「日による」じゃ伝わらない!~時間で違う体調の伝え方は服薬の波や夕方の崩れに発作まで~
目次
はじめに…「今日は元気」なのに「昨日は寝返り不可」…説明する側が先に倒れそう問題
認定調査で「日によるんです」——このひと言、言った側は正直で、聞いた側は困ります。だって本当なんですもん。元気に見える日がある。普通に歩ける時間がある。笑って会話も出来る。ところが別の時間帯になると、急に動きが止まる。別の日には寝返りすら難しい。家族の目線も、支援者のメモも、調査員のペン先も、「今、目の前の状態」に引っ張られやすいのに、生活って目の前だけで出来ていない。ここが、波のある人の説明を難しくしています。
特に厄介なのが、「日」だけでなく「時間」で切り替わるタイプです。同じ日なのに、午前と午後で別人みたいになる。服薬の効き目が出るまでの間は動作が固く、効いてくると杖で外出できるくらいに戻る。ところが切れてくると、立ち上がりが危なくなり、向き直りでふらつき、トイレの一連の動きが急に難しくなる。さらに体調が落ちると、怖い訴えが増えて声かけが通り難くなり、家族が安全確保に追われる。こういう波は、「日による」の一言だけだと、霧の中に消えます。霧の中に消えると、読み手は都合の良い方へ解釈してしまう。元気に見えたら「大丈夫そう」に寄り、寝込んでいたら「ずっと大変そう」に寄る。どちらも半分は合っていて、半分は外れる。だからこそ、言葉の型が必要になります。
ここで大事なのは、上手に話すことではありません。格好良くまとめることでもありません。必要なのは、生活の映像が浮かぶ順番で置くことです。「どの時間帯(または服薬の前後)に」「何が出来て」「どこで止まって」「その時、誰の手が要るのか」。これを短い文章で並べる。さらに「良い日と悪い日の落差があるなら、最後に一文だけ足す」。たったこれだけで、波は霧じゃなくなります。読み手が、頭の中で一日の流れを再生できるようになります。
このテーマは、説明する側の心も救います。波のある人の家族は、日々の振れ幅に振り回されて疲れています。支援者も、状況が変わり過ぎて記録が伸びます。調査の特記事項が何枚にもなると、「書けば書くほど伝わらない」感覚に陥ることさえある。けれど、波には“型”があります。型が見えると、文章の骨格が決まり、長くなる理由もはっきりします。読む側も、納得しやすくなります。
この先の記事では、「時間で変わる波」を主役にして、最後に「日ごとの落差」を補助で添えるやり方を、読み物として楽しく、でも実務で使える形に整えていきます。服薬の波、夕方に崩れる波、発作みたいに急に落ちる波、疲労で徐々に落ちる波。どれも、言葉の並べ方が決まれば、伝え方はグッとラクになります。
さて、まずは深呼吸を1つ。カレンダーが裏切ってくる相手には、こちらも“時間割”で対抗しましょう。次の章から、波を霧にしないための「2階建ての考え方」を、いっしょにほどいていきます。
[広告]第1章…波の正体は2階建て~同じ日の上下(時間帯)と日ごとの落差(良い日/悪い日)~
波のある人を説明する時、まず頭の中の地図を整理しておくと、文章がグッと書きやすくなります。私が現場で一番助けられた考え方は、波を「2階建て」にして見ることです。1階は“同じ日の中で上下する波”。2階は“日ごとにガクッと落ちる日が混ざる波”。この2つを分けるだけで、「日による」の霧が薄くなります。
1階の波、つまり時間帯で切り替わる波は、いわば“同じ家の中で照明が変わる”ようなものです。朝は立ち上がりが重い、昼は少し動ける、夕方になると疲れてふらつく、夜は不安が強くなって声掛けが通り難い。服薬が関わる人だと、服薬の前後で動作や表情が切り替わることもあります。調査の場や支援の相談で困るのは、ここが見え難いからです。たまたま明るい時間帯に会うと「元気そう」に見え、暗い時間帯に当たると「ずっと大変そう」に見える。どちらも一部は合っているのに、全体像としてはズレる。だから、1階の波は「時間軸」で語るのが得意です。朝・昼・夕・夜、または服薬前後。この軸で話すと、読み手の頭に日常の流れが再生されます。
2階の波、つまり日ごとの落差は、別の種類の難しさがあります。時間帯でどうにか説明できる日が多い一方で、たまに「今日は丸ごと別世界」という日が混ざる。前日までは杖で外に出ていたのに、翌日は寝返りが難しい。会話が通っていたのに、急に不安や混乱が増えて安全確保が優先になる。こういう日があると、家族は生活が“予定”では動かなくなりますし、支援者の記録も長くなります。ここを時間軸だけで書こうとすると、却って苦しくなります。何故なら、その日は朝も昼も夕も夜も、全部が落ちているからです。だから2階は、「良い日と悪い日が混ざる」という事実を、最後に短い一文で添えるのが向いています。短い一文で良いのに、これが入っていないと「たまたま良かった日」だけが真実みたいに扱われやすい。逆に「たまたま悪かった日」だけで判断されやすい。どちらも避けたいですよね。
ここで大切なのは、2階建てのうち、どちらを主役にするかを決めることです。多くのケースでは、主役は1階、補助が2階になります。つまり、基本は時間軸で組み立てて、最後に日ごとの落差を一文だけ足す。これが読み手に優しい形です。理由は簡単で、人は「流れ」があると理解しやすいからです。朝から夜までの物語が見えると、「この時間帯は見守りが要る」「この時間帯は少し自分で出来る」と整理できる。一方で、日ごとの落差は情報として重要でも、最初から全面に出すと“全部不安定”に見えてしまい、読む側が掴み難くなります。
では、主役を決める時、何を見れば良いのか。私はいつも、頭の中でこう問い掛けます。「その人の暮らしは、時間割で説明できる日が多いか」「それとも、丸ごと落ちる日が一定の割合で混ざるか」。時間割で説明できる日が多いなら、時間軸を太く書く。丸ごと落ちる日が一定の割合で混ざるなら、最後に“落ちる日の存在”を必ず入れる。これだけで、文章の骨格が決まります。骨格が決まると、特記事項が伸びる人でも、読んだ人が迷子になり難い形に整えられます。
もう1つ、提案として、波の説明は「人の感想」より「生活の切り替わり」を先に置くと、読みやすくなります。「今日は調子が悪かった」だけだと、読み手は想像で補うしかありません。そうではなく、「服薬後は動ける時間があるが、切れてくると立ち上がりと方向転換が危なくなる」「夕方以降は不安が増えて声掛けが通り難い」「悪化した日は終日臥床となり寝返りも困難になることがある」。こういう切り替わりの並べ方なら、生活の映像が勝手に立ち上がります。映像が立ち上がれば、支援の必要度も伝わりやすい。家族の大変さも、読んだ人の心に届きやすい。結果として「日による」の霧が、ちゃんと輪郭を持ちます。
次の章では、この1階の波、つまり「時間で書く」技術を中心に掘ります。服薬の前後、朝夕、疲労、夕方以降の崩れ。ここを言葉の型にしてしまえば、波は説明できるものになります。説明できるようになると、家族の打ち合わせもラクになりますし、当日の受け答えも落ち着きます。霧が晴れると、こちらの息も深くなります。
第2章…「時間で書く」と急に伝わる~服薬前後・朝夕・疲労で切り替わる人の言葉の作り方~
波のある人の説明で、読み手が一番迷子になりやすいのは、「状態が変わる瞬間」が文章の中で行方不明になる時です。家族としては「朝と夕方で別人みたい」「薬が効いてる間は動ける」「疲れてくると急に危ない」と分かっているのに、いざ言葉にすると「日による」で終わってしまう。これは、怠けているわけでも、説明が下手なわけでもありません。波の説明は、カレンダーより“時間割”の方が向いているだけです。
時間割にする、と言っても難しく考える必要はありません。要点は「切り替わりの目印」を先に決めることです。目印はだいたい3種類に分かれます。1つは「時間帯」(朝・昼・夕方・夜)、1つは「薬の前後」(服薬してから効いてくるまで/効いている間/切れてくる頃)、もう1つは「疲労」(動いた直後は平気だが、しばらくすると崩れる、夕方に落ちる)です。ここを文章の最初に置くだけで、読み手の頭に“1日の地図”が出てきます。地図が出てくると、後ろに続く話がすんなり入ります。
では、実際の書き方です。おすすめの骨格は、短い順番で並べることです。「いつ(時間帯/薬の前後)」「その時間に出来ること」「その時間に難しいこと」「その時に必要な見守りや介助」「危ないポイント」。この順に置くと、文章が自然に整います。ここで大事なのは、出来る話から入っても良いし、難しい話から入っても良いけれど、必ず“同じ時間帯の中でセット”にすることです。朝の話をしているのに、急に夜の話が混ざると、読み手は頭の中で時間旅行を始めてしまいます。時間旅行が始まると、理解が遅れます。読者さんが疲れます。なので、ひと区切りは「朝はこう」「夕方はこう」と、棚に入れる感じが良いんです。
服薬の波が大きい人は、時間帯より「薬の前後」を主役にした方が伝わります。ここは現場感が出るところなので、文章にしてしまいましょう。「服薬後、約30分ほどで動きが軽くなり、その後2〜3時間は屋内移動や更衣が自分で出来ることが多い。しかし効果が切れてくると動作が遅くなり、立ち上がりと方向転換でふらつきが増え、トイレ動作は見守りや一部介助が必要になる」。こういう流れです。ここでのコツは、「良い時間」と「悪い時間」を必ず同じ段落に入れることです。良い時間だけを書くと“元気な人”に見え、悪い時間だけを書くと“ずっと大変な人”に見えます。波がある人は、その両方が同居しているから難しいのに、文章が片方だけだと、読み手は片方の世界に住み始めます。だから同居させます。
さらに、精神的な揺れが重なる人は、「怖い訴え」の細部を増やすより、「その瞬間に何が出来なくなるか」を短く置くと伝わりやすいです。「不安や恐怖の訴えが強くなる時間帯があり、声掛けが通り難く安全確保が優先となるため、移動や更衣に通常より時間を要する」。これだけで、家族が大変になる理由が読み手に届きます。細かい情景は、必要なら後で補足できますが、まずは生活の困りごととしての形を整える。これが時間軸の文章を読みやすくします。
時間帯の波が中心の人は、「朝の弱さ」「夕方の崩れ」を先に押さえると文章が締まります。朝は血圧や筋力の立ち上がりが遅くてふらつく人がいますし、夕方は疲労で注意力が落ちて転倒が増える人もいます。認知の揺れがある人は、夕方から夜にかけて不穏が出やすくなることもあります。こういうタイプは、「朝は立ち上がりと歩き出しが不安定で見守りが必要、日中は短距離の移動は可能、夕方以降は疲労でふらつきが増えトイレ動作に介助が要る」と、素直に時間の順番で書くだけで、読み手に映像が出ます。映像が出れば、「見守りってどれくらい?」という疑問にも答えやすくなります。見守りは、手を出さない時間があっても目を離せない、という点が本質なので、「夕方以降は転倒が心配で目を離せない時間が増える」と置けると、実態に近づきます。
疲労で崩れるタイプは、時間帯より「活動の前後」で書くのが綺麗です。「外出や入浴などの後は疲労が強くなり、その後数時間は動作が遅くふらつきが増える」「短時間の家事動作は可能だが、連続すると急に動けなくなり座り込みが増える」。こう書くと、読み手は「疲れたらダメ」ではなく、「疲れ方にパターンがある」と理解できます。パターンがあると、支援の組み立てもしやすくなりますし、家族も説明がラクになります。
ここで、新しい提案を1つ入れます。時間軸の文章が上手くいかない時は、「時計の針」を文章に持ち込むより、「合図」を文章に持ち込むと楽です。合図というのは、「服薬後」「食後」「夕方以降」「入浴の後」「外出の後」「眠前」みたいな生活の節目です。「昼の2時」と言い切れないなら、「昼食後しばらくは動けるが、夕方に近づくとふらつきが増える」で十分です。現場の暮らしは、分刻みでは動いていないことも多いので、無理に時計に寄せなくても大丈夫。節目で切れば、伝わります。
そして、時間軸で書いたら、最後に必ず一行だけ“日ごとの落差”を置く準備をしておくと、後がラクになります。第3章で詳しくやりますが、ここで先にコツだけ言うと、「時間軸で説明できる日が多い。しかし、時々、終日臥床となり寝返りも困難な日が混ざる」。この一行があるだけで、「今日は元気でしたね」に引っ張られ過ぎるのを防げます。逆に、たまたま悪い日に当たった場合も、「いつもこうではないが、こういう日が混ざる」と整理できます。波の説明は、良い日か悪い日かの勝負ではなく、両方を同じ文章に住まわせる作業です。住まわせる、というと家賃がかかりそうですが、言葉の中なら家賃は無料です。だから遠慮なく同居させましょう。
次の章では、この「最後の一行」を、短く、誤解が減る形にする方法を掘ります。頻度、持続、最悪点、危険。この4つをどう置くと、波が霧にならないか。文章を短くしても伝わるコツを、楽しくまとめていきます。
[広告]第3章…“日による”を捨てずに短く入れる~最後の1行で誤解を減らす「頻度/持続/最悪点」~
第2章で、波の主役は「時間(時間帯や服薬前後)」にすると伝わりやすい、という話をしました。ここまで出来ると、説明の8割は片付きます。ところが、残りの2割が曲者です。時間割が綺麗に書けているのに、読み手が「つまり元気な人だね」と受け取ってしまうことがある。逆に、たまたま悪い日に当たって「ずっとこの状態だね」と思われてしまうこともある。どちらも、説明した側としては「いや、そうじゃないんだよ…」と心の中で湯のみを握りつぶしたくなる瞬間です。
このズレを減らすのが、第3章の主役である“最後の1行”です。時間軸の説明が「流れ」なら、最後の1行は「保険」です。車で言うならシートベルト。してもしなくても走れるけど、あると生存率が上がるやつです。文章も同じで、最後の1行があるだけで、受け手の解釈が極端に寄り難くなります。しかも、この1行は長文である必要がありません。むしろ短い方が効きます。何故なら、短いほど読み手が“要点”として受け取るからです。
では、その1行に何を入れるのか。コツは「3点セット」です。頻度、持続、最も厳しい状態。この3つを、短く置く。これだけで、日ごとの落差が霧になりません。
頻度は、「どれくらい混ざるか」を示します。「時々」「たまに」は便利ですが、便利過ぎて中身が抜けやすいので、「週に何回くらい」「月に何回くらい」「月のうち何日くらい」といった“目安”を添えると安定します。正確な回数でなくても大丈夫です。暮らしは統計ではないので、目安で十分。ただ、目安があると読み手は安心します。「たまに」が「年に1回」なのか「週に3回」なのかで、頭の中の映像がまるで違うからです。
持続は、「いったん落ちたらどのくらい続くか」です。波のある人は、落ちる瞬間が目立ちますが、本当に大変なのは“落ちている時間の長さ”だったりします。短時間なら見守りで済むこともある。数時間なら予定をズラす工夫で耐えられることもある。半日や終日だと、生活そのものが止まる。なので、「悪い状態が数時間続く」「半日程度続く」「終日続くことがある」と、ざっくりでも置けると読み手の理解が揃います。
そして最も厳しい状態。ここが“決め手”です。何故なら、波の説明で読み手が迷う時、だいたい「最低ラインがどこか分からない」からです。最低ラインというのは、「この人が一番困る時、何が出来なくなるのか」です。寝返りが難しい、立ち上がれない、トイレ動作が全介助になる、声かけが通り難く安全確保が最優先になる。こういった“出来なくなること”を短く置くと、波の輪郭が締まります。ここで情景を盛り込み過ぎると1行が太り過ぎるので、「行動として何が難しくなるか」に寄せるのがコツです。
この3点セットを、時間軸の説明の最後にそっと足す。文章としては、こんな感じの形が扱いやすいです。引用みたいな形で置きますが、実際は特記事項でも家族のメモでも、このまま使えます。
「上記の時間帯の波に加え、月に2〜3日ほど終日動作が低下し、寝返りや起き上がりが困難となり排泄や更衣は全介助を要することがある。」
これで、頻度(2〜3日)、持続(終日)、最も厳しい状態(寝返り・起き上がり・排泄・更衣)が1行に入ります。読み手が「元気な時間帯」だけを見て判断し難くなります。
パーキンソン病のように服薬の波が大きい人なら、最後の1行に“薬が絡む落ち方”を混ぜても良いです。ただし、薬の話を細かく書くより「落ちた時の困りごと」を先に置く方が、読む側が迷いません。文章の形としてはこうです。
「服薬前後で動作に波があるが、状態が崩れる日は終日臥床となり、寝返りも困難で介助量が増えることが月に数回ある。」
時間軸(服薬前後)が前提にありつつ、日ごとの落差が最後の1行で固定されます。
肝性脳症のように意識や認知が揺れるタイプは、「最も厳しい状態」の書き方を少し工夫すると安全です。怖い訴えや混乱の細部を増やすより、「声掛けが通り難い」「安全確保が優先」「介助に時間がかかる」に寄せると、読み手が生活支援の話として受け取りやすい。こういう形が収まりが良いです。
「体調悪化時は会話の噛み合いが低下し、声かけが通り難く安全確保が優先となるため、移動や排泄の介助に時間を要する状態が半日〜終日続くことが月に数回ある。」
頻度(数回)、持続(半日〜終日)、最も厳しい状態(声かけ困難・安全確保・介助時間増)が1行に入ります。
ここまで読むと、「結局、最後の1行が長くなるのでは?」と思うかもしれません。ところが実際は逆で、最後の1行を固定できると、前の文章が短くなります。何故なら、時間軸の説明で“言い訳の追記”をしなくて済むからです。「でも悪い日もあって…」を、毎段落に入れる必要がなくなる。最後に1回だけ置けば良い。文章が引き締まり、読み手も疲れません。説明する側も、息が続きます。
もう1つ、新しい提案として「最後の1行が作れない時の逃げ道」も用意しておきます。頻度が数えられない時、持続が読めない時、最も厳しい状態が揺れる時。こういうケースもあります。その時は、数字を無理に出すより、「よくあるパターン」と「最も困るパターン」を分けて書くと安定します。言い方としては、「多くの日は時間帯で上下するが、時折、終日大きく低下する日がある」といった形です。目安が置けないなら、構造だけでも置く。それだけで霧は薄くなります。
第3章の結論はこれです。時間軸で伝えた後に、「頻度/持続/最も厳しい状態」の3点セットを最後の1行に収める。これが出来ると、「日による」は便利な逃げ言葉ではなく、役に立つ情報になります。次の第4章では、特記事項が長くなりがちなケースほど効く「前触れ➡転落➡介助」の型を、パーキンソン病や肝性脳症のような“波が深い人”を題材に、読み物としてかつ、でも実務で使える形に整えていきます。
第4章…特記事項が長くなる人の整理術~パーキンソン病・肝性脳症に学ぶ「前触れ➡転落➡介助」の型~
ここまでで、「波は2階建て」「主役は時間」「最後の1行で日ごとの差を押さえる」という骨格が出来ました。ここから先は、いよいよ“長文化する人”の話です。波が深い人は、どう頑張っても文章が伸びます。伸びるのは悪ではありません。むしろ、伸びる理由がある。問題は、伸びた文章が読み手に届かず、本人と家族の苦労が霧の中に消えることです。そこで必要になるのが、第4章の整理術、「前触れ➡転落➡介助」の型です。
この型は、簡単に言うとこうです。まず「落ちる前に何が起きるか(前触れ)」を置き、次に「何がどんな風に崩れるか(転落)」を置き、最後に「結果として何の介助が増えるか(介助)」を置く。たったこれだけで、長い文章が“物語の順番”になります。物語の順番になると、人は読むことが出来ます。読むことが出来ると、理解が揃いやすい。つまり、長文化する人ほど、この型が効きます。
パーキンソン病のような服薬のオン・オフが激しい方は、まさにこの型がハマります。前触れは何か。これは生活の節目に隠れています。「服薬時間がずれる」「食事と薬のタイミングが噛み合わない」「睡眠が乱れた」「外出や入浴で疲れた」「便秘が続いた」など、本人や家族が体感している“いつものサイン”が前触れです。これを文章の最初に置くと、読み手は「なるほど、落ちる理由があるんだ」と理解します。理由が見えると、落ちた状態を“本人の気合不足”として誤解し難くなります。これは大切です。
次に転落。ここは「何が出来なくなるか」を工程で書くのが相性抜群です。立ち上がり、方向転換、歩き出し、トイレの一連動作、更衣、寝返り。こういう動作のどれが崩れるのか。時間帯や服薬前後が絡むなら、第2章の時間割の書き方と合体させます。「服薬後は杖で短距離の移動が可能だが、切れてくると動作緩慢が強くなり、方向転換で小刻み歩行となり転倒リスクが上がる」。これが転落の骨格です。
そして介助。ここで書くべきは「家族が何をしなければならなくなるか」です。波が深い人の本当の大変さは、介助の種類が増えることだけでなく、介助の“準備と見守り”が増えることです。転倒の心配で目が離せない、声掛けが通り難く安全確保が優先、トイレが間に合うかの見張り、服薬管理の確認。こういう“手を出さない時間の緊張”が家族を疲れさせます。ここを短く置けると、読み手は「介助量」という言葉の中身を想像できます。想像できると、文章が生きます。
さらに、パーキンソン病では精神症状が絡むことがあります。幻視や被害感が出ると、家族が手を付けられない時間が生まれます。ここでの書き方のコツは、怖い情景を増やし過ぎず、生活支援としての困りごとに寄せることです。「恐怖の訴えが強く声掛けが通り難い」「興奮が見られ安全確保が優先になる」「介助に通常より時間を要する」。こう置くと、読み手は“介助が増える理由”として理解します。細部を増やすと文章が膨らみ、読み手が疲れます。必要なのは、読み手が理解できる形に整えることです。
次に肝性脳症。こちらは波の出方が違います。服薬のオン・オフというより、代謝や体調の揺れ、便秘や脱水、感染などが引き金になることが多く、意識や認知が急に揺れます。だから前触れは、「便秘が続く」「食欲が落ちる」「昼夜逆転が進む」「会話の反応が鈍い」「いつもより眠そう」など、家族が気づきやすいサインが中心になります。これを置くと、読み手は「突然変わった」のではなく「変わる前の段階がある」と理解できます。段階があると、介助側の緊張も説明できます。
転落は、「会話の噛み合いが悪くなる」「段取りが崩れる」「場所や時間の見当が乱れる」「急に不穏になる」といった形になります。ただ、ここも第3章で触れた通り、状態名を並べるより「その結果、何が起きるか」に寄せると文章が締まります。声かけが通らず立ち上がってふらつく、トイレの動作が途中で止まる、薬の内服が自己判断になる、夜間の動きが増える。こういう具体に寄せると、読み手は“生活の事故”を想像できます。想像できると、見守りの必要性が伝わります。
介助は、「安全確保が優先になる」「見守り時間が増える」「排泄や更衣が一気に手厚くなる」「移動に付き添いが要る」「内服管理が重要になる」など、家族が実際にやることに落とします。肝性脳症の場合、転落が起きると生活の組み立て自体が変わるので、「半日〜終日」みたいな持続も一緒に置くと、波が霧になりません。
ここで、提案をもう1つ入れます。型を使う時は、文章の中に“合図”を埋め込むとさらに読みやすくなります。合図というのは、「服薬後」「夕方以降」「外出後」「便秘が続くと」「眠れない夜の翌日」などの節目です。節目があると、読み手は「波のスイッチ」を見つけやすい。見つけやすいと、文章が頭に残ります。頭に残ると、当日の受け答えにも使えます。記事としても実用性が上がります。
そして、もう1つ大事なこと。長文化する人は、どうしても「全部書きたくなる」んです。分かります。現場が濃いから。書かないと伝わらない気がするから。けれど、全部を書くほど読み手は拾えなくなります。そこでおすすめなのが、「核心を3つだけ残す」やり方です。核心は、「落ちる前触れ」「落ちた時の最悪点」「その時に増える介助」。この3つさえ残せば、他の細部は短くしても、生活の大変さは伝わります。特記事項が5枚になる人ほど、核心の3つが見えれば、文章の整理が可能になります。
ここまでを、1つの文章にすると、こういう形に収まります。説明のために一続きで書きますが、あなたならこのまま現場文に落とせるはずです。
「服薬時間のズレや疲労の蓄積を契機に動作が急に低下し、服薬効果が切れてくる時間帯は立ち上がりと方向転換でふらつきが増える。悪化時は終日臥床となり寝返りも困難で、排泄・更衣は全介助を要することが月に数回ある。加えて不安や恐怖の訴えが強い時間帯があり声掛けが通り難く、安全確保が優先となるため介助に時間を要する。」
この形なら、前触れ➡転落➡介助が並び、時間軸と日ごとの差も混ざり、精神症状も“生活支援としての困りごと”で置けます。文章は長くても、読み手は迷子になり難い。
第4章の結論です。特記事項が長くなる人ほど、「前触れ➡転落➡介助」の型で物語にする。主役は時間で、最後に日ごとの差を一行で押さえる。細部は核心の3つに集約する。この組み立てが出来れば、波は霧になりません。家族の大変さも、支援者の意図も、読み手に届きます。次はいよいよまとめです。ここまでの型を、読者がそのまま使える形に束ねて、「今日からメモが作れる」状態で締めましょう。
[広告]まとめ…主役は「時間」で補助は「日」~短い型があれば波はちゃんと届く~
認定調査の場面で生活に波のある人の説明は、真面目にやればやるほど難しくなります。家族の現実は濃いし、支援者の記録は伸びるし、目の前の状態はその日その瞬間で変わる。しかも「今日は元気」に見えると、読み手の頭は勝手に安心方向へ走り、「今日は寝返りも難しい」日に当たると、今度は勝手に絶望方向へ走る。どちらも一部は合っているのに、全体像はズレる。このズレを減らすために、この記事では「上手に話す」より「順番を決めて置く」ことを大事にしてきました。
第1章の結論は、波は2階建てだということでした。1階は同じ日の中で上下する波、2階は日ごとの落差。波が深い人ほど、この2つが混ざります。混ざるからこそ、整理が要る。ここで大切なのは、どちらを主役にするかを先に決めることです。多くの場合、主役は1階、つまり時間軸です。朝・昼・夕・夜、または服薬前後、または活動の前後。読み手が一日の流れを再生できる形にしてあげると、理解が揃いやすくなります。
第2章では、その時間軸の書き方を整えました。ポイントは「切り替わりの目印」を先に決めて、ひと区切りの中で「出来ること」と「難しいこと」と「必要な見守りや介助」をセットで置くことでした。良い時間だけを書けば“元気な人”に見え、悪い時間だけを書けば“ずっと大変な人”に見える。だから同居させる。波のある人は、良い状態と悪い状態が同じ家の生活の中に住んでいる。ならば文章の中にも同居させる。これが、霧を晴らす第一歩でした。
第3章は、時間軸だけでは取りこぼす「日ごとの落差」を、最後の1行で押さえる技でした。ここで覚えて欲しいのは、長い説明で日ごとの落差を散らすより、最後に短い1行で固定した方が、誤解が減るということです。その1行に入れるのは、頻度・持続・最も厳しい状態の3点セット。これがあると、「たまたま良い日」「たまたま悪い日」に引っ張られ過ぎなくなります。文章の見え方が落ち着きますし、読み手の判断も極端に寄り難くなります。
第4章では、特記事項が長くなりがちな人ほど効く「前触れ➡転落➡介助」の型を紹介しました。長くなること自体は悪ではありません。悪いのは、長いのに届かないことです。届かないのは、順番がばらけて“どこで切り替わるか”が分からなくなるから。前触れを置き、転落を置き、介助を置く。これで文章が物語になり、読み手がついて来られます。さらに、核心を3つに絞る。落ちる前触れ、落ちた時の最悪点、その時に増える介助。ここを押さえると、細部が多少短くなっても、生活の大変さはちゃんと伝わります。
ここまでの内容を、最終的にひと言でまとめるならこうです。
「主役は時間、補助は日。順番の型があれば、波は霧にならない」
そして、この型は認定調査だけのものではありません。日々の支援方針を説明する時にも、家族同士で状況を共有する時にも、主治医に伝える時にも、そのまま使えます。波を説明できるようになると、本人の尊厳も守りやすくなりますし、家族の疲労も言葉になりやすくなります。言葉になれば、助けを頼みやすくなります。頼みやすくなれば、支援が組み立てやすくなります。つまり、文章はただの紙ではなく、生活の通路になります。
最後に、今日から使える“気持ちの合言葉”を1つ置いて終わります。
「その人を説明するのではなく、その人の1日を説明する」
人を説明しようとすると、どうしても評価っぽくなります。けれど1日を説明すると、生活の事実になります。事実は、丁寧に置けば伝わります。伝われば、波は霧じゃなくなります。
今日もどこかで、波に振り回されている家族がいます。書くのに苦慮している支援者もいます。けれど、波には型があります。型があれば、文章は整います。整えば、読む側も迷子になりません。元気な時間も、厳しい時間も、どちらもその人の暮らしの一部です。その全部が、ちゃんと届くように。あなたの言葉が、誰かの1日を支える道しるべになりますように。
[ 広告 ]今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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