カレーとシチューで冬籠り作戦!〜お鍋の中は愛と脂と安全会議〜

[ 冬が旬の記事 ]

はじめに…冬になると恋しくなるカレーとシチューの物語

空気がキリッと冷え込んでくると、急に恋しくなるのが、グツグツと湯気を立てるカレーライスやシチューです。窓の外は灰色の冬空でも、テーブルの真ん中に温かいお鍋が置かれただけで、家族や利用者さんの表情がフワッと緩みます。高齢者施設でも、いつもの和食中心の献立の中に、時々、カレーやシチューが登場すると「今日はご馳走やなぁ」と笑顔が増えますよね。

カレーもシチューも、トロリとしたルウに、野菜とお肉の旨味がギュッと詰まった、いわば冬の国民食。見た目はよく似ているのに、スパイスで体の中からポカポカにしてくれるカレーと、ミルクやクリームで優しいコクを楽しむシチューでは、口に運んだ瞬間の世界がまるで違います。ご飯にたっぷり掛ける人もいれば、パンと一緒に少しずつ味わう人もいて、お鍋1つで、それぞれの「美味しい冬の時間」を作ってくれる存在です。

その一方で、食品衛生の講習などでは「カレーは注意が必要な料理の1つ」と教えられることがあります。理由は、カレーそのものが悪いからではなく、大きなお鍋でまとめて作り、作り置きをすることが多いから。ジワジワ冷めていく間に、目には見えない菌が元気になってしまうことがある、というお話を聞いた方もいるかもしれません。同じようにシチューも、トロミがあって具だくさん、という点では、実はとてもよく似た性質を持っています。

この冬バージョンの記事では、「カレーとシチュー、どっちが好き?」という軽い気持ちで読み進めながら、いつの間にか、食中毒の仕組みや安全な扱い方も、優しく理解できるようにまとめていきます。高齢者施設の献立作りをしている方にも、家庭でたくさん作って楽しみたい方にも、「お鍋の中は愛と脂と安全会議」という合言葉で、心も体も温まる冬のカレー&シチュー作戦を、一緒に覗いていきましょう。

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第1章…寒い夜ほど会いたくなる?カレーとシチューの不思議な共通点

冬の夕方、仕事や学校からの帰り道。鼻の奥をくすぐるように、どこかの家からカレーの香りがフッと流れてくることがあります。思わず足を止めて、「今日はうちもカレーにしようかな」なんて、心の中でメニュー変更が決まってしまう人も少なくありません。シチューも同じで、ミルクのやさしい香りに包まれると、それだけで肩の力が抜けていきます。寒い季節になるほど、カレーとシチューは不思議と存在感を増していきます。

カレーとシチューは、どちらも「お鍋1つで完成する料理」という共通点があります。大きなお鍋の中で、玉ねぎやにんじん、じゃがいも、お肉がぐつぐつ煮えていき、最後にルウを溶かすと、トロリとした濃度のあるスープに早変わり。見た目だけなら、カレーもシチューも兄弟のようにそっくりです。でも、ひと口食べると、カレーはスパイスが舌の上で踊るように広がり、シチューはミルクやバターのコクが静かに広がって、まったく違う世界を見せてくれます。

高齢者施設や病院でも、和食の定番である煮物や焼き魚の合間に、月に1回ほど「カレーの日」「シチューの日」がやってくることがあります。いつもと違う洋風の香りがフロアに流れ始めると、「今日はカレーか?」「私はシチューがええなあ」と、食堂に向かう足取りまで軽くなる方もいます。普段は食の進みがゆっくりな利用者さんが、カレーの日だけは完食したり、おかわりを希望したりすることもあり、「このメニューの力は侮れない」と感じた職員さんも多いのではないでしょうか。

また、カレーもシチューも、楽しみ方の幅が広いのが魅力です。ライスにたっぷりかけて食べる人、少なめのご飯に具を多めにする人、パンを浸してゆっくり味わう人。トッピングだって、チーズをのせたり、半熟卵を落としたり、ブロッコリーを追加したりと、家庭や施設ごとにちょっとした「我が家流」「うちの施設流」が生まれます。同じルウからスタートしているはずなのに、食卓に並ぶ頃には、そこにいる人の数だけ物語があるような料理になっています。

さらに面白いのは、「特別な日のご馳走」と「気軽な日常食」の両方の顔を持っているところです。忙しい日の夕食にさっと作るイメージもあれば、家族が集まる日やイベントの日に、大きなお鍋でたっぷり仕込んでおくイメージもあります。高齢者施設でも、「〇〇さんの誕生日会はカレーがいい」「冬の行事の日はシチューにしよう」といった声が上がることがあります。温かいお鍋を囲むだけで、食卓が小さなパーティー会場のようになるから不思議です。

こうして見てみると、カレーとシチューは、味や香りだけでなく、周りの人の表情まで整えてしまう、冬の“空気を変えるメニュー”と言えるかもしれません。その一方で、どちらも「具だくさんでトロミのある、大鍋料理」という特徴を持っているため、扱い方によっては注意が必要な一面も隠れています。

次の章では、この「冬になると会いたくなるカレーとシチュー」が、なぜ食品衛生の講習で名前が挙がることがあるのか、その理由を紐解いていきます。美味しさと安心を両立させるための第一歩として、まずはお鍋の中で起こっている見えないドラマを覗いてみましょう。


第2章…カレーはなぜ要注意と言われるのか~お鍋の中で起こる見えないドラマ~

食品衛生の講習で、「カレーは注意が必要な料理の1つです」と聞いた時、「あんなにしっかり煮込んでいるのに、どうして?」と感じた方も多いと思います。スパイスが強いから危ないのではなく、実はカレーの「作り方」と「置いておかれ方」が、ある菌にとってはとても居心地のよい環境になってしまうことがあるからです。しかも、その菌は目に見えず、味や見た目ではまったく分からないのが、厄介なところです。

カレーに関わってくる代表的な菌としてよく挙げられるのが、ウェルシュ菌という名前の菌です。土の中や動物の腸の中など、自然界に普通に存在していて、にんじんやじゃがいも、お肉など、カレーの材料になる食材にも、少しだけくっついていることがあります。ほとんどの場合は問題になりませんが、この菌が厄介なのは、「芽胞(がほう)」と呼ばれる硬い殻のような形に変身して、100℃近くまで加熱しても生き残る力を持っていることです。グツグツ煮込んだカレー鍋の中でも、一部はじっと耐えながら、次のチャンスを待っています。

カレーを作り終えて火を止めると、お鍋の中の温度は少しずつ下がっていきます。この「ゆっくり冷めていく時間」が、ウェルシュ菌にとっては出番の合図です。特に、20℃〜50℃くらいの温度帯は、菌が増えやすいゾーンとされていて、40℃台あたりは元気に増殖しやすい環境になります。大きなお鍋いっぱいのカレーは、表面や周りは早く冷めても、まんなかは長い間、温いまま残りがちです。その温い部分で、芽胞から普通の菌に戻ったウェルシュ菌が、せっせと数を増やしてしまうことがあるのです。

しかもカレーは、トロミがあり、具だくさんで、酸素もあまり入り込みません。これは、人間にとっては「冷めても美味しいカレー」の条件ですが、酸素が少ない場所を好むウェルシュ菌にとっても、非常に心地よい環境です。さらに、大鍋のまま常温に置いておくと、「ゆっくり冷める」「温い時間が長い」「掻き混ぜられず、鍋の真ん中は放置される」という条件が揃ってしまいます。こうして、私たちの目には見えないところで、菌が増えていくドラマが静かに始まってしまうわけです。

家庭でよくあるパターンとして、「夜にたっぷりカレーを作り、一晩寝かせて、翌日の昼や夜にもう一度食べる」というスタイルがあります。「二日目のカレーの方が美味しい」という言葉があるくらい、味の面では魅力がありますが、実はこの「一晩寝かせる」が、扱い方によっては大きな落とし穴になります。お鍋のまま常温で長く置かれている間に、先ほどの温度帯を何時間も彷徨ってしまうと、ウェルシュ菌が増えるチャンスをたっぷり与えてしまうからです。

もちろん、カレーそのものが危険なのではありません。作り方や扱い方を工夫すれば、冬の定番メニューとして安心して楽しむことが出来ます。ただ、「しっかり煮込んだから大丈夫」「また明日温めれば平気」という感覚のままでいると、お鍋の中で進んでいる見えないドラマに気づけません。大量調理を行う病院や高齢者施設でカレーが「要注意メニュー」として意識されてきたのは、この見えないドラマを理解し、コントロールする必要があるからなのです。

次の章では、「カレーは注意」と言われがちですが、実はシチューも同じ仲間であることを見ていきます。ミルクのやさしい白いお鍋の中でも、カレーとよく似たドラマが潜んでいることを知っておくと、冬の献立作りの視点が、少し変わってくるかもしれません。


第3章…シチューも油断は禁物~トロミ料理全部に共通する落とし穴~

カレーが要注意だと言われると、「じゃあ、ミルクたっぷりで優しい味のシチューは安全なのかな?」と思いたくなります。白いルウに、にんじんやブロッコリーが顔を出し、フワッと湯気が立ち昇る冬のシチューは、それだけで心までほぐしてくれる存在です。とくに高齢者施設では、「カレーは少し刺激が強いかな」という方にも提供しやすい、柔らかな洋風メニューとして活躍してくれます。

けれど、お鍋の中で起きていることに目を向けてみると、シチューもカレーと同じく、「トロミがあって具だくさん」「大きなお鍋でまとめて作る」「作り置きしやすい」という特徴を持っています。見た目はまったく別物ですが、菌にとっての居心地という意味では、とてもよく似た環境を作り出してしまうことがあります。実際には、カレーだけを特別視するより、「トロミのある大鍋料理は、まとめて同じ仲間」と捉えた方が、冬の献立作りには役立つかもしれません。

シチューに使われる材料を思い浮かべてみると、牛乳や生クリーム、バターなどの乳製品、お肉やベーコン、ソーセージといったたんぱく質源が中心になります。これに、じゃがいもや玉ねぎ、きのこ、かぼちゃなどの野菜が加わり、長時間コトコト煮込まれることで、深いコクが生まれます。人間から見ると「栄養たっぷりで美味しそう」ですが、菌の立場から見ても、これはなかなか魅力的なご馳走です。トロミのある液体の中に、栄養源が細かく散らばり、酸素もあまり届かない──この条件は、カレーとほとんど変わりません。

さらに、冬場のシチューは、「温め直して何度かに分けて食べる」場面が多くなりがちです。家庭では、夜に大鍋で作って、翌日の朝や昼にもう一度温めて食べることがありますし、高齢者施設でも、昼食のシチューを夕食でアレンジして出したり、刻み食やミキサー食として別形態にして提供したりすることがあります。そんな時、「冷める時間」と「温いまま放置されている時間」が長くなると、カレーと同じように、目に見えないところで菌が増えやすくなってしまいます。

また、高齢者施設では、飲み込みの状態に合わせて、さらにトロミを加えることもあります。誤嚥を防ぐためには大切な工夫ですが、「トロミを強くする=冷めにくい料理になる」という一面も持っています。お皿や保温食器の上でもいつまでも温かく感じられる一方で、お鍋や保温容器の中では、程良い温さの時間が長く続きやすくなります。トロミ調整を行う時は、「食べやすさ」と同時に、「どれくらいの時間で食べ切れるか」「提供前にどのくらい保温されるのか」という視点も、一緒に意識しておきたいポイントです。

もちろん、シチューを怖がる必要は全くありません。大切なのは、カレーの時と同じように、「長時間、常温に置きっぱなしにしない」「大鍋のまま寝かせず、必要に応じて小分けして冷やす」といった基本を押さえることです。そして、シチューだけでなく、シチューに似た性格を持つメニュー──例えば、ホワイトソースのグラタン、あんかけ煮、ドロッとしたカレーうどんの汁、もつ煮込みなども、「同じグループの料理」として意識しておくと、冬場の献立全体を眺める目が少し変わってきます。

冬の食卓を見渡してみると、「体を温めるためのトロミ料理」は、実にたくさん並んでいます。それは心強い一方で、「温かくて嬉しい料理ほど、扱い方には一工夫がいる」という事実も、そっと教えてくれます。次の章では、高齢者施設と一般家庭、それぞれの現場で、カレーやシチューを安全に、美味しく、そして楽しく楽しむための具体的な作戦について考えていきます。「お鍋の中は愛と脂と安全会議」という合言葉を、実際の場面に落とし込んでみましょう。


第4章…高齢者施設と家庭で考える~安全で美味しい冬のカレーとシチュー作戦~

ここまで見てきたように、カレーもシチューも、冬の食卓を支えてくれる心強い味方であると同時に、「トロミのある大鍋料理」という共通点から、扱い方を間違えると少し厄介な一面も持っています。では実際に、高齢者施設や家庭では、どのような工夫をすれば、美味しさと安心を両立できるのでしょうか。ここからは、現場の目線と日常の台所の目線を行き来しながら、「愛と脂と安全会議」を具体的な作戦に変えていきます。

高齢者施設では、まず「作ったカレーやシチューは、その日のうちに食べ切ること」を基本に据えると考えやすくなります。提供する人数と食数を見ながら、「少し余るかな」という程度の量にとどめて仕込み、翌日に回す前提で作らないようにすることが、最初の一歩です。どうしても残りそうな場合は、大鍋のまま保温して長く置くのではなく、決まった時間が来たらきっぱり提供を終え、浅い容器に小分けして急いで冷やすなど、冷却と保存のルールを決めておくと、スタッフ同士の意識も揃いやすくなります。

また、盛り付けの直前にしっかり再加熱し、鍋底から丁寧に掻き混ぜることも大切です。表面だけグツグツしていても、鍋の真ん中や底の方が温いままでは意味がありません。お玉を底まで入れて、全体をグルリと混ぜながら、鍋全体がフツフツと湯気を上げる状態まで温度を上げていきます。このひと手間は、忙しい配膳前にはつい少なくなりがちですが、「安全会議」の最後の確認として、意識して取り入れたいところです。行事食としてカレーやシチューを出す場合は、特に人手や時間に余裕のある日程を選び、「時間に追われてルールが守れない」という事態にならないよう計画しておくと安心です。

さらに、高齢者向けのカレーやシチューでは、「衛生面」だけでなく、「体への優しさ」という意味での安全も一緒に考える必要があります。辛さや塩分を控えめにすること、具材を小さく切って十分やわらかく煮込むこと、飲み込みに不安のある方には、トロミや刻みの調整を行うこと。こうした工夫は、菌への対策とは別の話に見えますが、どちらも「安心して美味しく食べてもらう」ための大切な両輪です。冬のカレーやシチューを、「たまの楽しみ」で終わらせるのではなく、「体に無理なく続けられる楽しみ」にしていくには、この二つの視点をセットで育てていきたいところです。

一方、家庭の台所では、もう少し自由度が高い分、「つい油断してしまうポイント」が増えます。代表的なのが、夜に大鍋で作ったカレーやシチューを、コンロの上に置いたまま、翌朝までそのままというパターンです。家族が順番に帰ってきて遅い時間まで食卓が動いている家庭ほど、つい「明日また温め直せばいいか」と、その場しのぎで置いてしまいがちです。しかし、お鍋が常温にさらされている間、先程の「温い時間」が長く続いていることを思い出すと、やはりどこかで区切りをつけたくなります。

家庭で出来る一番シンプルな工夫は、「作ってからおよそ2時間を目安に、残りは小分けにして冷蔵庫へ」というリズムを決めておくことです。深い鍋のまま冷蔵庫に入れるのではなく、浅いタッパーや保存容器に移し替えることで、熱が早く逃げ、冷えやすくなります。量が多い時は、容器をいくつかに分けておくと、食べる分だけ取り出せるので、その後の温め直しも楽になります。翌日に温めるときは、鍋底までよく混ぜながら、全体がしっかり熱くなるまで加熱すること、電子レンジで温める場合も、途中でいったん掻き混ぜて、温度ムラが残らないようにすることがポイントです。

そもそもの量を見直す、という発想も、実はとても有効です。「カレーはたくさん作ったほうが得」という感覚から一歩離れて、「今日と明日分くらいでちょうど無くなる量」に予め減らしておくと、お鍋を抱えたまま悩む時間がグッと短くなります。市販のルウを箱ごと使うのではなく、包みを割って半分だけ使い、残りは冷凍しておくなど、自分の家族に合った量の作り方を見つけておくと、冬の定番メニューがグッと扱いやすくなります。「たくさん作って毎日カレー」から、「食べ切れる分だけ、とびきり美味しいカレーとシチュー」へと発想を切り替えるのも、1つの冬ごもり作戦と言えるでしょう。

そして忘れたくないのが、「安全に作ったカレーとシチューを、どう楽しく囲むか」という視点です。高齢者施設であれば、カレーやシチューの日に、テーブルクロスを少し洋風の柄に変えてみる、スプーンや器をいつもと違うものにしてみるだけでも、利用者さんの気分は変わります。「あなたの思い出のカレーはどんな味でしたか?」「子どもの頃、シチューは特別な日のメニューでしたか?」といった問い掛けをしながら配膳すると、自然と会話が生まれ、その時間全体が温かい交流の場になります。

家庭でも、カレーやシチューの夜をちょっとしたイベントにしてしまうのもおすすめです。テーブルに並んだお鍋を囲んで、「今日はカレー派?シチュー派?」と家族で話し合ったり、好きなトッピングを1人1つずつ選んで乗せたりするだけで、同じメニューでも印象が変わります。「安全会議」というと堅苦しく聞こえますが、実際には、こうした小さな工夫を通して、「安心して食べられるように、皆で知恵を出し合う時間」を持つことが、そのまま心の温かさにも繋がっていきます。

冬のカレーとシチューは、体だけでなく、記憶や会話まで温めてくれる存在です。だからこそ、「愛と脂」で終わらせず、「そこに少しの知識と工夫を足すと、もっと長く付き合える料理になる」という視点を、施設でも家庭でも共有していきたいところです。次のまとめでは、ここまでのポイントを振り返りながら、冬のお鍋と上手に付き合うヒントを、もう一度やさしく整理していきます。

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まとめ…冬のお鍋と上手に付き合う~心と体を温める締め括り~

冬になると、カレーとシチューは、単なる「ひと皿の料理」ではなくなります。寒さで強張った心と体をほぐし、湯気の向こうに、家族や利用者さんの笑顔や思い出を浮かび上がらせてくれる存在です。具だくさんのお鍋をテーブルの真ん中に置くだけで、その場の空気がやわらかく変わる──そんな力を持った料理だからこそ、私たちは毎年のように、冬になると自然と恋しくなってしまうのかもしれません。

一方で、カレーもシチューも、「トロミがあって、大鍋でまとめて作ることが多い」という共通点を持っています。この条件は、人間にとっては便利で美味しい性質ですが、目に見えない菌にとっても心地良い環境になりやすい、という一面を忘れてはいけません。火を止めた後、ゆっくり冷めていく間のお鍋の中では、私たちが気づかないところで、小さなドラマが進んでいることがあります。「一晩寝かせたカレーは旨い」と言われる裏側で、「寝かせ方」を間違えれば、せっかくのご馳走が残念な結果を招いてしまう可能性もある──そのことを、少しだけ頭の片隅に置いておきたいところです。

だからといって、カレーやシチューを怖がる必要はありません。大切なのは、「作ったものはその日のうちに食べ切ることを基本にする」「残す場合は、深い鍋のまま置かず、浅い容器に小分けして早めに冷やす」「温め直しの時には、鍋底からしっかり混ぜて、全体を熱々にする」といった、いくつかの約束を、家庭なり施設なりのやり方で決めておくことです。守れないほど難しいルールではなく、「これなら続けられそうだな」と思える工夫を積み重ねていくことが、冬のお鍋と長く付き合う一番の近道です。

高齢者施設では、特に、「衛生面」と「体への優しさ」という2つの安全を同時に守る意識が欠かせません。塩分や辛さを整え、具材をやわらかく煮込み、飲み込みの状態に合わせてとろみや刻み方を変えること。それに加えて、冷まし方や保存の方法を丁寧に整えること。この両方が揃った時、カレーやシチューは、「たまに出てくる特別メニュー」から、「安心して待ち遠しく思える冬の楽しみ」に変わっていきます。

家庭の台所でも、似たような工夫ができます。「箱のルウ全部」を前提にするのではなく、自分の家族が気持ち良く食べ切れる量を基準に考えてみる。コンロの上で一晩お鍋を抱え込むのではなく、区切りを決めて、小分けして冷蔵庫に入れる。翌日、鍋を火にかける前に、「これはいつ作った分だったかな?」と一言確認する習慣をつける。そんな小さな積み重ねが、「美味しくて、ちょっと誇らしい我が家のカレーとシチュー」を育てていきます。

そして最後に忘れたくないのは、「愛と脂と安全会議」という合言葉の中に、もう1つ、「会話」という要素を加えることです。高齢者施設なら、「若い頃のカレーの思い出」や「家でよく作っていたシチューの具材」の話を聞き出してみる。家庭なら、「今日はカレー派?シチュー派?」とじゃれ合いながら、お鍋を囲む。それだけで、冬の夕食は、温かい情報交換と笑いに満ちた時間へと変わります。

カレーとシチューは、この冬も、きっとたくさんの食卓に並ぶはずです。そのお鍋の中に、「美味しさ」と「温もり」にくわえて、少しだけ「知識」と「工夫」が溶け込んでいれば、心強さはグンと増します。愛と脂がたっぷり詰まった冬のお鍋と、どうか上手に付き合いながら、この季節ならではの幸せなひと皿を、ゆっくり味わってくださいね。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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