さんに見せる映像は、体調への配慮が必要です。目が疲れない明るさ、音が大き過ぎない編集、テンポが速過ぎない切り替え。派手な早回しは気持ち良いけれど、見ている側には負担になることもある。だからこそ、ムービーは“派手さ”より“伝わりやすさ”。ここでも事務長が言います。

「映像は、笑わせるより先に安心させます。」
理事長が言います。
「いや、笑わせたい。」
事務長が言います。
「安心した人は笑えます。」

理事長は一瞬黙って、何故か頷きます。ここまで来ると、理事長も育っています。4年ってすごい。

衣装レンタルの箱が届いた瞬間に全員が“舞台の人”になる

そして衣装レンタル。届いた箱がでかい。会議室に置いた瞬間、部屋が急に舞台裏っぽくなります。職員が集まって、箱を開けるときの顔がもう楽しい。仕事の顔じゃなくて、文化祭の前日の顔。でも文化祭と違うのは、ここで浮かれ過ぎると危ないということを、全員が知っている点です。

衣装は民族衣装の要素を取り入れた剣舞仕様。刺繍、帯、袖の流れ、揺れる飾り。華やかだけど、動くと絡む可能性がある。だから先生がチェックします。「袖はここまで」「飾りはこの位置」「帯は二重に固定」。理事長は鏡の前で決め顔をしますが、先生が一言。

「理事長、その顔は舞台でやりましょう。」

理事長は照れます。職員が笑います。こういう小さな笑いが、緊張をほどいてくれる。

ここで事件が起きることもあります。たとえばサイズ違い。衣装が合わない。理事長が焦ります。「終わった…」事務長は淡々と書類をめくります。「終わってません。予備があります。」理事長が言います。「予備?」事務長が言います。「控え要員だけではなく、控え衣装も用意しました。」理事長は震えます。「お前…何者だ。」事務長は言います。「総務です。」職員が爆笑します。こういう瞬間に、衣装レンタルは“神”に見えるんです。ちゃんと準備してきた人がいると、世界が救われるから。

音響と照明は「派手さ」より「優しさ」~でも結果的に一番かっこいい~

次は音響と照明。ここが本当に大事です。特養の舞台では「盛り上げたい」と「驚かせたくない」が常に並びます。音が大きいほど迫力は出ます。でも驚く方がいる。光が強いほど映える。でも疲れる方がいる。だから狙うべきは、ドカンじゃなくて、スッと入る演出。静かに明るくなる。音がフワッと乗る。拍手が自然に起きる。ここにいくと、結果的に一番かっこいい。

理事長は言います。「照明はキラキラだ!」
事務長は言います。「キラキラはほどよくです。」
理事長は言います。「レンズフレアも!」
事務長は言います。「フレアは心に入れます。」

理事長が笑います。職員が笑います。照明さんが何故か納得します。舞台の人たちが、チームになります。

リハーサルで一番えらいのは“控え要員”~主役を救う人は静か~

本番が近づくと、リハーサルが増えます。ここで最後の仕上げが来る。導線の確認、客席との距離、転倒時の対応、途中で休める位置、水分、椅子、そして“控え要員”の動き。控え要員は、舞台に立たないかもしれない。でも、舞台を成立させる要です。

理事長が舞台で動いて、もし足がつる。衣装が絡む。剣が予定と違う動きをする。音が少しズレる。そんな時、控え要員が静かに動けるかどうかで、全てが変わります。だから控え要員は、稽古だけでなく“段取り”も覚える。これが、裏の主役。理事長は気づいていないフリをしますが、最後には言います。

「控えがいるって、強いな。」

事務長は頷きます。「強いです。だから抽選で増やしました。」理事長が言います。「抽選ってやっぱり正義だな。」事務長は言います。「正義は準備です。」理事長は言います。「準備も正義だ!」事務長は言います。「はい、やっと理解しました。」ここで職員が笑います。笑いながら、背筋が伸びる。緊張と安心が同時にある。これが本番前の良い空気です。

そして迎える当日。舞台が始まる前に、ムービーが流れる。4年間の汗と筋肉痛と、理事長の迷言と、先生の名言と、事務長の翻訳と、職員の成長と、静かな覚悟。入居者さんの目が「いつもの職員」を「舞台の人」に変える。ここで、会場はもう完成しています。

残るのは、60分の本番と、投票ボールの音。そして、終わった後に残る“次の4年を待つ力”です。次はまとめで、この大祭がただの騒ぎではなく、特養にとってどんな価値になったのか――笑い多めで、綺麗に着地させましょう。

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まとめ…本番は60分でも笑いの貯金は4年分

閏年の2月29日は、暦のズレを直すための“追加日”です。理科的にはそれで終わり。けれど人間は、追加された1日を見ると、つい物語を足したくなる生き物みたいです。世界には、4年に1度の珍しさを面白がって町おこしにしたり、イベントにしたり、特別な日として遊び心を乗せる文化もあります。日本は割りと静かに流してしまいがちですが、静かだからこそ、最初に大きく遊んだ人が“伝統の第一号”になれます。

特養閏年大祭の第2弾は、その「第一号」を、当日よりも前の4年間で作ろうという話でした。祭りの当日は60分。けれど、その60分を本物にするために、4年かけて積み上げた汗と筋肉痛と湿布と、理事長の迷言と先生の名言と、事務長の翻訳がある。しかも一番面白いのが、そこです。華麗な舞いの前に地味な体幹、剣の前に立ち方、回転技の前に「やりません」の判断。派手を成立させるために地味を積む。この構造が、特養の現場の仕事とそっくりで、だからこそ企画が根付くんだと思います。

理事長は「コストは度外視だ」と言い、事務長は「翻訳します。根拠をそろえて通します」と言う。理事長は夢を出し、事務長は現実に変換し、先生は安全の型に落とし込み、職員は練習しながら強くなる。誰かの才能が芽を出すかもしれないし、芽が出なくてもいい。大事なのは、4年後を待つ力が生まれることです。特養では「4年後にまた会おう」という言葉が軽くない。だからこそ、4年計画はただのロマンじゃなくて、入居者さんにも職員にも、静かに効く“希望の仕組み”になります。

そして第2弾で一番のポイントは、メモリアルアルバムムービーでした。努力の映像は、危ない技を無理に本番へ持ち込まなくても輝かせられる。入居者さんは安全な本番を楽しみ、裏側の苦労はムービーで味わえる。つまり、感動と安全が同居できる。ここで、事務長がこっそり勝ちます。勝ち負けではないけれど、現実を守った人が、最終的にみんなの笑いを守る。これが特養の現場の美しさです。

だから結論はこうです。2月29日は、ただの1日ではありません。4年に1度の「待つ理由」を作れる日です。今日から始めて、4年後に笑って泣いて、投票ボールをポンと入れて、「良かった」と言える60分を迎える。そのための4年が、既に作品になる。稟議書より先にムービーが回り始めた時点で、もう大祭は始まっています。次の閏年まで、笑いと段取りを貯金していきましょう。4年分の貯金は、当日の拍手でちゃんと利子が付きます。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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