2月の異動内示で現場がザワつく1週間を笑って乗り切る介護あるある物語

[ 2月の記事 ]

はじめに…異動は辞令じゃない~空気が変わる“季節”だ~

2月になると、介護現場の空気がちょっと変わります。廊下の足音がいつもより速い気がする、休憩室の会話が妙に短い、そして何故かコピー機の前で立ち止まる人が増える。ええ、あれです。「異動の内示が出る頃」です。

異動って聞くと、外から見れば「人が移るだけ」みたいに見えるかもしれません。でも現場の感覚だと、あれは“季節の変わり目”に近いです。気温の変化みたいにジワジワ来て、気づいたら身体がついていけず、喉がイガイガして、そして最後にくしゃみが出る。異動の季節も同じで、最初は「まぁ、誰か動くよね」くらいなのに、数日後には「え、私?」「え、あなたも?」と連鎖していきます。大騒ぎにならないように箝口令が敷かれることもあるのですが…。

しかも3月に動いて、4月に新人さんが入ってくる。ここがまた、現場のドラマが濃くなるところです。異動した人は、まだ新しい利用者さんの顔と名前と生活のリズムを必死に覚えている最中なのに、気づいたら「新人のお手本」みたいな立ち位置に置かれたりします。本人は「いや、私も実質新人みたいなものなんですが」と心の中で小さく手を挙げているのに、誰も拾ってくれない。あるあるです。

そして、大型事業所ほど人手が足りないと、足りないところに人を回して回して回して、最後に残るのは“回された人の疲労”だけ、みたいな現象も起きがちです。馴染みかけた頃にまた別の場所へ、覚えかけた頃にまた別の利用者さん。まるで「覚える前提を毎回リセットするゲーム」を現実でやらされる感じ。しかも難易度は常に高め。ボーナスステージはありません。

でも、ここで大事なことを先に言っておきます。異動後の最初の1か月は、能力が低いから大変なんじゃなくて、構造的に大変なんです。利用者さんが一新する以上、情報は一から。職員の動きも、ルールも、空気も違う。なら、最初の1か月が“馴染む期間”になるのは当たり前です。焦る方が不自然なんです。

この先の記事では、異動して最初の1週間に一番起きやすい「やらかしポイント」を、笑える形でちゃんと押さえつつ、大型事業所の“人回し”で起きる地獄あるあるも、笑いに変えながら整理します。そして最後は、「じゃあどうしたら現場の自分が壊れずに済むのか」「どうすれば1か月で馴染めるのか」を、現実的な形でソフトに着地させます。

さぁ、2月の異動シーズン。胃がキリキリする人も、妙にテンションが上がる人も、なんとなく察してしまう人も、取り敢えず深呼吸しながら一緒に行きましょう。笑いながら、でもちゃんと生き残るために。

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第1章…異動1週目が危ない!~一番事故りやすいのは“技術”じゃなく“前提”~

異動して最初の1週間。ここは介護現場の「地味に危険な季節限定ダンジョン」です。何が怖いって、ベテランでも普通に落とし穴に落ちるところです。

よく誤解されがちですが、最初の1週間で事故りやすいのは、移乗の技術が急に下手になるからじゃありません。入浴介助の手順を突然忘れるからでもありません。一番危ないのは、“前提”がズレたまま動いてしまうことです。

前提というのは、例えば「この方は見守りで歩ける」という一言の中身です。見守りにも種類があって、手を添える見守りなのか、少し距離を取る見守りなのか、声掛け必須なのか、本人の気分次第で急に変わるのか。前のフロアでは「見守り=だいたい大丈夫」だったとしても、新しい場所では「見守り=油断したら一瞬で転倒コース」だったりします。

しかも異動直後は、情報が頭に入る前に身体が先に動きます。これ、介護職あるあるです。身体が勝手に“慣れているやり方”で動こうとする。自分の腕が勝手に柵を上げる、勝手にブレーキを踏む、勝手にナースコールの場所を探し始める。自分の身体が頼もしい反面、異動直後の1週間はその“自動運転”が危ないんです。

最初に起きやすい「小さなズレ」が後で大きくなる

異動したばかりの頃って、利用者さんの情報を一生懸命覚えようとしますよね。名前、既往、服薬、食形態、移乗、排泄、入浴、そして“拘り”や“地雷”。でも現実は、1日で全部は入らない。むしろ入らない方が普通です。

ここで起きるのが「小さなズレ」。例えば、食事の席。前のフロアでは同じ位置に座っていた人が、今のフロアでは席が違う。食器の配置も、配膳の流れも、声掛けのタイミングも微妙に違う。すると、利用者さんは不安になったり、怒りっぽくなったり、逆に無口になったりします。

職員側も「あれ、いつもこうだっけ?」となる。ここで焦ってテンポを上げると、さらにズレが広がる。一番怖いのは、このズレが“その人の体調不良”に見えてしまうことです。実は環境の変化なのに、「今日は元気ないのかな」と解釈してしまって、対応が遅れる。あるいは逆に、いつもより元気に見えて「大丈夫そうですね」と油断してしまう。どっちも、最初の1週間に起きやすい落とし穴です。

異動直後の“危ない瞬間”はだいたい忙しい時間帯に来る

異動直後の1週間、怖いのは忙しい時間帯です。朝の起床介助、昼食前後、夕方の排泄、夜勤帯のトイレ誘導。時間に追われると、どうしても「前のやり方」が顔を出します。

例えば、排泄介助。新しいフロアでは、トイレ誘導の頻度や声掛けの言い回しが、利用者さんごとに繊細に決まっていることがあります。「この方は、先に水を一口飲んでから誘導するとスムーズ」「この方は、トイレに入る前に一回深呼吸の声掛けがあると落ち着く」みたいな、長い時間を掛けて積み上げてきた“その場の文化”があるんです。

でも異動者は、その文化をまだ知らない。知らないのに、忙しいから走ってしまう。すると利用者さんのペースが崩れて、拒否が出たり、焦りが出たりします。そしてその焦りは、転倒や失禁に繋がりやすい。ここが「最初の1週間は危ない」と言われる理由です。

1週目の最優先は「覚える」より「確認する癖」を作ること

ここで、少し救いの話をします。異動直後の1週間、完璧に覚えるのは無理です。だからこそ、完璧を目指すよりも、「確認する癖」を最初に作った方が強いです。

例えば、自分の中で合言葉を決めてしまうんです。「私は今、前提を確認したか?」と。利用者さんに手を伸ばす前に、車椅子を動かす前に、食形態を口に運ぶ前に、1秒だけ止まって確認する。たった1秒でも、ここで転倒や誤嚥のリスクがグッと下がります。

異動直後の1週間は、能力の勝負じゃなくて“癖の勝負”です。速さより、慎重さ。正確さより、確認。慣れより、観察。ここを押さえると、1週目の「やらかし率」がかなり下がります。

そして不思議なことに、確認する癖を持っている人ほど、結果的に馴染むのも早いです。焦って突っ走る人は、ズレたまま突っ走って疲弊します。ゆっくり確認する人は、ズレを早めに修正して、少ない消耗で環境に馴染んでいきます。

異動1週目の現場で必要なのは、「私はベテランだから大丈夫」という自信よりも、「私はまだ知らないことがある」という賢い警戒心です。怖がりなくらいが、ちょうど良い。介護は、慎重な人が最後に強いです。

次の章では、ここに追い打ちをかける“大型事業所の人回し”の話に入ります。最初の1週間でようやく前提のズレを修正し始めたところへ、「今日、こっち応援入れる?」が来るやつです。笑っていいのか、泣いていいのか分からない、あの現象を一緒に言語化していきましょう。


第2章…大型事業所の人回しで起きる“地獄あるある”~笑えないのに笑うしかない~

大型事業所の異動後に待っているのは、利用者さんの一新だけではありません。もう1つの名物があります。そう、「人を回す」という文化です。回す。回転寿司みたいに回す。いや、寿司なら美味しいけど、こちらは目が回る方の回転です。

規模が大きいほど、現場の穴もとことん大きくなる。するとどうなるか。誰かが欠けるたびに、別の誰かが補い、補った誰かの穴をまた別の誰かが埋め、最後に残るのは「今日、私どこだっけ?」という人生の根っこみたいな問いです。朝から自分探しが始まる職場、なかなかの強敵です。

異動して最初の1週間で、ようやく利用者さんの顔と動線が頭に入りかけた頃に来るんですよね。フロアの端から聞こえる、あの一言が。

「今日、応援に来れる?」

この短い言葉には、情報量が多過ぎます。応援先はどこか。何をすればいいのか。誰に聞けば良いのか。そもそも、そこで私は“誰”として扱われるのか。頭の中で質問が渋滞している間に、身体だけが「はい」と返事をしてしまう。現場あるあるの怖さです。

応援あるあるは“優しさ”で始まって“混乱”で終わる

応援って、本来は助け合いです。だから最初は気持ちが良いんです。「困ってるなら行きますよ」って言える自分、ちょっと誇らしい。ところが、応援が日常になると話が変わります。

毎日違う場所に入ると、そこで必要なのは技術よりも「その場の前提」です。利用者さんの歩行が見守りなのか、手引きが必要なのか。食事は一口量がどれくらいか。声掛けは明るめが良いのか、静かめが良いのか。トイレ誘導のタイミングはどうか。細かい前提の集合体が、現場の安全を支えています。

でも、応援はその前提を覚える時間を奪います。覚えた前提が育つ前に、また別の場所へ行く。すると人は「覚える」ことを諦めて、「何となく」で回し始めます。ここが一番危ないゾーンです。なんとなくは便利だけど、介護ではたまに牙を剥きます。

「引き継ぎが薄い」ではなく「引き継ぐ時間がない」が正体

人回しが多い現場でよくあるのが、「引き継ぎが薄い問題」です。でもこれ、誰かがサボっているというより、そもそも引き継ぐ時間が存在しないことが多いんですよね。

夜勤明けでバタバタ。早番が走ってくる。電話が鳴る。ナースコールが鳴る。そこへ「応援お願い」が乗る。ここで丁寧に情報を渡すには、空気を止める必要があります。空気を止められない職場では、情報はどうしても薄くなります。

薄い情報で現場に入ると、応援者は「取り敢えず動く」しかありません。動いて、ズレて、直して、また動く。その繰り返しで1日が終わり、帰り道にふと思うんです「私、今日なにを達成したんだろう」って。達成はしてるんです。事故なく終えた、それが達成です。でも胸を張る前に、体力が先に尽きます。

人回しが続くと“その場のベテラン”が育たない

人回しが増えると、現場にジワジワ効いてくるのが「専門性の薄まり」です。ある利用者さんの小さな変化に気づくのって、同じ場所に居続けるからこそ出来る部分があります。そこに流れの幹部が赴任するだけで崩壊に拍車がかかります。

いつもより歩幅が狭い。表情が硬い。食べる速度が遅い。手が冷たい。いつもの冗談が出ない。そういう“微妙な差”に気づくには、比較対象としての「いつも」が必要です。

でも応援が日常だと、その「いつも」が作りづらい。気づきの精度が落ちる。すると、情報共有は「大きな変化」中心になります。大きな変化に気づく頃には、だいたい現場は忙しい。忙しいと、さらに応援が増える。うまく出来てますよね、悪循環の設計図って。

それでも回すならせめて“壊れない回し方”にする

ここで大事なのは、「回すのが悪」だけで終わらせないことです。現実として回さざるを得ない日もあります。だからこそ、回すなら壊れない回し方に寄せる必要があります。現場を救うのは大改革じゃなくて、小さなルールだったりします。

ルール1~応援の最初の30秒は“前提確認”に使う~

応援に入った瞬間から働こうとすると、前提がズレたまま走ります。だから最初の30秒だけ、先に止まる。利用者さん全員を覚えるのは無理でも、「この時間帯で危ない人」「声掛けの注意点」「移乗で要介助の人」だけでも確認する。たった30秒が、その後の数時間を助けます。

ルール2~応援者は“万能”ではなく“限定的な戦力”として扱う~

応援者に全部を任せると、現場の安全がギャンブルになります。応援者が得意な業務に寄せて配置するだけで、混乱が減ります。例えば食事介助を中心にする、あるいは環境整備を中心にする、記録を手伝ってもらう。応援者を「何でも屋」にしないだけで、本人の疲労も事故の芽も減っていきます。

ルール3~応援が多い日ほど言葉を短く情報を太く~

忙しいほど会話が雑になりがちです。でも雑にするなら、雑でも事故らない形にする。長い説明は出来なくても、「ここだけは外すな」という情報を太くする。短くても芯がある言葉は、現場を守ります。

大型事業所の人回しは、現場の努力を燃料にして回るエンジンみたいなところがあります。燃料が尽きたら止まります。止まったら、全員が困ります。だからこそ、回す側も回される側も、笑いながらでも良いので「壊れない形」を選んでいくのが現実的です。

次の章では、この人回しの渦の中で、4月の新人シーズンが合流してくる場面に入ります。異動者が“比較対象”として舞台に立たされる、あの春の風物詩です。笑い話にして良いのか悩みつつ、でも笑って進める形にしていきましょう。


第3章…新人の季節が来る~異動者が比較対象にされる春の風物詩~

3月の異動が落ち着く前に、4月がやってきます。春です。桜です。新しい名札です。ここで現場に現れる、もう1つの名物があります。

「新人さん、入ります!」

おめでたい。目出度いんです。目出度いはずなんです。ところが異動者の心の中では、小さな太鼓が鳴ります。ドンドコドンドコ。理由は単純で、異動者はまだ“その部署の新人”でもあるからです。

利用者さんの顔と名前がようやく一致し始めたくらい。トイレ誘導の癖も、食形態の微妙な違いも、声掛けの地雷も、覚え途中。なのにそこへ、新人さんが来る。すると現場の空気が、こう言い始めます。

「異動してきたあなた、ちょうど良い。新人さんのお手本ね。」

全くちょうど良くない。ちょうど良くないんですけど、現場って忙しいので、その矛盾を誰も拾ってくれません。こうして異動者は、“慣れてないのに先輩枠”という、春限定の不思議な生き物になります。

異動者が新人と比べられる瞬間はだいたい善意で刺さる

比較って、悪意でやってるというより、ほとんどが善意です。「新人さんに分かりやすく伝えたい」「良い例を見せたい」。その気持ちは正しい。正しいんだけど、正しさだけで現場は回らないのが介護の面白いところでもあります。

例えば、こんな場面。新人さんが配膳で止まった時、先輩が言います。

「ほら、あの人みたいに動けば良いんだよ。」

言われた異動者は、内心でこう思っています。「あの人って私? 私、今ここで初めて、この食札の並び方を理解したばかりなんですが?」と。

新人さんは新人さんで、目が泳ぎます。「あの人みたいに」と言われても、あの人が何を考えているか分からない。異動者は異動者で、背中にスポットライトを浴びた気がして汗が増えます。結果、現場の体感温度だけ上がる。春なのに、暑い。

新人さんが困るのは“技術”より“言葉の意味”だったりする

新人さんが最初に躓くのって、実は介助技術そのものより、現場の言葉の意味だったりします。「見守り」「一部介助」「声掛け強め」「この方は短く」みたいな、短い言葉に圧縮された情報が多過ぎるんです。

異動者も同じです。異動者もその言葉の辞書をまだ作っている最中です。つまり、異動者と新人さんは、種類は違うけれど“同じ坂”を登っています。なのに現場は、異動者をベテラン扱いして、新人さんを完全な新人扱いする。このズレが、春のモヤモヤを作ります。

ここで面白いのは、異動者が無理に格好つけて「任せて!」とやるほど、どこかで噛み合わなくなることです。格好はついても、情報が追いついていない。新人さんも「凄い…」より「怖い…」が先に来てしまう。介護って、安心が先で、尊敬は後なんですよね。

異動者が“比較地獄”から抜けるための優しい言い方

じゃあどうするか。ここ、コメディーに見えて結構大事なところです。異動者が自分を守りつつ、新人さんも守る言い方があります。ポイントは「私はまだ慣れてない」を、弱音ではなく“安全の宣言”として出すことです。

例えば新人さんに対しては、「私もここはまだ覚え途中なんだ。一緒に確認しながらやろうね」と言う。これだけで空気が変わります。新人さんはホッとするし、異動者も無理に背伸びしなくて済む。現場って、安心が増えるとミスが減ります。これ、ほんとに不思議なくらい効きます。

先輩や上司に対しても、角が立ち難い言い方があります。「新人さんのサポートはできます。ただ、私も異動したばかりなので、事故になりやすいところだけ最初に確認してから動きたいです」と言う。ここで大事なのは、“出来ません”ではなく“安全にやります”に寄せることです。相手も忙しいので、安全という言葉には乗りやすいんです。

新人さんに教えると自分が馴染むのが早くなる裏ワザ

ここで、異動者にとっての救いもあります。新人さんが来ると、しんどいだけじゃなく、実は“馴染みが加速する”瞬間も生まれます。

新人さんに説明しようとすると、自分の中で曖昧だったことがハッキリします。「この方は、何故このタイミングで誘導するんだっけ」「この席順は何のためだっけ」。説明するために理由を探す。理由を聞くために先輩に質問する。結果、情報が整理されて、自分の頭に定着します。

つまり、新人さんの存在は、異動者にとっては“現場辞書を作る授業”にもなるんです。もちろん、疲れている日に授業はきつい。きついんだけど、上手く使うと自分の助けになります。

ただし、1つだけ注意点があります。新人さんに全部を背負わせないのと同じで、異動者も背負い過ぎない。新人教育の主役になろうとしない。異動者は異動者として、「一緒に覚える相棒」くらいが一番長持ちします。

春は、人が増える季節のはずなのに、何故か心の仕事量が増える季節でもあります。だからこそ、異動者は“格好よく教える先輩”より、“安全に進める相棒”を目指すのが正解です。

次の章では、ここまでのバタバタを抱えたままでも、ちゃんと1か月で馴染んでいくための「自分を守る型」を作っていきます。笑えるまま、ちゃんと楽になる方向へ持っていきましょう。


第4章…それでも現場は回る!~1か月で馴染むための“自分を守る型”作り~

異動して最初の1か月。ここを「気合いで乗り切る期間」だと思うと、だいたい途中で息切れします。何故なら、異動後の疲れって体力だけじゃなく、頭のメモリと心のバッテリーを同時に消費するからです。

利用者さんの情報を覚える。職員の動きの癖を読む。ルールの細部を理解する。新人さんが来れば、ちょっと教える。応援に呼ばれれば、前提を確認し直す。これ、やってることは「毎日、軽い引っ越し」みたいなものです。軽いと言いながら、結構重い。段ボールが無限に出てくるタイプの引っ越しです。

だからこそ必要なのが、“自分を守る型”です。型っていうのは、精神論じゃなくて、忙しい時でも勝手に身体がやってくれる習慣のこと。頑張る力が切れても、型が残っていれば現場で倒れ難くなります。

1か月で馴染む人は最初に「覚える量」を減らしている

意外に思うかもしれませんが、馴染むのが早い人って、最初から全部覚えようとしません。むしろ「覚える量を最初に減らす」んです。

ここでのコツは、覚えることを“情報”ではなく“危険”から入れることです。全員の細かい好みを1日で入れるより、まずは事故に繋がりやすいポイントだけを太く押さえる。その上で、余裕ができたら生活の好みや会話のネタを増やしていく。順番が逆になると、心が先に燃え尽きます。

そしてこれは、新人さんにも通じます。新人さんに教える時も「全部覚えて」じゃなく、「ここだけは外さないで」を共有する方が、結果として安全です。異動者は、教える側になった時も“安全優先の型”を守れると、楽になります。

異動直後の自分を救うのはたった1秒の「止まる癖」

1章でも触れましたが、異動直後に一番効くのは、1秒止まる癖です。利用者さんに手を伸ばす前、移乗の前、食事介助の前、トイレ誘導の前。とにかく、身体が自動運転に入る前に1秒止まる。

ここで自分に掛ける言葉は短い方が良いです。「前提、合ってる?」これだけで良い。頭が疲れている日でも、この短い確認なら入ります。

この1秒がある人は、ミスが減ります。ミスが減ると、気持ちが落ち込み難い。落ち込み難いと、人に聞ける。聞けると覚えるのが早い。結果として馴染みも早い。たった1秒が、連鎖的に自分を守ります。

回されやすい大型現場ほど「自分の境界線」が必要になる

大型事業所で人回しが多いと、異動者は便利な戦力として扱われがちです。これは悪意というより、「助けが必要」という現実です。でも、助ける側が壊れたら、現場はもっと困ります。

だから、境界線が必要になります。境界線って言っても、冷たく断る話ではありません。現場の空気を壊さずに、自分を守る言い方を持つことです。

たとえば、応援要請が来た時に「行けます」と即答する前に、ひと呼吸置いてこう言うんです。「行けます。先に危ないところだけ共有ください」。これで、無防備に飛び込む確率が下がります。

あるいは「今からなら行けます。ただ、この時間帯はこの方の対応があるので、そこだけ代わりを立ててもらえると助かります」と言う。ここでのポイントは、“出来ない”ではなく“安全に出来る条件”を出すことです。現場は忙しいので、条件がある方がむしろ動かしやすいことがあります。

馴染み期間の正体は「信頼の貯金」を作る時間

異動後の1か月って、実は利用者さんの情報を覚える期間でありながら、同時に“信頼の貯金”を作る期間でもあります。

利用者さん側から見たら、職員が変わるのは不安です。声のトーン、距離感、介助の触れ方、話しかけの頻度。全部が変わる。だから、異動直後に大事なのは「完璧な介助」より「安心できる関わり」です。

職員同士も同じです。新しく入ってきた人が、どんな人か分からない。忙しいほど、丁寧に見ている暇もない。だから、信頼は大きい成果で作られるというより、「小さなズレが少ない人」から貯まっていきます。報告が短くて分かりやすい、確認が多い、危険な場面で勝手に動かない、困った時に早めに聞く。こういう地味な動きが、信頼の貯金になります。

そして信頼が貯まると、不思議なことが起きます。周りが助けてくれるようになる。あの「応援入れる?」の言葉も、少し柔らかくなる。仕事が少し楽になる。異動後の1か月は、その助けが自然に起きる土台を作る時期でもあるんです。

ユーモアは“心の安全装置”として使って良い

ここまで真面目に書いてきましたが、最後にもう1つ大事なことがあります。異動直後の1か月、ユーモアは甘えじゃなくて安全装置です。

例えば、自分が混乱していることを笑いに変える。「今日の私は、頭の中が引っ越し中です」と言う。新人さんにも「私もまだ迷子になりかけるから、一緒に地図作ろう」と言う。こういう意図的に角度を替えたユーモアの一言で、場の緊張が少しほどけます。緊張がほどけると、呼吸が戻ります。呼吸が戻ると、目が戻ります。目が戻ると、危険に気づけます。

介護は、気づく仕事です。気づくには、自分の心が潰れていないことが前提です。だから、笑えるところは笑っていい。むしろ笑って、ちゃんと生き残る。それが異動後の1か月の正解だと思います。

次はいよいよまとめで、ここまでの話を「じゃあ結局、異動直後はどう構えるのが一番ラクで安全なのか」に一本化して、読後感をやわらかく着地させます。気持ちよく終わりましょう。

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まとめ…異動は弱さじゃない~最初の1か月は“慣れる仕事”が正解だ~

2月の異動内示って、現場にとっては「予定表に書いてない嵐」みたいなものです。誰が動くかが決まった瞬間から、空気が変わる。廊下の会話が短くなり、休憩室の笑いが少しだけ固くなり、何故かボールペンの芯がよく折れる。ええ、心の圧が物理に出る季節です。

でもこの記事で一番伝えたかったのは、異動後にバタバタするのは“あなたの能力不足”じゃない、ということです。利用者さんが一新する以上、情報は一から。前提が違う以上、身体の自動運転は危険。そこへ大型事業所の人回しが重なると、覚えた前提が育つ前にまたリセットがかかる。さらに4月が来れば、新人さんの季節が合流して、異動者が比較対象にされる春の風物詩まで始まる。そりゃ疲れます。疲れて当たり前です。

だから最初の1か月は、堂々と「慣れる仕事」をして良いんです。慣れる仕事というのは、サボることじゃありません。安全のための確認をすること、前提を合わせること、危険の芽を先に押さえること、自分の頭の中の辞書を作ること。これ全部、現場の安全そのものです。むしろこれが出来ている人ほど、長く強いです。

異動1週目に一番事故りやすいのは、技術より前提のズレでした。だからこそ、たった1秒止まって「前提、合ってる?」と自分に聞く癖が、現場での自分を守ります。大型事業所の人回しがあるなら、応援の最初の短い時間で“危ないところだけ確認する”だけでも違ってきます。新人さんが入ってきて比較の空気が出たなら、「私もまだ覚え途中。一緒に確認しよう」と言える方が、結果として強いです。格好よさより安心。介護は、これが最後に効きます。

そして、最後にユーモアです。異動の季節に笑うことは、現実逃避じゃありません。心の安全装置です。混乱している時に「今日の私は頭の中が引っ越し中です」と言えるだけで、呼吸が戻ります。呼吸が戻ると、目が戻ります。目が戻ると、危険に気づけます。介護は気づく仕事だから、笑いは安全に繋がります

もし今、異動の内示を受けて不安があるなら、まずは1つだけ覚えておいてください。最初の1か月は、慣れなくて普通です。むしろ慣れないことを前提に動ける人が、安全を作れます。焦らず、比べられても背伸びし過ぎず、確認の癖と小さな信頼の貯金を積み上げていけば、現場の空気はちゃんと味方になってくれます。

2月の嵐は、毎年やってきます。でも毎年、ちゃんと春も来ます。今日も現場が回っているなら、それだけで十分すごい。あなたのその働き方が、利用者さんの安心の土台になっています。どうか、自分まで削り過ぎずに。笑いながら、無事に春を迎えましょう。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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