2月の鳥便りと窓辺の小旅行~理事長と事務長が届ける鳴き声図鑑~

[ 2月の記事 ]

はじめに…外に出なくても春は耳から来る

2月の空気って、顔に当たると「冷たい!」と先に言われるくせに、よく耳を澄ますと、こっそり春の準備をしています。木の葉が少なくて見通しがよく、鳥の姿がいつもより見つけやすい。しかも鳥たちは、こちらの予定表なんて知らないから、朝でも昼でも「はい、今日も鳴きますよ」と勝手に始める。これがまた、特養の毎日のリズムにぴったりなんです。

ただ、正直に言うと「外に出て見に行きましょう!」が簡単に出来ない日もあります。寒いし、風は強いし、体調もあるし、車いすの段取りもある。そこで今回の企画は、施設の中にいながら、窓辺から“鳥の小旅行”を始めてしまおう、というお話です。外出しない分、代わりに“耳”と“目”をちょっとだけ贅沢に使います。鳥の名前を覚えるのが目的ではなくて、「今、鳴いたね」「見えたね」「思い出したね」を増やすのが目的。これだけで、2月が少し温かくなるんですよ。

そして今回の名コンビが、理事長と事務長です。理事長は、何故かこういう時だけ妙に張り切るタイプ。朝の見回りで窓の外を指さして、「あれはスズ…スズ…えーと、小さい鳥!」と元気よく言い切る。事務長は事務長で、真顔で双眼鏡を持ち出し、「理事長、まずレンズキャップを外してください」と丁寧に補助する。鳥より先に、理事長の準備が必要な日もあります。でも、その一手間が笑いになって、笑いが会話になって、会話が“今日の楽しみ”になります。

この記事では、2月の日本で見つけやすい野鳥たちを、窓辺・水辺・藪の中…と、舞台を少しずつ変えながら紹介していきます。鳴き声の感じ方も、見え方も、地域や天気でぜんぜん違う。だからこそ「うちの施設の窓から見える2月」を、あなたの施設版に育てていける形にしてあります。

さあ、準備するのは大袈裟な道具じゃありません。窓、耳、そして「今の鳴き声、誰だろう?」という好奇心1つ。理事長は勢い担当、事務長は段取り担当。鳥たちは自由担当。2月の小旅行、出発です。

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第1章…窓の外は小劇場~スズメ団とヒヨドリ隊の朝礼~

朝一番の窓は、特養にとって「自然のテレビ」みたいなものです。しかも2月は葉っぱが少なくて、鳥の動きがよく見える。つまり、舞台の幕が勝手に上がっている状態なんですよね。

まず登場しやすいのが、スズメさん。小さくて丸くて、ちょこちょこ動く。見ているだけで「忙しいねえ」と笑いが出ます。鳴き声も短くて分かりやすいので、耳の体操にもピッタリです。聞こえたら、言い方は難しくなくて大丈夫。「今の、チュンチュンの子だね」で充分。名前より“共有”が勝ちです。

次に目立つのが、ヒヨドリさん。こちらは声が大きめで、主張が強い。窓の近くで「ピーヨ、ピーヨ」と鳴かれると、まるで「おはようございます!本日の担当、私です!」と名乗りを上げているみたいで、朝の空気が一気ににぎやかになります。理事長がここで腕を組んで、「うむ、今日も元気だ。うちの職員も見習ってほしい」と言い出すのがお約束。事務長は事務長で、「理事長、鳥に業務連絡は届きません」と小声で添える。窓辺だけ、妙に漫才が始まります。

そして、キジバトさん。首の辺りがちょっとおしゃれで、歩き方が落ち着いています。鳴き声も、低めでゆったりしていて、聞いていると呼吸が整う感じがある。目が疲れやすい方でも、ハトは体が大きめなので見つけやすいのが助かります。ここで「昔、家の庭にも来たよ」「お米をこぼすと集まってきたんだよ」みたいに、思い出が自然に出てきやすいのも良いところです。

窓辺の鳥は、長い時間を掛けなくても楽しめます。例えば朝食後に窓の近くで、ほんの少しだけ耳を澄ます。「鳴いたら勝ち」「見えたら勝ち」。勝ちが増えると、その日がちょっと明るくなります。もし見えなくても、鳴き声だけで充分。声は“姿の代わり”になってくれます。

理事長と事務長の役割分担も、ここで決まります。理事長は「聞こえた宣言係」。事務長は「窓の場所取り係」。理事長が「今のはウグイスだ!」と勢いで言ったら、事務長はやさしく「理事長、落ち着いて。ウグイスさんはもう少し、やぶの奥で準備運動です」と受け止める。正しさより、場が温かくなることが大事です。

こうして窓の外の小劇場が始まると、特養の中にいながら、季節がちゃんと進んでいるのが分かります。鳥は何も説明してくれないけれど、声と姿で「今日も生きてるよ」と教えてくれる。2月の朝礼は、案外この子たちが一番上手かもしれません。


第2章…水辺の会議室~カモたちの無言プレゼン~

窓の外に川や用水路、ため池がある施設は、それだけで2月の特等席を持っています。水辺って不思議で、見ている側が静かでも、向こうは勝手に動いてくれる。しかも冬は水鳥が増えやすく、葉も落ちていて見通しが良い。つまり「今日は何も起きない日だな」と思った朝ほど、水面が急に賑やかになるんです。

まず登場しやすいのは、カモの仲間。プカプカ浮いているだけなのに、何故か“仕事してる感”があります。たぶん、あの落ち着いた顔つきと、ゆっくりした移動のせいですね。利用者さんも見つけやすくて、「あそこにいるよ」と指さしが生まれやすい。声も、たまに「クワッ」と短く入るので、耳でも参加できます。声が聞こえたら、理事長がすかさず言います。「今のは会議の開始の合図だな」事務長は静かに頷いて、「本日の議題は『水温と風向きについて』でしょうか」と乗ってくる。誰も決めてないのに、勝手に会議が始まるのが水鳥の良いところです。

カモたちの見どころは、動きが分かりやすいこと。首をのばして水に口を入れたり、お尻だけ上げて頭を水に突っ込んだり、急にバタバタ羽ばたいて水しぶきを飛ばしたり。特養の窓辺で見ていると、まるで水面でミニ運動会をしているみたいです。ここで利用者さんが「昔から、田んぼにいたねえ」「川で見たことあるよ」と話してくれたら、それがもう最高の“旅のしおり”。名前が出なくても大丈夫で、「あの、プカプカの子」「お尻が上がる子」で十分伝わります。

そして水辺に立つ鳥もいます。白っぽい大きめの鳥が、じっと動かず立っている時がある。初見だと「置き物?」と言われがちですが、あれがまた渋い。動かないのに目だけは働いていて、突然スッと首を伸ばす瞬間がある。利用者さんの中には、その“間”が好きな方がいます。「慌てないのが良いね」「ああいうのが本当のプロだよ」と言いながら、見ている側の呼吸までゆっくりになる。これ、2月の施設にとって、けっこう大事な時間です。

水辺の鳥は、見るだけでも楽しいのですが、特養向けにもう1つ効くのが「音の想像」です。水の音って、鳥の動きとセットで記憶に残りやすいんです。羽ばたきで水が跳ねる音、くちばしで水面をつつく小さな波、隊列で進む時の静かな波紋。目が疲れた方でも、「今の音、聞こえた?」から会話に入れます。理事長が調子に乗って「水鳥が通ると、施設の空気まで洗われる」と言い出したら、事務長は「理事長、空気清浄機の点検も本日中です」と現実に戻す。こういうやり取りがあると、みんなの笑いが水面みたいに広がっていきます。

もし施設の近くに水辺がない場合でも、章は成立します。職員さんが散歩の途中で撮った水鳥の写真を、窓辺の時間に一枚だけ見せるだけでも良い。大切なのは量じゃなくて、“今日の一羽”がいること。写真を見て「この子、寒くないのかな」と言葉が出たら、もう鳥が施設の中まで来ています。

窓の外の水面は、いつだって黙ってプレゼンを始めます。こちらが忙しくても、静かに浮いて、歩いて、立って、たまに羽ばたいて見せる。2月は寒いけれど、水鳥たちは案外、こちらの心を温めるのが上手です。次は、水辺よりさらに“隠れ場所の王者”へ行きましょう。あの鳥は、まだ本番前なのに、すでに存在感だけは満点です。


第3章…藪の中の練習生~ウグイスはまだ本番前~

2月の鳥の話をするなら、やっぱりウグイスは外せません。けれど、ここで1つだけ、先に言っておきたいことがあります。2月のウグイスは、だいたい「もう歌手デビューしました!」という雰囲気ではありません。どちらかというと、舞台袖でストレッチしている新人さんです。声はするのに姿は見えない、見えたと思ったら一瞬で消える。これがまた、特養の窓辺にちょうど良い“探偵ごっこ”になります。

ウグイスって、みなさんの頭の中では「ホーホケキョ」のイメージが強いですよね。理事長も例外じゃなく、藪の中から小さな声がしただけで、「来た!ホーホケキョ来た!」と早口になります。けれど事務長は、落ち着いて言うんです。「理事長、それはまだ“準備運動の声”かもしれません」そう、2月は「ホーホケキョ」より、もっと短い鳴き方が多い時期があります。藪の中から「チャッ、チャッ」みたいに聞こえたり、控えめに「…ケキョ」とだけ聞こえたり。言うなれば“口ならし”。この「本番じゃない感じ」が、逆にまた聞こえたら楽しいんです。

何故なら、利用者さんの会話が広がるからです。「今の、ウグイスじゃない?」「いや、違う気がする」「昔の家の裏で鳴いてたのは、もっと堂々としてたよ」こんな風に、“正解を当てる”より“記憶を引き出す”方向に話が動きます。ここが、施設の鳥時間の一番おいしいところです。鳥の名前が分からなくても、声の感じを真似して笑えれば勝ち。思い出が出てきたら大勝利です。

そしてウグイスは、見つけ方も面白い。基本的に木のてっぺんでドヤ顔はしません。藪の低いところ、葉が絡まる場所、影が出来る場所に潜みがちです。だから窓辺で見るなら、視線を上じゃなく“低め”に置く。これだけで「見えない鳥」が、急に「いるかも鳥」になります。事務長が窓のカーテンをほんの少しだけ調整し、「反射が減ると見えやすいですね」と言うと、理事長は何故か小声になって「事務長、今われわれは、森に入っている…」と雰囲気を出し始める。施設の中なのに、気持ちは完全に探鳥隊です。

ここでおすすめの遊び方が1つあります。名前当てではなく、“鳴き声の実況中継”です。聞こえた人が「今、右の藪!」「今度は少し遠い!」と位置だけ言う。すると周りが耳を澄ませて、同じ音を探す。耳が遠い方でも「さっきより近い?遠い?」という会話なら参加しやすいことが多い。音の強弱や方向の話は、案外みんなで共有しやすいんです。理事長が勢いで「鳥は、会議の議事録より正直だな」と言い出したら、事務長は「理事長、議事録は正直でないと困ります」と真面目に返す。そこで笑いが起きたら、ウグイスはもう仕事をしています。

そして2月のウグイスが素敵なのは、「春はこれから来る」と教えてくれることです。完璧に歌わないからこそ、次が楽しみになる。利用者さんの中には、春を待つ気持ちを言葉にするのが得意な方がいます。「もうすぐだね」「梅が咲いたらね」「昔はこの声で田んぼに出たんだよ」そういうひと言が出たら、その日が施設の中で少しだけ季節を進めます。

ウグイスは、姿が見えなくても主役になれます。むしろ見えないからこそ、想像が膨らむ。2月のやぶの中には、春の前の小さな練習が隠れていて、その練習をみんなで見守るのが、なんだか人間らしくて良いんです。次の章では、理事長と事務長がこの“鳥便り”を施設の行事みたいに育てていく話をしましょう。鳥は相変わらず自由なのに、何故か施設の雰囲気だけは、きちんと整っていきます。


第4章…理事長が鳥の声で場を回す~事務長は双眼鏡係~

施設って、予定表がぎっしりしていても、ふとした瞬間に「今日は気分が乗らない日」が出てきます。寒さのせいもあるし、眠りが浅かったり、体が重かったり。そんな時に、鳥は強い味方です。何故なら鳥は、こちらの都合に合わせず、ちゃんと鳴いて、ちゃんと飛んで、ちゃんと生きている。その“勝手さ”が、逆に人の心を引っ張ってくれます。

理事長は、そこに気づいてしまった人です。切っ掛けは些細でした。朝の見回りで窓の外から「ピーヨ」と大きな声が聞こえた。理事長は立ち止まって、職員さんに向かって言うんです。「今の聞いた?本日の朝礼は鳥が担当だ」職員さんが笑う。利用者さんも笑う。笑いが起きた時点で、鳥の勝ち。理事長はそれを“施設の空気のスイッチ”として覚えてしまい、以後、鳥の声が聞こえるたびに小さなイベントを始めます。

ただし理事長は、勢いで始めるわりに、道具の扱いが怪しい。双眼鏡を持ち出しても、だいたいレンズキャップがついたままです。ここで登場するのが事務長。事務長は鳥より先に理事長を観察しているので、すっと近づいて「理事長、まずここを外します」と静かに補助します。理事長は「うむ、鳥がよく見えるようになった」と言い、事務長は心の中で「それは双眼鏡がようやく仕事を始めただけです」と呟く。こういうズレが、施設の笑いの栄養になります。

この章で一番大事なのは、鳥の名前当て大会にしないことです。もちろん当たれば気持ち良いけれど、外れると急にしょんぼりする方もいます。だから理事長は、ルールを変えます。「名前は後でいい。今日は“どんな風に鳴いたか”を言えたら優勝」
すると、利用者さんの言葉が増えます。「短かった」「大きかった」「せかせかしてた」「怒ってるみたい」「笑ってるみたい」これ、全部正解です。鳥の声を、気分の言葉に変換できた時点で、その人の中の季節が動いています。

事務長は、そこをさらに支えます。事務長が得意なのは段取りなので、窓辺の環境を整えるのが上手い。朝日でガラスが反射するなら、カーテンを少しだけ引いて、見えやすい角度を作る。窓の近くが寒いなら、椅子を少し後ろに下げて、無理なく座れる位置にする。理事長が「ここが特等席だ」と言い張っても、事務長は「理事長、特等席は風邪を引かない席です」と現実で守ります。優しさが、ちゃんと形になっているんです。

それでも日によっては、鳥が見えないこともあります。そんな時、理事長は逆に張り切ります。「見えないのが良い。見えないから、想像が育つ」事務長が「理事長、良いこと言いましたね。議事録に残します」と言うと、理事長は急に照れて「いや、残さなくて良い」と言う。残して欲しいのは鳥の声じゃなくて、その場の空気。だけど、事務長が残すべきものを残しているから、施設は回っている。理事長の閃きと、事務長の段取りの組み合わせは、鳥時間にすごく合います。

そして、鳥便りが続くと、利用者さんの中に“役割”が生まれます。「今日は聞こえたよ係」「窓の外を見つける係」「昔の話を思い出す係」。役割って、人を元気にします。特養の暮らしの中で、役割が自然に生まれる瞬間はとても貴重です。鳥は、それを押しつけずに作ってくれる。鳴くだけで、人が集まり、話し、笑い、呼吸が整う。こんなに手間が少ないのに、効果が大きいものはなかなかありません。

理事長は最後に、だいたいこう言います。「鳥は自由だな。けれど自由には、ちゃんと季節が入ってる」事務長は「理事長、自由は大事ですが、玄関の戸締まりも季節より大事です」と言いながら立ち去ります。理事長は「うむ」と言いながら、また窓を見ます。鳥はいつも通り、勝手に鳴いている。なのに、施設の中にはちゃんと“今日の物語”が出来ている。

次はいよいよまとめです。鳥は毎日違うのに、共通して残るものがあります。それは名前でも写真でもなく、「聞こえたね」という一言です。そこが、2月の一番温かいところです。

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まとめ…『聞こえたね』が一番のご馳走~2月の鳥をまた明日~

2月の鳥は、派手なことをしません。桜のように一気に咲いて「どうだ!」と見せるわけでもないし、夏祭りみたいに賑やかな音を鳴らすわけでもない。けれど、静かな季節の中で、ちゃんと生きて、ちゃんと鳴いて、ちゃんと動いています。その“当たり前の力”が、特養の暮らしの中では、とても頼もしいんです。

窓辺のスズメ団は、ちょこちょこ動いて「今日も忙しいぞ」と教えてくれました。ヒヨドリ隊は、大きな声で「朝はこうやって始めれば良い」と背中を押してくれました。水辺のカモたちは、言葉がなくても場を作れることを見せてくれました。藪の中のウグイスは、まだ本番前なのに「準備してる姿は美しい」と教えてくれました。どの鳥も、こちらの都合を聞かないのに、何故かこちらの心に寄り添ってくる。不思議な関係です。

そして、理事長と事務長。理事長は勢いで場を回し、事務長は段取りで場を守る。理事長が「今のはウグイスだ!」と言えば、事務長が「理事長、まだ練習生の可能性です」と優しく受け止める。双眼鏡のキャップが外れていないまま「見えた」と言えば、事務長が無言で外して世界を明るくする。鳥の観察をしているようで、実は人の優しさと笑いを観察している時間でもありました。

この“鳥便り”の良いところは、何かを頑張らなくても成立することです。外へ出られない日があっても、見えない日があっても、鳴き声1つで始まる。名前が分からなくても、思い出が1つ出てくれば大成功。むしろ正解を当てるより、「今の声、何だか懐かしいね」「昔の庭にいたね」と言葉が増える方が、ずっと価値があります。

最後に、一番大事な合言葉だけ残します。「聞こえたね」これだけで、人は同じ時間を共有できます。寒い日でも、窓の外に小さな命の気配があって、その気配を皆で受け取れる。2月の施設に必要なのは、豪華なイベントより、こういう小さな“明日の楽しみ”なのかもしれません。

理事長は今日も窓の外を見て、「明日は誰が鳴くかな」と言います。事務長は「理事長、明日は天気予報も確認してください」と言いながら、やっぱり窓の近くに椅子を置いておきます。鳥は自由に鳴き、施設は静かに温まる。そんな2月を、また明日も。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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