ノンアルで乾杯!ボジョレー・ヌーボー解禁ごっこで秋を味わう夜

[ 11月の記事 ]

はじめに…秋の夜に家族5人のテーブルにフランスの香りが漂う

窓の外はひんやり、部屋の明かりはやわらか。11月の終わりへ向かう晩秋、わが家のテーブルに小さなフランスの物語がやって来ます。主役は三世代の5人――祖父、祖母、父、母、そして4歳の孫。母は介護士。家ではミニ晩餐会を、職場の特養では“解禁ごっこ”を企画しました。飲める人は香りをそっと確かめる程度に、飲まない人や未成年はぶどうジュースの「マイ・ヌーボー」で乾杯。色、香り、音楽、灯り――“雰囲気で酔う”夜を目指します。

この物語は、お酒そのものを勧める話ではありません。旬を分け合う楽しさを、誰も置いていかない形で包み直す試みです。自宅では家族の体調に合わせて量を控えめに、特養ではノンアル中心で安全第一に。ぶどう色の風船や紙ラベルの手作り、グラスに映る照明、オーブンの温度と共に高まる期待――そんな小さな工夫が、世代の会話を自然とほどきます。

季節は、冬の入口「小雪」前後。外気の冷たさが、湯気の立つ料理と温かい言葉を際立たせます。祖父母には噛みやすく飲み込みやすい一皿を、父母には家事の負担が偏らない段取りを、孫には「初めての乾杯」を。家庭と施設の両方で実践できる“やる順番”と“ささやかな演出”を、この後、丁寧に物語ります。

乾杯は、魔法の合図です。グラスの中身が違っても、同じテーブルで同じ夜を味わえる。そんな三世代の「いただきます」から、このページを開きましょう。

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第1章…ボジョレー・ヌーボーとは?小さな村の秋祭りから生まれた物語

フランスの田舎町で、ぶどうの収穫が終わる頃。樽から生まれたての若い赤ワインを、みんなで「今年もお疲れ様」と分け合う小さなお祝いがあります。これが「ボジョレー・ヌーボー」。毎年11月の後半に“解禁”と呼ばれる合図があり、その夜だけは世界中で同じ季節を感じられる、物語のような行事です。

ヌーボーは、深く眠る前の果実の香りが主役。色は明るく、味わいは軽やか。だからこそ、グラスの中身がジュースでも気分は同じ――ぶどう色の光を眺め、香りを想像し、今年の実りに「ありがとう」を言う時間が生まれます。飲む・飲まないが分かれる家族でも、テーブルの真ん中にあるのは“季節を分け合う気持ち”です。

日本では、ちょうど冬の入口「小雪」へ向かう寒さがやって来ます。外は冷たい空気、室内は温かな明かり。湯気の立つ料理やキャンドルの光が、ぶどう色をやさしく照らします。祖父母は湯呑みサイズの小さなグラスで香りを確かめ、父は音楽係。母と4歳の孫は、ぶどうジュースの“マイ・ヌーボー”で乾杯。同じ夜を、同じ合図で始められるのが、この行事の一番素敵なところです。

“解禁”という言葉には、「さあ、皆で秋を味わおう」というスタートの意味があります。だから、家庭でも施設でも、量や体調に合わせて無理のない形に整えれば大丈夫。重要なのは、ルールよりも“安心”と“笑顔”。香りを楽しむ人、色を眺める人、音楽や会話でほろ酔い気分になる人――それぞれの楽しみ方が、同じテーブルでやさしく重なります。

物語の舞台は、わが家と特養の2か所。どちらも主役は人の心です。グラスが触れ合う小さな音、紙ラベルの手作り感、赤紫の風船、そして「今年もお疲れ様」という一言。そんな小道具たちが、三世代の夜に温度を足していきます。この後で続く章では、家庭編と施設編、それから“おいしい一口”の工夫を、順番にたっぷり描いていきます。


第2章…自宅で開くプチ解禁祭りと三世代の夜

夕方、キッチンのオーブンから甘い香りが立ち昇り、リビングの照明は一段だけ落として、テーブルの中央に小さなLEDキャンドルが灯ります。赤紫の風船がゆらりと揺れて、ぶどう色のテーブルランナーが光を柔らかく跳ね返す。介護士の母は、紙ラベルを自作しました。白い無地ボトルに「マイ・ヌーボー」と書かれたラベルを貼ると、ジュースのボトルもたちまち主役の顔付きです。

祖父は音を立てない小さなグラスを選び、祖母は手の平にスッポリ収まる湯呑みサイズで参加。父はスマホをスピーカーに繋ぎ、今夜のために選んだフランスの軽やかな曲を流します。母と4歳の孫は、同じ形のプラスチックグラスを手にして、視線の高さまでそっと持ち上げる。合図はただ1つ、「いただきます」と同じくらい自然な「かんぱい」。グラスが触れ合う音はほんの小さく、でも確かに家族の背中を同じ方向に向けてくれます。

最初のひと口は、全員が“香りから”。祖父母は鼻先でそっと空気を吸い、色の明るさを楽しみます。母は「香りは想像力」と笑い、孫にグラスの向こう側を覗いてみせます。赤紫の世界がレンズのようになって、キャンドルの光が宝石みたいにキラリ。味わう量は控えめに、飲まない人は香りと色で参加する。母が決めた今夜のルールは、とてもやさしくて、誰もが無理なく守れます。

テーブルには、祖母が用意した“おつまみ風ご飯”が並びます。柔らかく煮た根菜のグラッセ、塩気を控えたチーズスプレッド、焼きたてパンの湯気。祖父はパンにスプレッドを薄くのばし、孫は小さなピックでぶどうとチーズを交互に刺して「ぶどうの旗」と名付けました。父が「今年はどんな年だった?」と問いかけると、言葉が糸のように繋がり、家族の一年が少しずつテーブルの上にほどけていきます。

途中、孫が紙ラベルをもう一枚持ってきて、祖母の湯呑みに貼ろうとしてしまう小さなハプニング。母は笑いながら、指先でそっと止めて、「器には器の顔があるんだよ」と教えます。祖母は「じゃあ、湯呑みにも名前をつけよう」と言って、油性ペンで小さな“梅”の印を描きました。器が1つの登場人物になったみたいで、場の温度がもう一度あがります。

食事は“ゆっくり・小さく・温かく”。母は介護士の視点で、祖父母の姿勢や咀嚼の様子をさりげなく見守り、合間に白湯を勧めます。父はキッチンで皿を温め直し、孫はテーブルナプキンをたたむ係。役割が自然に循環していくと、家事の負担は軽くなり、会話は途切れません。やがて音楽のボリュームが少し下がり、キャンドルの炎が短くなる頃、誰からともなく「今年もお疲れ様」という言葉が零れます。

片付けの時間になっても、夜は終わりません。洗い物の音がリズムになり、台所の明かりが舞台袖のように温かい。母は最後にテーブルを拭きながら、明日の施設の“解禁ごっこ”で使う紙ラベルの束を確認します。孫は空気が抜けて少し萎んだ風船を抱え、祖父母は手を温め合い、父は玄関先まで換気のために扉を開ける。冷たい外気が一瞬だけ入り、室内の温もりを際立たせます。

今夜、グラスの中身はそれぞれ違っても、味わっていた物は同じでした。色、香り、音楽、灯り、そして「今ここにいる」という気持ち。家族の夜が静かに更けていき、テーブルの上には紙ラベルと空の皿、そして小さな“また来年”の約束だけが残ります。


第3章…介護士ママのもう1つのステージ~特養でも解禁ごっこ!~

施設の玄関をくぐると、赤紫のリボンと葡萄の紙飾りがやさしく揺れていました。廊下の照明は一段落として、食堂にはLEDキャンドルの点々。入口の掲示には大きく「本日はノンアルコールの“解禁ごっこ”です」と明記され、アレルギー表示と体調確認のメモ欄が添えられています。介護士の母は、昨夜のうちにぶどうジュースへ紙ラベルを貼り終え、氷温のピッチャーと小さなプラカップを人数分並べました。テーブルクロスはぶどう色、手指消毒は各テーブルに。車椅子の動線を確かめ、嚥下配慮の一口サイズの料理もキッチンで待機中です。

開会のベルは使いません。代わりに、スピーカーから軽やかなアコーディオンの前奏が流れ、母の声が穏やかに広がります。「今日は、色と香りと音楽で、秋を分け合う夜です。グラスの中身はジュースですが、気持ちはフランスへ小さな旅に出かけましょう」。乾杯の言葉は短く、ゆっくりと。全員が目線を合わせられるよう、職員はカップの高さを胸の前に揃えて見本を示します。合図は「かんぱい」だけでなく、小さな拍手も添える。音が合わさるたび、笑顔の数が増えていくのが分かります。

最初のひと口は飲まなくても構いません。カップの縁に近づけて、香りを吸い込むふりをするだけでも十分。母は“香りカード”を配りました。「ベリー」「花」「パン屋さんの朝」の三語だけが印刷されたカードです。感じた言葉に指を置いてもらうと、発語が少ない方も指先で参加できます。色の体験も用意しました。白い紙ナプキンを一枚カップの反対側に添え、光を透かして見てもらうと、赤紫がふわりと明るくなります。隣の席から「ぶどう畑、見たことあるよ」という声。記憶の糸口は、いつも唐突で、けれど確かです。

キッチンからは温かい湯気。嚥下配慮の“ぶどうゼリー”が、小皿に小さな星形で並びます。固さはスプーンで切れる程度。甘味は控えめにして、クラッカーにのせたクリームチーズを横に添えました。口の中で混ざらないよう、順番を声かけします。「まずはゼリーを一口、白湯を休憩に、次にクラッカーを小さく」。職員同士の目配せで、咳払いがないか、薬の時間に重ならないかをこまめに確認。少量ずつ、ゆっくり、そして“おいしい沈黙”を大切にします。

中盤は“紙ラベル作り”。台紙に好きな名前を書いて、ジュースのボトルや各自のカップに貼ります。「マダム・ハル」「団長」「若旦那」といったユーモラスな肩書きが並び、写真コーナーは笑い声でいっぱい。フォトスポットは椅子から立たなくても参加できるよう、背景を低めに設置。顔出しNGの方は手元だけを撮る“カップ写真”に切り替え、同席の家族へはオンラインで画像を共有します。遠くの家族から「似合ってる!」とコメントが届き、画面越しの拍手が会場に重なりました。

音楽は少しテンポを落として、回想トークの時間です。「若い頃の秋、何をしていましたか」。母が問いかけると、干し柿の紐結び、芋ほり、文化祭、通学路の落ち葉――語られる秋はそれぞれで、どれも美しい。職員はメモ係と見守り係に分かれ、話が途切れたテーブルには“色の話題”をそっと置きます。「今日の赤紫、どんな言葉が似合うかな」。答えが見つからなくても、カップ越しの光を見つめるだけで十分です。

終盤、会場の明かりを少しだけ落として、キャンドルの炎を強調します。母は締めの言葉を急ぎません。「今日は、飲まない人も、少しだけ飲む人も、同じテーブルでした。色を眺め、香りを想像し、音を聴く――それだけで、人はほろ酔いになれるのだと、改めて思いました」。最後の合図は、大きな手拍子ではなく、テーブルをそっと二回、指先で“コトン、コトン”。静かな余韻が残ります。

片付けも演出の一部です。使用済みカップは職員が回収し、手指消毒をもう一度。水分摂取状況をチェックし、体調の変化がないか短いラウンドを回ります。写真は各居室の連絡ボードへ1枚ずつ貼り、ラベルは本人の宝箱へ。帰り際、ある方が小さな声で言いました。「若い頃、秋の夜に聞いた歌が、急に思い出せたよ」。母は微笑んで頷きます。飲まなくても届く夜が、確かにここにありました。

会場を閉める前、母は明日の準備ノートに短い記録を残します。座席の並びが良かったこと、音量は最初やや小さめが安心だったこと、ゼリーの固さは“今日の温度”で問題なしだったこと。そして一番大切な一文――「皆の顔色が、ぶどう色の光と同じくらい、やさしかった」。次の季節に同じ夜を作るための合図が、静かに書き込まれました。


第4章…三世代それぞれの美味しい一口

食卓の真ん中に、赤紫の光がそっと落ちます。色と香りが合図になったら、次はひと口の幸福を。介護士ママは、祖父母・父母・4歳の孫、それぞれの体と心にちょうど良い“ひと口の形”を用意しました。難しいことはしません。温度、やわらかさ、順番――その三つをそっと整えるだけで、同じ夜がグッとやさしくなります。

祖父母へ――やわらかく、香りはっきり、喉ごしなめらか

祖母の小皿には、ぶどうゼリーをひと口大に切って、表面にほんの少しだけレモンの香りを添えます。甘さは控えめ、スプーンで軽く押すと形が崩れるくらいのやわらかさ。最初はゼリーを小さく、次に白湯をひと口、続けて軽く焼いたパンの端を少しだけ。祖父には、塩気を抑えたクリームチーズを薄くのばし、クラッカーは手で割って小指ほどの幅にしてから。噛む回数が増えると香りは強くなり、満足感も静かに高まります。姿勢は椅子の背に深くもたれすぎないよう、腰の後ろに小さなクッションを。飲み込みの前に一拍置く合図として、母は「いい香りだね」と一度だけ声をかけます。言葉が小さなメトロノームになり、食べる速度が心地良いリズムに揃っていきます。

父母へ~“手間を増やさない”ご馳走感~

父には、オーブンから出したばかりのローストチキンを薄めにスライス。肉汁を吸わせたパンを添えると、ナイフを使わなくても満足度が高い一皿になります。母には、ノンアルの赤と相性のいい温野菜を。人参とじゃがいも、玉ねぎをオリーブオイルで和え、仕上げに粗びき黒こしょうをぱらり。台所の作業は「焼く➡和える」の2工程に絞り、席を離れる時間を極力短く。合間に祖父母へ白湯、孫へお水を勧められるよう、家事の段取りは“席に戻れる順”で並べます。手間を増やさず、味は豊かに――それが今夜の大人のご馳走です。

4歳の孫へ~遊び心と小さな達成感~

孫の前には、丸い小皿と色とりどりのピック。ぶどうジュースで乾杯したら、薄い生地に角切りの林檎とチーズを並べる“フルーツピザ”作りが始まります。焼き時間は短く、表面が少し色づいたら完成。甘さに偏らないよう、最後にヨーグルトを小さじ1だけ。自分の手でつくった一切れは、いつもの何倍も誇らしい味になり、テーブルに「出来た!」の声が弾みます。飲み物はこまめにストローで。グラスの向こうに見えるキャンドルの光を指さして、「宝石みたいだね」と母が言うと、孫は嬉しそうに頷きます。

皆で同じテーブル~“やる順番”が夜を丸くする~

最初に香り、次に柔らかい一口、温かい皿は小さく熱を分け合い、飲み物はこまめに。祖父母の速度に合わせると、会話の密度が自然に上がります。父は音量をほんの少し下げ、母は座ったままで配膳できるよう小さなワゴンを手元に。孫はナプキン係として、食べ終わった皿に星の印を描き込みます。テーブルの上には、食べ終わった証拠と、今年の物語が同時に増えていきました。

片付けが始まる頃、祖母は小さく言います。「やわらかいのに、香りがしっかりしてたね」。祖父は頷き、湯呑みを見つめて笑います。父は皿を重ね、母は紙ラベルの束を整え、孫は風船を抱えてソファへ。温かい湯気と赤紫の余韻が、同じ部屋の空気をゆっくり混ぜ合わせていきます。飲む人も、飲まない人も、今夜の主役はそれぞれの“ひと口”。その小さな満足が、三世代の夜を綺麗に結びました。

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まとめ…乾杯は世代を繋ぐ魔法の言葉

ぶどう色の光が静かにほどけ、LEDキャンドルの炎が短くなっていく頃、三世代の夜は“ゆっくり終わる”という上品な贅沢に包まれました。祖父母は小さな器で香りを確かめ、父は音量を整え、母は段取りで場をやさしく支え、4歳の孫は「出来たよ」を合図に場を明るくする。飲む人も、飲まない人も、グラスの中身が違っても、同じテーブルに集まれば物語は1つになります。

翌日、特養での“解禁ごっこ”には、家庭の温度がそのまま持ち込まれました。紙ラベル、赤紫の飾り、香りのカード、やわらかな一皿。色を眺める時間が会話の糸口になり、指先の合図が思い出を呼び込みます。飲まなくても、心はほろ酔い。大切なのは量や度数ではなく、安心と笑顔の順番でした。

季節は、晩秋から冬の入口へ。外の冷たさが室内の温もりを引き立て、テーブルには「また来年」の約束がそっと置かれます。来年も同じ合図でグラスを持ち上げるために、今夜の小さな工夫をメモに残しましょう。器の名前、座る位置、音楽の出だし、湯気の温度――どれもが、次の季節の灯りになります。

乾杯は魔法の言葉でした。家でも施設でも、世代を1つの輪にする合図。赤紫の光が消えた後に残るのは、静かな満足と、同じ夜を共有できたという確かな記憶。ページを閉じるあなたの手にも、きっと小さな余韻が残っています。どうぞ、その余韻のまま、家族や仲間と“今のここ”という季節を味わってみてください。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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