おむつの中で起きる「赤い・腫れる・ただれる」~床ずれ・粉瘤・おできの見分けと守り方~

[ 介護現場の流儀 ]

はじめに…見た目が似ていても道筋はちゃんとある

おむつ交換の時、ふと目に入る「赤いところ」。そして、触ってみると「コリコリ」。さらに日をまたぐと、いつの間にか「ジュクジュク」。……この3つが揃った瞬間、現場の空気ってちょっと変わりますよね。心の中で「あ、来たか……」と、呟きつつ、顔だけはにこやかに保つ。これ、介護あるあるです。

結論から言うと、おむつ内で起きる“皮膚トラブル”は、見た目が似ていても別々の道筋で進みます。床ずれ(褥瘡(じょくそう)=圧迫で皮膚の下が傷むこと)、粉瘤(ふんりゅう=皮膚の下に袋が出来て中身がたまること)、おでき(せつ・毛嚢炎(もうのうえん)=毛穴がばい菌で炎症を起こすこと)。この3つは「赤い」「腫れる」「治り難い」が被るので、初動で迷いやすいんです。

しかも、厄介なのが“おむつという舞台”。湿り気、汚れ、こすれ、圧。役者(皮膚)が疲れる条件が揃い過ぎていて、どのトラブルも妙に育ちやすい。さらにプラスチックグローブ越しだと、熱感(触ると熱い感じ)や硬さの微差が拾い難くて、気づいた時には「見た目で分かる段階」になっていることもあります。これも現場あるある、二連発。……私の自分ツッコミが追いつきません。

この文章では、床ずれ・粉瘤・おでき3つの「見分けの言い方」と「守り方の優先順位」で、整理していきます。判断の軸は難しい知識ではなく、いつから、どこに、どう育ったか。ここが分かると、処置の方向が定まりやすくなります。加えて、まとめの付録には「おむつ交換時・30秒皮膚チェック手順(声掛け例つき)」も入れる予定です。手袋越しでも、ちゃんと拾えるコツがあるんですよ。

慌てず騒がず、でも見逃さず。臨機応変(りんきおうへん=その場に合わせて動くこと)で、用意周到(よういしゅうとう=先に整えておくこと)に。今日の交換が、明日の皮膚を守る小さな一手になります。読み終わる頃に「よし、いける」と肩が軽くなるように、一緒に道筋を作っていきましょう。

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第1章…床ずれは発赤から~圧とズレが作る「静かなピンチ」~

結論を先に言うと、床ずれの初動でやることはシンプルです。「赤い所を治す」より前に、「その場所にかかっている圧(あつ=押される力)とズレ(せん断(せんだん)=皮膚の上と下が滑る力)を減らす」。ここが決まると、その後の手当がグッと楽になります。

おむつ交換の場面で、床ずれが“静かに始まる”瞬間があります。仙骨(せんこつ=おしりの上の骨)や尾骨(びこつ=尾てい骨の辺り)をふと見たら、ほんのり赤い。汗なのか、便の刺激なのか、ただのこすれなのか。現場の頭の中は忙しいのに、皮膚は無言で「今のうちに気づいてね」と言っている。……はい、ここで私は一回、心の中で深呼吸します。自分ツッコミとしては「皮膚が、しゃべってくれたら楽なのに」です。

「発赤」の見方は、色だけじゃない

発赤(ほっせき=赤み)を見つけた時、まず押さえておきたいのは、赤みには2種類あるということです。反応性発赤(はんのうせいほっせき=押されて赤くなったけど戻る赤み)と、消えない発赤(押しても戻り難い赤み)です。ここでやるのは、難しい技ではなく、ほんの小さな確認です。

指で優しく押してみて、赤みがスッと白くなって戻るなら、皮膚はまだ「戻れる余力」を残していることが多い。押しても白くならない、または戻りが悪いなら、そこで踏ん張っているサインかもしれません。こういう場面は、百戦錬磨(ひゃくせんれんま=経験を重ねた状態)の先輩ほど、言葉が短くなります。「ここ、圧抜こ」。短いけど、優しい指示です。

そして、色だけに頼らないのが現場の知恵です。熱感(ねっかん=触ると熱い感じ)、硬さ、むくみっぽさ、痛がり。皮膚の色が濃い方は赤みが目立ち難いので、むしろこの「色以外」が頼りになります。グローブ越しだと感じ難いこともあるけれど、左右差(さゆうさ=片側だけ違う)なら案外拾えるんですよね。

床ずれの主役は「圧」と「ズレ」~舞台は寝具と姿勢~

床ずれは「汚れたから起きる」だけの話ではありません。もちろん汚れや湿り気は、皮膚を弱らせます。でも床ずれの芯は、圧とズレです。寝たままの姿勢で、同じ場所に力が集中する。背上げ(ギャッチアップ)で体がずり落ちる。シーツのシワが擦れる。こういう積み重ねが、皮膚の下にジワジワ来ます。

ここで視点を1つ入れるなら、床ずれは「皮膚の表面の問題」よりも「住まいの設計ミス」に近い、という見方です。住まいと言っても家ではなく、身体の居場所。骨の出っ張りの下に、荷重(かじゅう=体重がかかること)が集まって、通気が悪くて、滑り台みたいにズレていく。皮膚は、そこに存在させられている感じです。こう考えると、皮膚に申し訳なくなってきますね……いや、申し訳ないで終わらせず、手を動かします。

初動の合言葉は「除圧」~赤みに気づいたら住まいを変える~

発赤を見つけた時の初動は、消毒でも薬でもなく、まず除圧(じょあつ=圧を抜くこと)です。体位変換(たいいへんかん=姿勢を変えること)を少し早める、クッションで骨の当たりを和らげる、背上げの角度を見直す、シーツのシワを取る。たったこれだけでも、皮膚の景色が変わります。

ここでやりがちな罠が、赤い所を「よかれと思って」揉むことです。マッサージっぽくしてしまうと、傷んでいるところに刺激が乗ってしまうことがあります。触るなら、優しく確認。対策は、住まいの作り直し。これが床ずれの流儀です。用意周到(よういしゅうとう=先に整えること)にいきましょう。

おむつ内は「湿り気」が味方も敵も連れてくる

おむつ内だと、湿潤(しつじゅん=濡れてふやける状態)が加わります。皮膚はふやけると傷つきやすいので、赤みがある日は交換の質が大事になります。洗浄(せんじょう=やさしく洗うこと)は「こすらず、落として、守る」。皮膚保護(ひふほご=バリアで守る)は「薄く、むらなく」。ここまでやっておくと、圧を抜いた効果が出やすいです。

とはいえ現場は忙しいので、毎回完璧は無理です。そこで私は、時々、心の中でこう言います。「完璧じゃなくて良いけど、継続(けいぞく=続けること)だ」。そして次の交換でまた整える。何だか、皮膚との共同生活みたいですね。

床ずれは、派手に始まらない分、気づけた人が勝ちます。静かなピンチを、静かにほどく。これが第1章の結論です。次の章では、同じく“おむつ内で目立つ”のに、スタート地点がまったく別の「コリコリ」――粉瘤の話に進みます。


第2章…粉瘤はコリコリから~袋が暴れると急にややこしい~

結論を先に言うと、粉瘤(ふんりゅう)の対応は「赤い所をどうするか」より、袋(ふくろ)をどう扱うかです。粉瘤は、皮膚の下に袋が出来て中身がたまるタイプのしこりで、普段はおとなしいのに、ひとたび機嫌を損ねると一気に存在感を出してきます。ここでの合言葉は、慌てず騒がず、でも触り過ぎない。冷静沈着(れいせいちんちゃく=落ち着いていること)を心掛けましょう。

おむつ交換の時、指先に「コリッ」と当たる小さな山。目で見ると、皮膚は割りと平和そう。でも触ると確かにそこにいる。こういうの、ありますよね。こちらが忙しい日に限って、何故か発見率が上がる。私の自分ツッコミは「今日じゃなくてもいいのに」です。

粉瘤は「袋の中身」が主役~表面は静かでも中で進む~

粉瘤は、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ=皮膚の下の袋)という袋に、角質(かくしつ=皮膚の垢みたいな成分)などがたまって出来ることがあります。専門用語は難しく見えますが、言い替えると「皮膚の下に、ゴミ箱みたいな袋が出来て中身が溜まる」感じです。袋がある限り、根っこは残りやすい。ここが、床ずれやただれと違うところです。

普段は「コリコリ」。動くこともありますし、痛くないこともあります。ところが、刺激が重なると急に荒れます。おむつ内は湿り気とこすれがそろうので、粉瘤にとっては「ちょっとした満員電車」みたいな環境です。押される、揺れる、蒸れる。そりゃ機嫌も悪くなります。

急に大きくなるのは「感染」だけじゃない~袋が破れて炎症が起きる~

粉瘤が突然赤く腫れて、ズキズキ痛み出すことがあります。この時「雑菌が入ったのかな」と思いがちですが、粉瘤はもう少しややこしい。袋が破れて中身が周りに漏れると、身体が「それは異物(いぶつ=体にとってよそ者)だよね」と反応して炎症(えんしょう=赤く腫れて痛む反応)を起こします。これだけでも大きく腫れます。

もちろん、そこへ細菌(さいきん=ばい菌)が乗ることもあります。そうなると熱感(ねっかん=触ると熱い感じ)が増えたり、膿(うみ)が出たり、周りの赤みが広がったりします。だから現場で大事なのは「粉瘤=感染」と決め打ちしないこと。袋が荒れているのか、感染が乗っているのかで、医療側の判断や手当の方向が変わるからです。ここは臨機応変(りんきおうへん=その場に合わせて動くこと)ですね。

現場での初動は「潰さない」「揉まない」「深追いしない」

粉瘤っぽいコリコリを見つけたら、まずやることは、潰さない。揉まない。深追いしない。必要以上にいじらないです。気持ちは分かるんです。「これ、押したら出るのでは?」って。人間、つい“押したくなるボタン”を見つけると押したくなる。私もボタンが光ってたら押します。いや、押しません。仕事中です。

粉瘤は、無理に押すと袋が破れて炎症が広がったり、痛みが増えたりすることがあります。おむつ内ならなおさらで、汚れや湿り気が加わると、皮膚が守り難くなります。なので現場の初動は「清潔にして、守って、悪化サインを拾う」に寄せるのが安全です。

清潔は「こすらず、落として、乾かす」。皮膚保護(ひふほご=バリアで守ること)は「薄く、むらなく」。ここは床ずれの章と共通の土台ですね。違いは、粉瘤は“点”の問題になりやすいこと。点に対して、周りの皮膚を守る。そんな感じです。

受診を考えるサイン~粉瘤は「袋問題」なので早めが助かる~

粉瘤は、炎症が落ち着いた段階で袋を取る(切除(せつじょ=袋ごと取り除く処置))と、繰り返し難くなることがあります。現場としては「今すぐどうにか」より「長引かせない」の視点が大事です。

赤みが強い、腫れが急に増える、痛みが目立つ、熱っぽい、膿っぽい、周りに赤みが広がる。こういう時は医療に相談が必要になりやすいです。粉瘤は、放っておくと静かに戻ることもありますが、戻らずに居座ることもあります。ここは一進一退(いっしんいったい=良くなったり悪くなったりすること)になりやすいので、早めの見立てが助けになります。

ここで視点をもう1つ。粉瘤は「皮膚のトラブル」というより、「皮膚の下に住む小さな部屋」みたいなものです。部屋がある限り、また中身がたまりやすい。床ずれのように「環境(圧とずれ)を変える」だけで終わらないことがある。ここが違いです。住まいの改装だけで済む話と、部屋そのものの整理が必要な話。粉瘤は後者に寄りがちです。

次の章では、粉瘤と見た目が似ていて、現場泣かせの「おでき」の話に進みます。粉瘤は袋、おできは感染。似ているけど、主役が違う。その違いを、ズキズキの正体からほどいていきます。

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第3章…おできはズキズキから~膿のサインを見逃さない~

結論を先に言うと、おできの初動で大事なのは「綺麗にする」だけではなく、膿(うみ)が溜まっているかどうかを見立てて、必要なら早めに医療へ繋ぐことです。おできは、皮膚の中で起きる“感染(かんせん=ばい菌が増えて炎症を起こすこと)”が主役になりやすい。ここは床ずれの「圧」とも、粉瘤の「袋」とも違う舞台です。電光石火(でんこうせっか=すばやい動き)で悪化することがあるので、慎重に、でも腰は重くし過ぎない。これが現場の匙加減になります。

おむつ交換で、いきなり「ズキッ」とした表情が出る。触れる前から、何となく本人が落ち着かない。皮膚を見たら、赤くて、少し盛り上がっていて、中心が白っぽい。ここで現場の脳内会議が始まります。「粉瘤?」「ただの擦れ?」「いや、おできかも」。……会議は短時間で終えたい。議長は私です。自分ツッコミは「議長、決断が遅い」です。

おできは「毛穴からの火事」~小さい火種が大きくなる~

おできは、毛嚢炎(もうのうえん=毛穴の根元の炎症)から始まって、せつ(皮膚の深いところまで炎症が広がる状態)へ進むことがあります。言い替えると、「毛穴の火種が、うっかり火事になりかける」。おむつ内は蒸れやすく、摩擦もあり、皮膚が疲れがちなので、火種が育ちやすいんです。

おできは“点”で始まることが多いのに、痛みは割りと主張が強い。ズキズキ、ジンジン。本人の反応が先に来ることもあります。ここが、床ずれの「静かな始まり」と対照的です。

見立てのキモは「膿がたまる合図」~中心が白くて波打って熱い~

おできで気をつけたいのは、膿瘍(のうよう=膿が袋状にたまること)になっているかどうかです。膿がたまると、自然に良くなるルートから外れて、排膿(はいのう=膿を外へ出すこと)が必要になることがあります。現場で出来るのは、診断ではなく“気づいて繋ぐ”こと。そこに価値があります。

合図として分かりやすいのは、中心が白っぽい、盛り上がりが強い、触ると熱い感じがある、痛みが増えていく、周りの赤みが広がる、という流れです。グローブ越しだと「熱い」が拾い難いこともあるけれど、目で見える白さや腫れ、本人の反応は拾えます。千差万別(せんさばんべつ=様子がいろいろ)の皮膚でも、ここは共通点が出やすいです。

現場の初動は「潰さない」~押したくなる気持ちは分かるけど止める~

おできは、押して出したくなるんですよね。白い中心を見ると、つい「出せば楽になるのでは」と思ってしまう。人間の脳は、目の前の“詰まり”を見ると解消したくなる習性があるのかもしれません。私はパンパンのゴミ袋を見ると、紐を引き締めたくなります。……はい、ここで小さなオチ。「締めたら破れました」。皮膚は破れないようにしたいので、押しません。

無理に潰すと、炎症が広がったり、周りの皮膚が傷ついたり、痛みが増えたりすることがあります。おむつ内では汚れが触れやすいので、なおさら慎重に。初動は、清潔にして、保護して、変化を見守る。ここは粉瘤の章と似ていますが、おできは感染が主役になりやすい分、悪化サインが出たら早めに医療へ、の優先度が上がります。

「粉瘤との違い」は過去のコリコリと経過の速さ

ここで、粉瘤とおできの見分けに触れておきます。どちらも赤く腫れますし、痛いこともある。だから難しい。でもヒントはあります。

粉瘤は「前からコリコリがいた」ことが多く、そこが荒れて赤くなる。おできは「急に出てきた」感が強く、毛穴を中心に育つことが多い。粉瘤は袋の都合で長引きやすい。おできは感染の都合で一気に悪化しやすい。こういう経過の違いは、現場の観察力が一番生きる場所です。

受診を迷ったら「広がる・熱・全身」を見る~おむつ内は早めが安全~

迷う時は、周囲の赤みが広がる、熱っぽい、痛みが増す、膿っぽい、本人の元気が落ちる、発熱がある。こういうサインがあれば、医療に繋ぐ方向が安全です。おできは、放っておいても落ち着くことはありますが、落ち着かない時の進み方が速い。ここが怖いところです。

新しい視点を入れるなら、おできは「場所」より「勢い」を見る病変だ、という見方です。床ずれは場所(骨の当たり)と圧、粉瘤は袋。おできは勢い。勢いがあるなら、早めに流れを変える。これが現場の守り方になります。温故知新(おんこちしん=昔の知恵を今に活かす)の感覚で、基本に戻るのが助けになります。

次の章では、ここまでの話を現場の手に落とし込むために、「手袋越しでも拾える」「忙しくても回せる」おむつ交換時の30秒皮膚チェックへ進みます。見分けの腕は、型があると育ちます。型はあなたを裏切りません。


第4章…手袋越しでも気づける~おむつ交換「30秒皮膚チェック」導入編~

結論を先に言うと、忙しい現場でも皮膚トラブルを拾う方法はあります。ポイントは、手袋越しの「触覚」に頼り過ぎず、目で見る順番を固定して、差分で気づくこと。30秒でやるのは、精密検査ではなく「早めに気づく仕組み作り」です。習慣は、用意周到(よういしゅうとう=先に整えておくこと)に勝ちます。

おむつ交換って、流れがあるじゃないですか。声かけ、体位、清拭(せいしき=やさしく拭いて整えること)、パッドの交換、後片付け。その流れの中に、30秒だけ「観察の型」を挟む。これだけで、床ずれの発赤も、粉瘤のコリコリも、おできのズキズキも拾いやすくなります。現場の味方は、気合いより型。気合いは、夜勤明けにどこかへ行きがちです。私の気合いも、よく迷子になります。自分ツッコミは「気合い、帰宅したら戻ってきて」です。

手袋越しでも拾える「見る順番」~場所は固定で視線は往復~

まず大事なのは、見る場所を固定することです。おむつ内は面積が広いので、毎回全部を完璧に見るのは現実的じゃない。そこで、観察ポイントを3か所に絞ります。仙骨(せんこつ=おしりの上の骨)、左右の臀部(でんぶ=おしり)、鼠径(そけい=足の付け根)。ここは圧も湿り気も集まりやすい場所です。

見方のコツは「左➡右➡真ん中➡もう一度左右」。左右を見比べると、赤みや腫れの差が出やすい。左右差(さゆうさ=片側だけ違う)は、手袋越しでも見つけやすい味方です。色が分かりにくい時ほど、差が助けになります。

発赤は「押して戻るか」~床ずれの入口を短時間で拾う~

発赤(ほっせき=赤み)を見つけたら、優しく押して、戻りを確認します。押して白くなって戻るなら、反応性発赤(はんのうせいほっせき=戻る赤み)に寄ることが多い。押しても白くならない、戻りが悪いなら、消えない発赤の可能性が出てきます。ここでやることは、判断の断定ではなく「除圧(じょあつ=圧を抜くこと)の優先度を上げる」ことです。

この確認は、グローブ越しでもできます。触覚が鈍っても、色の変化は目で追えます。床ずれは静かに始まる分、こういう小さな確認が効きます。百戦錬磨(ひゃくせんれんま=経験を重ねた状態)の先輩が短い言葉で言うやつですね。「ここ、圧抜こ」。はい、格好良い。

コリコリは「指先で探さない」~粉瘤は“見つけに行く”ほど迷う~

粉瘤(ふんりゅう)はコリコリが手掛かりです。ただ、手袋をしていると「探しに行く」と分かり難くなることがあります。そこでコツは、探すのではなく、普通の清拭の流れの中で“引っ掛かり”を拾うことです。拭く動作で「ここだけ引っかかる」「丸い山がある」と感じたら、そこを一呼吸だけ確認する。袋っぽいのか、浮腫みっぽいのか。ここも左右差が助けになります。

粉瘤っぽい時は、押して出そうとしない。揉まない。必要以上にいじらない。これだけ守ると、余計な悪化を減らせます。押したくなる気持ちが湧いたら、心の中で「それはボタンではない」と唱えましょう。私は押したくなるボタンを見ると押したくなるタイプなので、よく唱えます。……唱えても押しそうになるのが人間です。そこが人間らしい。いや、押しません。

ズキズキは「表情が教えてくれる」~おできは勢いを見る~

おでき(せつ・毛嚢炎(もうのうえん)=毛穴の炎症)は、本人の反応が先に出ることがあります。触れた瞬間の表情、体の強張り、声のトーン。痛みの訴えが少ない方でも、反応で分かることがある。ここは介護の感度が生きます。

見た目では、盛り上がり、中心の白っぽさ、周囲の赤みの広がり。膿瘍(のうよう=膿がたまること)の気配があるなら、早めに医療へ繋ぐ判断が安全になります。手袋越しに熱感が拾い難くても、勢いは目と反応で拾えます。おできは「勢い」。ここを覚えておくと迷いが減ります。

「30秒」の正体は観察じゃなくて“記録の種”~次の人に繋ぐ一言~

この30秒チェックの新しい視点は、皮膚を守る行為であると同時に、チームを守る行為だということです。皮膚の変化は、次の勤務者に繋がって初めて力になります。そこで大事なのは、長い報告より「伝わる一言」です。

「仙骨に薄い赤み、押すと戻る」「右臀部に小さなコリコリ、痛みなし」「左鼠径に赤い盛り上がり、触れると痛がる」。このくらいの短い言葉で、次の人の目が同じ場所に向きます。伝言は簡潔明瞭(かんけつめいりょう=短く分かりやすいこと)が正義です。長い文章は、読む前に眠気が勝つことがあります。夜勤の眠気は、手強いんですよね。私の眠気も、たまに優勝します。

ここまでが導入編です。まとめの付録では、この30秒チェックを「手順」と「声掛け例」に落とし込んで、明日からそのまま使える形にします。型が出来ると、現場は少し軽くなる。皮膚も、少し安心する。そんな“小さな安心”を積み重ねていきましょう。

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まとめ…皮膚を守るのは小さな習慣の積み重ね

結論をもう一度だけ言うと、おむつ内の「赤い・腫れる・ただれる」は、見た目が似ていても道筋が違います。床ずれ(褥瘡(じょくそう)=圧迫で皮膚の下が傷むこと)は圧とズレ、粉瘤(ふんりゅう=皮膚の下に袋が出来て中身が溜まること)は袋、おでき(せつ・毛嚢炎(もうのうえん)=毛穴の炎症)は感染と膿。主役が違うから、守り方の優先順位も変わります。それでも現場で迷わないための合言葉は1つで、「まずは気づく」。ここに尽きます。

床ずれは、静かに始まる発赤が入口でした。押して戻るか、左右差はあるか。見た目だけで決めず、圧(あつ=押される力)とずれ(せん断(せんだん)=皮膚の上と下がすべる力)を減らす方向へ持っていく。派手さはないけれど、これが王道です。気づけた人の手当は、たいてい美しい。私はいつも内心で「その手つき、職人だな」と思っています。思うだけで終わらせず、真似します。

粉瘤は、コリコリから始まる袋問題でした。赤く腫れた時も、感染だけが理由とは限らない。袋が荒れて炎症が広がることもあるので、押して出そうとしない、揉まない、必要以上にいじらない。清潔と皮膚保護(ひふほご=バリアで守ること)を丁寧に重ねながら、悪化のサインがあれば早めに相談へ繋ぐ。冷静沈着(れいせいちんちゃく=落ち着いていること)の出番です。なお、私は「押したくなる衝動」と日々闘っています。今日も勝ちました。

おできは、ズキズキから始まる勢いの病変でした。中心が白っぽい、腫れが増える、周りが広がる、痛みが強い。膿瘍(のうよう=膿がたまること)の気配があるなら、現場で抱え込まず医療へ繋ぐ判断が安全になります。おできは「勢い」を見る。ここを覚えると、迷いが短くなります。迷いが短いと、現場の空気が少し穏やかになるんですよね。

そして第4章の30秒チェック。手袋越しで気づき難いなら、触覚で勝負しない。目で見る順番を固定して、差分で拾う。観察は精密じゃなくて良い、同じ場所を同じ目線で見続けることが大事。ここが新しい視点でした。皮膚を守るのは、腕力じゃなく仕組み。習慣は、千思万考(せんしばんこう=たくさん考えること)よりも、静かな継続で勝ちにいきます。

最後に、ことわざを1つだけ置きます。「備えあれば憂いなし」。これは大袈裟な準備ではなく、おむつ交換の流れに30秒を差し込むこと。今日の30秒が、明日の皮膚の安心になります。小さな安心が積み重なると、こちらの心も軽くなる。そんな“ほっとり貯金”を、現場で増やしていけたら素敵です。

次は付録として、「おむつ交換時・30秒皮膚チェック手順(声かけ例つき)」を形にしていきましょう。読むだけで終わらせず、明日から回せる形に。……と書きつつ、私はまず自分のポケットにライトを入れます。入れたはずなのに、消えがちなんですけどね。どこへ行くの、ライト。


付録~おむつ交換時・30秒皮膚チェック手順(声かけ例つき)~

結論からいきます。おむつ交換の流れに「30秒だけ」皮膚チェックを差し込むと、床ずれ(褥瘡(じょくそう)=圧迫で皮膚の下が傷むこと)・粉瘤(ふんりゅう=皮膚の下に袋ができて中身がたまること)・おでき(せつ・毛嚢炎(もうのうえん)=毛穴の炎症)を、手袋越しでも拾いやすくなります。ここでやるのは診断ではなく、早めに気づいて守るための型です。有言実行(ゆうげんじっこう=言ったことをやる)で、明日から回せる形にしてあります。

声かけ例~まずは安心の土台を作る~

体に触れる前に、声だけ先に置くと、本人の表情や反応が分かりやすくなります。

「今からおむつを替えますね。少しひんやりするかもしれません」
「痛いところ、沁みるところがあったら、遠慮なく教えてくださいね」
「終わったら、さっぱりしますよ。一緒にいきましょう」

ここでのコツは、質問を1つだけ混ぜることです。返事が短くても、表情が教えてくれます。

30秒チェックの流れ~見る場所は3点で視線は左右差~

見る場所は毎回同じにします。仙骨(せんこつ=おしり上の骨)、左右臀部(でんぶ=おしり)、鼠径(そけい=足の付け根)。この3点だけで十分戦えます。

視線の動かし方は「左➡右➡真ん中➡もう一度左右」。左右差(さゆうさ=片側だけ違う)で拾うと、手袋越しの不利が消えていきます。

ステップ1~発赤チェック(床ずれの入口を拾う)~

赤み(発赤(ほっせき)=皮膚が赤く見える状態)を見つけたら、優しく3秒だけ押してみます。押して白くなって戻るなら、反応性発赤(はんのうせいほっせき=押されて赤くなったが戻る赤み)に寄ることが多いです。押しても白くならない、戻りが悪いなら、消えない発赤の可能性が出てきます。

この段階での「やること」は、薬探しではなく除圧(じょあつ=圧を抜くこと)です。体位を少し変える、当たりをやわらげる、しわを取る。皮膚の住まいを整えます。

声かけの一言はこれで十分です。
「ここ、ちょっと赤いですね。姿勢を少し楽にしますね」

ステップ2~コリコリチェック(粉瘤を“探さず拾う”)~

粉瘤は「探しにいく」と迷いやすいので、清拭(せいしき=やさしく拭いて整えること)の動きの中で拾います。拭く時に、そこだけ引っかかる、丸い山がある、という感触があれば一呼吸だけ確認します。

ここでの合言葉は、潰さない、揉まない、必要以上にいじらない。押したくなる気持ちは分かりますが、粉瘤は袋問題なので、押すほど荒れることがあります。

声かけの一言はこんな感じです。
「ここに小さなしこりがあるみたいです。痛みはどうですか」

私は以前、しこりに気を取られて手元がお留守になり、パッドのテープが手袋にくっつきました。テープ、君はそこじゃない…。

ステップ3~ズキズキチェック(おできの勢いを拾う)~

おできは、本人の表情が先に教えてくれることが多いです。触れた瞬間の顔、体の強張り、声のトーン。見た目では、盛り上がり、中心の白っぽさ、周りの赤みの広がりを見ます。

ここで気になるのが膿瘍(のうよう=膿がたまること)の気配です。中心が白く、腫れが増え、痛みが強い。こういう時は無理に押さず、医療へ繋ぐ準備をします。臨機応変(りんきおうへん=その場に合わせて動くこと)に、抱え込まないのが正解です。

声かけは短く優しく。
「ここ、触ると痛そうですね。無理しないで、整えていきますね」

仕上げの10秒~皮膚を「守る」までが交換~

チェックが終わったら、皮膚の仕上げで差が出ます。濡れを残さず、擦らず、整える。皮膚保護(ひふほご=バリアで守ること)は、薄くむらなく。パッドのシワを減らして、ずり落ちを作らない。ここまでやると、30秒チェックが生きてきます。

この一言を添えると、本人も落ち着きやすいです。
「さっぱりしましたね。すぐ楽になりますよ」

引き継ぎ用「ひと言テンプレ」~次の人の目を同じ場所へ~

長文より、場所と変化が伝わる短い言葉が効きます。記録や口頭で、そのまま使えます。

「仙骨に薄い赤み。押すと戻る。除圧意識」
「右臀部に小さなコリコリ。痛みなし。経過見る」
「左鼠径に赤い盛り上がり。触れると痛がる。広がり注意」

これがあると、次の人の視線が同じ場所に向きます。チームの安心が増える、というやつです。私はこれを、こっそり「見守りスイッチ」と呼んでいます。押すのはボタンじゃなくて、観察のスイッチです。

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今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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