ひとつの日に詰め込まない!今の子どもたちに合う新時代の運動会プラン
目次
はじめに…今年こそ「出来る形で続ける」運動会にしてみよう
運動会って、本来は「その年の子どもたちの顔」を残してあげる行事ですよね。だけど実際の現場では、天気や人手や会場の広さ、保護者の予定、先生方の負担など、いろいろな条件が重なって「例年通りの丸1日開催」がだんだん難しくなってきました。走って、踊って、応援して…と盛りだくさんにしようとすると、準備も当日も先生方が疲れ切ってしまう。さらに、全員で集まる形だけを守ろうとすると、子どもたちの人数や安全面との擦り合わせが大変になります。
だから発想を少しずらしてみます。「昔の形を守るための運動会」ではなく、「今いる子どもたちに合わせて組み替えられる運動会」にするのです。例えば、一辺に全部をやらなくてもいい。校庭だけでやらなくてもいい。保護者は後でゆっくり見られるようにしてもいい。先生は子どもたちに制作や発表を任せて、裏方に回ってもいい。こう考えると、学校や園の事情に合わせてもっと自由な設計ができます。
もう1つ大事なのは、「頑張った姿をきちんと残して、誰かに見てもらえるようにする」ことです。参加できた子も、当日体調を崩した子も、後で映像や掲示、作品として見られるようにしておけば、行事としての満足度はグッと上がります。1日だけで終わるのではなく、準備の日・本番の日・後から楽しむ日と分けてあげると、行事そのものの寿命が延びて、子どもたちの記憶にも残りやすくなります。
この記事では、そうした考え方をベースに「今の子どもたちに合う新時代の運動会」を組み立てていきます。昔ながらの良さは残しつつ、先生方の負担を減らし、家族が見やすくて、子どもたちが主役として目立てる形にしていきましょう。次の章から、具体的にどう組み替えるかを順番に見ていきます。
[広告]第1章…どうして昔ながらの運動会だけでは合わなくなってきたのか
かつての運動会は、とても分かりやすい形でした。春か秋のどこかで丸1日をあけて、全校生徒・全園児が一斉に校庭に集まり、かけっこをして、団体演技をして、最後は紅白のどちらが勝ったかで盛り上がる。お弁当を広げて家族と一緒に味わう時間もあって、「これこそ学校の行事」という空気がありました。けれども、この形は「全員が同じ場所・同じ時間に集まれる」ことを前提にしています。子どもの数が多かった時代には成立していた前提が、今は少しずつ揺れてきています。
まず、学校ごと・園ごとに置かれている事情が違い過ぎるようになりました。校庭が広く使えるところもあれば、周辺が住宅に囲まれていて音の出る時間を短くしなければならないところもあります。児童数が少ないから合同でやりたい地域もあれば、逆に児童数が多過ぎていっぺんに全員を並ばせるのは危険という地域もあります。先生の数も、保護者の当日協力も、昔と比べて「無限には頼れない」ことがはっきりしてきました。つまり、行事全体を1日に詰め込むと、どこかで無理が出るのです。
それから、子どもたちの過ごし方も変わりました。昔は校庭でのびのび走ること自体が特別でしたが、今の子どもたちは動画やゲームで「見て楽しむ」ことにも慣れています。体力に自信のある子もいれば、音の大きさや暑さが苦手な子もいます。全員に同じ練習を同じ量だけさせると、どうしても得意な子だけが輝き、苦手な子は「また走らされる」「また大勢の前に出される」と感じてしまいます。行事なのに、心の中でハードルを上げてしまう子がいるなら、形を柔らかくした方が良いはずです。
もう1つ見逃せないのは、「見てもらい方」が変わったことです。保護者が必ず全員来られるとは限りませんし、祖父母世代は遠方に住んでいることも多くなりました。1回切りの本番で「見に来られた人だけが楽しめる」行事にしてしまうと、頑張った子どもたちの姿がもったいなく消えてしまいます。そう考えると、昔ながらの一発勝負型よりも、「後で見返せる」「分けて実施できる」「教室や体育館の中でもできる」といった選択肢を増やしておいた方が、子どもたちが残せる場面はグンと多くなるのです。
つまり、昔の形が悪いのではなく、前提が変わったのです。人手・場所・時間・子どもたちの多様さ・家族の見方が変わった以上、行事の方も柔軟に動かしてあげる必要があります。次の章では、そのための考え方として「一辺にやらない」「段階的に楽しませる」という組み立て方をお話ししていきます。
第2章…「準備の日・本番の日・あとから楽しむ日」の3段階で組み立てる
運動会を楽に、そして見応えのある行事にしようと思ったら、「全部を1日でやらない」という考え方がとても有効です。昔のように1日で入退場・個人走・団体演技・親子種目・閉会式まで通すと、準備も当日の進行もどうしても詰め込みになります。先生は前日から道具を運び、子どもは練習でくたくた、保護者も朝早くから場所取り…これでは続けるのが難しくなります。そこで、予め3つのフェーズに分けてしまいましょう。ゆっくり進む分、1つ1つの場面に「見せ場」を作りやすくなります。
最初のフェーズは「準備の日」です。ここは練習だけの日ではなく、子どもたちが自分たちで運動会を作っていることが分かるようにする日です。例えば各学年の旗を作る、競技で使うゼッケンをデザインする、入場の時に流す音源を決める、実況役のセリフを考える…こういった創作を前もってやっておくと、当日の見た目がグッと華やかになります。先生が全部を用意してしまうと「与えられた行事」で終わりますが、子どもたちが作れば「自分たちの行事」になります。こうした準備の様子は、写真に撮ったり、校内の掲示にしたり、学年便りに載せたりしておくと、後で家族にも伝えやすくなります。
次のフェーズが「本番の日」です。ここはこれまで通り校庭や体育館で行う中心部分ですが、フェーズを分けている分、プログラムを絞ることができます。どうしても見てもらいたい演技やリレー、学年対抗の目玉だけにしてしまい、時間も長くし過ぎない。そうすると、子どもが集中しやすく、保護者も最後まで見届けやすくなります。もし人数が多くて一度に並べない学校なら、午前は低学年、午後は高学年と分けても良いですし、別日に分けることもできます。「本番は短く濃く」が合言葉です。
そして最後のフェーズが「後から楽しむ日」です。ここが今の時代らしいところで、本番で終わらせずに、撮っておいた映像や写真を皆で見返したり、教室で表彰タイムをしたり、家族に配布できる形に整えたりします。実はこれをやると、当日に来られなかった家族にも子どもの努力が届きますし、先生方も「やって良かった」と感じやすくなります。学校の便りやホームルームで「このクラスはここを頑張りました」と紹介してあげると、子どもたちも満足して次の行事への意欲が高まります。文章にして残す、写真をまとめておく、掲示コーナーを作るなど、形を変えて残すことがポイントです。
この3段階に分ける仕組みは、行事を伸ばすだけでなく、情報を届ける回数を増やせるところが強みです。準備の時に一度知らせる、本番で一度知らせる、後から「出来ました」ともう一度知らせる。こうしておくと、学校のホームページやお便りを見た人が「楽しそうだな」と思うタイミングが増え、行事の価値が高く見えます。つまり、1回切りで消えてしまう行事から、「何度も楽しめる行事」へと格上げできるのです。
次の章では、この3段階を土台にして、実際にどんな競技や活動を入れていくと無理がなく、しかも今っぽくなるのかをお話ししていきます。校庭が狭い・音を出しにくい・天候が読めないといった条件があっても実施しやすいものを中心にご紹介します。
第3章…校庭だけにしばられない!教室・廊下・体育館で出来る新競技アイデア集
運動会というと、どうしても「広い校庭がないと出来ない」と思いがちですが、発想を変えると校舎の中でも十分に行事らしい盛り上がりを作ることができます。むしろ、教室や廊下、体育館といった限られた空間の方が、道具の準備がしやすく、天候にも左右されず、安全管理もしやすいという利点があります。ここでは、3段階に分けたうちの「本番の日」に載せやすい、今の学校事情に合わせた競技の考え方をご紹介します。競技と言っても全力疾走ばかりにせず、表現や協力、発想を評価する要素を混ぜ込むことで、体力に差がある子どもたちも参加しやすくなります。
教室でできる見せる競技を入れる
教室の良いところは「細かい作業や表現をゆっくり見られる」点です。例えば各学年で作った旗や、ダンス用の小道具、応援グッズを、教室をステージにして発表する時間を作ると、それだけで行事らしい空気が出ます。黒板を背景にしてチーム名やスローガンを描き、そこに順番に出てきてポーズを決める。ダンスが得意な子は踊りを、図工が得意な子は飾りを、司会が得意な子は進行を担当し、役割を分けることで「得意なことで参加した」という満足感を持たせられます。校庭での大規模演技が難しい年でも、教室内の発表を繋げれば、1つの学年作品としてまとめることができます。
廊下や特別な教室をリレーコースとして使う
廊下は本来走ってはいけない場所ですが、運動会として時間とコースを区切れば、安全に走る体験をさせることができます。ポイントは、全力で走らせないことです。例えば「お盆にボールを乗せて落とさずに進む」「帽子やリボンを次の人に渡してバトンにする」「途中でカードを1枚引いて指示に従う」など、スピードよりも正確さや工夫を評価する内容にすれば、狭いスペースでも十分盛り上がります。廊下に先生が複数人立って見守り、安全に配慮しながら行えば、場所が足りない学校でもリレー的な要素を取り入れることができます。
体育館を皆が見られるステージにする
体育館は、天井の高さと音響を活かせる場所です。ここでは走るよりも「全員が同時に見られるかどうか」を大事にすると良いでしょう。代表チームによる玉入れ、学年ごとのダンス、ソーシャルな距離を保ったまま行う大きな円形体操など、真ん中に演技を置いて周囲で観覧する形にすれば、保護者が来られた時にも見やすくなります。さらに、撮影しやすい向きに演技を配置しておけば、後で教室や家庭で見返す素材としても使えます。体育館での演技は照明の色や音楽の選び方で雰囲気がガラッと変わるので、子どもたちにBGMを選ばせると「自分たちが作ったステージだ」という満足感が増します。
外に出られない日でも“教室対抗”は成立する
雨や気温の問題で外が使えない日でも、教室対抗形式にしておけば行事は止まりません。例えば、事前に各教室で撮っておいたミニ演技の動画を体育館のスクリーンや教室のモニターで順番に流し、良かったところを子どもたち自身にコメントさせる。これも立派な運動会の一部になります。先生が一方的に採点するだけでなく、子どもたちが「ここが揃っていた」「小道具が工夫されていた」と発表する時間を入れると、見る側の集中力も高まります。運動そのものが苦手な子でも、コメント役や司会役で参加できるので、全員を主役にしやすくなります。
このように、校庭に集まることだけを前提にせず、校舎全体をフィールドとして使うと、準備物も分散できますし、時間帯もずらしやすくなります。何より、子どもたちが「いつもの教室が行事の場所になった」と感じると、それだけで特別な思い出になります。次の章では、こうして作った場面をどうやって家族や地域の人に伝えていくと良いか、見せ方の部分を考えていきます。
第4章…家族や地域も緩く参加できる“見せ方・伝え方”の工夫
運動会を「やって終わり」にしないためには、当日に来られなかった人にも様子が伝わるようにしておくことが大切です。特に今は、祖父母が遠方に住んでいたり、保護者がシフト勤務でどうしても時間が合わなかったりと、参加したくても参加できない事情が増えています。ここを最初から想定しておくと、行事の後に「見たかった」「どこで見られるの?」と聞かれて慌てることが減りますし、子どもたちも「見てもらえた」という満足感を得られます。
まず、3章まででお話ししたような“校舎のあちこちで行う場面”を、こまめに記録しておきます。写真でも動画でもかまいません。要は、校庭で行う大きな演技ばかりでなく、旗を作っている場面や、教室で小道具の説明をしている場面、体育館で代表チームが練習している場面など、行事の“裏側”を残しておくことです。こうした短い素材は、後からまとめて見せると「こんなに頑張って準備していたんだね」と伝わりやすくなります。先生が全てを抱え込む必要はなく、係の子どもに撮影係を任せるのも良い方法です。自分たちで撮った映像なら、さらに見返したくなります。
次に、その記録をどう見せるかです。学校のお便りにQRコードを載せて限定公開の動画に案内する、学年通信に「今月の運動会作り」として写真を小さく並べる、授業参観や個人懇談の時にスクリーンで流すなど、見せる機会を複数用意しておくと、どこかで必ず保護者の目に触れます。1回だけのお知らせではなく、月を跨いで2回、3回と小さく紹介しておくと、忙しい家庭でも見落としにくくなります。公開の範囲は校内だけ・パスワード付きなど、安全な方法を学校ごとに決めておきましょう。
さらに、子どもたち自身に「紹介役」になってもらうと効果が高まります。例えば動画や写真に、児童会や高学年がナレーションを付ける。「この競技は〇年生が考えました」「旗のデザインはクラスで意見を出し合いました」といった説明が入っているだけで、見る側の理解がグッと深まります。家族にとっては、競技の内容そのものよりも「自分の子がどんな役で参加したか」「どんな表情で取り組んでいたか」が一番の関心事ですから、説明付きの方がありがたいのです。
地域を巻き込みたい場合は、掲示スペースを活用するのがおすすめです。職員室前や昇降口に、運動会作りの写真をパネル風に並べ、「今年は校庭だけでなく校舎内でも行いました」「準備から子どもたちが担当しました」と一言添えておきます。地域の方はそれを見ることで学校の工夫を知ることができ、保護者も来校のタイミングで子どもの頑張りを確認できます。もし地域行事と日程を合わせられるなら、運動会で使った飾りをそのまま地域の集会所に持っていき、展示してしまうのも良いでしょう。子どもたちの作品が2回使えて、行事の価値が2倍になります。
このように「見せ方・伝え方」を予め設計しておけば、参加出来た人も、出来なかった人も、それぞれのタイミングで楽しめます。行事が1日で消えてしまわず、何日かにわたって話題にしてもらえると、子どもたちも「今年の運動会は手応えがあった」と感じます。最後のまとめでは、ここまでの流れをもう一度整理して、学校の実情に合わせて少しずつ取り入れていくポイントをお伝えしますね。
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ここまでお話ししてきたように、今の時代に合った運動会は「昔の形を辞める」ことが目的ではありません。子どもたちが安全に、無理なく、しかも楽しみながら頑張れるように、形をほぐしてあげることが目的です。そのために、1日で全部やろうとしないこと、校庭以外の場所も使ってよいと考えること、あとから見られる形を必ず用意しておくこと、この3つを押さえておけば、どんな規模の学校・園でも実行しやすくなります。
1日で完結させないと、先生の準備や進行が楽になり、子どもたちも練習で疲れ過ぎません。校舎の中までフィールドにしてしまえば、天候やスペースに左右されず、得意なことを生かした参加ができます。そして最後に、写真・動画・掲示・お便りなどで「こういう行事でした」と伝えておけば、当日に来られなかったご家族や地域の方にも喜んでもらえます。行事が何度も話題になれば、子どもたちの中で「やってよかった」が大きく育っていきます。
大切なのは、「今年の子どもたちにとって一番うれしい形はどれか」を毎年考え直す姿勢です。昔ながらの入場行進や玉入れを残してもいいですし、今年は教室発表を多めにしてもいい。先生方がすべてを背負うのではなく、撮影係・司会係・飾りつけ係などを子どもに任せていけば、子どもたち自身の物語として記憶に残ります。そうなれば、その年の運動会は立派に成功と言えるでしょう。どうぞ、学校や園の実情に合わせて、今日から出来るところから少しずつ取り入れてみてくださいね。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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コメント ( 1 )
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ご来場、ありがとうございます。
アイキャッチ同じですものね…。
内容も似通ってますけど、少し変えてあります。
是非、両方、お楽しみくださいね(*^▽^*)