冬の台所で楽しむ100cc実験~飲むジャムと甘いひと匙の温かい飲み物~

[ 冬が旬の記事 ]

はじめに…冬は「ひとくちの温もり」を自分で作る季節

冬になると、冷蔵庫のペットボトル飲料や、自動販売機のラインナップを見て、ふと物足りなさを感じることはありませんか。ズラリと並ぶ新商品はたいてい冷たい飲み物で、温かさを求めている心とお腹には、ちょっと距離があるように感じてしまいます。コンビニの棚には、香り高い紅茶やハーブティーも並びますが、気づけばティーバッグが4包入りでどんどん数が減る上に、1包あたり100円を超えているような品も珍しくなくなりました。たまのご褒美には良いとしても、「毎日の一杯」としては手が伸び難い価格です。

一方で、台所の棚や冷蔵庫を見渡すと、目立たない場所に小さな宝物が眠っています。柚子茶の瓶、食パン用のいちごジャム、マーマレード、はちみつ、黒糖きなこクリーム、ピーナッツクリーム……。どれも「パンに塗るもの」として買ったはずなのに、ふと柚子茶を飲んでいたら「これ、中身はほとんどジャムでは?」と気づいてしまった瞬間から、世界が少し違って見えてきます。「パンに塗る甘いものは、本当に塗るだけの存在なのか。もしかして、お湯やお茶と組み合わせれば、新しい温かい飲み物になるのでは?」という、ちょっとした悪ノリにも似た好奇心が顔を出します。

ただ、大きなマグカップにたっぷり作ってしまうと、失敗した時がつらくなりますし、甘さが強過ぎれば、体にも優しくありません。そこで登場するのが、コップ半分ほどの「100cc実験」です。成功しても失敗しても、自分で責任を持って飲み切れる量。これくらいの少なさなら、気軽に試せて、気楽に笑える、小さなチャレンジになります。しかも、最初は薄めに作ることをルールにしておけば、糖分の摂り過ぎもある程度防げます。「ちょっと物足りないかな」と感じたら、そこから甘いひと匙を少しずつ足していく。そんな調整の過程そのものが、小さなレクリエーションになります。

介護や医療の現場では、アレルギーや持病、嚥下の状態など、守るべき安全の条件がたくさんあります。甘さ、とろみ、油分の多さ、衛生面……。いろいろな配慮が必要なので、好き勝手に「カオスな実験ドリンク」を並べるわけにはいきません。でも自宅の台所なら、自分の体調と相談しながら、自己責任でちょっとだけ冒険ができます。昔ながらの福茶や甘酒といった伝統的な温かい飲み物に、現代のジャムやクリームを少しだけ混ぜてみる。白湯、緑茶、ほうじ茶、牛乳、豆乳……そんな身近なベースに、家にある甘いひと匙を合わせてみる。それは、大袈裟に言えば「物が溢れる時代に、自分で新しい一杯を発明する遊び」です。

この冬は、完成品を買ってくるだけでなく、台所に並ぶ「甘い相棒たち」と相談しながら、自分だけの一杯を試してみませんか。本記事では、柚子茶から始まった「これ、ジャムでは?」という気付きを切っ掛けに、白湯やお茶をベースにした小さな実験の楽しみ方、100ccという少量だからこそ出来る工夫、そして最後には、今日から真似できるお勧めパターンをたっぷり紹介していきます。湯気の向こうに、自分だけの「究極の1杯」が見えてくるような時間を、一緒に味わっていきましょう。

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第1章…柚子茶で気づいた「これ、ジャムでは?」から始まる冬ドリンク革命

ある冬の日、湯気の立つマグカップを手に取って、いつものように柚子茶を入れてみた瞬間から、この物語は始まります。スプーンですくい上げた柚子茶の素は、とろりと重たくて、果皮がたっぷり見えて、見るからに濃厚です。勢いあまって少し多めに入れてしまい、お湯を注いでひと口飲んでみると、口の中いっぱいに広がるのは、爽やかな香りというより「ズシン」とした甘さと、トロミのある舌触りでした。「あれ……これ、ちょっと濃くし過ぎたかも」「もしかして……この味、どこかで知っている?」と、舌と頭が同時にざわつき始めます。

しばらく考えてから、ふと閃きます。「これって、殆どジャムじゃない?」果物を砂糖と一緒に火にかけて、トロッとするまで煮詰めた保存食。それがいわゆるジャムなら、柚子茶の瓶の中身も、見た目も味わいも、条件をほぼ満たしているように思えてきます。スプーンですくった時の重さ、柚子の皮のほろ苦さ、ガラス瓶にびっしり貼りついた濃さ。ラベルには「柚子茶」と書いてあっても、中身の正体は「飲むことも出来る柚子ジャム」と呼んだ方がしっくりくる気さえしてきます。

そこで、ちょっとした実験心がムクムクと頭をもたげます。「じゃあ、この柚子茶の素を、パンにそのまま塗ってみたらどうなるんだろう?」トーストを用意して、いつもジャムを塗る要領で、柚子茶を薄く伸ばしてみる。焼き立てのパンの熱で柚子がフワッと香り、表面がキラリと光って、なかなかの見た目です。ひと口齧ると、甘さは強めながら、柚子の香りとパンの香ばしさが合わさって、これはこれであり。こうなってくると、もはや「パンに塗るもの」と「飲み物」の境界線は、思っていたほど固くないのだと分かってきます。

冷蔵庫や戸棚を見渡すと、同じような「境界線の上に立っている子たち」がたくさん並んでいます。いちごやブルーベリーのジャム、マーマレード。パンに塗る前提で買ったはずのピーナッツバター、黒糖きなこクリーム、チョコクリーム。いつもは朝食のトーストに乗せられるだけの存在が、「もしかして、お湯やお茶と組み合わせれば、冬の新しいホットドリンクになるのでは?」と、突然眩しい主役候補に見えてくるから不思議です。

一方で、スーパーやコンビニの棚には、魅力的な紅茶やフレーバーティーがズラリと並んでいます。香りの説明文を読んでいるだけで幸せな気持ちになる一方、小さな箱に入ったティーバッグが4包で、1包あたりがかなりの価格になっていることも増えてきました。特別な日ならともかく、毎日の気分転換に何杯も楽しむには、少しハードルが高い。そんな時、台所に既にある甘い瓶やチューブに目を向けると、「ここにあるもので、充分楽しめるんじゃないか」という、ささやかな反逆心にも似た前向きさが生まれてきます。

こうして、「飲むために買った柚子茶」が、「塗ってみても案外おいしい」「だったらジャムも飲めるのでは?」という、逆転の発想を引き出してくれます。ラベル通りにしか使ってこなかった調味料やスプレッドを、別の角度から眺めてみると、その正体がジワジワと浮かび上がってくるのです。「これはジャム」「あれはドリンク」と決めつけていたのは、実は自分の中の思い込みだったのかもしれません。

そして、ここから生まれてくるのが「飲むジャム」という考え方です。ジャムのようなものをお湯で割って飲むのか、飲むためのものをパンに塗るのか。その境界を、敢えてフワッと曖昧にしてみる。冬の台所で、湯気を眺めながら、そんな遊びを少しだけ許してみると、生活に小さなユーモアが増えていきます。甘さが強過ぎて笑ってしまったり、トロミが残り過ぎて「これはスプーンで食べるべきだった」と反省したり。成功と失敗が入り混じるからこそ、1杯1杯に物語が生まれていきます。

もちろん、全てが上手くいくわけではありません。どのジャムも、どのクリームも、何と合わせても美味しくなるわけではないことに、すぐ気づくでしょう。果物ベースのジャムは、白湯やほうじ茶と相性が良くても、ナッツやきなこのペーストは、油分が浮いてしまったり、舌ざわりが重たくなってしまったりするかもしれません。けれど、その「うまくいかなさ」も含めて、一連の試行錯誤自体が、寒い季節のちょっとした楽しみになっていきます。

柚子茶から始まった「これ、ジャムでは?」という素朴な気づきは、台所に眠っている瓶やチューブ全てに光を当てる切っ掛けになります。飲むためにしか見てこなかったものを、塗るものとして見直す。塗るためにしか見てこなかったものを、飲み物の材料として眺め直す。その視点の切り替えこそが、冬のホットドリンクを、自分の手で再発明していく第一歩なのかもしれません。次の章では、この試みを支える「白湯」「緑茶」「ほうじ茶」という3つのベースについて、ゆっくり掘り下げていきます。


第2章…白湯・緑茶・ほうじ茶~3つのベースで広がる甘い1杯の世界~

柚子茶から「飲むジャム」という発想が生まれたら、次に考えたくなるのは「何と割るか」です。甘いスプーン1匙を受け止めてくれる相棒として、一番身近で頼りになるのが、白湯、緑茶、ほうじ茶という3つのベースです。同じ甘さでも、どのベースを選ぶかで、香りも後味も、体に残る印象もガラリと変わってきます。まるで同じジャムを使っているのに、カップごとに違う物語が生まれるような感覚です。

まずは、一番素朴な白湯です。白湯は、ただ沸かしたお湯を少し冷ましただけの、とても静かな存在です。香りも色も主張しないからこそ、柚子茶やいちごジャム、はちみつの個性が、そのまま素直に立ち上がってきます。甘いひと匙を入れれば、ストレートに甘く、柚子なら柚子、りんごならりんごの香りが、湯気に乗ってまっすぐ届きます。少し薄めから始めて、少しずつ味を足していくという実験には、白湯ほど扱いやすい相棒はありません。余計な香りがない分、「今日はこのジャムは控えめで良かったな」「この柚子はもっと攻めても良さそうだな」と、自分の舌と向き合いやすくなります。

一方、緑茶をベースに選ぶと、印象は一気に「和の時間」に切り替わります。茶葉の香りと仄かな渋みがあるので、ただ甘いだけの飲み物ではなく、きちんと落ち着いた飲み心地になります。柚子やすだちなど、柑橘のジャムと合わせると、湯呑の中に小さな茶席が開いたような感覚になることもあります。ただ、緑茶は渋みと苦みを持っている分、相性の悪いジャムを選ぶと、味同士がぶつかってしまうこともあります。ベリー系のジャムをたっぷり入れてしまうと、渋さと酸っぱさが強く出て、「ちょっと険悪なカップ」になってしまうかもしれません。そこで役に立つのが、やはり100ccという小さな量です。少なめの茶葉で薄めに淹れた緑茶に、ジャムを小匙半分だけ落としてみる。お互いが仲良く出来そうかどうかを、慎重に確かめるには、これくらいの控えめな一杯がちょうど良いのです。

そして、ほうじ茶は、3つの中でいちばん「包容力のあるお母さん」のような役割を担ってくれます。焙じた香ばしい香りは、それだけで心をほっとさせてくれますし、緑茶よりも渋みが穏やかで、夜にも飲みやすい存在です。この香ばしさが、柚子茶やはちみつ、黒糖きなこクリームなどと不思議なくらいよく馴染みます。ほんの少し柚子茶を溶かしたほうじ茶は、香りは和風なのに、どこかカフェラテのような「特別感」をまといます。黒糖やきなこ系の甘さを合わせると、香ばしさと甘さが重なり合い、体の芯からじんわり温まるような一杯になります。

ただし、ほうじ茶にも得意不得意があります。香りが穏やかとはいえ、焙じた香ばしさはしっかりしているので、繊細な香りのジャムを入れ過ぎると、どちらの良さもぼやけてしまうことがあります。例えば、香りを楽しむはずの柑橘ジャムを大盛りにしてしまうと、香ばしさと柑橘が戦い合って、カップの中で少し喧嘩が起きてしまうのです。ここでも役立つのが、「薄めスタート」の考え方です。ほうじ茶をいつもより少し薄めに淹れ、ジャムを控えめに溶かしてみて、「香ばしさと甘さが並んで歩けているか」を、静かに確かめていきます。

白湯、緑茶、ほうじ茶という3つのベースには、それぞれ違う表情があります。白湯はキャンバスのように素材の個性をそのまま映し出し、緑茶は落ち着いた和の時間を演出し、ほうじ茶は香ばしさで甘さを優しく包み込んでくれます。同じ柚子茶でも、白湯に溶かせばストレートに香りが立ち、緑茶なら渋みと合わさって深みが出て、ほうじ茶なら香ばしさと混ざり合って、どこか懐かしい味わいに変わります。たった1匙の甘さでも、ベースを変えるだけで、まるで3種類の別の飲み物を楽しんでいるような気分になれるのです。

この3つを並べてみると、台所に並ぶポットや急須が、ちょっとした実験室に見えてきます。「今日は白湯で、柚子を素直に楽しもう」「今夜はほうじ茶で、きなこクリームを少しだけ溶かしてみよう」「昼間は緑茶で、マーマレードをほんの耳かき1杯だけ試してみよう」そんな風に、時間帯や気分に合わせてベースを選ぶと、同じ調味料やジャムでも、何度も楽しめる存在に変わっていきます。

さらに、介護や家族の暮らしの中で考えてみると、このベース選びは案外大切です。カフェインを控えたい夜には、白湯やほうじ茶を選ぶことで、体への負担を軽くしつつ、温もりだけを受け取ることができます。渋みが苦手な高齢の家族には、薄めのほうじ茶や白湯に、ほんのひと匙のジャムやはちみつを溶かしてあげるだけで、気持ちが和らぐような一杯を用意できます。ベースの選び方1つで、その人に合わせた「やさしい甘さの届け方」が見えてくるのです。

こうして見てみると、白湯、緑茶、ほうじ茶は、どれか1つが正解というわけではなく、「誰に、いつ、どんな風に飲んでもらいたいか」で役割が変わる相棒のような存在です。甘いジャムや柚子茶は主役でありながら、実はベースの選び方で、印象がいくらでも変わってしまいます。だからこそ、小さなカップ1杯を、大切に丁寧に選びたくなります。

次の章では、この3つのベースを使いこなすための、「100cc」「薄めスタート」という、小さくてやさしい実験ルールについて掘り下げていきます。失敗しても笑って飲み切れる量だからこそ、生まれてくる工夫や発見があります。その積み重ねが、いつか自分だけの「究極の1杯」へと繋がっていくのかもしれません。


第3章…100㏄と薄めスタート~体にやさしい小さな実験ルール~

甘い物を使った温かい飲み物作りは、楽しい遊びであると同時に、体へのやさしさも忘れたくない世界です。そこで頼りになるのが、「100cc」という小さなカップと、「薄めスタート」という2つのルールです。どちらも難しい理論ではなく、日々の台所で無理なく続けられる、小さな工夫に過ぎません。それでも、この2つを意識するかどうかで、冬のホットドリンクが、ただの甘い誘惑で終わるのか、それとも心と体を同時に温めてくれる存在になるのか、大きく変わってきます。

まず、「100ccの小さなカップ」は、失敗しても笑って飲み切れる量の目安です。コップ半分ほどのささやかな量は、味の冒険をするにはちょうど良いサイズです。もし甘さの加減を間違えても、「うわ、やり過ぎた」と苦笑しながら何とか飲み干せますし、逆に少し物足りない仕上がりでも、「次はもう少しだけ足してみよう」と気楽にやり直せます。たっぷり250㏄や300㏄を作ってしまうと、口に合わない一杯の前に途方に暮れてしまいますが、100ccなら「まあ、これくらいなら何とかなるか」と前向きに向き合えます。

この「小さいこと」は、材料にもやさしい考え方です。柚子茶、ジャム、はちみつ、甘酒、きなこクリーム……どれもたいていは少し高めのご褒美ポジションにいる食材たちです。100㏄ずつの実験なら、スプーン1匙、2匙の世界で気軽に試せます。しかも、一度開けた瓶やチューブを、何日かに分けていろいろな組み合わせで楽しめるので、「もったいないから使えない」ではなく、「どう使おうか考えるのが楽しい」に変わっていきます。材料を大切にしながら遊べることも、この小さなカップの大きな魅力です。

そして、この小さなカップと相性が良いのが、「薄めスタート」というもう1つのルールです。最初からたっぷりと柚子茶やジャムを入れてしまうと、甘さもトロミも一度に襲いかかってきます。飲んだ瞬間は幸せでも、その後に喉が渇いたり、胃が重たくなったり、後から後悔することもあります。そこで、最初は「ちょっと物足りないかな」と感じるくらいから始めて、そこに甘いひと匙を少しずつ足していく流れにしてみます。白湯、緑茶、ほうじ茶、温めた牛乳や豆乳などを100cc注ぎ、そこへ柚子茶やジャムを小さなスプーンでほんの少し落とす。よく混ぜて味を確かめ、「もう少し香りがほしい」「あとちょっとだけ甘くてもいいかな」と感じたところで、また少し足していく。足し算だけで調整していけば、取り返しのつかない甘さにはなりにくくなります。

この「薄めスタート」は、糖分との付き合い方を穏やかにしてくれる考え方でもあります。冬場はどうしても、甘い飲み物やお菓子に手が伸びやすくなります。1杯1杯は大したことがないように見えても、積み重なると、1日あたりの甘さの量はジワジワ増えていきます。特に、柚子茶やジャムは、元々が保存食としてしっかり甘く作られているので、「体に良さそう」「果物だから安心」というイメージだけで飲み続けると、知らないうちに糖分を多めにとってしまうこともあります。最初はもの足りないくらいの薄さから始めることで、「自分が本当に美味しいと感じる甘さのライン」を見つけていくことが出来、結果として、必要以上に甘くし過ぎない習慣が身についていきます。

また、100ccと薄めスタートの組み合わせは、家族や高齢の方と一緒に楽しむ時の安心材料にもなります。例えば、家族の中に血糖が気になる人がいる場合、いきなり大きなマグカップにたっぷりの甘い飲み物を作るのは心配です。けれど、100ccの小さな湯のみで、ジャムも小指の先ほどから始めてみるなら、様子を見ながら少しずつ味の調整ができます。甘さに敏感な人や、あまり甘いものを好まない人には、ほんの香り程度に留めて置くこともできますし、逆に「甘いものがささやかな楽しみ」という人には、その人だけ少し多めに足してあげることも出来ます。小さな器と薄めスタートは、一人一人の好みに合わせるための、柔らかい余白でもあるのです。

さらに言えば、この実験ルールは「心の負担」を軽くしてくれます。もし新しい組み合わせに挑戦して、少し微妙な味になってしまっても、「今日はちょっと不思議な1杯だったね」と笑って終われるサイズです。「こんな味になるとは思わなかった」という発見も、100ccなら良い意味でネタになります。上手くいかなかった記録も、次の一杯へのヒントに変わります。ノートに日付とベース、使ったジャムや甘味、簡単な感想を書き残しておけば、「この組み合わせは優勝」「これは1回で十分」という、自分だけの冬ドリンク図鑑が少しずつ出来上がっていきます。

介護や仕事で毎日忙しい中、何か大きな趣味を新しく始めるのは大変かもしれません。それでも、台所でお湯を沸かすついでに、小さなカップでちょっとだけ遊んでみることなら、意外と負担なく続けられます。100ccというささやかな量と、薄めスタートという穏やかなルールは、忙しい日々の中でも、自分のための時間をほんの少しだけ確保するための工夫でもあります。湯気を眺めながら、今日の一杯を静かに味わう数分間は、心の温度を少し上げてくれる大切な休憩時間です。

こうして、100ccと薄めスタートという小さな工夫を積み重ねていくと、「毎日が実験」のようになっていきます。うまくいった日も、イマイチだった日も、その記録は全て、自分だけの究極の1杯へ近づくためのステップです。次の章では、これまでの発想を生かしながら、今日から試しやすい具体的な組み合わせや、意外な美味しさを見せてくれた「当たり」の例を、たっぷり紹介していきます。冬の台所が、小さな実験室であり、小さな喫茶店でもあるような時間を、少しずつ広げていきましょう。


第4章…今日から試せる冬の「あったか小さな1杯」おすすめレシピ集

ここまで、「飲むジャム」という発想や、白湯・緑茶・ほうじ茶という3つのベース、小さな100ccカップと薄めスタートのルールについてお話ししてきました。いよいよここからは、実際に台所で試しやすい「おすすめ完成パターン」を、出来るだけたくさん紹介していきます。どれも、ベースはおよそ100㏄。甘いものは小匙半分から始めて、足りなければ少しずつ足していく、あのルールを前提にしています。分量はあくまで目安なので、自分の舌と体調に合わせて、少しずつ調整しながら楽しんでみてくださいね。

まずは、王道の柚子茶から生まれる2つの1杯です。1つめは、白湯と柚子茶の「素顔のゆずカップ」です。沸かしたお湯を少し冷まして100ccほどカップに入れ、柚子茶を小匙半分だけ溶かしてみます。香りも甘さも、最初は控えめで良いのです。ひと口飲んでみて、「もう少しだけ柚子が欲しいな」と感じた時に、もう小匙半分足してみます。甘さが前面に出る前に、ゆずの香りがフワッと立ち昇ってきたら、その日の体調にピッタリの濃さです。疲れた夜や、喉が少し心配な時、薬に頼るほどではないけれど何か温かいものが欲しい、そんな場面に向いた一杯です。

2つめは、ほうじ茶と柚子茶の「香ばし柚子ほうじ」です。薄めに淹れたほうじ茶を100cc用意し、そこに柚子茶を本当にひと匙の先だけ落としてみます。よく混ぜてから湯気を吸い込むと、ほうじ茶の焙じた香りの奥に、柚子がそっと顔を出します。これが物足りなければ、柚子茶をもう少しだけ足していきますが、入れ過ぎると香ばしさが掻き消されてしまうので、「香りが2つ並んで歩いている」くらいを目安にすると、ちょうど良いバランスが見つかります。食後のお茶を少しだけご褒美仕様にしたい時に、ちょうど良い一杯です。

次に、ジャムとミルク・豆乳を使った、ちょっとおやつ寄りの組み合わせを見てみましょう。3つめは、豆乳とりんごジャムの「なんちゃってアップルソイラテ」です。無調整の豆乳を100cc弱、弱火でゆっくり温め、沸騰させないように気を付けながらカップに注ぎます。そこへ、りんごジャムを小匙半分だけ溶かしてみます。ほんの少しシナモンパウダーがあれば、ひとふりしても良いでしょう。りんごの甘さと豆乳のやわらかさが合わさり、カフェで出てきそうな一杯に変身します。砂糖を足さなくても、ジャムと豆乳の自然な甘さだけで満足感があり、おやつ代わりにピッタリです。

4つめは、牛乳とベリー系ジャムの「あたたかベリーミルク」です。牛乳を100㏄温めてカップに注ぎ、いちごやブルーベリーのジャムを小匙半分だけ入れて、良く掻き混ぜます。色がほんのりピンクや薄紫になり、見た目から既にやさしい気持ちになります。子ども向けなら少し甘め、大人向けなら控えめに、といった具合に、家族ごとに濃さを変えられるのも、この小さな一杯のカップならではです。牛乳が苦手な人でも、ジャムの香りが加わることで、意外と飲みやすくなります。

甘酒をベースにした温かい1杯も、冬には欠かせません。5つめは、甘酒としょうがの「ぽかぽか生姜甘酒」です。甘酒を少し薄めにして100cc用意し、生姜をほんの耳かき1杯ほど加えて混ぜます。チューブの生姜なら、ごく短く搾る程度で十分です。体の内側から温かくなってくる感覚があり、冷えやすい人には心強い味方になります。甘さが強く感じられる時は、お湯でさらに割っても良いですし、逆に「もっと甘くてもいい」と感じる時は、はちみつをほんの少しだけ足して調整しても構いません。

6つめは、甘酒とココアの「和風ホットチョコ風」です。甘酒を100cc温めてカップに入れ、無糖のココアパウダーをごく少量振り入れて、溶け残りがないようにしっかり混ぜます。甘さは甘酒にお任せして、砂糖は足さないのがコツです。口に含むと、最初に甘酒のやさしい甘さが来て、後からほろ苦いココアの香りが追いかけてきます。おやつとしても、夜の読書のお供としても楽しめる、少し大人びた一杯です。

香ばしい系が好みなら、きなこや黒糖を使った一杯も魅力的です。7つめは、ほうじ茶と黒糖きなこクリームの「香ばし黒糖きなこ茶」です。薄めのほうじ茶を100cc淹れ、黒糖きなこクリームを小さじ半分だけ溶かします。ほうじ茶の香ばしさと、きなこの香りが重なることで、一気に和菓子のような世界が広がります。甘さが強いクリームなので、足し過ぎには要注意ですが、うまく決まった時は、まさに冬のご褒美のような幸福感があります。

8つめは、牛乳と黒糖きなこクリームの「とろり黒糖きなこミルク」です。温めた牛乳100ccに、黒糖きなこクリームをごく少量溶かして、よく混ぜます。これは完全にデザート寄りの一杯ですが、仕事を終えた夜や、頑張った自分への小さなご褒美にピッタリです。カロリーはそれなりにあるので、1日何杯も、というよりは、「今日はここまで頑張ったから、この1杯だけ」という位置付けで付き合うと、心にも体にもやさしくなれます。

最後に、少しチャレンジ枠として、豆乳とピーナッツバターの「ピーナッツ豆乳ホット」をご紹介します。無調整豆乳を100cc温めてカップに注ぎ、ピーナッツバターをごく少量、まずは豆粒ほどの量から溶かしてみます。しっかり混ぜると、香ばしい香りが立ち昇り、口当たりもトロリとしてきます。ピーナッツの風味が強いので、好き嫌いは分かれますが、好みに合えば「この一杯だけは特別」と思える存在になるかもしれません。最初から大きなスプーンで入れずに、ほんのひと匙の先から試すことが、このチャレンジを楽しく終える秘訣です。

このように見ていくと、台所にすでにあるものだけで、かなり多くの「あったか小さな1杯」を生み出せることに気づきます。同じ100ccでも、ベースを変え、甘さの種類を変え、量を少しずつ調整するだけで、味わいも香りも、気分も変わっていきます。大掛かりな道具も、特別な材料も必要ありません。必要なのは、沸かしたお湯と、小さなカップと、甘いひと匙に向き合うゆっくりした時間だけです。

お気に入りの1杯が見つかったら、日付と組み合わせ、そして一言の感想を、メモに残しておくのも楽しいものです。「今日のベストは、ほうじ茶と柚子茶の薄め」「寝る前は甘酒と生姜が合っていた」そんな記録が少しずつ溜まっていくと、自分だけの冬ドリンク図鑑が出来上がります。そのページをめくりながら、「次はどんな一杯にしようか」と考える時間そのものが、冬の暮らしを豊かにしてくれるレクリエーションになっていきます。

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まとめ…物があふれる時代に残したい台所レクリエーションとしての究極の1杯

冬になると、コンビニやスーパーの棚には、次々と新しい飲み物が並びます。ラベルを眺めているだけでも楽しいけれど、ふと「温かい一杯を、もう少し気軽に、自分の手で作れたらいいのにな」と感じる瞬間があります。そんな時に、台所の棚や冷蔵庫の隅っこで静かに出番を待っているのが、柚子茶の瓶や、パン用のジャム、はちみつ、黒糖きなこクリームたちです。1個買うと、ついつい…いつの間にか複数で積み上がりがち…。「これはパン用」「これは飲み物」と決めつけていたものを、少しだけ別の角度から見つめ直してみると、冬の台所は、小さな実験室のような場所に変わっていきます。

今回の話の出発点は、「柚子茶を濃く入れ過ぎたら、もはやジャムだった」という、笑ってしまうような気づきでした。そこから、「飲むための柚子茶をパンに塗ってみたら?」「パン用のジャムをお湯で溶かしたら?」という、ちょっとした悪ノリにも似た発想が生まれました。けれど、この小さな遊びは、「飲み物」と「塗る物」の境界を揺らしながら、家にあるものだけで冬の楽しみ方を増やしてくれる、意外と奥深い世界への入り口でもありました。

白湯、緑茶、ほうじ茶という3つのベースは、それぞれ違う表情で甘いひと匙を受け止めてくれます。白湯は、素材の香りや甘さをそのまま映し出す、素直なキャンバス。緑茶は、渋みと香りが、柑橘系のジャムなどに深みを与えてくれる、少し大人びた相棒。そしてほうじ茶は、焙じた香ばしさで、きなこや黒糖、柚子茶までもふんわり包み込んでくれる、頼もしい存在です。同じ柚子茶でも、どのベースと組み合わせるかで、まったく違う一杯に生まれ変わることを知ると、急須を用意する時間さえ、少しワクワクしたものになります。

そこに、100ccという小さなカップと、「薄めスタート」というやさしいルールが加わると、この遊びはグッと続けやすくなります。たっぷり作って失敗すると落ち込んでしまいますが、100ccなら「今日はちょっと不思議な味だったね」と笑って飲み切れる量です。最初は物足りないくらいの薄さから始めて、足りない分だけ少しずつ甘さを足していくことで、自分にとって心地よい甘さのラインも見えてきます。これは、糖分と無理なく付き合うための工夫でもあり、「今日は甘さ控えめ」「今日はご褒美濃いめ」と、その日の気分や体調に合わせて、自分で舵を取れるようになるための練習でもあります。

さらに、この小さな実験は、一人だけの楽しみで終わらせる必要もありません。家族の中で甘さの好みが違っても、100ccずつ別々に作れば、それぞれに合った一杯を用意できます。高齢の家族には白湯や薄めのほうじ茶に、ほんの少しだけジャムを溶かして香りを楽しんでもらい、甘い物が好きな人には、同じ材料を少し濃いめにして出してあげることも出来ます。台所の小さな実験が、そのまま「相手の好みや体調に寄り添う心遣い」になっていくところに、温かい飲み物ならではの良さがあります。

もちろん、全ての組み合わせが大成功するわけではありません。ピーナッツバターや黒糖きなこクリームをお湯で溶かしてみて、「これはパンに戻ってもらった方がいいな」と感じる日もあるでしょう。それでも、その「上手くいかなかった一杯」も含めて、冬の思い出になります。ノートの片隅に、「ほうじ茶と柚子茶は◎」「豆乳とりんごジャムは△だけどシナモンを足したら◎」「ピーナッツはごく少量ならアリ」などと書き残していけば、自分だけの冬ドリンク図鑑が、少しずつページを増やしていきます。

物や情報が溢れる今の時代は、完成された商品を選ぶ楽しさも確かにあります。でも、台所で沸いたお湯を前に、家にある瓶やチューブを眺めながら、「今日はどの子と組み合わせてみよう」と考える時間には、また別の喜びがあります。柚子茶の瓶から始まったささやかな発見が、白湯やお茶、甘酒や豆乳と出会い、やがて「究極の1杯」を探す冬の家庭内のレクリエーションへと育っていく。そんな物語を、自分の暮らしの中にも、1つ持ってみても良いのではないでしょうか。

この冬、もし台所でお湯を沸かすタイミングがあれば、是非100ccのカップを1つ用意して、甘いひと匙と向き合う時間を作ってみてください。成功した一杯も、ちょっと笑ってしまう一杯も、どれもその日だけの掛け替えのない味です。湯気の向こうにある小さな実験が、心と体をそっと温めてくれることを願いながら、あなたの冬の台所に、静かで楽しいレクリエーションの時間が増えていきますように。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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