年末年始も介護の現場は止まらない~休みたい気持ちと支える誇り~

目次
はじめに…年の瀬に考える休めないお仕事とぼくらの毎日
年の瀬の空気がふわっと甘くなると、街はきらきら、カレンダーはあとわずか。多くの窓口は「仕事納め」を迎え、たとえば行政の手続きは「12月28日から1月4日まではお休みです」と静かになります。けれども、にぎやかさが消えない場所があります。ホテルのフロント、駅や空港、台所でおせちを仕上げる調理場、そして――今回の話題の介護の現場です。
介護は、人の暮らしにぴったり寄りそうお仕事。大みそかも元日も、人の体調や生活のリズムは止まりません。朝はお腹がすくし、夜には眠くなるし、寒い日はあたたかいお風呂に入りたい。そんな「当たり前」を守るために、現場は今日も回り続けます。ベテランさんの段取りの良さに驚く日もあれば、初詣の送り迎えでほっこりする日もある。忙しさの向こう側に、笑顔がちゃんと待っているから不思議と頑張れる――いえ、ここは気合いです。気合いとチームワーク。
とはいえ、「休みたい」は正直な気持ち。家族の集まりもあるし、小さなお子さんがいれば保育園や学校がお休みで、家の用事はむしろ増えがちです。勤務表と家庭のカレンダーを並べて深呼吸。できれば少しでも心が軽くなるコツを持ち寄って、みんなで年越ししたい。この記事では、年末年始の介護現場で起きやすい“あるある”をやさしくほどきながら、入浴や面会の工夫、引き継ぎのワザ、そして「休みたい」と「支えたい」を両立させるための考え方を、楽しくお届けします。
読み終えるころには、あなたの中に小さな灯がともりますように。寒い冬こそ、あたたかい段取りでいきましょう。
[広告]第1章…年末年始のシフト最前線~施設は回して家庭も回す~
大みそかのテレビがにぎやかでも、フロアはいつもどおりに朝が来ます。起床の声かけ、バイタル、配膳、口腔ケア。雪がちらつく日でも、タイムテーブルはブレません。理由はとてもシンプルで、暮らしのリズムは暦で止まらないから。食事は1日3回、服薬は決まった時間、トイレの介助はその都度。ここに年末年始限定の臨時行事が加わると、静かな忙しさがじわっと厚みを増します。面会の家族が普段より多い、初詣の外出や車いすの送迎が増える、夜勤明けに年越しそばの湯気が立つ――どれも温かい風景なのに、シフト表だけはぴしっと引き締まるのです。
施設が止まらない最大の理由は、安全と安心の連続性にあります。例えば入浴。寒波の日に無理はしないとしても、清潔や皮膚トラブルの予防は待ってくれません。食事も同じで、おせち風の行事食にしても栄養バランスと嚥下への配慮は変えられません。だから厨房もフロアも、最小限ではあっても確実に回る体制を敷きます。看護は急変対応のアンテナを高く張り、介護は転倒予防の見守りをいつもより丁寧に。送迎車のスケジュールを詰めすぎず、渋滞を見越して5分早めに動く――たったそれだけで、1日の歯車が気持ちよく噛み合います。
そして、忘れてはいけないのが、家庭も同時に回っているという事実です。保育園や学校が閉まる期間は、家のカレンダーの方がむしろギュウギュウ。だからこそ、シフトを出す側も、出る側も、「できる早さ」で小さく前倒しします。たとえば年内最後の週に、ナースコール対応の役割分担をもう一度だけ口ならし。年始最初の週に、配膳導線と配薬トレイをひと呼吸で確認。引き継ぎメモは短くても、必ず時刻とイニシャルを全角で残す。帰宅前の3分で、翌日のベッド柵や車いすの位置を標準配置に戻す。どれも特別なテクニックではありませんが、積み重ねると、家の予定と職場の予定がぶつかりにくくなります。
デイサービスやショートステイ、訪問系の稼働は事業所ごとに少しずつ違います。だからこそケアマネさんや家族との連絡は、年内に一度“声あわせ”。大切なのは、「できること」と「できないこと」をにこやかに言葉にする姿勢です。無理な約束をしない代わりに、代替案をすぐ示す。たとえば入浴の間隔が空く日は、保湿と更衣で清潔感を保つ提案を先に伝える。初詣の外出が難しい方には、館内でおみくじや甘酒のちいさなコーナーを用意する。年末年始は奇跡のように時間が溶けますが、笑顔の種は意外と足元に転がっています。
最後にひとこと。年末年始の現場は、忙しさの中にご褒美が混じります。久しぶりに顔を出したお孫さんが「おばあちゃん、髪つやつや」と言えば、保湿を頑張った甲斐がある。温かいお雑煮を前に、ゆっくりと箸が進めば、配膳の工夫が報われる。そんな瞬間を合図に、今日もまた施設は静かに、そして着実に回っていきます。
第2章…お風呂どうする問題~一番風呂と安全と清潔の折り合い~
寒さがきゅっと強まる頃、「一番風呂でさっぱり」が胸に浮かびます。けれども、年末年始はスタッフが薄くなりやすく、入浴の回数やタイミングが少しだけ揺れます。ここで大切なのは、気持ち良さと安全の“間”を見つけること。湯気を追いかける前に、体力、血圧、持病、フロアの人手、そして外の寒さをそっと見比べます。無理に詰め込まず、清潔を保つ工夫を積み上げれば、入浴の間隔が少し空いても、肌も髪も機嫌よく過ごしてくれます。
入浴が空く日の“温度と保湿”作戦
お湯の代わりに、温かい蒸しタオルをゆっくり当てると、皮脂がやわみ、汚れがするんと動きます。顔は目元から外へ、首筋は下から上へ、腕や脚は心臓に向かって軽くなでるように。仕上げに低刺激の保湿を薄く重ねると、乾燥でかゆくなりがちな冬の肌が落ち着きます。髪は根元だけでも軽く整え、耳の後ろと襟足を丁寧に。手指は爪の周りをくるりとやわらかく、仕上げにハンドクリームを少量。ここまで整うと、鏡の前で笑顔が1つ増えます。お風呂に入れない日でも清潔感は育てられる――その実感が、次の入浴をもっと気持ちよくしてくれます。
「今日は入る?やめておく?」を上手に決める
寒波や体調のゆらぎがある日は、入浴そのものを“勇気ある見送り”にすることも大事です。体が冷えているときは、まず室温を整え、足先から順に温めます。血圧や脈が落ち着いたら、入室から更衣、浴槽までの導線を一呼吸で確認します。滑りやすいマットがきちんと吸いついているか、手すりの高さは合っているか、タオルと替えの衣類はすぐ手に取れる位置か――この準備の3分が、ヒヤッとを遠ざけます。湯温は少し控えめ、浸かる時間は短め、湯上がりは保温をたっぷり。汗が引く前に保湿と水分補給を済ませると、ぽかぽかが長持ちします。
年末年始は、家族の面会や初詣の予定も重なりやすい時期です。入浴の代わりに、朝の更衣を新年仕様に整えたり、香りのやさしい保湿で気分を切り替えたり、小さなご褒美を1つ用意したり――“綺麗で心地よい”を別ルートで叶える工夫が光ります。入る日も、見送る日も、「その方らしさ」を真ん中に。お風呂は目的ではなく、気持ちよく暮らすための手段。そう考え直すだけで、冬の介護はぐっとやさしい景色に変わります。
第3章…休みたい理由は十人十色~家族と育児と地域行事と勤務のバランス~
年末年始は、仕事の時計と家の時計が同時にカチカチ進みます。親戚が集まる日は食卓の椅子が足りなくなり、小さな子は朝から晩まで元気いっぱい。保育園や学校が閉まる間は、昼の見守りも夜の寝かしつけも濃度が上がります。介護の現場で「今日は遅番です」と言った次の瞬間、家では「今夜は鍋を囲むよ」と言われる。2つの予定表が重なる音がして、胸の中でため息が1つ。それでも、どちらも大切だからこそ、折り合いの付け方に工夫が要ります。
まずは本音の一言を先に置く
「この日は子の行事で早めに上がりたい」「この時間だけは家族の送迎がある」。たった一言でも、前もって伝わっていれば、周りは驚かずに動けます。年末年始は空気がせわしなく、後回しにすると伝える機会を逃しがちです。だからこそ、勤務希望の提出と同時に、家の事情を一緒に添えるのが近道。内容は短くても大丈夫。日付と時間を全角で明確にするだけで、シフト表はぐっと組みやすくなります。
若手もベテランも偏りをつくらない
「若いから夜勤」「経験が長いから当番」――気づけば偏りができるのが繁忙期の落とし穴です。負担が同じ人に続くと、体力より先に気持ちが摩耗します。交代の順番を年内に一度だけ見直し、できれば並び順を1つずつずらして公平感を整えます。どうしても動かせない事情がある人がいれば、その周辺の導線を軽くしてあげる。休憩の入り方を10分早め、戻りを10分遅らせるだけでも、体感はふわっと楽になります。
地域の行事と上手につきあう
初詣や新年のご挨拶は、地域によって色が違います。人出が多い時間帯を避けるだけで、移動も付き添いも安全度が上がります。施設内で小さな「お参りコーナー」を設ければ、外出が難しい方も参加できますし、付き添いの人員を無理に増やさずに雰囲気を味わえます。外に出る日と出ない日を交互に並べるだけでも、現場の疲れは見違えるほど軽くなります。
3分前倒しの連鎖でみんなが少しずつ楽になる
年末年始は、1日の中で小さな渋滞が起きやすい時期です。配膳の台車を3分早く準備し、見守りの立ち位置を3分早く整える。更衣のセットを3分早くベッドサイドに置く。たった3分でも、部署をまたいで連鎖すると、30分分の余裕に化けます。余裕が生まれると、人はやさしくなれます。やさしさが増えると、現場は静かに強くなります。
「休みたい」と「支えたい」を両手で持つ
心のどこかで、「自分だけ抜けるのは悪い気がする」とためらうことがあります。でも、休む日があるから、出る日にしっかり働けます。家族の笑顔が守られると、職場の笑顔にも力が出ます。だから、遠慮の色を少し薄めて、「この日は家の当番、次は現場の当番」と声に出します。交代のたびに小さくお礼を伝え合えば、年越しの忙しさはチームの結束に変わっていきます。
年末年始のバランスは、完璧でなくてかまいません。少し歪んでも、翌週にそっと戻せば大丈夫。大切なのは、誰かの肩に重さが集まらないこと。そして、家でも職場でも、笑顔の時間をひとつずつ確保すること。十人十色の「休みたい理由」を尊重し合えば、年の初めの空は、きっと澄んで見えます。
第4章…うまく回す小ワザ集~引き継ぎ?連絡?非常時の備え?笑顔を守ろう~
年末年始の現場は、ちょっとした段取りで驚くほど軽くなります。特別なテクニックより、今日からできる小さな工夫を、やわらかい言葉で共有しておきましょう。合図はいつもシンプルに、でも確実に。これが忙しい季節の合言…おっと、この言い回しは封印でした。では“合図”でいきます。
引き継ぎは“短く、同じ型で、同じ場所に”
メモは長文より“型”が命です。時刻、名前、対応の順番をそろえて、置く場所を1つに決めます。たとえば「19:00、Aさん、夕食△、水分〇、就寝は様子見」――この並びを毎回そろえるだけで、読む側の脳が迷いません。全員が同じ型で書くと、交代のたびに目が自然と走り、拾い漏れが減ります。書く手間は同じでも、伝わり方が段違いに速くなるのです。
連絡は“早め、ひとまとめ、やさしい言い回し”
家族への連絡は、早めに一歩だけ先回りします。年末年始は電話回線も混み合うので、要点をひとまとめにしてから発信します。体調の様子、面会のおすすめ時間帯、外出の可否、必要な持ち物。この3つか4つをやさしい言い回しで伝えると、受け取る側の不安がすっとほどけます。たとえば「朝は混み合いますので、ゆっくり目の午後が安心です」「外は冷えます、膝掛けがあると快適です」。丁寧な一文が、当日のバタつきを見事に減らしてくれます。
非常時は“3つ先まで決めておく”
急変や荒天は、なぜか忙しい日に重なります。そこで、平常時のうちに“次の三手”までを決めておきます。誰が連絡役、誰が初動、誰が支援に回るか。搬送のときの付き添いとフロアの再編、どの順で呼ぶか。電話が混線したときの第2連絡先と、第3の合図。決め事はホワイトボードに全角で一列にして、目に入る位置へ。人は焦ると記憶より視界を信じます。見える場所に、見やすい字で。これだけで初動がきれいに決まります。パソコンのシステムって思いがちだけど、準備が一段二段、迅速な加速になる例です。
物品は“置きっぱなし整頓”で探し物をゼロへ
忙しい日ほど、片づけすぎると迷子が出ます。よく使う物は、あえて“置きっぱなし整頓”。同じ面、同じ高さ、同じ並びをキープして、輪ゴムひとつでも定位置を作ります。補充は“空になったら”ではなく“半分を切ったら”。年末年始は納品も遅れがちなので、心配性ぐらいでちょうど良いのです。朝番が減った分を、夜番がそっと多めに補充しておく――この思いやりのリレーが、一日のリズムを守ります。
こころの温度管理――声かけの最初の5秒
忙しいと、表情が固くなります。そんな時こそ、声かけの最初の5秒をやわらかく。名前を呼んで、目線を合わせて、ひとこと短い季節の話を添えます。「寒くなりましたね、手を温めてから始めましょう」。この5秒で、その後の10分がやさしく変わります。スタッフ同士でも同じです。「おつかれさま、次の部屋いっしょに行こう」――たったそれだけで、空気の角が取れます。
3分前倒しの“滑走路”をつくる
配膳、口腔ケア、更衣、消灯。どの工程も、最初の3分だけ前倒しにして、滑走路を作ります。最初が早いと、後ろが詰まりません。渋滞が消えると、見守りの密度が上がり、転倒や誤嚥の芽をつむことにもつながります。忙しい日ほど“最初の3分”に投資する。これが年末年始の合言…いえいえ、“合図”。滑走路のある現場は、着陸も離陸も、実に滑らかです。
年が明ける頃、引き継ぎメモの字が揃い、物品棚が静かにそ揃い、連絡ノートの文がやさしく揃っていたら、その現場はきっと強い。派手さはありませんが、安心はいつも静かなところに宿ります。小さな工夫の積み重ねで、今年もまた、笑顔の年越しができますように。
[広告]まとめ…年始にありがとう~支える人がいるから年越しできる~
年末年始は、街がきらびやかでも現場はいつも通りに朝が来ます。配薬のトレイが整い、湯気の立つお椀が並び、声掛けのやさしい一言がフロアを温めます。暦が進んでも暮らしのリズムは止まらない――その当たり前を、介護の現場は今日も静かに支えています。
入浴の間隔が少し空く日も、保湿や更衣で“きれい”をつなげば安心は保てます。家族の予定と勤務がぶつかるときも、前もって短く正直に伝え合えば、シフトはちゃんと寄り添ってくれます。引き継ぎの型を揃え、物品の定位置を決め、非常時の“次の三手”まで見える場所に書いておく。たったそれだけの積み重ねが、忙しい季節の角を少し丸くしてくれます。
大みそかの夜勤、元日の早番、三が日の遅番。誰かがその時間を受け持つから、別の誰かが家族と笑えます。交代のたびに小さく「ありがとう」を置いていけば、現場の空気はやわらかく、背中はまっすぐに。年のしめくくりも年のはじまりも、支える人の手のぬくもりで形になります。
読み終えた今、深呼吸を1つ。今日の自分にできる3分前倒しを1つ決めて、帰り際の“標準配置”をそっと整えて、明日の自分にエールを残しましょう。寒さが厳しい日こそ、段取りはあたたかく。新しい一年が、利用者さんにもご家族にも、そしてあなた自身にも、やさしく晴れますように。
⭐ 今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m 💖
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