秋だけの特別!1シーズンで動かすケアプランの考え方
目次
はじめに…秋は「整える」「備える」を目標にしやすい季節です
秋のケアプランって、他の季節より少しだけ組みやすいところがあります。夏に溜まった疲れを緩やかに回復させつつ、冬の冷えや体調変化に備える――この流れが自然に説明出来るからです。ご利用者さんやご家族さんにも「この3ヵ月はこういう理由で集中して頑張りましょう」と伝えやすく、しかも生活全体を整えるテーマを入れやすいのが秋の良さだと思います。
ただし、担当している全ての方に同じように短期間のプランを当てはめるのは難しいですよね。お体の回復途中の方、理解力がしっかりしていて日々の目標を自分でこなせる方、家族のバックアップがある方――こうした方には、秋だけの特別プランを組むとグンと成果が見えやすくなります。逆に、ゆっくり慣れていただきたい方には、無理のない季節行事や外出を少し混ぜて、同じ「秋のプラン」でもやさしい設計にしておく方が安全です。
この後お話しするのは、秋を1シーズン=約3ヵ月と見て、そこに長期目標を1本立て、そこへ向けて1ヵ月ごとに短期目標を3回繰り返していく考え方です。長く伸ばし過ぎないことで「やったこと」「出来たこと」がはっきりし、年末やお正月に向けて生活リズムが乱れやすい時期にも自立のペースを落とさずに済みます。介護保険の手続きやサービス事業所との連携を挟みながらでも、根拠を説明しやすい組み立てにしてありますので、日々お忙しいケアマネージャーさんの実務のヒントとしてお使いください。
[広告]第1章…秋限定プランを組める利用者さんと組みにくい利用者さんを見極める
秋だけのケアプランというと、とても魅力的に聞こえますが、実際には「誰にでも同じように当てはめられるもの」ではありません。ここをはじめに押さえておくと、後でサービス事業所と連携する時も説明がしやすくなりますし、ご家族にも「この方だからこその3ヵ月集中プランです」と伝えられます。
まず、秋限定のような短いサイクルで組んだ方が効果が出やすいのは、日々の活動量がある程度確保できる方です。朝起きてから寝るまでの間に、身支度・食事・家の中の小さな作業などが自分の力で少しでも出来る方、あるいはご家族が日々フォローしてくれる環境がある方は、1ヵ月ごとに目標を変えても混乱が少なく、達成感を続けて味わっていただけます。季節の変わり目を感じ取れる方であれば、なおさら「秋だから衣類を順番に出しましょうね」「秋の間に体力を戻しておきましょうね」といった声かけが届きやすくなります。
反対に、体調が日によって大きく揺れる方や、認知症の症状によって新しいやり方を覚えるまでに時間がかかる方には、同じ秋でも少し穏やかな設計が必要です。例えば「紅葉を見に行く」「秋の味覚を楽しむ」「冬支度を一緒にする」といった、季節に合わせた行事をゆっくり取り入れる形ですと、プランが詰め込みにならず、失敗体験も減ります。秋は気温差で体調を崩しやすく、意欲が高い方でも疲れが出やすいので、どの利用者さんにも同じ密度で目標を並べると、途中で躓きが起きます。最初のケアマネジメントの段階で「この方は3ヵ月で一気に」「この方は秋らしさを味わう中心で」と2段階くらいに分けておくと安全です。
もう1つ大事なのは、連携する事業所の動き方です。短い期間で動かすと、訪問介護や通所のスタッフさんにも「今月はこの方を特に意識してね」とお願いする場面が増えます。つまり、ケアマネジャーだけが張り切るのではなく、周囲が巻き込まれても大丈夫な人数に絞ることが現実的です。全員を秋仕様にしようとすると、記録や連絡が増え過ぎて現場が疲れてしまいますから、「今年の秋はこの方とこの方」というように対象を限定した方が、本人にもサービス側にもやさしい進め方になります。
秋は、夏の疲れを抜き、冬を迎える前に生活の土台を整える時期です。この季節の目的をはっきり伝えられそうな方、3ヵ月をひとまとまりとして説明できそうな方、家族が「今のうちに整えておきたい」と思っている方――そうした利用者さんを最初に選ぶことで、秋限定プランはうまく回転し始めます。
第2章…「3ヵ月の長期目標」と「1ヵ月ごとの短期目標」をどう並べるか
秋だけで完結するプランにすると決めたら、まずは「3ヵ月後にどんな状態になっていて欲しいか」を1本だけはっきりさせておくと組み立てやすくなります。ここでいう長期目標は、専門職が読んでもご家族が読んでも意味が通るくらい生活に近い表現にしておくと親切です。例えば「冬に向けて衣類や寝具を自分で出し入れ出来るようになる」「家族の一員として家事を1つ任せられるようになる」「外出に向けて体力をもう一段戻す」といった形です。秋という季節と、3ヵ月という短さを説明しやすい内容にしておくと、後からサービス担当者会議で話す時にも筋が通ります。
長期目標が決まったら、これを3分割して1ヵ月ずつの短期目標に落としていきます。ここで大事なのは、毎月まったく違うことをするのではなく、「準備」「定着」「発展」のように少しずつ階段を上がる形にすることです。例えば、1ヵ月目は手順を覚える段階、2ヵ月目はできる日を増やす段階、3ヵ月目は人に見せられる・任せられる段階とすると、同じテーマでも内容に変化がつきます。ご利用者さんも「先月の続きだな」と理解しやすく、記録にも残しやすくなります。
例えば、手先の動きを戻したい方なら、1ヵ月目は「毎晩、床頭台の上を決められた位置に片付ける」、2ヵ月目は「週に数回は食事の魚を自分でほぐして家族に出す」、3ヵ月目は「人に渡す手紙や葉書を季節に合わせて1通作る」といった風に、だんだんと精密さと社会性を足していきます。こうして並べると、最初はご本人の生活の中だけで完結していたものが、最終月には家族や地域との繋がりにまで伸びていきますよね。これが3ヵ月サイクルの良さで、短いのに変化をつけた成果が見せやすくなります。
さらに、秋のプランは体調の上下を見ながら進めることが多いので、短期目標の中に予め「休息をとる日」や「体調確認の日」を組み込んでおくと破綻しません。目標をギュウギュウに詰めると、気温の変化や行事の予定であっという間に崩れてしまいます。1ヵ月の中で頑張る日と緩める日を交互に置いておくことで、「出来なかったから失敗」ではなく「今月はここまで出来た」と言える設計になります。
このように、3ヵ月の長期目標を1本決めて、そこに向けた1ヵ月ごとの短期目標を3段階で並べておくと、利用者さんにも事業所にも説明がしやすく、記録にも落とし込みやすくなります。季節を理由に出来るのが秋の強みですから、「秋の間にここまで整えて、冬は楽に過ごしましょう」というひと言を添えておくと、取り組む側の気持ちが前を向きやすくなります。
第3章…なぜ秋に区切るのか~期間設定の根拠を説明できる形にする~
ケアプランに季節を持ち込むときに一番大事なのは、「どうしてこの期間なのか」を後からでも説明できるようにしておくことです。特に秋は、体調や生活リズムが緩やかに変わっていく時期なので、根拠を言葉にしやすい季節でもあります。ここを丁寧にしておくと、ご利用者さんやご家族さんに納得してもらいやすく、サービス事業所側も「この3ヵ月だけは密度を上げるんだな」と理解して動けるようになります。
まず、秋を1シーズン=概ね3ヵ月と見る考え方は、気候の変化と生活の節目の両方に合わせやすいのが理由です。9月頃はまだ暑さが残っていて、夏の疲労や水分バランスの崩れが表に出やすい時期です。10月に入ると一気に過ごしやすくなり、家の中の片付けや衣替え、ちょっとした外出など「やっておきたいこと」が増えてきます。11月にかけては冷え込みへの備え、年末年始に向けた準備が少しずつ始まります。この3つの月をひとまとまりにしておくと、「体調を戻す」「生活を整える」「冬を待つ」という三段階を自然な流れで配置できるわけです。
次に、短く切ること自体にも意味があります。介護保険の認定期間が長くなりがちな昨今では、1年先・2年先を見通した大きな目標を掲げることが増えていますが、生活の中で実感できる変化はもっと小さく、もっと短い周期で起きています。そこで敢えて3ヵ月で区切っておくと、「この期間にやるべきこと」がはっきりし、達成したかどうかも確認しやすくなります。秋は体調を崩すと回復に時間が掛かるので、長く引っ張るよりも、短く集中して評価して、必要なら冬バージョンにすぐ切り替える方が安全です。
さらに、秋を根拠にしておくと、休息やクールダウンを予め計画に組み込める利点があります。夏の名残で疲れが残っている方に、いきなり活動量の多いプランをぶつけると、どうしても中旬辺りで失速します。そこで「秋の間に体力を慣らしておきましょう」「冷えや乾燥に向けて生活を整えましょう」と説明しておけば、活動する日と休む日を混ぜたスケジュールでも不自然になりません。3ヵ月でひと区切りにしておくことで、「今月はここまでできた」「今はここで止めておく」という判断をしやすくなります。
最後に、文書として根拠を書くときは、季節による体調変動があること、冬季の感染症・冷えに備えて生活行動を整える必要があること、利用者本人と家族がこの期間なら取り組めると合意したこと、この辺りをやわらかく添えておくと、秋限定という少し珍しい設計でも受け入れてもらいやすくなります。季節のリズムに合わせて計画を立てるということは、生活そのものを見ているということでもありますから、「秋だからこそ3ヵ月でやる」という筋を通しておくと、その後の冬プランにもスムーズにつなげられます。
第4章…事業所とのタッグと無理のない実行スケジュールの作り方
秋だけで動かすケアプランは、どうしても1ヵ月ごとにやることが変わります。ここで躓きが起きやすいのが、ケアマネジャーの頭の中だけで段取りが出来ていて、通所や訪問、福祉用具の担当者さんにそれが伝わっていないケースです。秋は行事も多く、事業所の方でも季節の活動を組みたい時期ですから、先に「この方は秋の間だけ少し細かく動かします」と宣言しておくと、とても円滑になります。
具体的には、3ヵ月をひとまとまりにしたメモを1枚作っておき、そこに「初月は準備中心」「2ヵ月目は回数を増やす」「3ヵ月目は仕上げて日常化する」という大きな流れを書いて渡しておくと良いでしょう。毎月改めて計画書を作り替えるのではなく、どの月にどんな声かけをして欲しいかだけを事前に知らせるイメージです。そうすると、デイサービス側はその月のリハビリや作業活動の中で同じ目標を意識できますし、訪問介護側も「今日はこれを一緒にしてしまいましょうか」と利用者さんに合わせた支援がしやすくなります。
また、秋は体調が揺れやすいので、事業所には「上手くいった日」と「体調が落ちて調整した日」の両方を短く残しておいてもらうようお願いしておくと安心です。記録があると、翌月の短期目標を少し軽くしたり、逆に出来ることを増やしたりといった微調整がしやすくなります。3ヵ月のうち1回でも体調を崩せば計画がズレてくるのは自然なことなので、最初から“崩れたらここに戻る”という逃げ道を作っておくと、利用者さんにも事業所にも負担感が少なくなります。
さらに、秋のプランは家族の参加も得られやすいという利点があります。衣替えや寝具の入れ替え、年末に向けた片付けなどは、家族が来訪した時に一緒にやってもらいやすい作業です。そこでケアマネジャーは、ご家族に「この3ヵ月でここまで進めたいので、来訪の日にはこの作業を一緒にお願いします」と早めに伝えておくと良いでしょう。事業所だけで完結させず、家族とも同じ秋の目標を共有しておくことで、本人の生活全体に一体感が出ます。
こうして、ケアマネジャー・事業所・家族の三方向で「秋の間だけ少し丁寧にやります」という共通認識を持てれば、無理のないスケジュールに落とし込めます。大事なのは、全部を完璧にやり切ることよりも、3ヵ月後に「この方は秋にこれだけ進んだ」と言える証拠を残すことです。小さな前進を拾って共有する習慣をつけておけば、次の冬プランにも自然と繋げられますし、利用者さんの側にも「また季節ごとにやってみようかな」という前向きさが残ります。
[広告]まとめ…秋の成功パターンを冬以降のケアプランにバトンタッチする
秋だけで動かすケアプランは、ちょっと手が込んでいて、いつもの流れよりも準備が要ります。けれども、夏の疲れが残っているうちに体調を整え、冬の寒さや忙しさが本格化する前に生活の段取りを整えておくという意味では、とても理に適ったやり方です。3ヵ月という短さにすることで「この期間にやること」「ここまで出来たら合格」という線を引きやすく、利用者さんにもご家族にも伝えやすくなります。
ポイントは、誰に適用するかを最初に絞ること、長期目標を1本決めて1ヵ月ずつ段階をつけること、秋という季節の変化を根拠として言葉にしておくこと、事業所や家族と前もって共有しておくこと、この4つでした。どれか1つでも抜けていると「良い考えだけど現場が回らない」になってしまいますので、小さく始めるのがお勧めです。まずは「今年の秋はこの方で試してみよう」と対象を限定して、上手くいった流れを来年以降のテンプレートにしていくと、だんだんと負担なく回せるようになります。
そしてもう1つ、秋のプランは“評価しやすい”のが強みです。衣替えが出来た、寝具が冬仕様になった、週に何回か家事を手伝えた、外出回数が増えた――こうした生活に直結した変化は、家族にも事業所にも伝わりやすく、なにより本人が「やった」と実感しやすいところです。ここで小さな達成感を積んでおくと、12月~1月の忙しい時期にも自分のペースを見失いにくくなります。
「季節を1つずつ味方につけていくケアプラン」という考え方は、高齢期の生活を丁寧に見ていく上でとても使いやすい手法です。秋がうまくいったら、次は「体調管理を主役にした冬バージョン」「交流を増やす春バージョン」といったように、季節ごとにテーマを変えていくこともできるでしょう。秋の3ヵ月を、次の季節への助走として上手に使ってみてください。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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