12月に味わいたい世界のスーパーフード4選~ザクロ・芽キャベツ・ケール・クランベリー~

[ 12月の記事 ]

はじめに…病院食には出てこない“世界の冬スーパーフード”の話

12月になると、日本の食卓には鍋物やシチュー、おでんなど、身体をじんわり温めてくれる料理が増えてきます。使う食材も、大根や白菜、にんじん、じゃがいも……と、どこの家庭でもお馴染みの顔触れが中心になりがちです。安心できる一方で、「今年の冬は、いつもと少し違う食材も楽しんでみたいな」と思う瞬間もあるのではないでしょうか。

視線を少し世界に向けてみると、寒い季節に頼りにされている「冬のスーパーフード」が、あちこちの国で静かに存在感を放っています。宝石のような赤い粒をつけるザクロ、小さなキャベツのような芽キャベツ、濃い緑の葉を広げるケール、行事料理を赤く彩るクランベリー。どれも栄養面での頼もしさに加えて、その国ならではの食べ方や、家族の思い出と結びついたエピソードをたくさん持っています。

ところが日本では、これらの食材は「名前は聞いたことがあるけれど、実物を料理したことは一度もない」という人も多いはずです。特に病院や高齢者施設の献立では、安定して手に入りやすい国産の定番野菜が中心になるため、ザクロや芽キャベツ、ケール、クランベリーが毎日の食事に並ぶことは、ほとんどありません。だからこそ、少量からでも家庭の台所に招き入れてみると、グッと世界が広がって感じられます。

この記事では、そんな4つの食材について、「どんな力を秘めているのか」「どんな料理にすると無理なく美味しく食べられるのか」を、出来るだけ分かりやすく紹介していきます。栄養の細かな数字を追いかけるよりも、「冬の体をそっと助けてくれる相棒」としてのイメージを大切にしながら、日常のメニューに取り入れやすいヒントを添えていきます。

読み終わった時に、スーパーや輸入食材コーナーでザクロや芽キャベツを見かけたら、「今年の冬はちょっと試してみようかな」と、カゴにそっと入れてみたくなる。そんな、小さな冒険の切っ掛けになることを目指して、この世界のスーパーフードたちを旅する物語を始めていきましょう。

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第1章…ザクロという赤い宝石フルーツ~12月の体を潤す力~

ザクロを初めて間近で見ると、少し不思議な果物に感じるかもしれません。厚めの皮を割ると、中からつやつやと光る赤い粒がギュウギュウに詰まっていて、まるで小さな宝石箱を覗き込んだようです。1粒ずつほぐすと、指先にひんやり冷たく、光を受けてキラリと輝きます。世界の多くの地域では、この赤い粒が「生命力」や「豊かさ」の象徴として、大切にされてきました。

ザクロの旬は、北半球では秋から冬にかけて。国や産地によって少しずつ時期は違いますが、12月前後は、ちょうど実が熟しておいしくなるタイミングと重なります。日本でも、輸入品を中心に、冬場のフルーツ売り場で見かけることが増えてきました。とはいえ、まだまだ日常的に買う果物というより、「あ、珍しいな」と眺めて通り過ぎてしまう人も多いかもしれません。

ザクロの赤い粒には、水分に加えて、ビタミンCやカリウム、ポリフェノールと呼ばれる成分が含まれています。冬は空気が乾燥し、室内でも暖房の影響で喉や肌がカサつきがちです。そんなとき、みずみずしい果汁を含んだザクロは、口に入れた瞬間にプチッと弾けて、酸味と甘みが一度に広がり、乾いた体に「潤いが届いた」と感じさせてくれます。ビタミンCやポリフェノールは、体の中でサビつきから守る助けになるとされており、「冬の疲れが溜まってきたな」と感じる時期の、ささやかな味方になってくれます。

ザクロの魅力は、味のバランスにもあります。甘すぎるわけではなく、酸味だけがツンと立っているわけでもない、ほどよい甘酸っぱさ。その中に、粒の中心にある小さな種のカリッとした歯応えが加わり、「食べている時間そのもの」がちょっとした楽しみになります。ヨーグルトやアイスクリームに散らすと、白いクリームの上に赤い宝石が転がっているように見え、子どもから大人まで思わず手が伸びてしまうような華やかさが生まれます。

世界の一部の地域では、年末年始の行事にザクロが欠かせない国もあります。家族や友人が集まるテーブルにザクロの実を割って出したり、ザクロジュースで乾杯したりしながら、「新しい年が実り多いものになりますように」と願いを込める習慣もあると伝えられています。赤い粒が1つ1つぎっしり詰まっている様子は、「幸せがたくさん詰まっている未来」を連想させ、見ているだけでもポジティブな気持ちにさせてくれます。

そんなザクロですが、日本の病院食や高齢者施設の献立で見かけることは、ほとんどありません。理由の1つは、扱いに少し手間が掛かることです。大人数分となると、皮を割り、粒をほぐし、種ごと食べられるように準備する作業がなかなか大変ですし、硬い種が残るため、噛む力や飲み込む力に不安のある人には向かない場合もあります。また、輸入品が多く、安定した価格と量で確保するのが難しいという事情もあり、「大量調理には乗せにくい果物」と言わざるを得ません。

その代わり、家庭用としてはとても面白い存在です。家族の人数分なら、ひと玉のザクロをゆっくりほぐしながら、「これが世界では冬の定番なんだって」と話題にしつつ食卓へ運ぶことが出来ます。歯応えが心配な高齢の家族には、粒そのものではなく、軽く潰してジュース状にしてから、茶こしやガーゼでこしてあげると、口当たりのやさしい飲み物になります。炭酸水やお湯で割れば、赤い色のきれいなドリンクになり、冬の水分補給がちょっと楽しくなります。

料理への使い方としては、デザートだけに限りません。鶏肉のソテーにザクロの粒を散らしたり、ザクロの果汁を少量の醤油やバルサミコ酢と合わせてソースにしたりすると、見た目も味わいも一気に「ご馳走感」が増します。サラダに加えれば、葉物野菜の中で赤い粒がアクセントになり、噛むたびに甘酸っぱい果汁がはじけて、ドレッシングの味を何度も楽しめます。ヨーグルト、サラダ、肉料理と、同じ果物なのにまったく違う表情を見せてくれるのも、ザクロならではの面白さです。

気を付けたいのは、「体に良さそうだから」といって、一気にたくさん食べてしまわないことです。酸味がしっかりある果物なので、胃が弱い人が空腹時に大量に食べると、負担を感じることもあります。また、特定の薬との組み合わせが気になる場合には、かかりつけ医や薬剤師に「ザクロジュースを時々飲んでも大丈夫か」と一度相談しておくと安心です。どんなスーパーフードも、あくまで「日々の食事を支えてくれる一員」であり、全てを任せる存在ではない、という感覚を持っておくとちょうど良い距離感で付き合えます。

12月は、ただ寒さに耐えるだけでなく、食卓から楽しみを増やしていける季節でもあります。日本の定番果物に、ザクロという赤い宝石をひと皿だけ混ぜてみる。それだけで、いつもの冬のテーブルに、遠い国の空気や物語がフワリと流れ込んでくるように感じられるかもしれません。普段は病院や施設のメニューには登場しない、この「赤い宝石フルーツ」を、まずは家庭でこっそり味わうところから、世界のスーパーフードとのお付き合いを始めてみるのも素敵です。


第2章…芽キャベツ(ブリュッセルスプラウト)~小さなキャベツの大きな底力~

芽キャベツを初めて見た時、「ミニチュアのキャベツみたいでかわいいな」と感じた人も多いかもしれません。丸くてコロンとした姿はまるで玩具の野菜のようですが、その中身は意外なほど逞しく、ギュッと詰まった葉の一枚一枚に、冬を乗り切るための力が隠れています。

ヨーロッパでは、芽キャベツは冬の食卓の定番野菜です。特にローストした七面鳥や肉料理が並ぶクリスマスシーズンには、「あって当たり前」と言われるほどよく登場します。寒さの厳しい国では、夏から秋にかけて育った芽が、冷たい風にさらされるうちに甘みと旨みを蓄え、12月頃から本番の出番を迎えます。霜に当たると、でんぷんが糖に変わって甘みが増すと言われており、日本で言う「寒締めほうれん草」のようなイメージで語られることもあります。

小さな丸い見た目からは想像し難いのですが、芽キャベツは栄養面でとても優秀な野菜です。一般的なキャベツと同じようにビタミンCを含み、さらに、骨や血液の健康に関わるとされるビタミンKや葉酸、食物繊維もたっぷり抱えています。冬場はどうしても体を動かす機会が減り、野菜も煮物や鍋に偏りがちですが、こうした濃い栄養を持つ野菜がひと皿に加わることで、食卓全体のバランスをそっと支えてくれるのです。

とはいえ、栄養成分の難しい名前を覚える必要はありません。ざっくり言えば、「小さな一個の中に、キャベツの良いところがギュッと詰まっている」という感覚で捉えておけば十分です。葉が幾重にも重なっているので、見た目は可愛いのに、実はしっかりとした食べ応えもあり、一皿に数個添えるだけで「野菜をちゃんと食べた」という満足感を与えてくれます。

日本のスーパーでも、冬場になると輸入物の芽キャベツを見かける機会が少しずつ増えてきましたが、まだまだ「毎週買う常連野菜」とまではいきません。ましてや、病院食や高齢者施設の献立で芽キャベツが登場することはほとんどなく、大量に仕入れて一度に調理するには、価格や安定供給の面でなかなかハードルが高い食材です。たとえ手に入ったとしても、小さな丸ごとの野菜は、噛む力や飲み込む力が弱くなった人には少し扱いづらく、どうしても慎重にならざるを得ません。

だからこそ、家庭の台所でこそ「本領発揮」してもらいたい野菜でもあります。家族の人数分なら、ひと袋の芽キャベツで十分。じっくり時間をかけて、1つ1つの下拵えに手を掛ける余裕も生まれます。まずは軸の部分に十字の切り込みを入れておくと、火の通りが良くなり、中まで軟らかく仕上がります。外側の固い葉を数枚はがし、汚れを落としておけば、下拵えはもうほとんど完了です。

調理法として特におすすめなのが、オーブンやフライパンでのローストです。芽キャベツを半分にカットし、オリーブオイルと少量の塩を絡めて、天板に広げて焼くだけ。断面にほんのり焦げ目がつき、外側はカリッと、中はホクホクとした食感になった芽キャベツは、それだけで立派な一品になります。ここに薄切りベーコンやソーセージを一緒に焼けば、旨みと香りがうつって、家族から歓声が上がる冬のご馳走の完成です。

もう少し日本の食卓に馴染ませたい場合は、クリームシチューやグラタンに加えてみると良いでしょう。一度サッと下茹でした芽キャベツを、鶏肉やじゃがいも、人参と一緒に煮込めば、白いシチューの中にコロコロとした緑の丸が顔を出し、見た目にも楽しい一皿になります。高齢の家族には、芽キャベツをさらに半分または4等分に切り分けてから煮込めば、スプーンだけでも食べやすく、噛む力に不安があっても安心して楽しめます。

サラダに使うことも出来ます。サッと塩茹でしてから冷まし、半分に切った芽キャベツを、茹で卵やじゃがいも、ハムなどと一緒に和えれば、冬らしいボリュームサラダになります。ドレッシングは、マヨネーズだけでなく、ヨーグルトや酢を少し混ぜると、芽キャベツのほろ苦さとよくなじみ、重くなり過ぎません。噛む力がしっかりしている家族には、ほんのり歯応えが残るくらいの茹で加減にすると、「小さなキャベツを食べている」という満足感が得られます。

一方で、芽キャベツには食物繊維が多く含まれているため、急にたくさん食べるとお腹が張ったり、ガスが溜まりやすくなったりする人もいます。最初は少量から試し、「今日は数個だけ」「週に数回だけ」といったペースで様子を見ながら取り入れていくと安心です。また、ビタミンKを多く含むため、特定の血液サラサラの薬を飲んでいる人は、自己判断で一度に大量に増やさず、気になる場合はかかりつけ医や薬剤師に相談しておくと、より安全に楽しめます。

こうして見ていくと、芽キャベツは「可愛い飾り野菜」ではなく、「小さな体に大きな底力を秘めた冬の主役級野菜」だということが分かります。日本の病院や施設の食事ではなかなか出会えないからこそ、家庭の食卓で「世界では冬の定番らしいよ」と話しながら試してみる価値があります。12月の夕方、オーブンから立ち上る香ばしい芽キャベツの香りは、寒い季節の台所に、フッと海外の温かい食卓の風景を運んでくれるかもしれません。


第3章…ケール~冬こそ甘みが増す濃い緑の葉もの野菜~

ケールという名前を聞くと、日本ではどうしても「青汁」のイメージが先に浮かびます。苦くて飲みにくい、健康のために我慢して飲むもの、という印象を持っている人も少なくないでしょう。けれど、世界の台所を覗いてみると、ケールはサラダやスープ、オーブン料理にどんどん使われる、頼れる葉もの野菜として親しまれています。大きくて力強い葉の見た目どおり、「濃い緑=力がギュッと詰まっている」という印象そのままの野菜なのです。

ケールはキャベツと同じ仲間ですが、丸く巻かずに、ヒラヒラとした葉を大きく広げて育つタイプです。寒さに強く、霜に当たることで、葉の中のでんぷんが少しずつ糖に変わり、味にほんのり甘みが出てきます。畑では、初夏から秋にかけて育った葉が、初冬から真冬にかけて一番の食べ頃を迎えます。12月の冷たい風に吹かれながらも濃い緑を保つ姿は、見ているだけで「冬の頼もしい味方」という気持ちにさせてくれます。

栄養の話を難しく言うと長くなってしまいますが、ざっくり言えば、「緑の葉物らしい良さを、ギュッと濃縮した野菜」がケールです。深い緑の色の中には、体の調子を整えるビタミンやミネラル、そしてお腹の調子を支える食物繊維がたっぷり含まれています。冬の間、どうしても野菜が煮込み料理に偏ったり、淡い色の食材が続いたりしがちな時に、ケールの濃い色がひと皿に加わるだけで、「今日はしっかり野菜を摂ったな」という安心感が生まれます。

一方で、日本の病院食や高齢者施設の献立に、ケールが頻繁に登場することは殆どありません。理由はいくつかあります。1つは、まだまだ流通量が少なく、いつでも安定した価格と量で仕入れるのが難しいこと。もう1つは、独特のホロ苦さと噛み応えのある葉が、人によって好みが分かれるという点です。大量調理の現場では、「誰が食べても安心して食べられる味」が優先されがちなので、どうしても定番のキャベツやほうれん草、小松菜などが中心になります。

その分、家庭では自由度が高くなります。家族の好みや体調に合わせて、ケールの個性を生かしたり、やさしく慣らしたりしながら使い分けることが出来ます。例えば、しっかり噛む力のある世代には、ざく切りにしてソテーにするだけでも満足感のある一皿になりますし、噛む力や飲み込む力が心配な高齢の家族には、細かく刻んだり、スープに溶け込ませたりして、形を変えながら同じケールを楽しむことが出来ます。

ケールの美味しさを分かりやすく感じたいなら、まずはシンプルなソテーから試してみるのがお勧めです。太い茎の部分は硬くなりやすいので、予め取り除くか、細かく刻んで火を通しやすくしておきます。葉は食べやすい大きさに手でちぎり、オリーブオイルとにんにくを熱したフライパンに加えて、サッと炒めます。最後に塩をひと摘まみ振るだけで、ケール特有のホロ苦さと、冬ならではのほんのりした甘さが感じられる一皿になります。ここにベーコンやきのこを少し足せば、ご飯にもパンにも合うおかずに変わります。

オーブン料理にすると、また違った表情を見せてくれます。薄くオイルを絡めたケールを天板に広げ、低めの温度でじっくり焼いていくと、葉がカリッと乾いて「ケールチップス」のようになります。塩を控えめに振っておけば、お酒のおつまみとしても、子どもの軽いおやつとしても楽しめます。揚げ物より油を抑えられ、ポテトチップスよりも軽い罪悪感で摘まめるので、「口寂しいけれど、少しだけ体にやさしいものを食べたい」という冬の夜にピッタリです。

スープや煮込み料理に溶け込ませる方法は、高齢の家族と一緒に楽しみたい時に向いています。玉ねぎやじゃがいも、人参などと一緒に煮込んだスープに、細かく刻んだケールを仕上げに加えると、全体がフワリと緑がかった、冬らしいポタージュになります。ミキサーにかけてしまえば、葉の形はほとんど残らず、ほろ苦さもやわらいで、穏やかな味わいに落ち着きます。ケールが苦手な人にも、「今日は少しだけいつもよりコクがあるね」と感じてもらえる程度の変化で、無理なく栄養をプラス出来るのが、この使い方の良いところです。

生のままサラダにする方法もあります。ただし、硬さと苦味が気になる人も多いので、最初は「全部をケールにする」のではなく、レタスやベビーリーフの中に細かく刻んだケールを混ぜる程度から始めると良いでしょう。オリーブオイルとレモン汁、少量の醤油や塩をあわせたドレッシングで和えると、ケールの苦味がほど良く馴染みます。砕いたナッツやチーズを少し加えれば、世界のカフェで出てきそうな、冬らしいグリーンサラダになります。

大切なのは、「体に良さそうだから」といって、一度にたくさん食べ過ぎないことです。濃い葉もの野菜は、慣れないうちに量を増やし過ぎると、お腹が張ったり、体がびっくりしてしまったりすることがあります。最初は「今日はスープに少しだけ」「今夜はソテーに一握りだけ」といったペースで、週に数回取り入れていくイメージで付き合っていくと、体にも家族にもやさしい距離感で続けていけます。

ケールは、日本ではまだ「青汁の材料」というイメージが先行していますが、世界を見渡すと冬の食卓を支える身近な葉物として親しまれている存在です。病院や高齢者施設ではなかなかお目にかからないからこそ、家庭の台所で「今夜は世界の冬野菜をちょっと真似してみよう」と軽い気持ちで取り入れてみると、いつものメニューが少しだけ頼もしく、そしてちょっとだけオシャレに感じられるかもしれません。


第4章…クランベリー~世界の行事を彩る酸っぱい赤い実の働き~

クランベリーと言えば、まず思い浮かぶのは真っ赤な色と、キュッと口がすぼむような強い酸味かもしれません。日本では生の実を見る機会はあまり多くありませんが、海外の映画やドラマの中で、クリスマスシーズンに赤い実のソースがターキー料理の横に添えられている場面を見たことがある人は多いのではないでしょうか。あのソースの正体こそが、クランベリーです。

クランベリーは、湿地帯や寒い地域を好む低木のベリーで、北米や北ヨーロッパなどで多く栽培されています。収穫のピークは秋ですが、そこから年末年始の行事シーズンにかけて、ジャムやソース、ジュース、ドライフルーツなど、さまざまな形で食卓に登場します。12月のテーブルの上で、肉料理やケーキの周りを赤く彩る存在として、長い間、親しまれてきました。

栄養の面で見ても、クランベリーはなかなか頼もしい果実です。元々ベリー類は、体の調子を整えるビタミンや、サビつきを防ぐと言われる成分を多く含むことで知られていますが、クランベリーもその一員です。特に、赤い色のもとになっている成分や、果皮や種の周りに含まれる成分は、小さな実の中にギュッと詰まっており、「少量でも存在感のあるベリー」として世界中で注目されてきました。

また、クランベリーは「トイレのトラブルをやさしく支える果実」として名前が挙がることもあります。昔から、寒い地域の人々は「体の外へ余分な物を流しやすくする手助けになってくれるかもしれない」と期待しながら、クランベリージュースを日々の飲み物に取り入れてきた歴史があります。もちろん、これさえ飲めば安心、というものではありませんが、冷えや乾燥で水分をとる量が減りがちな冬に、「ついでに1杯飲んでおこうか」と思わせてくれる果実であることは確かです。

味わいの面では、クランベリーは「酸っぱさの主役」です。そのまま生で齧ると、思わず眉が寄ってしまうほどの酸味があり、とても一度にたくさんは食べられません。そこで活躍するのが、「甘みとの組み合わせ」です。砂糖やはちみつを少し加えて煮込めば、肉料理にぴったりのクランベリーソースになり、リンゴやオレンジと一緒に煮れば、パンにもヨーグルトにも合うフルーツコンポートに変身します。酸味の強さを、甘みと香りの力で包み込んであげると、グッと食べやすくなるのです。

日本の家庭で扱いやすいのは、ドライクランベリーやジュース、冷凍のクランベリーなどです。生のクランベリーは手に入りにくくても、パン売り場の近くや製菓コーナーには、ヨーグルトに入れたりお菓子作りに使ったり出来るドライタイプが並んでいることがあります。これを少量、冬の朝食のヨーグルトに散らすだけでも、白い器の中に赤い彩りが加わり、「今日はちょっと特別な朝だな」と感じさせてくれます。甘みのあるシリアルやグラノーラと混ぜれば、酸味と甘みのバランスがとれ、食べやすさも増します。

クランベリージュースは、炭酸水やお湯で割っても楽しめます。冷たい炭酸で割れば、クリスマスカラーを思わせる赤いソーダになり、子ども向けのノンアルコールドリンクとしてもピッタリです。夜に温かくして飲むなら、お湯で割ったクランベリードリンクに、ほんの少しはちみつを垂らすと、酸味が和らいで、喉と心をほっと落ち着かせてくれる一杯になります。甘さは控えめにして、「ほんのり酸っぱくて、でもやさしい味」を目指すと、飽きずに続けやすい味わいになります。

お菓子作りが好きな人なら、クッキーやマフィンに混ぜる使い方も楽しいところです。しっとりした生地の中に、クランベリーの赤い粒がところどころ顔を出し、焼き上がった時にほんのり酸味がアクセントとして残ります。甘さだけでなく、酸味もある焼き菓子は、冬の濃い飲み物──ホットコーヒーや紅茶、ほうじ茶など──との相性がとても良く、ゆっくりしたい午後の一時にピッタリです。

一方で、クランベリーにも注意しておきたい点があります。酸味がとても強いので、胃が弱い人や空腹時にたくさん飲むと、ムカムカしてしまうことがあります。また、ジュースやドライフルーツには砂糖が多く使われていることもあるため、「体に良いから」とつい飲み過ぎ・食べ過ぎてしまうと、糖分の摂り過ぎに繋がることもあります。表示をよく確認し、量はあくまで「お楽しみ程度」に留めておくのが、クランベリーと仲良くつき合うコツです。

そして、もう1つ大事なのが、薬との関係です。一部の薬を飲んでいる人では、クランベリーをたくさん摂ると、薬の効き方に影響が出る可能性が指摘されているものもあります。詳しいことは自己判断で決めず、心配な時には、かかりつけ医や薬剤師に「あまりたくさんでなければ、冬にクランベリードリンクを楽しんでも良いか」とひと声相談してから取り入れると、安心して冬の味を満喫できます。

日本の病院食や高齢者施設では、クランベリーが登場することはまずありません。大量に使うにはコストや入手の安定性に課題があり、さらに酸味の強さや薬との関係も考えると、現場としては慎重にならざるを得ない食材だからです。けれど、家庭の台所であれば、量も頻度も自分たちで調整できます。「今日はヨーグルトにスプーン1杯だけ」「週末だけクランベリーソーダを楽しむ」といった緩やかな取り入れ方なら、無理なく続けられます。

世界では行事や家族の集まりを彩る赤い実として、冬のテーブルを賑やかにしてきたクランベリー。日本でも、輸入食材コーナーの片隅から、静かに存在をアピールしています。12月のある日、ふとその袋を手に取って、「今年の冬は、世界の定番ベリーを少しだけ試してみようか」とカゴに入れてみる。その小さな一歩が、いつもの食卓に、遠い国の冬の物語をそっと運んできてくれるかもしれません。

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まとめ…世界の冬スーパーフードを日本の台所に少しだけ招く

ザクロ、芽キャベツ、ケール、クランベリー。名前だけ並べると、どれも日本では「どこかよその国の食材」という印象が強いかもしれません。けれど、それぞれの国や地域では、冬の食卓にしっかり根を張った存在であり、寒い季節の体と心を支える「いつもの食材」として親しまれてきました。赤い粒が宝石のようなザクロ、小さな体にギュッと力を秘めた芽キャベツ、濃い緑の葉を広げるケール、行事のテーブルを赤く染めるクランベリー。それぞれが、冬という季節の記憶と強く結びついています。

一方、日本の病院や高齢者施設の献立に、これらの食材が登場することは殆どありません。大量に仕入れて安定して提供するには、まだまだ価格や流通の面でハードルが高いこと。酸味や苦味、種の硬さなど、好みや噛む力を選ぶポイントがあること。そうした事情から、どうしても「誰にでも食べやすく、安定して手に入る野菜や果物」が優先され、ザクロや芽キャベツ、ケール、クランベリーは、日常のメニューから自然と外れていきます。それ自体は決して悪いことではありませんが、「世界の冬の楽しみ方」を知る機会が少なくなっているのも事実です。

だからこそ、家庭の台所には、別の役割があります。毎日のご飯を作る場所であると同時に、世界の食文化を少しだけ覗き見る小さな実験室にもなり得るのです。スーパーや輸入食材コーナーでたまたま見かけたザクロをひと玉買ってみる。芽キャベツの袋を手にとって、クリームシチューに数個だけ加えてみる。ケールの束を見つけたら、青汁ではなくソテーやスープにしてみる。ドライクランベリーを、冬のヨーグルトや焼き菓子に散らしてみる。それは決して大げさなチャレンジではなく、「いつものメニューを、ほんの少しだけ世界寄りに寄せてみる」という程度の小さな一歩です。

この4つの食材に共通しているのは、「少量でも存在感を発揮してくれる」という点です。ザクロはスプーン1杯の粒をヨーグルトに散らすだけで、器の印象を一変させます。芽キャベツは数個焼いただけで、皿の中が一気に冬らしくなります。ケールはひと握り加えるだけで、スープやソテーの色と栄養の厚みを増してくれます。クランベリーはほんの少し混ざるだけで、甘いお菓子や飲み物にキリッとした表情を与えてくれます。「毎日どっさり食べる」のではなく、「時々少しだけ登場してもらう」くらいの距離感が、むしろちょうど良いのかもしれません。

もちろん、どの食材にも、それぞれ気を付けたい点はあります。酸味や苦味が強いものは、胃腸や持病との相性を見ながら様子を見ていく必要がありますし、薬との組み合わせに注意が必要な場合もあります。そこさえ丁寧に確認しておけば、後は「無理のない量と頻度で」「家族の顔色を見ながら」取り入れていけば良いだけです。スーパーフードという言葉に振り回される必要はなく、「いつもの食事に、世界の冬の恵みを少し足してみる」という感覚を軸にしておくと、肩の力を抜いて付き合っていけます。

12月は、ただ冷え込んでいく季節ではなく、「これからの3ヶ月をどう乗り切るか」を静かに準備する時期でもあります。日本の冬野菜たちに守られながら、ザクロ、芽キャベツ、ケール、クランベリーといった世界の冬スーパーフードをひと皿か半皿分だけそっと招き入れてみる。すると、食卓の風景がほんの少し変わり、会話の中に「世界のどこか」の気配が混じり始めます。病院食や施設の献立ではなかなか味わえない、そのささやかな贅沢こそが、家庭の台所にだけ許されている楽しみ方なのかもしれません。

今年の12月、いつものスーパーやネットショップで、もしこの4つの食材のうちどれかを見かけたら、「どれか1つだけ、試してみようかな」と心の中で呟いてみてください。その小さな選択が、冬の食卓の景色を、そして「食べる楽しみ」の幅を、静かに広げてくれるはずです。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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