12月の食卓にそっと忍ばせたい~菊芋と冬クレソンという2大スーパーフード~
目次
はじめに…冬の食卓にまだ知られていない根菜と葉物の話
12月になると、鍋やシチュー、煮物が食卓に並ぶ回数がグンと増えます。大根、白菜、葱、ほうれん草……どれも冬の定番で安心できる顔触れです。けれど同じ食材ばかりだと、体には良いと分かっていても、どこか新鮮さやワクワク感が足りなくなってきませんか。
じつは、同じ冬の季節に、まだあまり知られていない「秘密の野菜たち」がひっそりと出番を待っています。それが、土の中でこっそり育つ「菊芋」と、冷たい水の中で葉を伸ばす「冬クレソン」です。
菊芋は、見た目は生姜のようなゴツゴツした根っこの野菜です。一般のスーパーではあまり見かけませんが、健康志向の人たちや一部の農家さんの間では、「血糖値やお腹に優しい」としてジワジワ注目されてきました。病院や高齢者施設の献立にはほとんど登場しないのに、家庭の工夫次第で毎日の食卓に取り入れやすい、不思議な立ち位置の食材です。
一方、クレソンと言えば、お肉料理の横にちょこんと添えられた飾りのイメージが強いかもしれません。けれど、寒い季節にグッと味と栄養がのってくる「冬クレソン」は、小さな葉の中に頼もしい力をギュッと詰め込んだ存在です。いつもの鍋やスープに少し加えるだけで、香りと栄養の両方をそっと底上げしてくれます。
このお話では、そんな「菊芋」と「冬クレソン」という2つの冬野菜を、家庭の台所目線で紹介していきます。どんな野菜なのか、どんなところが体に嬉しいのか、どんな食べ方なら高齢の家族とも一緒に楽しめるのか。忙しい毎日の中でも無理なく取り入れられるような、やさしい工夫も交えながらお届けします。
読み終わる頃には、「今度、直売所やネットで探してみようかな」「今年の冬支度に、少しだけ新しい野菜を足してみようかな」と思ってもらえるような、そんな静かなトキメキを目指します。
[広告]第1章…12月が食べごろの菊芋という“地下のスーパーフード”
菊芋という名前を、日常で耳にすることはあまり多くありません。読み方は「きくいも」。漢字に「芋」とついていても、じつはじゃがいもやさつまいもとは少し違う、キク科の植物です。地上には菊に似た黄色い花が咲き、土の中にはコロコロとした塊がいくつも繋がって育っていきます。
見た目は、生姜を少し丸くしたような、ごつごつした姿。皮を剥くと中は白く、包丁を入れると、シャキッとした手応えがあります。初めて手に取ると、「これ、本当に美味しいのかな」と少し心配になるかもしれません。けれど、薄く切って齧ってみると、癖は意外と少なく、ほんのり甘さを感じる、優しい味わいがあります。
菊芋の収穫期は、晩秋から冬にかけて。特に、気温がグッと下がる12月頃になると、地中の塊に栄養がギュッと集まり、甘みと旨みがグンと増してきます。畑の土が冷たくなり、表の葉が枯れてくる頃、「そろそろ掘り時だよ」と教えてくれるような、そんなタイミングです。まさに「冬の始まりに美味しさのピークを迎える根菜」と言って良いでしょう。
菊芋が注目されている理由の1つに、「お腹と血糖値にやさしい」と言われる特徴があります。菊芋には「イヌリン」という成分が多く含まれていて、水に溶けやすい食物繊維の一種とされています。このイヌリンは、体の中でゆっくりふくらむ性質があり、食後の上がり方を緩やかにしてくれるのではないか、と期待されています。また、腸の中で善玉菌のご飯になりやすく、毎朝のお通じを助けてくれる存在としても知られています。
さらに、菊芋にはカリウムなどのミネラルも含まれています。塩分を摂り過ぎた時、余分なナトリウムを体の外に出すよう助けてくれる働きがあると言われており、「むくみが気になる」「塩分が多い食事が続きがち」という中高年世代にも、そっと寄り添ってくれる野菜です。ただし、腎臓の持病がある方や、特別な制限が必要な方は、自己判断ではなく、かかりつけ医や栄養士に相談しながら、量や頻度を決めてもらう方が安心です。
ここまで聞くと、まさに名前通りの「地下に潜むスーパーフード」のように思えてきますが、菊芋は決して特別なサプリメントではなく、あくまでも「野菜」です。スライスしてきんぴらにしたり、ポテトサラダのじゃがいもの一部を菊芋に置き換えたり、味噌汁の具に少し足したりと、いつもの家庭料理に少し混ぜるだけで美味しく楽しめます。量も「たくさん食べれば良い」というものではなく、他の野菜と同じように、日々の食卓に少しずつ登場してくれれば、それで十分頼もしい存在です。
ただ、これだけの魅力がありながら、病院や高齢者施設の献立に登場することは、ほとんどありません。理由は簡単で、「まだまだ出回る量が少ない」「価格や入手の安定性が読みにくい」といった事情があるからです。給食や大量調理の世界では、「安定供給できること」がとても大切なので、どうしても一般的な野菜が中心になります。
だからこそ、家庭の台所が出番になります。直売所でたまたま見つけた菊芋を「何だろう」と通り過ぎてしまうのか、「あ、これがあの菊芋か」と一度試してみるのか。そこで生まれる小さな一歩が、冬の食卓に新しい楽しみを連れてきてくれます。12月は、そんな「菊芋デビュー」にちょうど良い季節なのかもしれません。
第2章…菊芋を日常のおかずにするシンプルな食べ方と注意ポイント
菊芋は、健康に良さそうだと聞くとつい「特別な料理を考えなくては」と身構えてしまいがちですが、実はいつものおかずに少しだけ混ぜてあげるだけで十分存在感を発揮してくれる野菜です。難しいレシピよりも、「いつもの家庭料理にそっと足す」という気持ちで付き合うと、台所でも続けやすくなります。
まず、買うときのポイントから見てみましょう。店頭で手に取った菊芋が、全体的にふっくらしていて、皮にハリとツヤがあり、指で押しても柔らかくへこまないものがおすすめです。多少デコボコしていても、それは菊芋の個性のようなものなので問題ありません。萎びてスカスカした感じのものは、既に水分が抜けてしまい、風味も落ちていることが多いので、そっと棚に戻してあげた方が良いでしょう。
家に持ち帰ったら、新聞紙やキッチンペーパーに包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。土付きのままなら、軽く土を払うだけにしておき、使う直前に水洗いすると長持ちします。家庭で扱う量であれば、だいたい1週間前後を目安に、少しずつ使い切っていくイメージでいると安心です。カットした断面が出た場合は、変色を防ぐためにラップでぴったりと包み、早めに火を通してしまいましょう。
下拵えは、思っているより簡単です。菊芋の皮はとても薄く、たわしでこすり洗いをすると、そのまま食べられるくらい綺麗になります。皮の香りが気になる場合や、高齢の家族に出す時は、ピーラーで薄く剥いても構いません。切る厚さを2~3ミリほどの薄切りにすると、火が通りやすく、歯応えもやさしく仕上がります。切った後、そのままだと表面が少しずつ色づいてきますが、味に大きな問題はありません。どうしても気になる時は、短時間だけ水にさらしておき、長く浸け過ぎないよう気を付けるとよいでしょう。
一番取り入れやすいのは、やはり「きんぴら」です。ごぼうのきんぴらと同じように、細切りにした菊芋を油でさっと炒め、醤油と味醂で軽く味を絡めるだけで、シャキシャキとした食感のおかずが出来上がります。ごぼうより癖が少ないので、子どもでもすんなり受け入れやすく、「今日はごぼうに似ている新しい野菜だよ」と声をかけながら少量から出していくと、家族の反応も見やすくなります。
味噌汁やスープの具としても、とても優秀です。薄切りやいちょう切りにした菊芋を、にんじんや玉ねぎと一緒に煮込むと、ホクホクとした食感が加わり、汁物全体にやさしいコクと甘みが出てきます。高齢の家族には、具材を小さめに切り、じっくり柔らかくなるまで煮てから出すと安心です。ポタージュにする場合は、じゃがいもと半分ずつ混ぜ、牛乳や豆乳でのばしてミキサーにかけると、クリーミーなのにどこか軽やかなコクのある風味のスープになります。
もう少しカジュアルに楽しむなら、薄切りをオーブンやフライパンで焼いて「菊芋チップス」や「フライドポテト」にする手もあります。薄く切った菊芋を油をひいたフライパンでじっくり焼き、最後に軽く塩を降るだけで、おつまみや子どものおやつにもなる、香ばしくてコクのある一品になります。油を控えたい時は、クッキングシートの上に並べてオーブンで焼けば、カリッとした焼き上がりになります。こうしたチップスは、1つ1つが小さいので、初めて菊芋を試す時にもハードルが低く、家族の顔色を見ながら量を調整できるのも利点です。
ここで、少し大事な注意点にも触れておきます。菊芋にはお腹に働きかける成分が多く含まれているため、人によっては、急にたくさん食べるとお腹が張ったり、緩くなったりすることがあります。最初は「一汁三菜のうちの小さなおかずの1つ」という位置付けで、ごく少量から試すのがおすすめです。慣れてきて体調に問題がなければ、少しずつ回数や量を増やしていくイメージを持つと、体にも家族にも優しい向き合い方になります。
また、腎臓の持病がある方、特定の薬を飲んでいる方などは、カリウムや水分の量に注意が必要な場合があります。菊芋だけに限った話ではありませんが、「体に良さそうだから」と自己判断で極端に増やしてしまうと、却って負担になることもあります。心配な時は、かかりつけの医師や栄養士に「菊芋という野菜を少し試してみたい」と相談しておくと、安心して冬の味わいを楽しむことが出来ます。
高齢の家族と一緒に暮らしている場合は、噛み心地にもひと工夫を。同じ鍋で菊芋を煮込んでも、元気な世代向けには少し歯ごたえを残し、年配の方の分だけは切り方を薄くする、煮込み時間を長めにする、といった小さな調整で、同じ料理を無理なくシェアできます。ポタージュのように形を残さない料理にすれば、噛む力や飲み込む力に不安のある人とも「同じ味」を楽しむことが出来、食卓の一体感にも繋がります。
こうして見てみると、菊芋は特別なご馳走ではなく、「いつもの料理を少しだけ変身させてくれる冬の助っ人」のような存在です。ほんの少し台所の手を止めて、「今日は大根の代わりに菊芋を入れてみようかな」「ごぼうと半分ずつにしてみようかな」と考えてみる。その小さなひと工夫が、家族の体調をそっと支え、冬の食卓に新しい発見を運んでくれます。
第3章…世界が注目した冬クレソン~小さな葉にぎゅっと詰まる力~
クレソンという名前を聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、ステーキの横にちょこんと添えられた緑の葉ではないでしょうか。お肉の脇役、彩り担当、といったイメージが強く、「わざわざ買って料理に使う野菜」というよりは、「外食の時にちょっと乗っているもの」という扱いを受けがちです。ところが、じっくり中身を見ていくと、この小さな葉の中には思いの他、大きな力が詰まっています。
クレソンは水辺を好む植物で、澄んだ冷たい水の中で元気に育ちます。日本でも、山あいの湧き水や清流の傍にクレソン畑を持つ農家さんがいて、寒い季節の澄んだ水の中で、キュッと葉を引き締めながら育っていきます。気温が下がる冬場は、生育のスピードはゆっくりになりますが、その分、香りや風味が濃くなり、「冬のクレソンは味が載る」と言う人も少なくありません。
見た目は、丸みのある小さな葉と細い茎が連なっていて、とても頼りなさそうです。ところが、ひと口齧るとピリッとした辛みと爽やかな香りがフワッと広がり、脂っこい料理の後口をスッキリと整えてくれます。洋食の付け合わせのイメージが強いかもしれませんが、実は和風の鍋やみそ汁とも相性がよく、ほんの少し加えるだけで味の印象が変わる、不思議な役者でもあります。
世界の栄養学の分野では、このクレソンが「野菜の中でも特に栄養がギュッと詰まった存在」としてたびたび名前が挙がってきました。ビタミンCやビタミンK、βカロテンなど、体の中でのサビつきを防いだり、骨や血管の健康を支えたりする成分がバランスよく含まれていることが知られています。これらはどれか1つだけが飛び抜けて多いというより、「少ない量でいろいろな栄養をまとめてとれる」というのがポイントで、まさに小さな葉に力が凝縮されているイメージです。
例えば、冬の体調管理で気になる「冷え」と「どんより感」。寒さで体が強張ると、どうしても血の巡りが悪くなり、肩こりや怠さを感じやすくなります。クレソンに含まれる辛み成分や香りの成分は、食べた時に口の中や鼻にスッと広がり、一瞬だけでも気分を切り替えてくれます。もちろん、それだけで冷え性が治るわけではありませんが、「食卓に爽やかな風を通す」という意味で、冬のメニューには嬉しい存在です。
また、クレソンはカルシウムや鉄分などのミネラルも含んでいます。高齢期になると、骨の強さや貧血傾向が気になってくることが多く、牛乳や小魚、大豆製品など基本的な食材に加えて、日々の食事の中で少しずつ補っていきたい成分です。クレソンだけに頼るわけにはいきませんが、「サラダやスープの中に少し足しておく」「お肉の隣に、ただ乗せるだけでなく一緒に食べる」といった工夫で、じわじわと下支えをしてくれる頼もしい脇役になります。
一方で、クレソンは「薬ではなく、あくまで野菜」であることも大切なポイントです。体に良い成分がいろいろ含まれているからと言って、一度に大量に食べれば食べるほど良いというものではありません。辛みが強いので、たくさん食べると胃がびっくりしてしまう人もいますし、ビタミンKが多く含まれているため、血液をサラサラにする一部の薬を飲んでいる人は、自己判断で大量に増やさない方が安心です。気になる場合は、かかりつけ医や薬剤師に「クレソンを少し食事に取り入れてもよいか」と相談しておくと、安心して楽しむことが出来ます。
日本の家庭では、クレソンはまだ「特別な店に行ったときに出てくるもの」という印象が強く、スーパーの野菜売り場で見かけても、通り過ぎてしまう人も少なくないでしょう。病院や高齢者施設でも、彩りの一部としてほんの少量使われることはあっても、主役として登場することはほとんどありません。だからこそ、家庭の台所で少し大胆に使ってみると、そのギャップが楽しく感じられます。
例えば、冬の鍋料理の「締め」に入れる野菜を、白菜だけでなくクレソンに変えてみる。いつものポテトサラダに、最後にざく切りのクレソンを混ぜて、仄かな辛みをプラスしてみる。シンプルな卵スープに1掴み散らして、緑の彩りと香りを足してみる。そんな小さな実験を重ねることで、「冬クレソン」という名前が、少しずつ自分の家の味と結びついていきます。
小さな葉っぱが食卓に乗るだけで、料理が少しだけキリッと引き締まる。冬の弱い日差しの中で、湯気の立つスープからクレソンの香りが立ちのぼる。それは、派手さはなくても「季節を味わう」という豊かさに、そっと手を添えてくれる瞬間です。世界が注目した栄養の詰まった葉物を、12月からの家庭の定番として、少しずつ迎え入れてみるのも悪くありません。
第4章…鍋とスープとサラダで楽しむ~冬クレソンの主役レシピ発想~
冬クレソンを「飾り」から「主役」へと連れてくるなら、一番扱いやすいのは、やはり冬の定番メニューたちの中にそっと招き入れてしまうことです。難しい料理名を覚える必要はなく、いつも作っている鍋やスープやサラダに、クレソンの緑を多めに呼び込んでいくイメージで考えると、台所でもグッと現実味が増してきます。
まず想像しやすいのが、冬クレソンを主役級に扱った鍋です。例えば、定番の豚しゃぶ鍋を思い浮かべてみてください。いつもなら白菜や長葱が鍋いっぱいに広がっているところを、敢えて野菜は控えめにして、仕上げの直前にざく切りのクレソンをどサッと加えます。火を止めるひと呼吸前、フワッと湯気の上がる鍋に、濃い緑色の葉が沈んでは浮かび、その合間から柔らかく煮えた豚肉が顔を出す様子は、見ているだけで食欲をそそります。ひと口啜ると、脂の甘さをクレソンのほろ苦さと香りがキュッと締めてくれて、「ああ、これはもう付け合わせではなく主役なんだな」と実感出来るはずです。
ここに菊芋を加えると、冬ならではの組み合わせになります。薄く輪切りにした菊芋を、ほかの野菜より少し早めに鍋に入れておき、ホクホクと柔らかくなった頃合いで豚肉とクレソンを重ねます。菊芋のやさしい甘みと、クレソンのさわやかな香り、豚肉のコクが1つの鍋の中で混ざり合い、シンプルな出汁だけでも十分満足感のある味わいに変わっていきます。高齢の家族には、菊芋を小さめに切り、クレソンも少し長めに火を通してやわらかくしてあげると、同じ鍋を無理なく楽しめます。
次に試してみたいのが、冬クレソンを活かしたスープやポタージュです。冷え込んだ夕方、台所で湯気を上げる鍋の中に、薄切りの菊芋と玉葱が静かに煮えていきます。そこにじゃがいもを少し加え、やわらかくなったところで火を止め、ミキサーでなめらかにしてから鍋に戻します。最後に刻んだクレソンを加え、余熱で色よく火を通したら、淡いベージュのスープの中に、ところどころ濃い緑が浮かぶ、冬らしいポタージュの出来上がりです。クレソンを最初から一緒に煮込むと香りが飛びやすいので、仕上げのタイミングで加えるのが、小さなコツになります。
このスープなら、噛む力や飲み込む力が気になる人とも、同じ鍋からよそって一緒に楽しめます。お年寄りには、クレソンの量を少し控えめにして、ミキサーでさらになめらかにしてあげると安心ですし、元気な世代には、カップの上から生のクレソンを1摘まみ添えて、香りを強く楽しんでもらうことも出来ます。1つの鍋から、家族それぞれに合わせた器に分けていけるのは、家庭料理ならではの自由さです。
そして、忘れてはいけないのがサラダです。クレソンは生のままでも十分美味しくいただけるので、冬のサラダの「まとめ役」として活躍してくれます。例えば、オーブンでローストした菊芋を少し冷ましてから、クレソンと合わせると、温かさと冷たさの間を行き来するような不思議な一皿になります。カリッと焼いたベーコンを少しだけ散らし、オリーブオイルと少量の醤油、あるいはポン酢を合わせたドレッシングを回しかければ、和と洋が混ざり合ったような、冬らしい凛としたサラダになります。高齢の家族には、ローストした菊芋を軟らかめに仕上げ、クレソンは細かく刻んで混ぜてしまえば、風味だけをやさしく共有できます。
よりシンプルに楽しみたい日には、レタスやキャベツなど、いつものサラダ野菜の量を少し減らし、その分だけクレソンを増やしてみるのも良い方法です。葉だけでなく細い茎まで刻んで加えると、シャキッとした歯応えと仄かな辛みが全体を引き締めてくれます。ここに薄切りの菊芋を生のまま少し混ぜれば、「今日は冬だけの特別なサラダだよ」と胸を張りたくなる、季節感のある一皿になります。
現実的な台所目線で言えば、「買ってきたクレソンをどうやって2~3日で使い切るか」は悩みどころです。そこで、初日は鍋、翌日はスープ、最後はサラダという風に、メニューをリレーさせていくと無駄なく使い切ることが出来ます。鍋でたっぷり使った残りを刻んでスープに足し、さらに少し残った分を翌日のサラダに回す。そんな流れを意識して献立を組むと、クレソンが冷蔵庫の中で萎れてしまう前に、「アッという間になくなったね」と笑えるくらい、気持ちよく食べ切ることが出来ます。
冬クレソンと菊芋は、どちらもまだまだ「どこの家庭にもある定番」という存在ではありません。けれど、一度鍋やスープやサラダに迎え入れてみると、その香りと食感が不思議と癖になり、「あの味、また食べたいね」という声が出てくるはずです。特別な技術ではなく、いつもの料理にひと摘まみ加えるだけの工夫で、台所から季節の豊かさを届けていく。そんな冬の食卓作りに、この2つの野菜を仲間入りさせてみるのも、悪くない選択かもしれません。
[広告]まとめ…病院や高齢者施設では出会えない食材を家庭の冬支度に
冬になると、私たちの食卓はどうしても決まった顔ぶれに落ち着きがちです。大根や白菜、ねぎにほうれん草。どれも頼りになる存在ですが、毎年同じパターンが続くと、「体には良いけれど、少し物足りないな」と感じる瞬間も生まれます。そんな時、そっと脇から登場してくれるのが、菊芋と冬クレソンという2つの食材です。
菊芋は、12月頃に一番美味しい時期を迎える、土の中の根菜です。地味な見た目に反して、お腹や血糖値のことを考えた時に心強い成分を多く含み、しかもきんぴらや味噌汁、ポタージュ、チップスなど、家庭の定番料理にそのまま馴染んでくれます。決して「特別な健康食品」ではなく、あくまで野菜として、他の食材と肩を並べながら、冬の日々を支えてくれる存在です。
一方、冬クレソンは、水辺で育つ小さな葉の野菜です。ステーキの横に添えられた脇役というイメージとは裏腹に、香りとほろ苦さ、そして葉物らしい栄養をギュッと抱え込んでいます。鍋の仕上げにどサッと加えれば、一気に季節感のある一品に変わり、スープやポタージュに混ぜれば、湯気と一緒に爽やかな香りが立ち昇ります。サラダに組み合わせれば、冬の野菜たちのまとめ役として、全体をキリッと整えてくれます。
どちらの食材も、病院や高齢者施設の大量調理には、まだあまり登場しません。安定した仕入れや価格の問題があるため、どうしてもメニューは定番野菜が中心になりがちです。だからこそ、少量ずつ買える家庭の台所だからこそ、取り入れやすいとも言えます。「施設の献立には出てこないけれど、我が家の冬支度にはそっと加えておく」――そんな、ちょっとした優越感をくすぐる楽しみ方も悪くありません。
もちろん、「体に良さそうだから」といって、いきなり大量に食べる必要はありません。菊芋は最初は少量から試し、体調を見ながらゆっくり慣れていく。クレソンは、薬との飲み合わせが気になる場合は、事前に医師や薬剤師に一言相談しておく。そのひと手間を惜しまないことで、「無理なく続けられる冬の習慣」に育っていきます。高齢の家族には、切り方や火の通し方を工夫しながら、同じ鍋や同じスープを分け合えるようにすることも、大切なポイントです。
直売所や道の駅、地域の小さな八百屋さんを覗いた時、菊芋やクレソンがひっそり並んでいることがあります。それまでは素通りしていたそのかごの前で、「あ、この記事で読んだあの野菜か」と思い出し、ひと袋そっとカゴに入れてみる。その瞬間から、その野菜は「どこかの健康番組で見た食材」ではなく、「我が家の冬の食材」に変わっていきます。
12月は、ただ寒さに身を縮めるだけの季節ではなく、体を労わる選択肢を増やせる季節でもあります。菊芋と冬クレソンという、まだ多くの人が知らない2つの食材を、今年の冬支度のどこかに少しだけ組み込んでみる。すると、いつもの鍋やスープやサラダが、ほんの少しだけ誇らしく感じられるかもしれません。「冬の食卓を、もう一段階だけ大事にしてみよう」という気持ちが生まれた時、これらの野菜はきっと、静かにそれに応えてくれるはずです。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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