9月のお彼岸レクはじゃんけん外出!~勝ち負けなしで行きたい気持ちで繋がる秋の小さな旅~

[ 季節と行事 ]

はじめに…秋風が「少し外へ」を連れてくる

窓を開けた瞬間、夏とは違う風がスッと廊下へ入り込む。蝉の声が遠のき、空の高さまで少し変わったように感じる頃、秋のお彼岸がやってきます。

秋のお彼岸は、秋分の日を中日として前後3日ずつを合わせた7日間です。お墓参りをする方、仏壇へ手を合わせる方、懐かしい人を静かに思い出す方もいます。ただし、過ごし方は十人十色。信仰や家族関係、体調、育った土地によって、その日の受け止め方は違います。

高齢者施設の行事も、全員で同じことをする必要はありません。お墓へ行きたい方もいれば、近くのお寺まで出かけたい方、庭で秋風に当たりたい方、室内でおはぎを楽しみたい方もいます。

お彼岸レクリエーションで大切なのは、思い出を答えてもらうことではなく、その人が過ごしたい秋を選べることです。

そこで活躍するのが、じゃんけんです。勝った人だけが外出できる……となると、急に秋の風情が勝負の世界へ迷い込みます。お彼岸にまで人生の勝敗を持ち込まなくても良いでしょう。じゃんけんは順番やチームを決める楽しい合図として使い、体調や希望を確かめながら、少人数で出かける形へ繋げます。

和気藹々と手を動かし、「私はグーだった」「出すのが遅れたけど、今のはパー」という声が聞こえたら、出発前から立派なレクリエーションです。目的地へ着くことだけでなく、行き先を選び、準備をし、秋の風を感じる時間そのものが、心に残る小さな旅になります。

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第1章…お彼岸は思い出を試す日ではなく心を結ぶ7日間

秋のお彼岸は、秋分の日を真ん中に置き、その前後3日間を合わせた7日間です。昼と夜の長さが近づく季節に、ご先祖様や亡くなった方へ思いを向け、今ある暮らしに手を合わせます。

けれども、高齢者施設でお彼岸を迎える方の胸の内は十人十色です。

「毎年、家族とお墓へ行った」と懐かしそうに話す方もいれば、遠く離れた故郷を思い出す方もいます。大切な人との別れがまだ痛む方、信仰を持たない方、家族の話をそっと胸にしまっておきたい方もいるでしょう。

お彼岸だから昔話を聞こう、と職員が元気いっぱいに質問を始めると、いつの間にか季節の思い出テストになってしまうことがあります。

「お墓はどこですか?」

「誰と行きましたか?」

「何年前のことですか?」

……そこまで進むと、レクリエーションというより聞き取り調査です。質問する側は悪気ゼロ。むしろ善意満タンなのですが、満タン過ぎると少々こぼれます。

思い出は、尋ねれば必ず言葉になるものではありません。おはぎの香りや、彼岸花の赤、涼しくなった風に触れた瞬間、本人の中だけで静かに甦ることもあります。言葉が出なくても、目を細めたり、手を合わせたり、しばらく窓の外を眺めたりする姿には、その方だけの時間が流れています。

思い出を上手に話せるかではなく、安心して思い出せる空気を作ることがお彼岸レクリエーションの出発点です。

7日間あることも、大きな味方になります。全員を同じ日に集めて同じ話をしてもらわなくても構いません。今日は写真を眺める日、明日はおはぎを味わう日、天気の良い日は庭へ出る日というように、小さな体験をゆっくり重ねられます。

語りたい方の話には和顔愛語(笑顔と思いやりのある言葉)で耳を傾け、話したくない方には静かな時間を守る。そのどちらも立派なお彼岸の過ごし方です。

亡くなった方をしのぶ時間は、悲しさだけを連れてくるとは限りません。「あの人は甘い物が好きだった」「墓参りの帰りに必ずうどんを食べた」と、懐かしい場面から笑いがこぼれることもあります。故人を思う気持ちと今を楽しむ気持ちは、喧嘩をしません。

一期一会の秋の日に、思い出を引き出そうと力むのではなく、フッと心が動ける場所を用意する。そのやさしい余白が、人と人との距離をそっと結んでくれます。


第2章…じゃんけんは勝負より参加の合図にすると楽しくなる

外出する小さなチームを決める時、じゃんけんは場の空気をほぐしてくれます。

「じゃんけん、ポン」

開いた手が少し遅れても、グーなのか握手の準備なのか迷っても、それで良いのです。後出しを見つけて審判が笛を吹く大会ではありません。手を動かし、相手の顔を見て、みんなで笑えた時点で、レクリエーションはもう始まっています。

ただし、勝った方から外出できる仕組みにしてしまうと、参加の楽しさが選別へ変わります。手を思うように動かせない方や、じゃんけんの意味を理解しにくい方が、最初から不利になるためです。

じゃんけんは外出できる人を決める勝負ではなく、みんなが予定作りに参加するための合図として使います。

勝敗は、その日のチーム名や出発順を決める程度に留めると安心です。グーの方は午前のチーム、パーの方は午後のチームと分けても良いでしょう。勝ったら赤い札、負けたら青い札を引く形なら、結果に優劣がつきません。

手を出すことが難しい方には、くじ引きや好きな食べ物選びも向いています。

「りんごとみかん、どちらが好きですか?」

「ぶどうと柿なら、どちらにしますか?」

選んだ果物をチーム名にすれば、「私はみかん組」「柿組は渋い顔をしないように」と、出発前の会話も和気藹々と広がります。秋のお彼岸なのにメロン組が誕生しても、季節外れの反則にはなりません。本人が選べたことの方が大切です。

言葉で答えることが難しい方も、参加できないわけではありません。2つの絵をゆっくり見せ、視線が長く留まった方を選ぶ。手に触れた時の表情や、頷き、瞬きの変化を確かめる。小さな反応を受け止めながら、本人の気持ちを推し量ります。

この時、職員の都合だけで「こちらにしておきますね」と急いで決めないことが大切です。反応を待つ数秒は、進行が止まった時間ではありません。その方が自分の意思を表すための大事な時間です。

当日の体調や移動方法によって、予定した組み合わせを変えることもあります。そこは臨機応変で構いません。最初に決めたチームを守り抜くことより、安全に気持ちよく出かけられる組み合わせを作る方が、ずっと実りがあります。

じゃんけん、くじ、果物選び。方法はどれでも良く、目指すところは同じです。自分も秋の予定に加わっていると感じられれば、外出前のひと時まで楽しい思い出になります。

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第3章…お墓だけが目的地ではない秋の小さな外出計画

秋の空を見上げながら車に乗り、見慣れた道へ少しずつ近づいていく。窓の外に知っている店や山が現れただけで、「この辺りは昔、田んぼだった」と声が弾むことがあります。

お彼岸の外出と聞けば、お墓参りを最初に思い浮かべるでしょう。けれども、全ての方が自分のお墓へ向かえるわけではありません。墓地が遠方にある方、急な坂道や階段がある方、家族との調整が難しい方もいます。お墓そのものがない方や、宗教的な行事を望まない方もいるでしょう。

そのような時は、目的地を無理にお墓へ限定しません。自宅の仏壇へ手を合わせる、馴染みの寺院や神社を訪ねる、近くの公園で秋風を感じる、家族と静かにお茶を飲む。どれも、その方にとって意味があれば立派なお彼岸の外出です。

大切なのは有名な場所へ連れていくことではなく、その方の心が「来られて良かった」と動く場所を選ぶことです。

行き先を考える時は、本人の希望を中心に、家族と施設職員が臨機応変に相談します。「どこへ行きたいですか?」だけでは答えにくい方には、写真や地図を見せながら、「お家の近くと、お寺ならどちらが良さそうですか?」と選択肢を絞る方法もあります。

職員が張り切って壮大な外出案を出したところ、本人から「近所でええよ」と一言。企画書の中では秋の大遠征、本人の希望は車で5分。こちらの気合いだけが先に紅葉していた、ということもあります。

短い距離でも、本人が望んだ場所なら満足感は変わります。玄関先で家の匂いを感じるだけで表情が和らぐ方もいれば、墓地の近くまで行き、車内から手を合わせるだけで気持ちが落ち着く方もいます。外出の形は、1つではありません。

準備では安全第一を外せません。車いすで通れる道か、段差や坂はないか、休める場所やトイレはあるかを事前に確かめます。移動中の姿勢を保つ福祉用具(体の状態に合わせて移動や生活を支える道具)が必要な方は、看護師やリハビリ職などの専門職と相談し、普段から安全性が確認されている方法を使います。

家族には現地で待ってもらい、道案内や休憩場所、水分、手洗いの準備に協力してもらうと動きやすくなります。ただし、久しぶりの帰宅だからと予定を詰め込み過ぎると、本人より先に付き添い職員の息が上がります。参拝、会話、休憩の時間をゆったり取り、余裕のある予定にしておきましょう。

天候や体調によって外出できない日には、施設の庭や玄関先へ出るだけでも構いません。秋の風に触れ、空を眺め、温かいお茶を飲む。遠くまで移動しなくても、室内とは違う季節の手触りが届きます。

目的地の豪華さではなく、自分で選び、誰かと一緒に向かったという体験が心に残ります。秋の小さな旅は、距離では測れない1日になるのです。


第4章…全員一緒より1人1人が選べる安全なレクリエーション

お彼岸の外出は、参加者を大勢集めるほど立派になるわけではありません。3人で出かけても、1人ずつ別の日に出かけても、その方が安心して秋の時間を味わえるなら十分です。

施設では「折角だから全員で」と考えたくなりますが、体調も移動方法も行き先も人それぞれです。車いすを使う方、長く座ると疲れる方、医療的な見守りが必要な方を同じ予定へ当てはめると、出発前から職員の頭の中が大渋滞します。外は秋晴れなのに、事務所だけ低気圧。介護現場では、割りと見覚えのある天気です。

少人数に分けることは参加者を減らす工夫ではなく、1人1人の願いを丁寧に叶える工夫です。

7日間あるお彼岸を生かし、1日に2~3人ほどの小さなチームで出かければ、体調や希望に合わせやすくなります。午前は自宅へ立ち寄る組、午後は近くのお寺へ向かう組、別の日には庭で秋のお茶会を楽しむ組というように、行き先も過ごし方も変えられます。

出発前には、健康状態、移動中の姿勢、服装、水分、排泄の時間を確認します。バイタルサイン(体温・脈拍・血圧など、体の状態を示す数値)だけでなく、「今日は少し眠そう」「朝食がいつもより進まなかった」という普段との違いも大切な手掛かりです。

同行する職員の役割も、先に決めておきます。運転を担当する人、本人の傍で介助する人、体調を見る人、家族や施設へ連絡する人が明確なら、現地で慌てにくくなります。多職種連携(異なる専門職が役割を分けて協力すること)によって、準備は用意周到になりますが、人数を揃えること自体が目的ではありません。本人の状態と行き先に合った体制を考えます。

車いすで通れる道や段差の有無も、事前に実際の経路を確認しておきたいところです。墓地や古い家には細い道、砂利、急な坂が残っていることがあります。日頃使っていない道具や、その場で作った運搬方法に頼らず、本人に適した福祉用具と介助方法を専門職と確認しておくことが安全に繋がります。

家族には、現地の案内、休憩場所、水分、手洗い場などの準備をお願いできます。ただし、「久しぶりに帰れるのだから」と食事会や親戚との面会まで全部盛りにすると、本人の体力が先に閉店します。短い時間でも、手を合わせ、顔を見て、ひと言交わせれば、心に残るひと時になります。

当日の体調や天候によって中止する判断も必要です。予定を変更することは失敗ではありません。玄関先で風に当たる、家族から届いた写真を見る、季節のお菓子を囲むなど、施設内でも別の楽しみ方へ切り替えられます。

「急がば回れ」という言葉の通り、行きたい気持ちを叶えるには、急いで連れ出すより、準備と確認を重ねる方が近道です。全員を同じ場所へ運ぶのではなく、それぞれに合った秋の景色を届ける。その柔軟な発想が、お彼岸の1日を安心と笑顔で包んでくれます。

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まとめ…秋の一歩が家族と施設の距離をそっと近づける

施設へ戻った車の扉が開き、「ただいま」と声がこぼれる。手には何も増えていなくても、その方の表情には、出発前とは少し違うやわらかさが宿っていることがあります。

お彼岸のレクリエーションは、大勢を集めて同じ行事を行うことだけではありません。お墓へ向かう方、自宅の仏壇へ手を合わせる方、近くのお寺を訪ねる方、玄関先で秋風を味わう方。望む過ごし方は千差万別です。

じゃんけんやくじ引きも、参加者をふるい分ける道具ではなく、「自分も予定作りに加わった」と感じてもらうための楽しい入口になります。勝敗よりも、選べたこと、手を動かせたこと、誰かと笑えたことが心に残ります。

遠くまで出かけなくても、自分の気持ちが尊重された時間は、その方だけの大切な秋の旅になります。

外出できた日は、本人や家族の同意を得ながら写真を残すのも良いでしょう。墓前で手を合わせる姿だけでなく、車内で窓の外を眺める横顔や、お茶を飲んでホッとした瞬間にも、その日の物語があります。

ただし、撮影係が張り切り過ぎると、いつの間にか参拝より記念撮影が主役になります。「もう1枚だけ」と言いながら、だいたい3枚増えるのは施設行事の小さなあるあるです。写真の枚数より、本人が落ち着いて過ごせる時間を優先します。

外へ出られなかった方にも、家族から届いた写真を眺める、季節のお菓子を味わう、静かに手を合わせるなど、その方に合った時間を届けられます。予定通りに進むことだけが成功ではありません。体調や気持ちに合わせて形を変えられることも、やさしいレクリエーションの力です。

お彼岸の7日間に生まれるのは、立派な行事の記録だけではありません。「また来られた」「一緒に行けた」「今年も秋を感じられた」という、小さくても確かな喜びです。

その笑顔が家族へ伝わり、家族の安心が職員へ返ってくる。笑門来福の秋は、誰かを無理に笑わせるところからではなく、その人の願いを丁寧に受け止めるところから始まります。

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今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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