他人の言葉に傷ついた心へ~優しい治癒の魔法100のアイデア~
目次
はじめに…他人の言葉が刺さる時代に小さな魔法を
他人のひと言に、グサッと心を刺されたことはありませんか。学校での何気ないひと言、職場で上司や同僚に言われた一文、家族のつもりのない一言、友人や恋人とのスレ違い、そしてSNSに流れてきたコメント。その人にとっては軽い冗談でも、自分の胸の中ではいつまでもチクチク痛み続けることがあります。
「気にしすぎだよ」「そんなつもりじゃなかったんだけど」そう言われることも多いけれど、言われた側の痛みは、言った本人には分かりません。だからこそ、誰かの言葉で傷ついてしまった自分を、「弱い」と責める必要はないのだと思います。目に見えないだけで、心にもちゃんと「切り傷」や「打撲」は出来てしまうからです。
ただ、現実の毎日は待ってくれません。学校も仕事も家事も介護も、明日の予定は容赦なくやってきます。「本当はゆっくり休みたいのに」「あの言葉を思い出してまた苦しくなるのに」、時間だけは前に進んでいく。そんな時、私たちはつい、感情をギュッと飲み込んでしまいがちです。我慢してやり過ごすか、爆発するまで溜め込むか、そのどちらかになってしまうことも少なくありません。
この文章では、その2つ以外の道を、そっと増やしてみたいと思いました。それが、題名にもある「治癒の魔法」です。ここで言う魔法は、特別な才能でもスピリチュアルな何かでもなく、「自分の心を少しラクにする小さな行動」のこと。深呼吸をする、温かい飲み物を一杯ゆっくり飲む、自分に掛ける言葉を変えてみる、信頼できる人に一言だけ助けを求めてみる。そんな、今日からできる工夫を、合わせて100個ほど集めてみることにしました。
構成は全部で4つの章に分かれています。
第1章では、その場をしのぐための即効性のある魔法たちを。
第2章では、心の物語を書き換えるように、考え方やイメージを少しずつ変えていく魔法たちを。
第3章では、体と暮らしを整えることで、心を守るセルフケアや日常習慣の魔法たちを。
第4章では、人との繋がりやこれからの自分を守るための、長期戦に役立つ魔法たちを紹介していきます。
とはいえ、「100個全部を覚えて完璧にやろう」とする必要はまったくありません。読んでくださるあなたが、「これは自分にも出来そうだな」と感じるものを、1つか2つだけでも拾ってくれたら、それで十分です。落ち込んだ日の夜、布団の中でそっと思い出せるような、小さなカードを1枚ポケットにしまうような気持ちで、この文章と付き合ってもらえたら嬉しいです。
誰かの言葉に傷ついてしまうのは、とても人間らしいことです。この文章が、そんな自分を少しだけ優しく抱きしめ直す切っ掛けになれば――。そんな願いを込めて、これから「治癒の魔法」の世界を、一緒に覗いていきましょう。
[広告]第1章…その場を守る即効ヒーリング~今すぐ使える25の魔法~
誰かの言葉に傷つく瞬間というのは、たいてい心の準備がありません。油断している時ほど、不意打ちのように刺さってきて、「あ、今傷ついたな」と気づいた時には、もう胸の辺りがギュッと固くなっているものです。
この章では、そんな「今この場」の自分を守るための魔法を集めました。大切なのは、たった1つでも「自分なりの対処」があることです。完全に平気な顔をしなくてもいいけれど、「これだけは自分を守るためにやる」と決めておけると、心は少しだけ安心します。
ここから紹介する25個の魔法は、どれも特別な道具や才能はいりません。深呼吸、姿勢、心の中の言葉、ちょっとした身体の動き。仕事中でも学校でも、家でも、人前でもこっそり使える「その場しのぎ」だけれど、決して侮れない、小さな味方たちです。
心と呼吸をととのえる小さな魔法たち
【魔法01】~深呼吸3回のバリア~
心がザワッとしたら、まず鼻からゆっくり息を吸い、口から長めに吐きます。4秒吸って6秒吐くのを目安に、3回だけ。たったこれだけでも、からだの中の「戦うモード」を少し弱めてくれる、小さなバリアになります。
【魔法02】~胸に手を当てて自分を抱きしめる~
右手でも左手でもいいので、そっと胸の辺りに手を当ててみます。「今びっくりしたね」「今の言葉、痛かったね」と心の中で呟きながら、数秒だけ手の温もりを感じてみてください。誰にも気づかれない、さりげないセルフハグです。
【魔法03】~目を閉じて10秒だけ世界をオフにする~
その場でいきなり瞑想をする必要はありません。ただ、目を閉じてゆっくり10秒数えるだけ。耳から入ってくる音はいったん流し、「今は自分の内側だけを見る時間」と決めることで、心に小さな避難所ができます。
【魔法04】~足の裏に意識を戻すグラウンディング~
嫌な言葉を聞いた瞬間、意識は頭の中へ一気に飛んでいきます。そこで敢えて、「今、自分の足の裏はどこに触れているかな」と考えてみます。靴の感触、床の硬さ、椅子に座っているなら太ももの重さ。体の感覚に戻ることで、心のグルグルから少し離れることができます。
【魔法05】~顎を少し上げて姿勢を立て直す~
ショックを受けた時、人は自然と背中を丸め、目線を落としてしまいます。そこで、ほんの少しだけ顎を上げて、背筋をスッと伸ばしてみてください。それだけで、「私は潰れていない」「今もここに立っている」という感覚が生まれ、心もわずかに持ち上がります。
【魔法06】~温かい一口でお腹から落ち着かせる~
近くにお茶やコーヒーがあれば、温かい一口をゆっくり飲みます。飲み込む瞬間、お腹のあたりが少し温かくなるのを感じて、「ここが自分の中心だ」と意識してみてください。頭の中だけでなく、お腹にも心があるような気持ちで飲むと、小さな安心が広がります。
その場からそっと距離をとるための魔法
【魔法07】~3メートルだけ離れる小さな退避~
言われた瞬間「この場から消えたい」と感じたら、心の中で自分に合図を出します。「ここで一端3メートル離れよう」。トイレに立つ、窓際に行く、別の机に資料を取りに行く。理由はなんでも構いません。物理的な距離は、そのまま心の距離になってくれます。
【魔法08】~トイレは心の避難所にしてしまう~
トイレに入ったら、ただ用を足すだけの場所ではなく、「少し気持ちをリセットする場所」と決めてしまいます。扉を閉めたら、深呼吸を2~3回、鏡があれば自分の顔をちらりと見て、「よし、いったん区切り」と心の中で声をかける。数十秒のことでも、「自分で自分を連れ出せた」という感覚が、心の支えになります。
【魔法09】~窓の外に視線を逃がす~
会議中や教室でその場を離れられない時は、せめて視線だけでも外へ。窓の外の空、雲、遠くの建物、木の葉。たった数秒でも「別の世界」を目に入れることで、「ここだけが世界の全てじゃない」と思い出せます。
【魔法10】~ペンやスマホを持ち直して気持ちを切り替える~
手の中のものを、敢えて持ち直してみます。ペンをクルッと回して持ち替える、スマホを一度伏せてまた持つ。ほんの一瞬ですが、「さっきまで」と「今から」に境目を作る、小さな儀式になります。
【魔法11】~席に座り直して「今の自分」をもう一度選び直す~
椅子に座っているなら、腰を浮かせて座り直してみます。その時、「さっきの自分は一度ここで終了。ここからは、少し落ち着きを取り戻した自分でいこう」と心の中で宣言します。同じ場所にいても、気持ちのスタートをやり直していいのです。
頭の中のダメージを軽くする心の魔法
【魔法12】~「今は保留」にしてしまう~
相手の言葉がどうしても頭から離れない時、「これは今、結論を出さなくていい」と決めてしまいます。心の中で「この件は、今日の夜にもう一度考える」「お風呂の時にだけ思い出していい」と、考える時間を先送りにするのです。それだけで、「今この瞬間」を守る力になります。
【魔法13】~言葉をただの音に変える~
刺さった言葉を、その人の性格や意味とは切り離して、頭の中で敢えて早口で唱えてみます。何度も繰り返しているうちに、「意味のある呪文」から「ただの音」になってきて、少しだけ威力が弱まっていきます。
【魔法14】~心の中にストップサインを立てる~
嫌な言葉を何度も思い出してしまう時、心の中に大きな赤い「止まれ」の標識をイメージします。グルグルと考え始めた瞬間に、その標識を思い浮かべて、「今はここまで」と自分で区切りを付けます。考えないようにするのではなく、「ここまでにしておく」と優しく区切るイメージです。
【魔法15】~「私は今、傷ついている」と認める~
強くあろうとして、「別に平気」「気にしてない」と無理に振舞ってしまうことがあります。そんな時こそ、心の中で正直に、「私は今、傷ついている」と呟いてみます。認めてあげるだけで、心は少しホッとします。
【魔法16】~10歳の自分に話し掛ける~
頭の中に、小学生くらいの自分をイメージします。今と同じ言葉をその子が言われたとしたら、あなたはどう声を掛けるでしょうか。「大丈夫だよ」「あなたは悪くないよ」と、その子に向けて優しい言葉を掛けてあげることで、自分自身も救われます。
【魔法17】~相手の言葉を「相手の世界の話」として置き直す~
「今のは、この人の世界ではそう見えている、という話なんだ」と心の中で言い直します。世界中の人がそう思っているわけではない、と意識するだけで、「絶対的な事実」ではなく「一意見」に変わります。
体をちょっと動かして心を守る魔法
【魔法18】~肩を竦めてストンと落とす~
肩にグッと力を入れて、耳に近づけるように持ち上げ、そのままストンと落とします。これを数回、繰り返すだけで、緊張で強張った首や肩が少し緩みます。心の緊張は、体の緊張を緩めることでほどけていくことも多いのです。
【魔法19】~手の平をギュッと握ってパッと開く~
両手をギューッと5秒くらい握りしめて、そのあと一気にパッと開きます。指先まで血が巡る感覚と一緒に、「今のイヤな感じも、少し外へ放り出した」とイメージしてみてください。
【魔法20】~ゆっくり首を回して視界を変える~
首をグルリと大きく回し、視界に入る景色を少し変えます。天井を見たり、斜め上を見たり、真正面から視線を外すことで、心もほんの少しだけ自由になります。
【魔法21】~背もたれに10秒だけ体を預ける~
椅子にもたれかかり、体全体の重さを背もたれに預けるようにして、10秒だけ目を閉じます。「今は世界を支えなくていい。椅子に任せていい」と自分に許可を出す感覚で、力を抜いてみてください。
自分を責めないための合言葉の魔法
【魔法22】~「よく耐えたね」と呟く~
傷ついた直後の自分に向かって、「よくその場にいたね」「よく最後まで話を聞いたね」と心の中で声をかけます。結果がどうであれ、その場にいた事実だけでも、十分頑張っています。
【魔法23】~「今、怒ってもいいし、悲しくてもいい」と許可を出す~
「こんなことで傷つくなんて」と自分を責めそうになったら、「今、怒っていてもいいし、悲しくてもいい」と認めます。感情にOKを出すことで、爆発せずに静かに流れていきやすくなります。
【魔法24】~「これは今日のワンシーン」と名付ける~
頭の中で、ドラマや映画のように「今日の第〇話」とタイトルをつけてしまいます。「今日は『上司の一言にグサッときた回』か」と、物語の1場面として扱うことで、人生全体がそれだけで決まる感覚から少し離れることができます。
【魔法25】~「私はここにいていい」と心の中で宣言する~
相手の言葉がキツイほど、「自分はここにいてはいけないのではないか」という不安が生まれます。そんな時こそ、静かに「私はここにいていい」と心の中で宣言してみてください。声には出さなくても、その言葉は自分の中の「居場所」を守る力を持っています。
――
ここまでが、第1章の25個の魔法です。全てを一度に覚える必要はなく、「これは自分にも出来そうだな」と感じたものを、2~3個だけ頭の片隅に置いておくだけで十分です。次の章では、もう少しゆっくりと、心の物語そのものを書き換えていくような、考え方とイメージの魔法たちを見ていきましょう。
第2章…心の物語を書き換える~考え方とイメージの25の魔法~
誰かのキツイひと言に傷ついた後、何度も頭の中でその場面を再生してしまうことがあります。相手の顔、声のトーン、自分が固まってしまった瞬間。時間が経っても、ふとした切っ掛けで思い出して、胸の辺りがギュッと痛む。そのたびに、「あの時、もっとこう言い返せていたら」「自分がダメだから言われたんだ」と、自分を責める物語が、心の中で勝手に作られていくことがあります。
でも実は、その「物語」は絶対の真実ではありません。同じ出来事でも、見る角度や言葉の選び方を変えることで、まったく違う意味を持たせることが出来ます。過去そのものは変えられないけれど、「過去をどう受け取るか」という物語なら、これから少しずつ書き換えることが出来るのです。
この章では、考え方とイメージを使って、心の中のストーリーを柔らかく書き換えていく25個の魔法を紹介します。難しい心理学の用語は使いません。「物の見方を少しずらしてみる」「自分へのラベルを貼り替えてみる」「心の中に優しい映像を流してみる」。そんな、心の眼鏡をかけ替えるようなイメージで読んでみてください。
ストーリーを書き換えるための魔法
【魔法26】~タイトルを付け直す~
嫌な出来事を思い出した時、それに新しいタイトルをつけてみます。「上司に怒られた日」ではなく、「上司の機嫌が悪かった朝」や「私は静かに生き延びた日」など。タイトルを変えるだけで、物語の主役が「相手」から「自分」に戻ってきます。
【魔法27】~ナレーションを優しい声にする~
頭の中で、自分を責める声が流れてきたら、それを「優しいナレーター」に交代させます。テレビのドキュメンタリーで聞くような、落ち着いた語り口を思い浮かべ、「この日、彼女はとてもがんばっていたが、思わぬひと言に傷ついてしまった」と、第3者のように語らせてみます。自分を責めるモノローグから、一歩離れる切っ掛けになります。
【魔法28】~視点をカメラのように動かす~
出来事を思い出す時、いつも自分の目線からだけで見ていませんか。心の中でカメラを引いて、天井から見下ろすようにしてみると、「部屋の中の一人の人」としての自分が見えてきます。また、ドアの外からそっと覗き込むような視点で眺めてみると、「あの場には、あの人なりの事情もあったのかもしれない」と、少しだけ違う視点が生まれます。
【魔法29】~「もしドラマなら第何話?」と考える~
自分の人生をドラマだと思って、「これは第何話くらいの出来事かな」と考えてみます。長いシリーズの中の、ただの1話だとしたら、「この話だけで全部が決まるわけじゃないな」と、少し笑えるかもしれません。エンディングはまだまだ先、今は途中の回だと思えると、心に余白が出来ます。
【魔法30】~「続きはまだ書かれていない」と知る~
嫌な言葉を言われた時、「もう終わった」と感じてしまうことがあります。でも、物語の「その後」は、まだ書かれていません。数年後に「あの出来事があったからこそ、今の自分がある」と語れるかどうかは、これからの自分の行動次第。「物語のペンを持っているのは、まだ自分だ」と意識してみてください。
【魔法31】~「本当に?」と優しく問い返す~
「自分はダメだ」「嫌われているに違いない」と決めつけそうになったら、心の中で「本当に?」と静かに問いかけてみます。強く否定する必要はありません。ただ、「そうと決まったわけではないよね」と、別の可能性に少しだけ目を向けます。
【魔法32】~事実と解釈を分けてみる~
紙や頭の中で、「事実」と「解釈」を分けてみます。「事実」は、「〇〇さんにこう言われた」「その場では何も言い返さなかった」など、誰が見ても同じ部分。「解釈」は、「私は仕事が出来ないと思われたに違いない」など、自分の心が付け足した意味の部分です。この2つを分けてみるだけで、「自分を傷つけていたのは、言葉そのものというより、自分の解釈だったのかもしれない」と気づくこともあります。
自分へのラベルを貼り替える魔法
【魔法33】~「ダメなところ」ではなく「特徴」と言い換える~
「私は優柔不断」「私は気が利かない」と思った時、その言葉の前に「そういう特徴がある」と付けてみます。「私は優柔不断という特徴がある人間」「気が利かないところもあるけれど、別の良さもある人」と変換すると、それは「欠点」ではなく「性格の一部」になります。
【魔法34】~ひと言ラベルを2枚用意する~
自分にネガティブなラベルを貼りそうになったら、その反対側に、もう1枚ラベルを用意してみます。「気が弱い」の裏には、「相手の気持ちを察しやすい」。「慎重すぎる」の裏には、「大きな失敗をしにくい」。どちらも自分の一部であり、状況によって長所にも短所にも変わる、と知ることが大切です。
【魔法35】~他人の物差しをそっと置き直す~
「もっと強く言い返さないと」「あれくらい流せないと社会でやっていけない」と他人に言われた言葉は、「その人の物差し」です。心の中で、相手の物差しを机にそっと置き、「私は私の物差しで生きていい」と呟きます。自分の基準を取り戻すことは、心の防具を着直すことでもあります。
【魔法36】~「まだ途中」のラベルを貼る~
何かが上手く出来ない自分に、「出来ない人」というラベルを貼ってしまうのは、とてもつらいことです。そこで、「まだ練習中」「まだ途中」というラベルを貼り直します。ピアノでも漢字でも、最初から上手に出来る人はいません。人付き合いだって、練習と経験の積み重ねで上達していくものなのです。
【魔法37】~自分を友だちのように紹介してみる~
心の中で、誰かに向かって「この人はね、〇〇なところが凄くいいんだよ」と、自分のことを友だちのように紹介してみます。「落ち込みやすいけど、その分、人の痛みに敏感なんだ」とか、「不器用だけど、真面目に取り組む人なんだ」とか。誰かを紹介する時のような優しい目線で自分を見てみると、自分に向ける言葉も変わってきます。
【魔法38】~「今日の自分」を一言だけ褒める~
1日が終わる前に、「今日の自分」に一言ラベルを貼ります。「今日の私は、よく頑張った」「よく耐えた」「ちゃんと休もうとしていてエライ」。完璧じゃなくていいので、「0点ではない自分」を見つけてラベルを貼る練習をしてみてください。
イメージと言葉の力を使う魔法
【魔法39】~心の中に安全な部屋を作る~
想像の中で、自分だけの「安全な部屋」を作ります。ドアを閉めれば、誰にも入ってこられない静かな場所。ふかふかのソファ、好きな飲み物、本や音楽。嫌な言葉を思い出した時、心の中でその部屋に戻り、「ここにいる間だけは、誰にも傷つけられない」とイメージしてみてください。
【魔法40】~傷ついた心を絵本のキャラクターにする~
胸が痛い感じを、絵本の中の小さなキャラクターだと思ってみます。丸くてフワフワの生き物でも、泣き虫の妖精でも構いません。その子がしょんぼりして座っている姿を思い浮かべ、「よしよし」と撫でてあげるイメージをすると、不思議と胸の痛みが和らぐことがあります。
【魔法41】~心の黒い靄を色と形で描いてみる~
モヤモヤした気持ちを、頭の中で色と形にしてみます。真っ黒な雲、ドロドロしたインク、ギザギザのトゲ。それを、ゆっくり水で薄めていく、風で吹き飛ばしていく、光で溶かしていくイメージを重ねると、感情の強さが少しずつ変化していきます。
【魔法42】~自分の名前をやさしく呼ぶ~
心の中で、自分の名前をやさしく呼びます。「〇〇、よく頑張ってるね」「〇〇、今日はつらかったね」と、親しい人に話しかけるように。自分の名前を優しいトーンで呼ぶことは、それだけで心を宥める効果があります。
【魔法43】~お守りフレーズを1つ決める~
落ち込んだ時にだけ唱える「お守りのひと言」を1つ決めておきます。「それでも私は生きてる」「私は私の味方だ」「今日はここまででいい」など、短くて覚えやすいものが良いでしょう。つらい言葉で上書きされそうな時、このフレーズで自分の心を守ります。
【魔法44】~声に出さなくてもいい日記を書くように心で話す~
「日記を書く」のが難しい人は、心の中で日記を書くイメージをしてみます。「今日、こんなことがあって、私はこう感じた」と、静かに心の中で文章を紡ぐのです。誰にも見せない「心の日記」は、感情を整理するための、大切な場所になってくれます。
時間軸を楽にする魔法
【魔法45】~「今の自分」と「未来の自分」を並べてみる~
目を閉じて、「今の自分」と、数年後の少し落ち着いた自分が並んで座っている姿を想像します。未来の自分が、今の自分にどんな言葉をかけてくれるか、想像してみてください。「よくここまで来たね」「あの時のこと、もうそんなに痛くないよ」と語りかけてくれるかもしれません。
【魔法46】~今日のつらさに期限をつける~
ずっとこのままつらいように感じる時、「この気持ちが一番強いのは、せいぜい今週いっぱいまで」と、敢えて期限を決めてみます。もちろん正確には分からなくても構いません。「永遠に続く痛み」ではなく、「いつかは緩んでいく波の1つ」と意識できるだけで、心は少し楽になります。
【魔法47】~過去の自分にもらった優しい言葉を思い出す~
これまでの人生で、誰かからもらった優しい言葉を思い出してみます。先生、友人、家族、職場の人。「ありがとう」「助かったよ」「あなたがいてくれて良かった」と言われた瞬間が、1つはあったはずです。その言葉もまた、同じ世界の中に存在する「事実」です。
【魔法48】~1日の中で「回復タイム」を決めておく~
1日のうち、「ここからここまでは回復の時間」と決めます。お風呂の時間、寝る前の10分、通勤電車の中など。その時間だけは、自分を責める考えを脇に置き、「今日はここまで生き延びた自分を労う時間」にしてみてください。
【魔法49】~「あの時の自分」に手紙を書く~
紙でも頭の中でも良いので、傷ついた場面の自分宛てに手紙を書いてみます。「あの日のあなたへ」と始めて、「あの場であなたはよく頑張っていた」「何も言い返せなかったのは弱さではなく、その場を壊さないようにした優しさでもあった」と、今の自分の視点から伝えたいことを書いていきます。時間を越えて自分を抱きしめ直すような、不思議な体験になります。
【魔法50】~「これから出会う人」は今の自分を知らないと気づく~
これから先に出会う人たちは、今のつらい出来事を知りません。初対面の人は、「今日のあなた」からあなたを見ます。今の痛みが、自分の全てではないし、これからの人間関係を全て決めてしまうわけでもない。そのことに気づくだけでも、未来に向けてそっと息がしやすくなります。
――
心の物語を書き換えることは、一気に性格を変えることではありません。ほんの少し、視点や言葉をずらしてみることで、「自分はダメだ」という単色のストーリーに、別の色を足していく作業です。
すべての魔法を試す必要はありません。「これは今の自分に合いそうだな」と思うものを、1つか2つだけそっと持ち帰って、気が向いた時に使ってみてください。次の第3章では、心だけでなく、体と暮らしを整えることで、自分を守る魔法たちを紹介していきます。
第3章…体と暮らしを整える~セルフケア&日常習慣の25の魔法~
心が傷ついた時、一番先に反応しているのは、実は「体」かもしれません。胸がドキドキする、肩がカチカチに固まる、眠れなくなる、食欲が無くなる。逆に、必要以上に食べてしまったり、スマホを離せなくなったりすることもあります。
私たちはつい、「心の問題だから、心だけをなんとかしなきゃ」と考えてしまいますが、体と暮らしの土台を整えることは、心を回復させるためのとても大切な近道です。この章では、特別なことではなく、日常の中でできる「セルフケア」と「生活習慣」の魔法を25個集めました。全部を完璧にやる必要はなく、「これなら今の自分でも続けられそう」と思うものを、1つ、2つ拾ってもらえたら十分です。
体を休めるための優しい魔法
【魔法51】~寝る前30分だけ画面を休ませる~
心が擦り減っている日は、寝る前の30分だけでも、スマホやパソコンの画面から離れてみます。代わりに、お茶を飲む、本をながめる、音楽を聴くなど、目を労わる時間にしてあげます。光の刺激が少なくなると、体は「そろそろ眠る時間だ」と気づきやすくなり、心の緊張もゆっくりほどけていきます。
【魔法52】~眠れない夜は「横になっているだけでも合格」にする~
つらいことがあった夜ほど、なかなか眠れないものです。そんな時、「寝つけない自分はダメだ」と責めるのではなく、「布団の中でじっとしているだけでも、体は休めている」と考えてみてください。目を閉じて横になっているだけでも、筋肉は緩み、脳も少しずつリセットされていきます。
【魔法53】~朝にカーテンを開けるのを日課にする~
元気がないとつい、部屋を暗いままにしてしまいがちです。でも、朝いちばんにカーテンを開けて光を入れるだけでも、「今日が始まった」という合図になります。たとえ5分しか起きられなくても、「カーテンを開けることに成功した自分」を小さく褒めてあげてください。
【魔法54】~短いストレッチで体の鎧を外す~
肩、首、背中は、心が緊張しているとすぐに固くなります。大きな体操でなくていいので、肩を回す、首をゆっくり回す、背筋を伸ばして両手を上に伸ばすなど、1分だけでもストレッチをしてみましょう。体の鎧が少し外れると、心の鎧も緩みやすくなります。
【魔法55】~お風呂を「心の洗濯タイム」にする~
シャワーだけで済ませる日が続いていたら、ぬるめのお湯にゆっくり浸かる日を作ってみます。湯船に入ったら、「今日ついた心のホコリを洗い流す時間」と決めて、肩まで浸かり、フウッと息を吐いてみましょう。上がる頃には、さっきまでの苦しさが、ほんの少し薄くなっているかもしれません。
【魔法56】~温かい飲み物でお腹を守る~
冷たい飲み物ばかり飲んでいると、お腹や内側が冷えてしまいます。つらい出来事があった日こそ、白湯やハーブティー、スープなど、温かい物をゆっくり飲んでみてください。「自分の内側を優しく温めている」と意識しながら飲むと、心にも仄かな火がともります。
【魔法57】~食欲がない日は「ひとくちだけ」を目標にする~
ショックを受けると、何も食べたくない日もあります。そんな時は、「きちんとした食事をしなきゃ」と無理をする代わりに、「ひとくちだけ何かを食べてみよう」と目標を下げてみます。ヨーグルト、バナナ、スープなど、口に入れやすいもので構いません。ひと口でも食べられたら、「体を見捨てずに済んだ自分」をしっかり認めてあげてください。
【魔法58】~食べ過ぎてしまった日には責めない約束をする~
逆に、ストレスから食べ過ぎてしまう日もあります。後から自己嫌悪に襲われそうになったら、「今日はよく頑張ったご褒美だったんだ」と、自分に言い聞かせてみましょう。大事なのは、「食べ過ぎた自分を罰する」ことではなく、「また明日から少しずつ整えればいい」と緩やかに戻っていくことです。
日常のリズムを整える魔法
【魔法59】~起きる時間だけを大体で揃えてみる~
生活リズムが崩れると、心も不安定になりやすくなります。忙しくて眠る時間を揃えるのが難しい場合でも、「起きる時間だけは、大体同じくらいにする」と決めてみると、体のリズムが少し整います。完璧でなくていいので、「大体この時間に起きる自分」という軸を作ってあげてください。
【魔法60】~1日1回「外の空気を吸う」~
仕事や学校で落ち込んだ日ほど、家に帰るとそのまま布団に潜りたくなるものです。そんな時でも、出来れば1日1回、玄関の外やベランダに出て、外の空気を胸いっぱい吸ってみてください。空気の温度、風の匂い、季節の気配。自分の世界が「部屋の中だけ」ではないと感じられると、心の窓も少し開きます。
【魔法61】~「朝の決まりごと」を1つだけ決める~
落ち込みが続くと、朝起きてから何をすればいいのか分からなくなることがあります。そこで、「朝起きたら、必ずコップ一杯の水を飲む」「必ずカーテンを開ける」など、簡単な決まりごとを1つだけ作ってみます。その小さな行動は、「今日も始められた」という実感に繋がります。
【魔法62】~「寝巻きから普段着に着替える」を心のスイッチにする~
在宅で過ごす日やお休みの日でも、起きたら寝巻きから普段着に着替えてみます。おしゃれをする必要はありません。「部屋着でもいいから、寝る服とは別の服」に着替えるだけで、「今日の自分」を動かすスイッチになります。
【魔法63】~夜に「今日あった良かったこと」をひとつだけ思い出す~
なかなか書く気力がなくても、布団に入った後に「今日あった良かったこと」を1つ思い出してみます。美味しい物を食べた、綺麗な空を見た、誰かが笑ってくれた。
些細な事で構いません。嫌な出来事に全部を上書きされないように、「良かったこと」にもちゃんと光を当ててあげる習慣です。
【魔法64】~週に1回だけ「何もしない時間」を予約する~
「ちゃんとしなきゃ」と頑張り続ける人ほど、休むことに罪悪感を覚えてしまいます。そこで、一週間のうちどこかで「何もしない時間」を予め決めてしまいます。その時間だけは、ゴロゴロしても、ボーッとしても、好きなお菓子を食べてもOK。予約したお休みは、「さぼり」ではなく「定期メンテナンス」です。
空間と持ち物を整える魔法
【魔法65】~机の上を30センチだけ片付ける~
部屋が散らかっていると、それだけで心もザワザワしてきます。とはいえ、一気に片付けるのは大仕事です。そこで、「机の上の30センチだけ」「テーブルの端だけ」など、範囲を小さく区切って片付けてみます。小さなスペースでも、整った場所が一か所あるだけで、心の落ち着き場所になります。
【魔法66】~ゴミをひとつ捨てる儀式~
外から帰ってきた時や、気持ちが沈んだ時に、「何か1つゴミを捨てる」と決めてみます。空きペットボトル、いらない紙切れ、壊れたボールペン。物を1つ手放すたびに、「今日も少しだけ、自分を守る行動が出来た」と感じることが出来ます。
【魔法67】~お気に入りのカップやマグを1つ決める~
疲れた時には、そのカップで飲み物を飲む、という「ささやかな儀式」を作ります。そのカップを見るだけで、「ここからは休む時間だ」と心が準備を始めます。自分だけの小さな御守りのような存在です。
【魔法68】~寝る場所の近くに「安心の物」を置く~
枕元やベッドの近くに、「触るとホッとする物」を置いておきます。柔らかいタオル、ぬいぐるみ、好きな香りのハンカチ、本など。眠る前にそれに触れながら、「今日もよく生き延びたね」と自分に声をかける時間を少し作ってみてください。
【魔法69】~部屋に1つだけ「好きな色」を増やす~
カーテン、クッション、文房具、マグカップ。何でもいいので、「この色を見ると少し元気が出る」という色を部屋のどこかに増やしてみます。色はそれだけで、心の状態にジワッと影響します。お気に入りの色が目に入るたびに、「ここは自分の居場所だ」と感じやすくなります。
小さな楽しみを仕込む魔法
【魔法70】~「落ち込んだ日のためのおやつ」を用意しておく~
普段は食べない、ちょっと特別なおやつをひとつ決めておきます。それは、「すごく落ち込んだ日だけ食べていい」と自分の中でルールにします。嫌なことがあった時、「あ、今日はあのおやつを解禁できる日だ」と思えたら、ほんの少しだけ心が浮上します。
【魔法71】~好きな音楽リストを「回復用」として作る~
元気いっぱいの曲でも、静かでやさしい曲でも構いません。「傷ついた時に聴く用のプレイリスト」をひとつ作っておきます。その音楽が流れ始めた瞬間から、「ここからは回復タイムだ」とスイッチが入るようになります。
【魔法72】~日常の中に「楽しみポイント」を1つ仕込む~
例えば、「帰り道にコンビニで新作スイーツをチェックする」「お風呂で好きな香りの入浴剤を使う」「寝る前に好きな漫画を数ページ読む」など。一日のどこかに、「ここまで頑張ったら、これが待っている」という小さな楽しみを置いておきます。それは、つらい出来事に押し潰されそうな時の、小さな支えになります。
【魔法73】~「誰にも見せない落書き帳」を持つ~
うまく描く必要はまったくありません。ぐるぐる線を描いたり、顔文字のような落書きをしたり、その日の気持ちを色や形にして吐き出すノートを持ちます。文字にするのがしんどい日でも、ペンを動かすことで心の中のモヤモヤを外に出すことができます。
【魔法74】~「心が折れた時だけ読む本」を決める~
お気に入りの絵本、小説、詩集、マンガなど、「読むと少し心が軽くなる一冊」を決めておきます。本棚や電子書籍の中で、その本は「心が折れた時専用」にしておきましょう。ページを開くだけで、「あ、私はもう回復の一歩を踏み出している」と感じられるようになります。
【魔法75】~自分のペースで散歩をする~
体力や環境が許すなら、短い時間でも散歩をしてみます。速く歩く必要はなく、ゆっくりで構いません。道ばたの花、空の色、風の強さ、鳥の声。「今ここにあるもの」に目を向けながら歩くと、自分が世界とちゃんと繋がっている感覚が少し戻ってきます。
――
体と暮らしを整えることは、派手ではないけれど、とても大きな力を持っています。誰かにひどいことを言われた時、その場では何も言い返せなかったとしても、「自分の体を休ませ、暮らしのペースを守る」という行動は、立派な自己防衛です。
全部をやろうとしなくて大丈夫です。「これなら今の自分でも出来そうだ」と感じる魔法を、1つだけでも生活の中に連れて帰ってみてください。
次の第4章では、人との繋がりや、これからの自分を守るための、少し長い目で見た魔法たちをお届けします。「一人で抱え込まない」ための工夫を、一緒に探していきましょう。
第4章…人との繋がりと未来を守る~長期戦のための25の魔法~
他人の言葉に傷つくのは、いつも「誰か」との関係の中で起こります。だからこそ、本当に心を守りたいなら、「自分一人でどうにかする」だけでは限界があります。頼れる人との繋がりを増やすこと、距離をとる人を選び直すこと、これから出会う人たちとの関係を少しずつ育てていくこと。この章では、そんな「長い目」で自分を守るための魔法を、ゆっくり並べていきます。
傷つけてくる人との関係をただ我慢するのではなく、「どこまで近づくか」と「どこからは離れるか」を、自分の軸で決めていくこと。そして、安心して話せる人や場所を少しずつ増やしていくこと。その積み重ねが、未来の自分を守る大きな力になります。
頼れる人との繋がりを育てる魔法
【魔法76】~「全部話さなくていい相談」をしてみる~
誰かに相談する時、「最初から最後まで綺麗に説明しなきゃ」と思うと、しんどくなってしまいます。そこで、「今日は、ここまでしか話せないけど」と前置きをして、一部分だけを打ち明けてみます。断片だけでも聞いてもらえる経験は、「この人には少しずつなら話せるかもしれない」という小さな安心に繋がります。
【魔法77】~「感想ではなく、ただ聞いてほしい」と最初に伝える~
勇気を出して話しても、「それはあなたが悪いよ」と返されると、余計に傷ついてしまうことがあります。そんな経験がある人は、話し始める前に、「今日はアドバイスよりも、ただ聞いてもらえると助かる」と一言添えてみてください。相手もどう関われば良いか分かりやすくなり、話す方も少し安心して心を開けます。
【魔法78】~「この人にはこの話だけ」と役割を分ける~
人にはそれぞれ得意な分野があります。仕事の悩みを聞くのが上手な人、家族の愚痴を笑い飛ばしてくれる人、真面目な話をじっくり一緒に考えてくれる人。誰にでも何でも話そうとせず、「この人にはこの話まで」と役割を分けることで、期待し過ぎて傷つくことが減っていきます。
【魔法79】~「会うと少し元気になる人」をリストにする~
一緒にいて疲れる人もいれば、何故か少し元気をもらえる人もいます。頭の中で、「この人と会うと、何となく楽になる」という顔を思い浮かべて、小さなリストを作ってみてください。時間が出来た時、その人の誰か一人に「元気?」と連絡をするだけでも、自分の世界が少し広がります。
【魔法80】~距離を感じる相手には「挨拶だけ」を続ける~
どうしても気が合わない人や、いつもキツイ言葉を投げてくる人とは、完全に縁を切るのが難しいこともあります。そんな時は、「深い話はしないけれど、挨拶だけはきちんとする」と決めてみます。礼儀は守りながら、心までは渡さない。それは立派な境界線の引き方です。
【魔法81】~SNSの「いいね」だけで繋がる人も大事にする~
直接会う機会は少なくても、SNSでささやかな反応をくれる人たちがいるかもしれません。その人たちは、あなたの存在を遠くから見守ってくれている、小さな応援団です。深い会話がなくても、「ここにいるよ」と反応してくれる存在を、「自分の味方の一人」と数に入れてみてください。
【魔法82】~「助けて」の言い方を予め決めておく~
いざという時、「助けて」と言うのはとても勇気がいります。だからこそ、言葉を予め用意しておきましょう。「少しだけ話を聞いてほしい」「今、かなりしんどいから、傍にいてもらえると助かる」自分なりの言い方を心の中に持っておくと、必要な時に声を上げやすくなります。
自分の境界線を守る魔法
【魔法83】~「その言い方はつらい」と短く伝える~
いつも我慢ばかりしていると、相手は「これくらい言っても平気なんだ」と思い込んでしまうことがあります。勇気が出るタイミングが来たら、「さっきの言い方だと、ちょっとつらかったです」と、短く事実だけを伝えてみてください。大きな喧嘩をする必要はありません。「私は傷ついた」と伝えることで、境界線が少しずつ相手にも見えてきます。
【魔法84】~どうしても無理な誘いには「予定があります」と断る~
本当は行きたくない飲み会、会うと必ず傷つく人からの誘い。無理をして応じるたびに、心は摩耗していきます。たとえ具体的な予定がなくても、「その日は予定があります」と言って断る権利は、誰にでもあります。自分の時間と心を守るための、れっきとした自己防衛です。
【魔法85】~「その話題は少し苦手です」と話題を変える~
人の悪口、容姿へのきついコメント、身内の事情を抉るような質問。聞いていて苦しくなる話題が出てきた時は、「その話題は少し苦手なので、別の話でもいいですか」と、静かに方向転換を提案してみます。それでも続けてくる人とは、距離を考え直す目安にもなります。
【魔法86】~沈黙を怖がらない練習をする~
場を盛り上げようとして、つい無理に笑ったり、相手に合わせてしまうことがあります。でも、沈黙そのものは悪いものではありません。会話が止まった時に、「今は沈黙でも良い時間」と受け止めて、無理に何かを埋めようとしない練習をしてみましょう。沈黙に耐えられるようになると、自分を擦り減らす必要が少し減っていきます。
【魔法87】~「自分が悪いと決めつけない」と心に貼り紙をする~
相手にきついことを言われた時、「きっと自分に原因がある」と自動的に考えてしまう人は多いです。けれど、相手の機嫌や人生のストレスが、そのまま言葉に出ているだけのこともあります。心の中に、「何でも自分のせいだと決めつけない」と書いた貼り紙をしておいて、ぐるぐる考えそうになった時に、それを思い出してみてください。
【魔法88】~「ここから先はプロに任せる」と線を引く~
家庭の問題、職場のハラスメント、人間関係のもつれ。一人で抱え込むには重過ぎることもあります。そう感じた時は、「ここから先は、自分一人では抱えない。必要なら専門家に相談する」と心の中で線を引いてみます。全てを自分の責任にしないことは、弱さではなく賢さです。
未来の自分を守る準備の魔法
【魔法89】~「安全な場所リスト」を作る~
落ち込んだ時に行くと少し楽になる場所を、頭の中でリストにしておきます。静かなカフェ、公園のベンチ、図書館、神社、お気に入りの散歩コース。そこに行くと、「この世界の中にも、私は安心して息ができる場所がある」と思い出せます。
【魔法90】~「この人たちのためにも生きる」と決める~
自分のために生きるのが苦しくなってしまう日もあります。そんな時は、自分を大切にしてくれている人たちの顔を思い浮かべて、「この人たちのためにも、私は自分を大事にしよう」と決めてみます。それは、「自分を犠牲にする」という意味ではなく、「自分が生きていること自体が誰かの支えになっている」と受け取ることです。
【魔法91】~将来の自分に「楽をさせる貯金」を考える~
お金の貯金だけでなく、経験や人間関係の貯金も含めて、「将来の自分を少し楽にするには、今、何が出来るかな」と考えてみます。例えば、資格の勉強を少しずつ進める、趣味の仲間を増やしておく、相談できる窓口を調べてメモしておくなど。今の自分の小さな一歩が、未来の自分を助けるクッションになります。
【魔法92】~「今の環境が全てではない」と書いて貼る~
学校や職場、家庭の人間関係がつらいと、「ここが世界の全部」のように感じてしまいます。でも現実には、世界はもっと広く、人や場所の選択肢はたくさんあります。「今の環境が全てではない」と紙に書いて、机の中やスマホのメモに忍ばせておきましょう。その一文が、行き詰まりそうな時の非常口のような役割をしてくれます。
【魔法93】~つらい出来事を「経験値」として数えてみる~
ゲームのキャラクターが、敵に攻撃されたり、失敗したりしながらレベルアップしていくように、人生のつらい場面もまた、経験値になります。もちろん、傷そのものを肯定する必要はありません。ただ、「こんな出来事を乗り越えようとしている自分には、その分の経験値が溜まっている」と意識してみてください。
【魔法94】~「今は準備期間」と自分に言い聞かせる~
すぐに環境を変えられない時、「自分は何も出来ていない」と感じてしまうことがあります。そんな時は、「今は動けるようになるための準備期間」と考え方を変えてみます。今の場所で得ている知識や技術、人間観察、我慢強さ。それらは、いつか別の場所で生きる時の土台になります。
専門家や制度の力を借りる魔法
【魔法95】~相談窓口を調べておくだけでも一歩~
すぐに相談する予定がなくても、地域の相談窓口や、学校・職場の相談先、電話相談などを調べてメモしておきます。「いざとなったらここに電話できる」「ここにメールできる」という選択肢を持っているだけで、心の孤立感は少し軽くなります。
【魔法96】~医療やカウンセリングも「心の修理工場」と考える~
心が大きく傷ついてしまった時、病院やカウンセリングに行くことを躊躇う人は多いです。でも、歯が痛くなったら歯医者さんに行くように、心が痛くなったら心の専門家に相談するのは、ごく自然なことです。「壊れたところを責める場所」ではなく、「一緒に直し方を考えてくれる場所」と捉えてみてください。
【魔法97】~信頼できる大人を一人だけ見つける~
子どもや学生の立場だと、「どこに相談していいか分からない」と感じることも多いかもしれません。先生、スクールカウンセラー、保護者、親戚、地域の大人。誰でもいいので、「この人なら少しは味方になってくれそうだ」と思える大人を一人、見つけておきましょう。困った時に顔を思い浮かべられるだけでも、心の支えになります。
【魔法98】~仕事や学校以外のコミュニティに顔を出してみる~
職場や学校だけが世界の全てになってしまうと、そこでの言葉が自分の価値の全てのように感じられてしまいます。地域のサークル、ボランティア、オンラインの趣味コミュニティなど、「別の居場所」にも少しずつ顔を出してみてください。違う場所で交わされる言葉に触れることで、「自分はここではこう見られるんだ」と、別の顔を持てるようになります。
【魔法99】~環境を変える選択肢も心の引き出しにしまっておく~
どうしても変わらない人間関係や、繰り返される言葉の暴力に、無限に耐え続ける必要はありません。転職、異動、クラス替え、引っ越し、別れる決断。すぐに実行しなくても、「いざとなったら環境を変えることもできる」と心の引き出しにしまっておきましょう。逃げ道を知っているだけで、今日を少し安心して過ごせることがあります。
【魔法100】~「助けを求める自分」を誇りに思う~
人に頼ること、相談すること、制度や専門家を利用すること。それらを「弱さ」と感じてしまう人は少なくありません。しかし本当は、助けを求めることこそ、自分の命と心を守ろうとする、とても勇気ある行動です。「私はちゃんと、自分を守るために動こうとしている」と、自分を誇りに思ってください。
――
ここまでで、短期的に心を守る魔法から、長い目で自分を支える魔法まで、あわせて100個の治癒のアイデアが揃いました。全てを完璧に使いこなす必要はありません。この中から、今のあなたにしっくりくるものを、1つでも2つでも選んで、そっとポケットに入れてもらえたら、それだけで十分です。
次の「まとめ」では、この100個の中から、自分に合った魔法を選ぶヒントや、心が折れそうな時に思い出して欲しいメッセージを整理していきましょう。
[広告]まとめ…100の魔法から「今の自分」を守る1つを選ぶ
ここまで読み進めてくださったあなたは、きっと何度も、誰かの言葉に心を刺されてきたのだと思います。そのたびに、「気にし過ぎかな」「弱いのかな」と自分を責めながらも、それでもなんとか毎日をこなしてきた人ではないでしょうか。
この文章では、第1章で「その場を凌ぐための即効の魔法」、第2章で「心の物語を書き換える魔法」、第3章で「体と暮らしをととのえる魔法」、第4章で「人との繋がりと未来を守る魔法」と、合計で100個の治癒のアイデアを並べてきました。きっと、「これは出来そう」「これは今は無理かも」と、いろんな感想が胸の中に浮かんだと思います。
大切なのは、100個全てを使いこなすことではありません。むしろ、今の自分に合う魔法は、ほんのわずかで十分です。例えば、胸に手を当てて「よく耐えたね」と呟くこと。寝る前の5分だけ、スマホを置いて目を閉じること。信頼できそうな人に、「今日はちょっと疲れた」と一言だけ送ってみること。そんな小さな1つこそが、心の傷口をそっと押さえてくれる大事な手当てになります。
そして、覚えておいて欲しいことがもう1つあります。それは、「傷ついた自分を責めない」という姿勢そのものが、最高の治癒の魔法だということです。きつい言葉を浴びた時、何も言い返せなかった自分を、後から何度も責めていませんか。でも、あの場で黙っていたのは、「場を壊したくなかった」「これ以上揉めたくなかった」「どうしていいか分からないほどショックだった」など、いろいろな感情が一気に押し寄せたからかもしれません。その混乱の中で「取り敢えずやり過ごした」自分は、決して弱いだけの存在ではなく、その状況で出来る限りのことをしていたとも言えるのです。
100個の魔法は、「こうすれば正解」というマニュアルではありません。むしろ、「こんな受け止め方もあっていい」「こんな逃げ方もあっていい」「こんな頼り方もあっていい」と、あなたの選択肢を増やすために並べた、心の道具箱のようなものです。その中から、今の自分にとって心地よいものを、ゆっくり選び直していければ、それで十分過ぎるほど意味があります。
もしまた、誰かの言葉に深く傷ついてしまった時には、今日読んだ魔法のうち、どれか1つだけ思い出してみてください。深呼吸でも、温かい飲み物でも、「私はここにいて良い」と心の中で呟くことでも構いません。その1つが、次の1日を生き延びるための、小さな架け橋になってくれます。
言葉に傷つきやすいということは、それだけ、誰かの気持ちや空気に敏感で、繊細な感受性を持っているということでもあります。そのやわらかさは、ときに自分を苦しめるけれど、同時に、誰かの痛みを理解したり、寄りそったりする力にもなります。どうかその優しさを、自分自身にも少しだけ向けてあげてください。
この先も、社会や学校や家庭の中で、いろいろな言葉に出会うでしょう。その中には、温かく背中を押してくれる言葉もあれば、心をえぐるような言葉もあるかもしれません。それでも、あなたの中には、今日ここで出会った100個の魔法と、それを選び取る力が、もう芽生えています。
他人の言葉が痛くてたまらない夜にも、「ああ、自分はちゃんと自分を守ろうとしている」と気づけますように。この文章が、そのための小さな手がかりになってくれたなら、とても嬉しく思います。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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