お医者さんは今日も静かに修羅場です~それでも町と病室を支える人たち~

[ ケアマネの流儀 ]

はじめに…白衣の向こうにいる「すごく忙しい普通の人」

病院や医院へ行くと、こちらは待合室でそわそわ、お医者さんは診察室でテキパキ。あの白衣の向こう側には、いつも落ち着いて見える人がいます。けれど、よく見るとその毎日は、かなりの東奔西走です。外来、回診、説明、書類、電話対応。しかも患者さんの前では、なるべく平静を保つ。あれはもう、静かな全力疾走と呼びたくなります。

お医者さんというと、賢くて、冷静で、何でもすぐ見抜く人という印象を持ちがちです。確かにそういう面はあります。けれど、それだけではありません。医院の隅々に気を配ったり、患者さんの顔色の僅かな違いに気づいたり、必要な場面ではキッパリ判断したり。誠心誠意という言葉が、白衣のポケットにそっと入っていそうな人も少なくありません。

しかも不思議なのは、その忙しさの中でも、人らしい温度がちゃんと残っていることです。真面目に診て、真面目に悩んで、真面目に働く。なのに、時々、少しだけ肩の力が抜けていて、話してみると「ちゃんと通じる人」でもあるのです。こちらが勝手に身構えていただけかもしれません。白衣を見ただけで緊張するなんて、こちらの心が先にまな板の鯉のように診察台へ乗っていたのかもしれませんね。

主治医(診療の中心になる担当医)との関わりは、暮らしの安心にも繋がります。通う側に出来ることは、完璧な患者になることではなく、困っていることを素直に伝えること。そして診る側に出来ることは、その声を受け止めて道筋を示すことです。そんなふうに考えると、お医者さんは遠い存在ではなく、体調の波を一緒に渡る相手に見えてきます。

白衣は無口に見えて、じつは町や病室の空気を支える仕事着です。今日もどこかで、慌ただしいのに丁寧、忙しいのに親身、そんな人が聴診器を手にしているのでしょう。そう思うと、診察室のドアの向こうが、ほんの少しだけ柔らかく感じられます。

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第1章…町医者さんの朝は早い~診察前からもう仕事は始まっている~

朝の医院は、まだ患者さんの声がない分、シン…としています。自動ドアが開く前の待合室には、少しひんやりした空気があって、椅子は綺麗に並び、掲示物はまっすぐ、手すりやカウンターも気持ちよく整っています。あの静けさを見るたびに、診察は始まっていなくても、仕事はもう始まっているのだと分かります。

個人の医院のお医者さんは、診察室に座って「はい次の方」と言うだけの人ではありません。診察前に院内を見て回り、衛生管理(清潔を保つための管理)を確かめ、待合室の雑誌やパンフレットの置き方まで気にしていることがあります。細心の注意で空気を整えている姿を見ると、白衣の仕事は聴診器だけではないのだなと感じます。しかも、その動きが実に自然です。いかにも「やっています」という顔ではなく、サッと直して、スッと次へ。こちらは思わず、先生、その身のこなしは忍者ですか?、と心の中で小さくつっこんでしまいます。

医院は小さく見えて、やることは意外なくらい多いものです。診察の準備、スタッフとの確認、電話対応、書類の確認、処方箋の流れの把握。動線(人や物の動く流れ)まで頭に入れて、午前の診療がなめらかに進むように整えていく。まさに一心不乱です。患者さんからは見え難い時間帯なのに、その見え難い働きが、受診する側の安心に繋がっています。

綺麗に掃除された床や、乱れていない待合室には、それだけで不思議な力があります。病気や怪我で心が少し縮こまっていても、「ここなら話を聞いてもらえそうだ」と感じやすいのです。診察の腕前だけでなく、場を整える心配りまで含めて、その医院の空気になるのでしょう。診察の前から信頼が始まっていると思うと、何だか深いですよね。

しかも、こういう先生ほど、時間の隙間を細かく使っています。ほんの数分で机の上を整え、備品を見て、次の段取りを考える。朝の数分と侮れません。家庭で言えば、お湯を沸かしている間に洗い物を片づける感じです。いや、同じにしたら失礼かもしれませんが、あの手際の良さには、暮らしの達人に通じるものがあります。

町医者さんの魅力は、診察そのものだけでなく、医院全体を「今日もちゃんと回る場所」にしているところにもあります。患者さんに向き合う前の静かな準備には、派手さはありません。けれど、その無言のひと手間があるからこそ、来た人は少しホッと出来るのです。そう思うと、朝の医院の静けさまで、どこか頼もしく見えてきます。


第2章…小さな医院の大きな気配り~掃除も雑誌も患者さんへの思いやり~

待合室に入った瞬間、「何だか落ち着くな」と感じる医院があります。明るさがほどよく、椅子の並びもスッキリしていて、雑誌や案内の紙まで乱れていない。あの空気は、勝手に整うものではありません。誰かが毎日、丁寧周到に目を配っているからこそ生まれるものです。そして、その「誰か」の中に、お医者さん自身が入っていることがあります。

個人の医院では、院長先生が自分の手で動いている場面に出会うことがあります。床の汚れに気づいてサッと拭く。待合室の冊子をまっすぐに戻す。季節の案内や健康についてのパンフレットを見やすく置き直す。診察だけで手一杯だろうと思っているこちらは、「そこまで先生がやってるんですか?」と内心で目を丸くします。いや、むしろこちらが勝手に白衣へ万能な静止画を貼りつけていただけで、実際はよく動く人だった、という話かもしれません。

こうした気配りは、ただ几帳面というだけではありません。患者さんの不安を少しでも軽くしたいという配慮が、形になって表れているのです。病院や医院へ行く日は、元気一杯の遠足ではありません。体がしんどい、結果が気になる、待つ時間が長く感じる。そんな日に、場が整っているだけで心が少し座ります。診療環境(安心して診察を受けられる環境作り)は、薬や検査だけでなく、こういう小さな心遣いでも支えられているのでしょう。

しかも、雑誌や掲示物には、その医院の人柄が滲みます。難しい説明ばかりではなく、暮らしに近い内容が混ざっていたり、季節に合った読みものが置かれていたりすると、「ちゃんと人の時間を思ってくれているんだな」と伝わります。気遣いは大声で主張しません。けれど、無言の親切ほど、よく届くものです。誠心誠意という言葉は、案外こういう場所にも宿るのかもしれません。

小さな医院は、小さいからこそ目が届きます。目が届くから、手が届く。手が届くから、気持ちも届く。受付、看護師さん、お医者さんがそれぞれの持ち場で動きながら、全体として柔らかな空気を作っているのです。診察室の中だけを見ていると気づき難いのですが、医院の良さは入口から始まっています。そう思って待合室を見渡すと、雑誌の揃い方1つにも、なかなか深い仕事が隠れています。地味に見えて、かなり頼もしい世界です。

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第3章…時間外の電話が繋ぐ安心~地域で支え合うお医者さん同士の連携~

夕方の診療が終わった後の町は、少し表情が変わります。店仕舞いの気配が出て、道を歩く人の足も家の方へ向き始める。そんな時間に体調が崩れると、急に心細くなります。昼間なら動けたことが、夜になるだけでグッと難しくなるのです。そんな時、地域のお医者さんの存在は、まさに心機一転のキッカケになります。

個人の医院には、診療時間が終わっても患者さんとの糸が切れないところがあります。固定電話にかけると時間外の案内が流れることもありますが、その先で先生に繋がる仕組みになっている医院もあります。転送という形は事務的に見えて、じつはかなり人情味があります。時計の針は勤務終了を指しているのに、患者さんの不安までは打刻してくれません。そこへ手を差し出してくれるのですから、ありがたい話です。

しかも、地域の医療は一人で抱え込んで成り立つものではありません。連携(必要な人へ素早くつなぐ動き)がきちんと回っていると、先生がすぐに動けない時でも、別の医療機関に繋いでくれたり、調剤薬局へ連絡してくれたり、電話で判断を伝えてくれたりします。この流れがあると、患者さんは「今すぐ全部解決」ではなくても、「ちゃんと次の手がある」と分かります。その安心感はとても大きいものです。

地域の先生同士には、表に出にくい信頼関係があります。医師会のような公的な繋がりとは別に、日頃のやりとりの中で育った呼吸の合う関係もあるのでしょう。困った時に「あそこへ連絡してみよう」と頭に浮かぶ相手がいる。これは以心伝心というより、日々の積み重ねで出来た仕事の絆です。患者さんからすると見え難い部分ですが、この見えない橋が何本もあるから、町の医療は踏ん張れます。

「遠くの親類より近くの他人」ということわざがありますが、体調の不安が出た夜には、この言葉が沁みます。もちろん、家族の支えは大切です。けれど、医療の場面では近くで動ける専門職の存在が本当に頼りになります。家の近くに、話が通じる主治医(診療の中心になる担当医)がいることは、暮らしの安心そのものです。

お医者さんを選ぶ時、「評判が良さそう」だけで決めたくなる気持ちも分かります。人はつい、キラリと光る看板に目がいきます。私たち、パン屋さんでもそうですからね。新作の札が出ていると吸い寄せられます。けれど主治医との関係は、少し長い道のりになりやすいものです。困った時に連絡しやすいか、話を聞いてもらいやすいか、必要な先へ繋いでもらえるか。そういう実務的な安心は、かなり大事です。

地域のお医者さんの良さは、診察室の中だけでは語りきれません。時間外の一本の電話、その向こうにいる先生、さらにその先で動いてくれる別の先生や薬局。そうした静かな協力が重なって、暮らしは守られています。目立たないけれど、こういう支え合いこそ、町にある豊かさなのだと思います。


第4章…病院の医師は一日中全力疾走~回診と外来と救急の間で~

病院のお医者さんの大変さは、入院して見るか廊下を見ているとよく分かります。白衣がスッと通り過ぎたと思ったら、数分後には別の階へ向かっている。やっと座れたのかなと思えば、今度は呼び出し。病棟、外来、救急対応、その合間に説明や記録まで入るのですから、まさに東奔西走です。こちらが自販機の前で「温かいお茶にしようかな、いや冷たいのも捨て難い…」と悩んでいる間に、先生はもう何件も判断を進めています。比べる相手が悪過ぎましたね。

入院している患者さんには回診があります。回診(病室を回って状態を確かめること)は、顔を見せるだけの毎朝の挨拶というだけではありません。表情、呼吸、話し方、食事の進み具合、昨日との違い。小さな変化を拾いながら、その場で方針を考えていきます。しかも、その後には外来が待っています。診察室では初めて会う人の症状を聞き、病棟では経過を見ている人の状態を追い、救急では今まさに判断が必要な人を診る。頭の中の引き出しが、何段あるのか見てみたくなるほどです。

病院では、医師だけで仕事が完結するわけでもありません。看護師さん、検査技師さん、薬剤師さん、リハビリ職、事務の方々。たくさんの職種が連携(それぞれの専門を繋いで動くこと)しながら患者さんを支えています。その真ん中でお医者さんは、判断の軸を持ち続ける役目を担います。しかも、患者さん本人や家族への説明も欠かせません。専門的な話をそのまま投げれば伝わり難い。けれど、噛み砕き過ぎると大事なことが薄くなる。そのちょうど良い着地点を探しながら話すのですから、これもなかなか骨が折れます。

さらに病院には、診察や回診だけでは終わらない時間があります。医薬情報担当者(薬の情報を医療現場へ届ける担当)から新しい薬の話を聞くこともありますし、書類仕事も積み重なります。患者さんから見ると、診察している時間が仕事の全てに見えがちです。けれど実際は、その外側にも静かな業務がギッシリ詰まっています。表から見える部分が氷山の先っぽなら、水の下はかなりの分量です。

それでも病院のお医者さんは、患者さんのことをよく覚えていることがあります。こちらは「たくさんいる患者さんの一人」と思っていても、先生の方は顔や経過をちゃんと結びつけている。あれには驚きます。街なかでバッタリ会って声を掛けられたら、嬉しい半分、少し背筋が伸びます。こちらの記憶力がぼんやりしているだけに、「先生、脳の性能が違い過ぎませんか?」と胸の内で正座したくなる瞬間です。

病院の医師の仕事は、派手な英雄物語というより、緻密で持久力のいる毎日の積み重ねです。冷静沈着に見える人ほど、内側ではたくさんの判断を同時に走らせています。そんな姿を思うと、診察室で名前を呼ばれる数分の重みも少し変わって見えてきます。忙しさのただ中でも人を診る。そのこと自体が、随分と頼もしい営みです。

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まとめ…名医とは遠い人ではなく~一緒に治していく相手かもしれない~

お医者さんの仕事を思い浮かべると、つい診察室の場面だけを見がちです。けれど実際には、その前に院内を整え、診療の流れを組み、時間外の不安にも目を向け、病院では何人もの患者さんと職種の間を行き来しています。静かに見えて、内側は奮闘努力。その積み重ねが、町の安心や病室の落ち着きを支えているのだと思います。

通う側に出来ることは、完璧に説明することでも、遠慮して何も言わないことでもありません。困っていることを素直に伝え、分からないことは聞き、教えてもらったことを出来る範囲で続ける。それだけでも、主治医との関係は随分と変わります。お医者さんは答えを出す人であると同時に、療養生活(治療しながら暮らす日々)を一緒に考える相手でもあるのです。

「この先生で大丈夫かな?」と迷う日もあるでしょう。そんな時は、ただ不満を抱えて離れるより、まず話してみる方が道が開けることがあります。きちんと理由を聞ける、こちらの不安も伝えられる、その往復、キャッチボールがあれば、信頼は少しずつ育っていくものです。名医という言葉は立派ですが、本当にありがたいのは、こちらの暮らしの速度に合わせて伴走してくれる人なのかもしれません。

白衣の向こうにいるのは、超人というより、忙しい毎日の中で人を気にかけ続けるプロです。そう思うと、診察室のドアも少し柔らかく見えてきます。体調が気になる日、心細い日、頼れる相手が町にいる。そのこと自体が、かなり心丈夫です。次に医院や病院へ行く時は、ほんの少しだけ肩の力を抜いて、「よろしくお願いします」と言えたら十分です。そのひと言から、いい関係は始まっていくのだと思います。

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