特養閏年大祭~4年に1度の2月29日を笑いと涙で発掘する計画~
目次
はじめに…カレンダーの“穴”に祭りをねじ込む話
2月の終わりって、なんだか気持ちが落ち着かないんですよね。寒い、乾く、鼻がむずむずする、そして年度末の気配が背中にじわじわ迫ってくる。こないだは雪祭りを臨時で開催したばかり…。そんな時期に、カレンダーを眺めていた理事長が、ふと真顔で言いました。「事務長、2月29日って、たまに出現するよな?」と。
事務長はいつもの調子で答えます。「はい。暦のズレを直すための調整日で、閏年の時だけ現れます。」ここまでは理科の授業。ここからが特養の事件でした。理事長が一瞬黙って、次の瞬間、目をキラッとさせてこう言うんです。「なら、うちで祝おう。しかも4年かけて、世界一うるさいやつを。」
この瞬間、事務長の脳内には、予算表と稟議書と安全対策と会議資料が、雪崩のように流れ込んだはずです。けれど理事長は、そんな現実を軽やかに踏み越えます。何故なら、理事長の足元には必殺技のムーンウォークの構想があるからです。しかも、バックには当然のようにあの曲が流れる予定。ええ、理事長は本気です。事務長には落語一席、職員はブレイクダンスや剣舞、外国人スタッフは母国の衣装で舞踊。手品に科学実験、吹き矢にダーツ。気づけば「特養の文化祭」という言葉では足りない、職員スキル万博みたいな企画が立ち上がっていました。
ただし、ここで大事なのは、派手なことをやるために無理をするんじゃなくて、派手なことをやるからこそ丁寧に準備すること。入居者さんは観客の王様で、舞台とはちゃんと距離をとる。演者は必ず専門の先生について、4年かけてコツコツとスキルを磨く。衣装はレンタルでも良い、音響や照明も整えて良い。目指すのは「勢い」じゃなくて、「安全に笑える完璧さ」です。完璧さって言うと急に肩がこりますが、要するに「事故らず、心だけドカンと揺らす」ってことですね。
そして、この話の出発点は「祭りをやりたい」だけじゃありません。そもそも、なぜ閏年が必要なのか。なぜ2月29日が現れるのか。世界ではこの日が、町おこしになったり、珍しい風習の舞台になったり、ちょっとしたおふざけが許される空気になったりする。つまり2月29日は、暦の調整日であると同時に、「普段は出来ないことをやっても良い日」に化けるという力があるんです。
日本では、この日が静かに通り過ぎがちです。カレンダーの上で、しれっと追加されて、しれっと消える。だからこそ逆に、この理事長と事務長率いる特養が先に気づいてしまった。4年に1度しか来ないなら、4年かけて準備が出来る。4年後を待つ価値が大きい場所だからこそ、4年後に向けて積み上げるという意味が大きくて重い。笑いは贅沢品じゃなくて、明日を迎えるための糧・道具になる。そんな理屈を、理事長はきっと説明しません。ただ、ムーンウォークを全力で示すだけです。ずるいですよね。
さて、ここから先は、閏年の話をちゃんと押さえつつ、世界の2月29日の使い方を覗き見しつつ、日本の静けさに潜む“伸び代”を見つけて、特養の大祭を4年計画で育てていきます。笑って、ちょっと泣いて、最後にまた笑う。カレンダーの“穴”に、堂々と祭りを捻じ込む物語の始まりです。
【次の閏年は2028年】
[広告]第1章…閏年って何者?6時間ぶんのツケを2月が払う話
理事長が「2月29日を祝うぞ」と言い出した瞬間、事務長の頭の中では、まず最初に“確認作業”が始まっています。祝う以前に、その日が本当に存在するのか。存在しない日に向かってムーンウォークをすると、だいたい人は監査という壁にぶつかるからです。理事長は勢いで進みますが、事務長はカレンダーと現実を抱えて進みます。ここが名コンビの出発点になります。
そもそも、何故、そもそも2月29日なんていう“幻の1日”が必要なのか。それは理由は地球が几帳面過ぎないからです。地球は太陽の周りを1周するのに、ピッタリ365日で帰ってきません。だいたい365日と、さらに「約6時間」ほどかかります。たった6時間?と思うかもしれませんが、これが曲者です。1年に6時間ずつズレると、4年で約24時間、つまりほぼ1日ズレます。そのまま放っておくと、カレンダーの上の季節が少しずつずれて、いずれ「春のはずなのに冬みたい」「秋のはずなのに夏の残り香」みたいなことが起きていきます。経年するほどにズレは大きくなる。季節に合わせて暮らしてきた人間にとって、それは地味に困ります。
だから、4年に1回、1日だけ足してズレを直します。これが閏年です。普段は365日で回している時計を、4年に一度だけ「カチッ」と帳尻を合わせる感じですね。事務長が好きそうな表現をすると、“調整日”です。理事長が好きそうな表現をすると、“突然現れる祭り日”です。同じものを見ているのに、見えている景色が違います。
閏年の判定はざっくりこう覚える
ここはややこしく見えて、実はコツがあります。まず基本は「西暦が4で割り切れたら閏年」です。たとえば、2024年は4で割り切れるので閏年。次の日本の閏年は2028年です。理事長のムーンウォーク予定表には、しっかり丸がつきます。
ただし例外があります。「100で割り切れる年」は、基本的に閏年にしません。さらにその中で「400で割り切れる年」だけは閏年にします。えらい遠回りに聞こえますが、これは“ズレを減らすための微調整”です。足し過ぎても、またズレるからなんですね。事務長が言いそうな一言にすると、「帳尻合わせは、足すだけじゃなく引くことも大事」です。
このルールのおかげで、暦と季節のズレはグッと小さくなります。理事長が「じゃあ、うちも4年計画でズレなく準備するぞ」と言い出したのは、ある意味この暦の仕組みに乗っかった、ものすごく真っ当な発想でもあります。本人はたぶん真っ当だと思っていませんが。
じゃあさ~なんで2月に足すの?~
ここもよく聞かれるところです。「なんで年末でもないのに2月だけ短いの?」って不思議ですよね。ざっくり言うと、昔の暦の名残です。古い時代のローマの暦では、2月が今より“年の終わり側”に置かれていた時期があり、調整を入れるならそこに足すのが都合がよかった、と言われています。その流れが、ユリウス暦やグレゴリオ暦にも引き継がれて、今も2月に調整日が入るようになりました。つまり2月は、昔から“調整担当”の月だったわけです。誰もが忙しい施設の中で、いつも最後に調整を任されがちな事務長みたいな役回りですね。2月に親近感が湧いてきます。
ちなみに英語では、閏日は「リープ・デイ(Leap Day)」と呼ばれます。平年だと同じ日付の曜日は1つずつずれますが、閏年の翌年は2つずれるので、曜日を1つ飛び越える感じがあるからです。飛び越えるのが得意なのは、理事長ではなく本来カレンダーの方だった、というわけです。
ここまで分かると、2月29日は「ただ1日増える」ではなく、「季節と暮らしを守るための、目立たないけれど大切な1日」だと見えてきます。だからこそ、その1日を“普通の日”で終わらせるか、“4年かけて育てた発表会”に変えるかは、人間側の腕の見せどころになります。理事長は腕ではなく足(ムーンウォーク)で見せようとしていますが、そこはご愛敬です。
次の章では、その“人間側の腕の見せどころ”を、世界がどう遊びに変えているのかを覗き見します。世界の2月29日は、思った以上に賑やかで、思った以上に自由です。静かな日本で、特養が先に気づいてしまうのも、ある意味必然かもしれません。
第2章…世界の2月29日は意外と騒がしい~町おこし・風習・珍事件~
2月29日って、日本だと「4年毎にある年だけ現れる追加日」くらいの扱いで、気づいたら終わってることも多いですよね。ところが世界に目を向けると、この1日を“放置しない人たち”が、案外たくさんいます。事務長が「暦の調整日です」と説明している横で、理事長が「つまりは祭り日だな」と勝手に翻訳するのも、あながち間違いじゃないところなんです。
町が名乗っちゃうタイプ~閏年の首都が存在する~
アメリカには「うちは閏年の首都だ」と名乗って、2月29日に誕生日を迎える人たちを本気で祝う町があります。テキサス州のアントニーという小さな町で、閏年ごとにパレードや誕生日ディナーなどの“誕生日祭”を開いている、という話が知られています。しかも「閏年の人(2月29日生まれ)」が全国から集まってくるタイプのお祭りで、年齢も赤ちゃんから高齢の方まで幅広い。4年に1回だからこそ「集まる理由が強い」んですね。
理事長はこの話を聞いた瞬間、たぶんこう言います。「ほら見ろ、世界はちゃんと祝ってる。うちも祝う。」事務長はこう返します。「祝うのは良いですが、パレードは廊下では出来ません。」特養には特養の地形がありますからね。
4年に1回しか出ない新聞~フランスの“閏年メディア”~
さらに凄いのがフランス。2月29日だけ発行される風変わりな新聞があって、名前は「ラ・ブージュ・デュ・サプール」。4年に1回しか出ない、という一点突破の芸風で、1980年から続いているとされています。直近だと2024年号が出て、次は2028年に出る予定、という“気の長い商売”です。
これ、特養の企画と相性が良過ぎるんです。4年に1回だからこそ「普段は出来ない冗談」を、堂々と“公式行事”に出来る。理事長のムーンウォークが、急に社会的に正当化されてしまう恐ろしさがあります。
伝説から生まれた風習~この日は女性がプロポーズしていい日?~
ヨーロッパには、2月29日は「女性からプロポーズしてもいい日」とされる伝承が語られる地域があります。アイルランドの伝説(聖ブリジットと聖パトリックの話)に結びつけて語られることも多く、英語圏では「バチェラーズ・デイ」などの名前で紹介されることがあります。
ここで理事長が変なことを言い出します。「じゃあ、うちも2月29日は職員から入居者さんへ、愛情の告白をしていい日ってことにしよう。」事務長は静かに頷きます。「その告白は、介護記録に残しません。」残さなくて良い愛情もあります。
“その日だけ”に弱いのは人間~カクテルやお店も乗ってくる~
2月29日という“限定感”は、旅や外食の世界でもネタになりやすいようです。ロンドンのホテルで閏年に合わせたカクテルが作られた、という話が紹介されることもありますし、2月29日限定で記念企画を打つお店もあります。人は「今日しかない」に弱い。だからこそ、今日だけはちょっと浮かれて良い、という空気が生まれます。
ただ、特養がここで学べるのは「派手に売る」じゃなくて、「限定感で心を動かす」方です。4年に1回しか来ない日なら、4年かけて準備できる。準備できるなら、完成度も安全も、ちゃんと積み上げられる。しかも演者が“見慣れた職員”だから、テレビより刺さる。ここが強烈です。
世界の2月29日は、突き詰めると「余った1日を、皆で意味のある1日に変える遊び」でした。町が名乗る、新聞が出る、風習が生まれる、店が乗る。だったら特養だって、負けていられません。次の章では、日本の2月29日が静か過ぎる理由を、理事長と事務長の会話に混ぜながら、敢えて“静けさの伸び代”として料理していきます。
第3章…日本の2月29日が静か過ぎるので特養がまず先にハメを外す
世界の2月29日をのぞき見すると、「え、そんなに遊んで良いの?」と思うくらい、皆が堂々と楽しんでいました。町が名乗りを上げたり、4年に1回しか出ない新聞が存在したり、なぜかプロポーズの伝説までくっついていたり。あの自由さを見た後に日本のカレンダーへ戻ると、2月29日が急に“消毒液みたいに無臭”に感じるんです。あるのに、語られない。あるのに、イベントにならない。あるのに、誰もムーンウォークをしない。これはこれで不思議です。
理事長は言います。「日本は真面目すぎる。2月29日が来ても、みんな黙って働いて終わりだ。」事務長は言います。「理事長、黙って働くのは日本の得意技です。」ここで理事長がさらに言う。「でもな、得意技は使いどころだ。うちは、黙って働く日を増やすんじゃなくて、笑って生きる日を増やしたい。」事務長は一瞬だけ黙ります。理事長のこういう時は、妙に刺さるからです。ムーンウォークの人なのに、刺さるんです。
じゃあ、何故、日本の2月29日は静かなんだろう。たぶん理由は1つじゃありません。日本は季節の行事が強い国です。節分、ひな祭り、花見、夏祭り、お盆、年末年始。暦を調整するための“追加日”が、季節の象徴になりにくい。2月の終わりはただでさえ忙しく、年度末で予算が無いといった空気が濃く、学校も会社も「次の準備」で頭がいっぱいになりやすい。そこに「今日は2月29日です。さあ祭りましょう!」と飛び込ませる余白が、なかなか作り難いんですね。
さらに、日本は祝う対象が「皆で共有できる物語」になっていると強いです。桜は分かる。七夕も分かる。お正月はもっと分かる。でも2月29日は、説明が先に来る。「地球が365日ぴったりじゃないから…」と聞いた瞬間、理事長でも一旦真顔になります。物語として燃え上がる前に、理科の教科書が出てくる。だから静かになりやすい。これは仕方ないところです。
ただ、ここで逆転の発想が使えます。2月29日は、季節の行事になり難い。でも、その分、“何を入れてもいい枠”になるんです。節分は豆を投げないと節分じゃない空気がある。ひな祭りは雛人形が出てくる空気がある。ところが2月29日は、空気がない。空気がないなら、こちらが空気を作ればいい。真面目に説明して終わる日じゃなく、「説明して笑って、最後にちょっと泣いて、また笑う日」にしてしまえば良い。理事長が得意げに言います。「空気がないなら、スモークマシンを焚けばいい。」事務長が慌てます。「理事長、火災報知器が鳴ります。」このやりとりの時点で、もう静かではありません。
理事長が真剣に特養が率先してハメを外す理由は、実はものすごく真面目なところに理由があります。特養の入居者さんは要介護度が高く、病気を抱え、日々の体調に波があります。4年後の約束を“軽い気持ち”で語れる場所ではない。だからこそ、4年に1度しか来ない日が、ただの追加日ではなく「待つ価値のある日」になりやすい。4年先を見据えるから、毎日の中に希望が立つ。毎年の行事はもちろん大事だけれど、4年に1回だからこそ生まれる特別な熱もある。しかも、その熱を作るのは入居者さんの頑張りじゃなく、職員の準備で作れる。ここが特養の強みです。
入居者さんは“観客の王様”で良い。舞台から距離をとって、安全に座って、ただ見て、気が向いたら笑う。気が向いたら涙が出る。それで十分。その代わり、職員は4年かけて練習し、整え、転ばない仕組みを作る。職員側が体を鍛え、芸を磨き、ふざける余裕を持つ。ふざける余裕がある人の芸は、事故らない。ふざける余裕がある人の介護も、空気を救える。これが、静かな2月29日を“特養の大祭”に変える核心です。
そして日本の2月29日が静かなのは、悪いことじゃありません。むしろ伸び代です。誰もまだ大きくやっていないなら、やった施設が“最初の物語”になれる。理事長はここで決め台詞を放ちます。「うちは日本の2月29日を、世界一うるさくする。」事務長はため息をつきながらも、メモを取ります。「『世界一うるさい』は記録に残せませんが、準備は残せます。」この人も結局はやる気になるんです。
次の章では、いよいよ“特養閏年大祭”の中身に踏み込みます。理事長のムーンウォーク、事務長の落語、職員のダンスや剣舞、外国人スタッフの舞踊、手品、実験、吹き矢、ダーツ。そして入居者さんの投票ボール。4年かけて積み上げた愛情が、2月29日に全部揃って爆発する。そんな発表会の設計図を、堂々と描いていきます。
第4章…理事長MJ・事務長落語・職員万博~4年仕込みの愛情発表会~
理事長がムーンウォークを宣言した日、事務長が最初にやったことは「伝説の曲」を流すことでも、「衣装のサイズ」を測ることでもありませんでした。まずは、舞台と客席の距離を決める。転倒しても入居者さんに接触しない導線を作る。音量でびっくりしてしまう方がいないように、音の量と出方と角度を確認する。つまり、祭りの前に“安全の地面”を固めたんです。ムーンウォークは地面が命。ここだけは理事長と事務長、奇跡的に意見が一致します。
しかも今回の大祭、勢い任せではありません。4年計画です。演目の演者は、介護士、専門職、看護師、厨房まで全員が専門のプロの先生につき、当日の化粧や衣装は全てレンタルで整え、音響や照明も「文化祭」ではなく「ちゃんと舞台」に寄せる。コスト?そこは理事長が笑顔で言います。「今日は財布の方が要介護だ。」事務長は一言も返さず、静かに見積書の山を抱えます。顔が青いのに、何故か目だけは燃えている。こういう時の事務長は、だいたい本気中の本気です。
午前は事務長部門で午後は理事長部門の2部制で60分ずつ
本番は2部制。午前は10:00から、午後は14:00から。どちらも60分です。同じ日で2回やるのは派手に見えますが、実は入居者さんの負担を減らすための工夫でもあります。集中する時間は短く、見せるものは濃く。途中で水分や姿勢調整が出来る時間も入れて、見ている側が「楽しかったけど疲れた…」で終わらないようにする。祭りほど、優しさが必要なんですよね。
午前は事務長部門。落語一席で会場の空気を緩めてから、手品や実験で「おおっ」を増やし、外国人スタッフの衣装と舞踊で確実に一度は心を持っていかれる。事務長は、落語のオチで笑わせた後に、最後の最後で「今日の主役は、皆さんの笑顔です」とサラッと言うタイプです。ずるい。真面目な顔で言うから、入居者さんの心に刺さる。
午後は理事長部門。理事長は音楽に合わせて登場し、ムーンウォークで「はい、ここから祭りです」と床を滑る。職員のダンスや剣舞が続いて、会場の拍手がだんだん大きくなる。派手な動きって、テレビで見ると単純に「すごい」で終わることが多いのに、見慣れた顔がやると「え、あの人が?」になって、心がグッと近づくんですよね。だから特養の舞台は強い。入居者さんと接触しない距離を保っていても、気持ちは近い。ここが最大の武器です。
出演者は事前に決める~でも“控え”も抽選で用意する~
「当日にランダムで出演」ではありません。ここ、大事なところです。本番のプログラムと演者は事前に決めて、完成度を上げる。その上で、体調不良やアクシデントが起きたときに備えて、控えの出演者も準備しておく。その控えを選ぶのが“抽選”です。抽選は、ドキドキ演出ではなく、事故を防ぐための保険。理事長が言います。「運も実力のうち!」事務長が返します。「運は保険で包みます。」かっこいいのか何なのか分かりませんが、とにかく安心です。
そして控えがいると、現場が落ち着きます。もし本番の演者が急に出られなくても、「代役を探して右往左往」ではなく、全員が何かしらのベースを学んでいるので「控えの方、こちらへ」で済む。もちろん、急遽の時間調整の飛び入り参加的な呼び込みでも出来る。祭りは単純な勢いで回すとアクシデントで崩れやすい。勢いは舞台に出す。裏側は静かに整える。事務長が一番得意なやつです。
入居者さんの参加は“投票ボール”~覚えなくて良くて迷っても良い~
観客の王様は、ただ見て笑って終わりではありません。入居者さんの手元にはカラーボール…ではなく、色分け無し、あるいは多種多様な色の同じボールが3個。ここが優しさのポイント。色は持たされるだけでいろいろとあるけど、ルールとして意味は覚えなくて良い。そこに意味がないから間違えたからボールを戻す、という手間も登場し難い。良かったと思った演目の箱に、ぽんと入れるだけ。入れなくても良いし、3個全部を同じ箱に入れてもいい。気持ちのままに出来る。これが一番です。
手が動かし難い方には、職員が「入れますか?」と確認して代わりに入れる。それでも意思はちゃんと表れる。投票は勝ち負けというより、「見てくれている」の証拠です。演者にとっては、これが一番のご褒美になります。
表彰は“大・中・小の箱”~中身は語らないのが夢の1つ~
集計して、最高得点には理事長賞、次に事務長賞、そして参加賞。手渡されるのは、大きな箱、中くらいの箱、そして小さな箱。小さな箱は全員に配られて、ホッとした空気の中で、みんなが「中身は何だろう」とニヤニヤする。中身は語らない。4年に一度に相応しい物だった、とだけ書いておく。読者の頭の中で勝手に豪華になっていく。夢ってそういうもので良いのです。
それに、こういう“箱”って、物よりも記憶が残ります。「あの時はすごい大きな箱をもらった」「あの踊りで笑った」「あの落語で泣きそうになった」。箱は記憶の取っ手になる。持ち帰るのは箱でも、本当は“気持ち”です。
4年に一度の大祭は、入居者さんのためだけじゃない。職員にとっても、体が資本の仕事を続けるための鍛錬になる。芸やダンスの練習は、体の使い方をプロからきちんと学ぶことでもあるし、何より「自分には出来る」と無限の可能性が増える。誰かが「向いてるかも」と目覚めたら、それはそれで素晴らしい。何が素晴らしいか、特養〇〇の有名介護士が誕生するからだ。施設が人を使い切るような場所ではなく、人の可能性を育てる場所になる。その一歩目が、何故かムーンウォークと落語と剣舞と手品で始まるのだから、人生は面白いものです。
次はいよいよ、最後のまとめです。4年に一度の1日を、ただの調整日で終わらせない。笑いと驚きと、ほんの少しの涙を“貯金”にして、次の閏年までの毎日に混ぜていく。その結論を、理事長と事務長らしく、綺麗に着地させましょう。
[広告]まとめ…次の閏年まで生きる理由を笑いで貯金しておこう
2月29日って、結局なんなのか。理科の答えは「暦と季節のズレを直すための調整日」です。地球がきっちり365日で回ってくれない分、4年に1度だけ「はい、ここで帳尻合わせまーす」と1日足す。真面目に言うとそれだけ。なのに、人間が関わると、そこに物語が生まれます。町おこしにする国があったり、4年に1回しか出ない新聞があったり、風習として“ちょっと特別”を許す空気があったり。世界は案外、「余った1日」を遊びに変えるのが上手でした。
じゃあ日本はどうかというと、2月29日が静か過ぎる。静か過ぎて、気づいたら消えている。けれどそれは欠点というより、伸び代でした。誰も大きな物語にしていないなら、最初にやった人が“最初の物語”になれる。ここで特養が先にハメを外すのは、ただの悪ノリではありません。特養は、日々の暮らしの中で「楽しみを待つ力」がとても大きくなる場所です。4年後を待つことが、軽い言葉になり難い場所だからこそ、4年後を待つ価値は重く、強く、温かくなります。
そして何より、この大祭の主役は入居者さんに無理をさせないところにあります。入居者さんは“観客の王様”で、舞台とは距離を取って、安心して座って、笑いたい時に笑う。投票ボールをポンと入れるだけで「良かったよ」と意思を渡せる。見て終わりではなく、ちゃんと参加の余白がある。これが良いんです。盛り上げるのは職員側で、職員が4年掛けて鍛える。専門の先生につき、衣装も音響も照明も整え、ふざける余裕が生まれるまで練習する。ふざける余裕がある人の芸は、事故り難い。ふざける余裕がある人の介護は、空気を救いやすい。大祭は、そのまま職員の体作りと自信作りにもなる。誰かの才能が芽を出したなら、それは施設の誇りになります。人を使い切るのではなく、人の可能性を育てる。大祭って、本当はそういう方向に強い。
理事長は言うでしょう。「世界一うるさい2月29日にする。」事務長は言うでしょう。「うるささは控えめに、安全は最大に。」この2人がいる限り、何故か本気で成立してしまうのが怖いところです。大・中・小の箱を抱えて、笑って、ちょっと泣いて、最後にまた笑う。中身は語らない方が夢が増える。4年に1度にふさわしい物だった、とだけ書いておけば、読者の頭の中で勝手に豪華になります。想像力は無料で、効果は絶大です。
2月29日は、またしれっと現れます。だから今から貯金しておけばいい。笑いの貯金、感動の貯金、そして「4年後にまた会おう」という貯金。カレンダーの“穴”は、放っておくとただの調整日です。でも、手を突っ込んで引っぱり出せば、祭りになります。今回の特養の2月29日はそういう話でした。次の2月29日、理事長のムーンウォークがシャッフルダンスになって床に吸い付くその瞬間まで、今日からゆっくり仕込みを始めましょう。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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