3月1日マヨネーズの日~施設で曲者になる白い魔法を理事長&事務長が改造する話~
目次
はじめに…深皿のすみっこで反省してる白い影
3月1日は、マヨネーズの日です。家庭の食卓なら、マヨはだいたいヒーローです。サラダに、トーストに、から揚げに、そして「取り敢えず何かに付けとけば勝ち」という、白い万能感。ところが高齢者施設に来た瞬間、その万能感は少しだけ肩身が狭くなります。
何故かというと、施設のマヨは“自由に暴れさせない”文化があるからです。ドレッシングは深皿で別添え、使う量は慎重、場合によっては「伸ばしてあります」の一言付き。結果、サラダの横で、白い影がちょこんと座っている。まるで反省しているみたいに。
そんな光景を見つめながら、理事長が腕を組みます。「事務長くん、これは……節約の香りがするね?」
事務長は笑顔のまま目が笑っていません。「理事長、マヨは施設では“曲者”なんです。脂も気になるし、好みも体調も人それぞれ。だから別添えにして、安全側に倒して……」
理事長は頷きつつ、白い影を指差します。「しかし、コクが消えておる。サラダが、ただの草になっておるぞ」
ここが今回のお話の出発点です。マヨネーズは、日本に登場してから100年の節目を越え、すっかり食卓の古参になりました。だからこそ、これからは“ドンとかける主役”だけじゃなく、風味付けとコク足しの名脇役として、もっと面白く活躍できるはず。施設でも、工夫次第で「安全」と「美味しい」を両立できるはずです。
理事長と事務長が、深皿の白い影を救い出し、マヨを“第二形態”へ進化させる。3月1日にふさわしい、ちょっと真面目でかなり笑える食卓会議、開幕です。
[広告]第1章…理事長が言う~マヨは節約で薄めるのではなく“事件”である~
理事長は、昼食の配膳ワゴンの前で立ち止まりました。サラダの横に、深皿が1つ。中には、白い影がちょこん。
理事長は言います。「事務長くん……あの白い影、なぜ別室に隔離されているのかね」
事務長は、いつもの“仕事が出来る笑顔”で答えます。「理事長、あれはマヨネーズです。施設では、自由にさせると強いんです。だから別添えにして、必要な人に必要な分だけ、という運用にしております」
理事長は頷きながら、白い影をじっと見つめます。「なるほど。だが……白い影が、反省しているように見えるのは気のせいかね」
施設でマヨネーズが曲者になりがちなのは、味が強いからだけではありません。まず、脂が多いので、体調や好みによっては“重たい”と感じる人もいます。次に、掛け方や混ぜ方で、口の中のまとまりが変わってしまうことがあります。家庭では気にならない小さな違いが、施設では「今日は食べづらい」に直結しやすいんですね。
そしてもう1つ、現場の人ほど気にするのが「皆が同じじゃない」という現実です。元気にパクパク食べる人もいれば、少し咽込みやすい人もいる。塩分や脂の量を控えている人もいれば、卵に注意が必要な人もいる。そうなると、最初から全部に同じ量を掛けてしまうより、別添えで“その人に合わせる”方が安心、という判断になりやすいのです。
理事長は、ここで急に名探偵みたいな顔になります。「つまり事務長、マヨの隔離は、節約というより“平和維持活動”だね?」
事務長は深く頷きます。「はい、理事長。マヨは便利ですが、施設では小さな配慮が大きな安心に繋がります。だから別添え。だから量の調整。ここまでは、分かりやすい正義です」
理事長は、さらに一歩踏み込みました。「だが、もう1つ事件が起きている。サラダが……草になっておる」
事務長の肩がピクリと動きます。「理事長、それは……」
そう、別添えは安全の味方。でも、薄め方や出し方によっては、サラダが“ただの冷たい野菜”になってしまうことがある。食べる人の楽しみが薄くなると、食事の時間がつまらなくなり、結果として食が進み難くなることもあります。
理事長は、白い影を見て宣言しました。「よろしい。安全は守る。だが、コクも守る。事務長くん、マヨは薄めて消すのではない。知恵で変身させるのだ」
事務長は、何故か闘いの前みたいに腕まくりをします。「承知しました、理事長。マヨの第二形態、ここからです」
第2章…事務長の告白~コクが消えた日にサラダはただの草になった~
その日の午後、理事長室に呼び出された事務長は、何故か“会議用の顔”を作って入ってきました。手には、問題の深皿の写真。白い影が写っています。
理事長は写真を机に置き、静かに言います。「事務長くん。君は、あの白い影を……水で伸ばしたね?」
事務長は、観念したように背筋を伸ばしました。「はい、理事長。正確に言うなら、“伸ばす運用が存在する”です。私は……それを止め切れませんでした」
理事長は頷きます。「告白は大事だ。だが、何故、水なのだ。何故、コクの魂を抜くのだ」
事務長は、ここで一度だけ声を小さくします。「理事長、現場って……毎日が“ちょっとずつの調整”なんです。別添えにして、量を控えて、好みを聞いて、体調を見て。そこにさらに“コスト”が絡むと、簡単な方向に流れてしまう。水で伸ばせば、見た目は増える。深皿の底が見えなくなる。『一応は掛けられる』状態になる。そうすると、人は安心するんです。数字じゃなくて、気持ちの問題として」
理事長は、ゆっくりと首を傾げました。「なるほど。白い影の“分量感”で安心してしまう、と」
事務長は苦笑します。「はい。マヨネーズは、調味料なのに存在感が強い。存在感が強いからこそ、存在感を薄めたくなる。矛盾してますけど、現場にはこういう矛盾がよく転がってます」
理事長は、急に真面目な顔で言いました。「しかし事務長くん。水で伸ばすと、それはマヨではなくなる。サラダの楽しみが消える。食事は、ただ栄養を入れるだけの時間ではない。そこに“美味しい”があるから、日常が回るのだ」
事務長は黙って頷きます。多分、その言葉が刺さる人ほど、現場で頑張っている人です。
それでも事務長は、言い訳だけで終わらせませんでした。「理事長、私も分かっています。水で伸ばした日、私ははっきり目撃したんです。サラダが……ただの草になった瞬間を」
理事長は眉を上げます。「草になった瞬間とは」
事務長は遠い目をします。「深皿から、白い液体が静かに流れ、野菜にかかったんです。見た目は白い。でも香りが弱い。口に入れても、コクが来ない。利用者さんが一口食べて、優しく微笑んで言いました。『今日はさっぱりしてるね』と。あれは褒め言葉の形をしていましたが……実質、“味がしない”の翻訳でした」
理事長は、こめかみを押さえました。「優しさが刺さるやつだね」
事務長は力なく笑います。「はい。優しさは、時々、凶器並みです」
ここで理事長が机を軽く叩きました。「よろしい。原因は分かった。では次だ。事務長くん、我々は“コクを戻す”のだ。だが、マヨそのものを増やしてはいけない。施設の事情も守る。体調も好みも守る。その上で、草を料理に戻す」
事務長の目がキラッと光ります。「つまり理事長、マヨを薄めるのではなく、“改造”する。水ではなく、相棒で伸ばす。そういうことですね」
理事長は大きく頷きます。「そうだ。白い影に、再び魂を入れる」
事務長は立ち上がりました。「承知しました。次章で、マヨの第二形態を召喚してみせます」
第3章…マヨの第二形態~ヨーグルト・ごま・豆腐で“主役を降りる”作戦~
理事長はエプロンを着けました。似合ってしまうのが悔しいタイプの人です。
事務長も着けました。こちらは似合い過ぎて、何故か“給食のお兄さん”みたいな安心感が出ています。
調理場の片隅に、深皿が並びました。あの白い影が、今日は反省ではなく、出番待ちの顔をしています。
理事長は言います。「よし。今日のテーマは、“マヨを増やさずにコクを増やす”だ。言い替えれば、主役を降りてもらう」
事務長は頷きました。「はい。マヨがセンターに立つと、脂とカロリーが議題になります。でも、香りとコクの道具にすると、議題は“美味しさ”に戻ります」
理事長は深皿を指さします。「しかし事務長くん。水で伸ばすと草になる。では何で伸ばす」
事務長は即答しました。「相棒です、理事長。コクの相棒を足します。水は“量”だけ増えますが、相棒は“味の芯”を支えます」
ここから始まるのが、施設のマヨ改造、通称「第二形態計画」です。
第一形態「ヨーグルトと組んで軽やかにコクを残す」
まずは無糖ヨーグルト。理事長は少し不安そうです。「事務長くん。ヨーグルトは酸っぱいのではないか」
事務長は落ち着いています。「理事長、酸味は敵ではありません。むしろ、マヨの酸味と手を繋いで“まろやか”になります」
白い影に、白い相棒を加える。白と白の握手。
混ぜると、質感が変わります。重たさがほどけて、でもコクは残る。理事長がスプーンで少し舐めて、目を丸くしました。「ほう……軽い。なのに、ちゃんと“ドレッシング”だ」
事務長は頷きます。「そうなんです。水で薄めた時の虚無感が出にくい。別添えにしても、サラダが負けません」
理事長は満足そうに言いました。「名付けよう。『白い影、更生ルート』」
第二形態「すりごま+出汁で香りの背骨を立てる」
次は、すりごま。理事長が小声で言います。「事務長くん。ごまは強い。香りで全てを支配するのでは」
事務長は笑いました。「理事長、それが狙いです。水で伸ばすと味が消えます。でも、ごまは消えません。むしろ“戻します”」
少量の出汁を加えると、香りが立ちます。ここで大事なのは“ちょっとだけ”です。施設の味付けは、強さよりも“毎日食べられる”が正義。
理事長がまた味見をして、頷きました。「うむ。これは草が料理に戻る。戻り方が上品だ」
事務長は言います。「ごまのコクは、マヨの量を増やさなくても満足感を支えます。香りがあると、ひと口目の印象が変わるんです」
理事長は腕を組みます。「ひと口目の印象……それは、人生と同じだね」
事務長は、深く突っ込まずに静かに頷きました。ここで突っ込むと調理が止まります。
第三形態「豆腐でディップ化して別添えでも勝つ」
最後は絹豆腐。理事長が言いました。「事務長くん、豆腐は善良過ぎる。マヨの曲者感を薄めてくれるだろうが、味が弱くならないか」
事務長は余裕です。「理事長、豆腐は“舌ざわりの土台”です。味を足すというより、形を整える。別添えで出しても、絡みが良くなるんです」
混ぜると、トロリとしたディップになります。スプーンで掬って、野菜にチョン。これなら深皿でも、サラダが勝てる。
理事長は頷きました。「なるほど。これは“白い影”ではない。“白い盾”だ」
事務長は誇らしげに言います。「はい。盾があると、食べやすさも安定します。『掛ける』より『付ける』に近いので、量の調整もしやすいです」
理事長はここで、急に大事なことを言います。「よし。これで分かった。マヨを減らす=味を諦める、ではない。マヨの役割を変えるのだ」
事務長は笑顔で答えました。「はい。主役にすると議題が増えます。でも名脇役にすると、議題が“美味しい”に戻ります」
調理場の隅で、深皿が静かに誇らしげに光っていました。
かつて反省していた白い影は、もう影ではありません。形を変え、役割を変え、草を料理に戻すための“手札”になったのです。
理事長は手を叩きます。「次は世界だ。事務長くん、マヨは日本だけの問題ではない。世界ではどう楽しまれているのか、会議を開こう」
事務長はうなずきました。「承知しました、理事長。『世界マヨ会議』、開催します」
第4章…世界マヨ会議~ロシアとアメリカに学ぶ“マヨの楽しみ方”~
理事長室に、何故か地球儀が置かれました。普段は誰も触らないのに、この日に限ってピカピカです。
理事長が宣言します。「事務長くん、我々は今から世界へ出る。机の上で」
事務長は、資料の束を抱えて頷きました。「承知しました。題して『世界マヨ会議』です。議題は1つ。マヨネーズは、国が変わると性格が変わる」
理事長は目を細めます。「性格が変わる……それはつまり、施設での扱い方も変えられるということだね?」
事務長はにっこりします。「はい。マヨを“同じもの”だと思うと、脂と量の話で止まります。でも“文化”として見ると、使い道の話に広がります」
会議の最初に呼ばれたのは、ロシア代表(イメージ)です。理事長はそれを「寒さに強いコクの戦士」と呼びました。
ロシアの食卓では、マヨはサラダの“仕上げ”というより“骨組み”になっている、と語られがちです。具材をまとめ、食べごたえを作り、冬を乗り切るエネルギーの象徴みたいな顔をしている。理事長は頷きます。「なるほど。マヨが主役でも、世界は回っている」
次はアメリカ代表(イメージ)です。理事長はこれを「パンと肉に寄り添う社交家」と呼びました。
アメリカのマヨは、サンドイッチやバーガーで“繋ぎ役”として働く印象が強い。具材と具材の間で、乾燥を防ぎ、舌触りをまとめ、味の角を丸くする。派手に見えないけど、いないと困るタイプです。事務長が言います。「理事長、ここが大事です。主役じゃなくても、マヨは堂々と存在できる。つまり我々の『第二形態』は、世界基準でも立派に通用します」
理事長は、そこで急に納得顔になります。「ロシアは“主役で勝つ”。アメリカは“土台で勝つ”。なら日本はどうだね?」
事務長は少し誇らしげに答えました。「日本は“変身で勝つ”です。マヨをそのまま使うだけじゃなく、和風にも洋風にも寄せられる。例えば、ごまや出汁で別人になれますし、ヨーグルトで軽やかにもなれる。マヨが100年も生き残ったのは、この変身力があったからだと思います」
理事長は腕を組み、地球儀をくるりと回します。「つまり事務長くん。施設のマヨは、反省する必要がない。役割を選べば良いのだ」
事務長は深く頷きます。「はい。マヨが曲者になるのは、性格が悪いからじゃありません。出番の設定が合っていないだけです」
ここで理事長が、会議を“現場に着地”させに来ました。「よし。世界を知った。では施設の食卓で、どう遊ぶ?」
事務長は待ってましたとばかりに答えます。「理事長、マヨを主役にせず、でも楽しみは主役にします」
施設で出来る「世界マヨ旅」~深皿はパスポートになる~
例えば、深皿別添えという運用はそのままに、味の方向だけ“旅”にしてしまう。いつもの白い影が、今日は旅券を持った白い案内人になるわけです。
1つはヨーグルトと組んだ、軽やかなタイプ。口当たりが優しく、野菜がスッと食べやすくなるので「今日はさっぱり」ではなく「今日は気持ち良い」に変わりやすい。
もう1つは、ごまと出汁で香りの背骨を立てたタイプ。少量でも満足感が出やすく、草が料理に戻る速度が速い。
そして、アメリカ代表に敬意を表して、具材に寄り添う“繋ぎ役”の発想を借りるなら、刻んだ野菜やたまごのサラダに少量混ぜて、しっとり感を作る方向が合います。別添えで「掛ける」より、予め少しだけ「和える」。これだけで、ひと口目の印象が変わります。
理事長は、深皿を見つめて言いました。「深皿が、ただの隔離じゃなくなる。パスポートになるのか」
事務長は笑います。「はい。別添えは、節約の道具にもなります。でも同時に、個別対応と楽しみを両立できる道具でもあります。だからこそ、白い影を“薄めて消す”より、“役割を変えて生かす”方が、現場は上手く回ります」
理事長は地球儀に軽く手を置き、最後にこう締めました。「世界は広い。マヨの生き方も広い。なら施設のマヨも、もう反省しなくて良い。今日からは、名脇役として堂々と働いてもらおう」
事務長は深皿を抱え、頷きます。「承知しました、理事長。次は最終章で、白い影に“100年目の就職先”を用意します」
まとめ…マヨは100年目で施設の味方になる
理事長は、最後にもう一度だけ深皿を見つめました。あの白い影が、もう“反省している調味料”に見えないのが不思議です。むしろ、堂々と出番を待っている。施設の食卓って、こういう小さな変化で空気が変わることがあります。
そもそも、マヨネーズが施設で曲者になりやすいのは、性格が悪いからじゃありません。脂やカロリーの話が絡みやすいこと、体調や好みに個人差が大きいこと、そして別添え運用で安全を守ろうとすると“量の安心”に引っぱられて水で伸ばしたくなること。あとお金を含む現場の都合が重なると、白い影はいつの間にか薄まり、コクが抜け、サラダは草になってしまう。
でも、今日の会議で分かりました。マヨは薄めて消すものではなく、役割を変えて生かすもの。主役に立たせると議題が増えるけれど、名脇役にすると食卓がやさしく回り出す。ヨーグルトで軽やかに、ごまで香りの背骨を立てて、豆腐で舌ざわりの盾を作る。どれも「マヨを増やさないのに、満足感を増やす」ための変身でした。
世界に目を向ければ、マヨの生き方はさらに自由です。主役として堂々と料理をまとめる国もあれば、パンや具材に寄り添う“繋ぎ役”として働く国もある。だから日本のマヨが、アレンジで姿を変えながら長く愛されてきたのも自然なことなんだと思います。100年続いた調味料って、要するに「変身が上手い」ということです。
理事長は最後に言いました。「事務長くん。白い影は、反省する必要がなかった。出番を用意してやればいいだけだった」
事務長は笑って答えます。「はい。別添えは隔離じゃなくて、個別対応と楽しみを両立するための舞台でした」
3月1日、マヨネーズの日。
今日は、マヨをドンとかけて勝つ日ではなく、マヨを少しだけ賢く使って、食卓を楽しくする日。深皿の白い影が“薄まって消える”のではなく、“変身して活躍する”日にしてみると、施設のサラダはちゃんと料理に戻ってくれます。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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