ケアマネ15年の珍騒動100+アルファ~笑ってヒヤリの訪問あるある短編集~

[ ケアマネの流儀 ]

はじめに…今日も無事に帰れる気がしないけど出発します

皆さま、今日もお仕事お疲れ様です。介護支援専門員として動き回っていると、「予定表通りに進む日なんて都市伝説では?」と思う瞬間が、ふいにやってきます。朝はピシッと身嗜みを整えて、書類も揃えて、靴も磨いて、心の中で小さくガッツポーズ。なのに、玄関を出た瞬間に空が泣く。風が笑う。自転車のチェーンが拗ねる。……はい、今日も始まりました。

この文章は、そんなケアマネの日常に潜む「珍騒動」と「慌てた惨事」を、短編アラカルトとして並べたものです。基本は一行から三行くらいで、テンポよく読める形にします。が、安心してください。単なる笑い話の寄せ集めではありません。読んだ後に「あるある!」と笑いながら、ちょっとだけ自分の身を守るコツや、心の立て直し方も持ち帰れるように、ところどころ“ケアマネ的サバイバル術”を忍ばせます。

そして今回のフルリメイクでは、元の「厳選36」から大増量して「100+アルファ」を目指します。何故なら、現場の出来事って不思議で、「思い出そう」とした瞬間に、押し入れの奥から季節外れの扇風機の風みたいに次々出てくるからです。雨、蜂、犬、、床の抜ける廊下、歴史を感じる冷蔵庫、そして“行き先を聞き忘れた救急搬送”みたいな、笑えないのに笑うしかない出来事たち。これらをジャンル分けして読みやすくし、「今日は疲れたなぁ…」という日の糖分みたいに、サラッと読める記事に整えます。

もしあなたが同業なら、「うちだけじゃなかった!」と肩の力が抜けるかもしれません。もしご家族や他職種の方なら、「ケアマネって、こんな綱渡りをしてるの?」と、ちょっと優しくしてくれるかもしれません。もちろん、ここに出てくるエピソードは個人が特定されないように、場面をぼかし、混ぜ、時々ほんの少し脚色も足しています。だって、現場は真面目な話だけで出来ていないんです。真面目にやっているからこそ、たまに起きる“ズッコケ”が、何故か心に残ります。

さあ、今日も出発しましょう。玄関を開けた瞬間から、物語は始まっています。靴紐を結び直したあなたはもう、既に半分勝っています。残り半分は……天気と床と電話機と、後は…蜂の機嫌次第です。

[広告]

第1章…天気と道と体力の罠~ずぶ濡れ・蜂・ズボンの悲劇編~

ケアマネの外回りって、「空は味方です」と言い切れる日が少ない気がします。朝の天気予報で「くもり」と聞いたのに、玄関を出た瞬間だけピンポイントで雨が本気を出す。しかも濡れるのはだいたい、靴下と書類と心です。コートの中は守れたのに、ズボンの裾だけが滝行をしたみたいになって、次の訪問先で立ち話になった時の“気まずい水音”がもう、こちらの自尊心をカリカリに削ってくるんですよね。

ある日なんて、梅雨の終わりのスコールにやられて、全身ずぶ濡れのまま「こんにちは~」と笑顔を出したら、利用者さんが優しく「まあ!あんた雨に勝てんかったね!」とひと言。勝負だったのか。知らなかった。こちらは訪問業務だったのに、空とタイマン張ってたことになっていて、心の中でそっと負けを認めました。

雨の日の困りごとは、濡れるだけじゃありません。傘を閉じる、玄関でたたむ、書類を守る、靴を脱ぐ、荷物を置く。手が足りない。ケアマネは多分、タコの先祖がいます。いや、タコでも無理かもしれません。しかも焦ると、傘の先っぽで自分の足を突く。地味に痛い。痛いのに、誰にも言えない。言ったら「ドジですね」で終わるから。終わらせたくない、こちらの人生。

そして雨が上がったら上がったで、今度は虫たちが「待ってました!」と活動開始します。庭が立派なお宅ほど、自然が豊かで、自然が豊かってことは、こちらの緊張感も豊かになります。犬に噛まれる。室内犬にも噛まれる。「この子、普段は大人しいのよ~」と言われながら、ストッキングがズボンと一緒にボツになる。猫に引っ掻かれる。謝られても、猫は悪くない顔をしてる。むしろ「君が急に動くからだよ?」みたいな顔をする。いや、動くのが仕事なんだよ、こっちは。

蜂に関しては、もう別格です。ブンブンという音が聞こえた瞬間、体の中の“生存スイッチ”が勝手に入ります。刺された時のあの痛さは、反省も学びも一瞬で飛ばして、「とにかく病院!」だけを頭に残していきます。あの時ほど、自分の足が速いと感じる瞬間はないかもしれません。ちなみに、蜂の巣の相談をされると、つい「市役所で防護服を貸してくれる場合がありますよ」と情報提供は出来るんですが、実際にやるのは専門の方にお願いした方が安心です。こちらはケアマネであって、対蜂の勇者ではないので……と心で唱えながら、笑顔だけは崩さずにその場を凌ぎます。

季節は巡って、夏は暑さで体力を吸われ、冬は寒さで関節が固まります。真冬の朝、凍った道でツルッといきそうになった時、身体能力が一瞬だけ全盛期に戻るのもケアマネあるあるです。転んだら最後、書類は散るし、メンタルも散るし、多分その日一日が散ります。だから踏ん張る。踏ん張って、何事もなかった顔をして歩き出す。でも心の中では泣いています。「今の見た?見てない?良かった!」って。

それでも外回りは続きます。坂道、狭い道、駐車しづらい場所、玄関までが長いお宅、門が重いお宅、段差が多いお宅。体力のメーターがじわじわ削られて、夕方に近づくほど「私、今日、どこで充電できるんだっけ?」みたいな顔になっていきます。そんな時に限って、移乗介助のお手伝いが必要になったりして、気合いで踏ん張った結果、ズボンが「ここまでだ」と決断することがあります。あれはズボンが悪いんじゃない。こちらの気合いが強過ぎただけです。たぶん。

なので、ここでこっそり“現場の自分を助ける小さな味方”の話もしておきます。大袈裟な装備はいりません。車やバッグに、薄いタオル、替えの靴下、ビニール袋、簡単なレインカバー。これだけで「心の余裕」が少し増えます。余裕があると、笑顔が残ります。笑顔が残ると、相手も安心します。ケアマネの外回りは、能力だけじゃなくて“回復アイテムの持ち方”でも勝敗が決まるんですよね。

さて、天気と道と体力に振り回されながらも、私たちは今日も訪問へ向かいます。濡れても、刺されても、ズボンが裏切っても、何故か明日も出発できる。不思議です。たぶん、利用者さんの「来てくれて助かったよ」が、こちらの心の乾燥機になってくれているんだと思います。…だからお願いです、空だけは、たまには味方してください。


第2章…訪問先はサファリパーク~動物・虫・老朽・ゴミ屋敷編~

訪問先の玄関って、人生の扉というより「今日の運試しガチャ」みたいなところがあります。インターフォンを押した瞬間に、こちらはもう戻れません。ドアが開けば、そこには穏やかな日常がある……と信じたいのに、現実は時々、こちらの想像力を軽々と飛び越えてきます。

まず、動物問題。外に犬、家の中にも犬。玄関の外で一回噛まれて、室内に入ったら「こっちにもいますよ」と言わんばかりに、別の小さな犬が足首へ突進。飼い主さんは申し訳なさそうに笑いながら「この子、人見知りで~」と言うんですが、こちらとしては「人見知りが噛む方向に出るタイプなんですね」と心の中でメモを取ります。噛まれた後に残るのは、傷よりも、ストッキングの穴と、ズボンの悲鳴と、明日からの警戒心です。

猫は猫で、噛むより引っ掻く。しかも、狙う場所が絶妙です。書類を出したタイミング、カバンを置いたタイミング、そして「では失礼します」と立ち上がったタイミング。爪がスッと入って、こちらの皮膚にサインだけ残していく。猫は悪くない、猫は正しい。たぶん「この家の支配者は私です」と主張しているだけです。問題は、こちらがそれを否定できない立場にいることです。訪問先では、猫が上司のこともあるんですよね。

次に、虫問題。これはもう、季節限定のホラーです。蜂はもちろん、苦手な人が多いあの虫も、時々“盛大な歓迎会”をしてくれます。台所を掃除したら遭遇する、ゴミ箱を開けたら「パーティー会場はこちらです!」とでも言いたげに、うじゃうじゃ。ここで大事なのは、叫ばないこと。叫ぶと、相手も本気になる。だから静かに、そっと、何も見なかったフリで、蓋を閉める。そして心の中で、太鼓を叩きます。ドンドンと。「今日はもう、訪問内容より、今見たものが支援経過に残りそう」と。

それから、老朽家屋問題。これは笑えないけど、何故か時々笑ってしまう類のやつです。例えば廊下。歩いた瞬間に“ミシッ”という音がして、次の瞬間に足が沈む。踏み抜く。こちらの心も一緒に踏み抜く。「すみません!」と謝りながら、頭の中では「今のは私の体重のせいではなく、建物の年輪のせいです」と必死に言い訳を組み立てています。しかも、その後に部分改修の話が出たりして、こちらの財布と事業所の空気が一緒に凍ります。外は夏でも、事務所は冷えます。別の意味で。

さらに強烈なのが、天井から“何か”が降ってくるパターンです。静かな室内、真面目な話をしている最中に、ポトッ。視線を上げると、そこには「落下してくるべきではない存在」。これはもう、涙目で帰るしかありません。帰り道で「今日の私は、何の職業だったのかな」と自問する時間が生まれます。

そして、ゴミ屋敷問題。新規訪問で到着したら、玄関前から既に山がある。山を越えた先に玄関がある。玄関を越えた先に、さらに山がある。同行したヘルパーさんが、何も言わずに一歩引いて「準備できたら呼んでね」と帰っていくあの背中。あれは冷たいんじゃない、正しい。安全は大事。こちらも正直、心の中で拍手しています。「判断が早い!」と。

ただ、ここがケアマネのつらいところで、帰れない時があるんですよね。支援が必要なのは、まさにこういう状況の方だったりします。だから、出来る範囲で、出来る順番で、少しずつ糸口を探す。いきなり全部をどうにかしようとしない。まずは動線、次は衛生、そして本人の体調と気持ち。片付けの話は、プライドの話にも繋がるので、急に正論で押すと関係が壊れます。ここは“正しさ”より“続けられる現実”を優先する。そういう判断が、実は一番難しいのに、一番大事だったりします。

それでも、現場には笑いも残ります。例えば、庭の縁側から蛇が「こんにちは」と出てくる瞬間。こちらは固まるのに、利用者さんは平然と「いつもの子よ」と言う。いつもの子って何。地域の先輩は強い。こちらの方がよそ者です。

この章の結論は1つです。訪問先は、時々、サファリパークです。けれど私たちは、槍も盾も持っていません。持っているのは、書類と、笑顔と、あと少しの度胸です。だからこそ、危ないと感じたら無理をしないこと、必要なら人を呼ぶこと、そして「これは自分だけで抱えない」と決めることが大切です。現場で一番守るべきは、利用者さんの生活ですが、その前に、まず自分の安全です。ケアマネが倒れたら、支援の予定表ごと倒れますからね。

さあ、次の訪問へ。インターフォンを押す前に、深呼吸。今日のガチャが、せめて“猫上司”くらいで済みますように。


第3章…紙とスマホが消える日~忘れ物・連絡難民・時間が溶ける編~

外回りの怖さって、天気や虫だけじゃないんです。真のラスボスは「記憶」と「手元」だったりします。朝の自分は完璧で、書類も持った、予定も見た、ペンもある、よし出発!……なのに、現場に着いた瞬間にフッと思うんです。「あれ、今日の私は、何かを置いてきた顔をしてない?」って。

忘れ物の神様はだいたい玄関にいる

一番多いのが、持って出たはずのケアプランがない事件です。カバンを開ける。ファイルをめくる。あるのは、何故か昨日のコピー用紙と、メモ帳の切れ端と、飴玉。飴玉は優しい。でも今欲しいのは飴玉じゃない。焦りながら笑顔を作って「今日は確認事項が多いので、まずお話を伺いますね」と、気合いで雑談力を上げる。雑談力で業務を補う日、ありますよね。ありますよね……。

書類は書類で、何故か「頼まれ物」とセットで消えます。カタログを頼まれた。パンフレットも頼まれた。ついでに事業所の案内も渡したい。よし、全部揃えた!……と思ったら、家のテーブルに全員集合していた、あの絶望。私は外に出たのに、資料だけが在宅勤務を選んでいたんです。立派。判断が早い。

連絡の迷子~電話がない、つながらない、見つからない~

次に恐ろしいのが、携帯電話を事務所に置き忘れて外勤に出てしまう事件です。気づいた瞬間、世界が一段静かになります。連絡が取れないというより、「自分が社会から消えた」感じがするんですよね。予定の変更もできないし、急変の連絡も受けられないし、こちらからも助けを呼べない。私は今、ただの歩く書類入れ……いや、書類すら怪しい。

そして、連絡といえば、救急搬送の場面は心臓に悪いです。走って駆けつけたのに、行き先を聞き忘れた。折り返して電話しても、繋がらない。情報は現場から現場へ流れていくのに、私のところだけ空白。頭の中では、地図がぐるぐる回転して、最後に出てくる結論は「私は誰、ここはどこ」。それでも落ち着いた顔を作り、関係各所に順番に確認して、ようやく辿り着いた時の安堵は、もはや温泉です。心がふやけます。

探し物はだいたい家の中でかくれんぼしている

訪問先での探し物も名物です。「熱がありそうですね、体温計ありますか?」と聞いて、そこから始まる大捜索。たまに1時間コースになります。途中で利用者さんが「昔はここに置いてたのよ」と言って、こっちも「昔の私もその情報が欲しいです」と思う。体温計が見つからないのに、何故か懐中電灯が3本出てくる。しかも全部電池切れ。哀愁。

同じくらいの頻度で、介護保険証や医療保険証も「今どこにいるの?」になります。書類って、家の中で瞬間移動しますよね。最終的に仏壇の引き出しから出てきて、「守られてたんだね」と納得するしかない日もあります。

薬の確認も、油断すると時間が溶けます。「お薬全部、見せてください」とお願いしたら、5年以上前のお薬袋がズラリ。まるで薬局の歴史資料館です。こちらは真面目に確認しているのに、気持ちは少しだけ遠い目になります。「これは…いつの…春でしょうか」と。

時間が溶ける時はケアマネは雑談で延命する

こういう“時間泥棒”が起きると、次の訪問が迫ってきます。でも、雑に切り上げると信頼が削れます。だから、短くするところは短く、丁寧にするところは丁寧に、頭の中で取捨選択をします。そんな時に限って、利用者さんが元気に語り出すんです。「ところでね、昔の社長っていうのはね…」と。経営者話題が始まると、何故かだいたい“悪い方”で盛り上がるのも不思議です。私は相談員なのか、聞き役の居酒屋店主なのか、分からなくなる瞬間があります。

でも、ここで1つだけ言い訳をさせてください。忘れ物や迷子の連絡って、だらしなさだけで起きるわけじゃないんです。ケアマネは、同時に考えることが多過ぎる日があります。急変、調整、連絡、記録、家族対応、事業所対応。頭の中でタブが開きっ放しになるんです。だからこそ、自分を責め過ぎず、仕組みで助けるのが現実的です。

例えば、出発前に「今日はこれだけは絶対」の3点だけ確認する癖を付ける。書類は一式を“ひとまとめ袋”にして、カバンの定位置に入れる。携帯はポケットではなく、必ずカバンの同じ場所。こういう小さなルールは、地味ですが、未来の自分を助けます。未来の自分が助かると、今日の自分も報われます。

それでも、紙とスマホが消える日は来ます。来るんです。だから私たちは今日も、笑顔を装備して、雑談力を盾にして、なんとか現場を回します。完璧じゃなくても、ちゃんと戻って、ちゃんとつないでいけば大丈夫。……と、言いながら、私は今、さっきまで持っていたはずのペンを探しています。どこいった?私の相棒。今こそ出番だよ。


第4章…玄関でドラマが完結する~家族・事業所・心のHP急降下編~

ケアマネの仕事って、居間でゆっくりお話を聞くイメージがあるかもしれません。でも現実は、玄関で勝負が決まる日がけっこうあります。靴を脱ぐ前に、終わる。名刺を出す前に、終わる。心の中で「今日の私は、まだ何もしていないのに…」と呟きながら、深呼吸して笑顔を貼り直す。玄関は、ケアマネにとって舞台であり、リングであり、たまに処刑台です。

「今日は家族が対応します」~秒で終わる訪問の切なさ~

訪問して、呼ばれて、ドアが開いて、こちらが「こんにちは」と言う。その直後に家族さんが「今日は家族がチェンジで」と言う。チェンジ。チェンジって、スポーツみたいに軽い言葉なのに、こちらの心には重い。え、私、交代要員だったの?と一瞬フリーズします。でも表情は崩せない。「分かりました。ではまた改めて」と言って帰る。帰り道で泣く。心の中で、ずっと泣く。車に乗っても泣く。信号待ちで泣く。なのに次の訪問ではまた笑顔。ケアマネの顔芸は、もはやプロです。

ただ、この出来事って、家族さんが悪いという話ではないんですよね。疲れていたり、気が立っていたり、今日は話したくない日だったり、事情がある。こちらも「受け止めて、次に繋げる」が仕事です。でもそれでも、切ないものは切ない。だから私は、こういう日こそ、帰った後に自分を甘やかします。「今日はよく耐えた」と、誰にも見えないところで自分に拍手します。

断られる名人~満床という魔法の呪文~

ケアマネが最もよく聞く“呪文”の1つに、「満床です」があります。空きがあるように見えても、満床です。こちらが難しいケースを相談した瞬間、満床です。電話口の空気が一段冷たくなるあの感じ、ありますよね。もちろん、事業所さんにも事情がある。人手不足、受け入れ体制、リスク、現場の限界。分かる。分かるんです。分かるんですが、連続で断られると、ケアマネの心は小さな紙コップみたいに凹みます。

そして現実は、支援経過に「某事業所、受け入れ困難で断られる」と淡々と残していく日々。淡々と書くけど、淡々としていないのは心の方。内心では「私だって好きで難ケースを背負ってるわけじゃないんだよ…」と叫びながら、次の電話を掛けます。電話を掛ける自分がえらい。ホントにえらい。

救急搬送と主治医~心がジェットコースターの日~

玄関ドラマの最上級は、やっぱり急変です。インターフォンを鳴らして出てこない。いつもは出てくる。おかしい。中に入る。倒れている。救急搬送。助かることもあれば、亡くなられていることもある。ここはもう、笑い話ではありません。現場の空気が一瞬で変わります。

そんな時、主治医の先生に助けられた経験を持つケアマネは多いと思います。指示を受けながら対応して、救急車の到着までの時間を繋ぐ。時間が長いほど、汗が増える。心臓マッサージを続ける。携帯を片手に、指示を聞き、体を動かし、周囲に声を掛ける。終わった後、手が震えて、自分が今立っているのか座っているのかも分からなくなる。でもその後、何事もなかったように次の業務が待っている。ケアマネは感情の置き場を探す暇がない時があるんですよね。

だから私は、こういう日の帰り道に、ほんの短い“心の片付け”をします。車の中で深呼吸を1つ。手を洗う。温かい飲み物を飲む。ほんの数分で良い。「今の出来事を、いったん棚に置く」時間を作ります。じゃないと、次の訪問先で笑顔が割れます。割れた笑顔は、相手に伝わります。だから、自分を守るのは、仕事の一部です。

名刺が増殖する~そして私は名刺コレクターになる~

ここで少し、現場の笑える方へ戻します。ケアマネの机の引き出しには、名刺が増殖します。同じ方の名刺が20枚超えていた時は、自分が心配になります。「この前もらったよね?」と思いながら、またもらっている。もらう時は自然に受け取ってしまう。断れない。礼儀。結果、引き出しの中で名刺が大家族になる。名刺たちは仲良く暮らしているのに、こちらは震えている。「私、記憶…大丈夫かな」と。

そして似た現象で、サンプルや試供品も増えます。高カロリー飲料のサンプルを配り忘れて、賞味期限が迫る。仕方なく自分の腹に収まる。これは支援ではなく、自己犠牲という名の自己増量です。現場のストレスは、糖分に向かう。分かってるのに、手が伸びる。お腹だけが正直です。

ケアマネの心のHPは減るけど回復もする

この章は、心のHPが減る話が多かったかもしれません。でも、回復する瞬間も確かにあります。家族さんが後日「この前はすみません、あの日は余裕がなくて」と言ってくれることがある。事業所さんが「今回は難しいけど、次は受けます」と言ってくれることがある。利用者さんが「来てくれて安心した」と言ってくれることがある。そういう一言で、こちらの心のゲージがフッと戻るんです。

玄関で終わった日も、断られ続けた日も、急変で震えた日も、全部が無駄じゃない。今日の経験は、明日の判断を少しだけ強くします。だから私たちは、また玄関に立ちます。インターフォンを押す前に、深呼吸。心の中で小さく言うんです。「さあ、次のドラマへ。私は主人公じゃないけど、進行役としては一流でいこう」って。

[広告]


まとめ…ケアマネは今日も走る~珍騒動100+アルファに増殖中~

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。……で、どうでした?「あるある!」と笑えました?それとも「いや、私はそこまでの修羅場はないなぁ」と、ちょっと距離を置きました?どちらでも大丈夫です。ケアマネの現場って、地域と家と人と季節でぜんぜん表情が変わりますからね。田舎だと蜂が濃くて、都会だと駐車が濃い。どっちも濃い。つまり、ケアマネの毎日はだいたい濃いめです。

この短編集で言いたかったのは、「ケアマネはドジだから大変」ではなくて、「ケアマネは、想定外が多い場所で、想定外を受け止め続ける仕事」ってことです。雨に濡れたり、虫に刺されたり、床を踏み抜きそうになったり、書類が消えたり、電話が繋がらなかったり、玄関で終わったり。1つ1つは小さな事件に見えても、積み重なると心ががっつり摩耗します。なのに、私たちは次の訪問でまた笑顔を出す。これ、実はけっこう凄いことだと思うんです。

そして、こんな珍騒動の話は、笑い話として消費して終わりじゃなくて、ちゃんと役に立ちます。例えば、替えの靴下を車に置いておく。連絡先は1つにまとめておく。危ないお宅では無理をせず、一人で抱えない。ちょっとした準備や段取りで、未来の自分の傷を減らせます。大きな正解より、小さな安全策。ケアマネの現場は、だいたいそれで回っています。

それに、一番伝えたいのはここです。こういう日々の中で、支援ってちゃんと積み上がっていきます。急変の連絡が早かったから助かった。必要なサービスが繋がって生活が保てた。家族さんが少し楽になった。利用者さんが「安心した」と言ってくれた。そういう瞬間は、珍騒動の陰に隠れて見え難いけれど、確かにあります。だから私たちは、また玄関に立てます。インターフォンを押す前に深呼吸して、心の中で「今日も無事に帰ろう」と唱えながら。

最後に、もし同業の方が読んでくれていたら、声を大にして言いたいです。あなたが今日も外に出て、調整して、動いて、記録して、繋いでいる時点で、もう立派です。もしご家族や他職種の方が読んでいたら、良かったらほんの少しだけで良いので、ケアマネに優しくしてください。ケアマネは防護服も武器も持っていません。持っているのは、書類と電話と、人を大事にしたい気持ちだけです。

さて、珍騒動は「これで終わり」ではありません。たぶん明日も増えます。100+アルファって言いましたが、アルファの方が本体かもしれません。だからこのシリーズは、思い出せた分だけ続編が出せます。忘れた分は、また次回に先送りです。ケアマネの人生は、だいたい先送りと回収で出来ていますからね。

それでは皆様、今日もご安全に。蜂の季節は特にご安全に。雨の日は足元ご安全に。玄関でドラマが始まりそうな日は、心にもヘルメットを。ケアマネは今日も走ります。走った分だけ、誰かの生活が、ほんの少し整います。そこが、一番のご褒美です。

付録~ケアマネあるある100本ノック(ひやっと+くすっと総集編)~

(1)玄関を出た瞬間に雨が強くなる。「私、空に嫌われてる?」と疑う。
(2)傘を差すか迷って結局ささない。結果、じわじわ濡れて後悔する。
(3)車に乗ったら晴れる。降りたら降る。空がタイミング職人。
(4)訪問先の前でだけ強風。髪型が秒で別人になる。
(5)凍った道でツルッとしそうになり、身体能力だけ一瞬全盛期に戻る。
(6)坂道の多い地域で「今日の私は登山家だった」と気づく。
(7)駐車場所が見つからず、心の中で「一周目は下見」と言い訳する。
(8)目的地の前に停められず、何故か遠足みたいに歩く。
(9)狭い道で対向車と睨み合い、どっちも譲らず微笑みだけが増える。
(10)ナビが「目的地付近です」と言うのに、目的地が付近にいない。
(11)訪問先の表札が小さ過ぎて、目が本気で探検する。
(12)門が重いお宅で、門との勝負が一番長い。
(13)段差が多い玄関で、書類を守りつつ自分も守る高難易度。
(14)玄関前の砂利が想像以上に音を立てて、忍び訪問は不可能。
(15)自転車のチェーンが外れ、手が黒くなってから訪問開始。
(16)スリッパが小さくて、爪先がずっと「こんにちは」している。
(17)スリッパが大きくて、歩くたびに心もスカスカする。
(18)玄関のマットで躓きそうになり、笑顔だけで誤魔化す。
(19)訪問前に手指消毒したのに、車のドアで手を汚した気がしてやり直す。
(20)「今日は余裕」と思った日に限って、移動時間が全部押す。

(21)外の犬に吠えられて、心が先に玄関へ帰る。
(22)室内犬にも吠えられて、「二段構えなのね」と悟る。
(23)「この子は大人しいのよ」が一番信用できない合図になる。
(24)猫が膝に乗ってきて、こちらの仕事が一時停止する。
(25)猫が書類の上に座って、押印より強い意思表示をする。
(26)猫に引っ掻かれても、猫は悪くない顔をしている。
(27)蜂の羽音で、生存本能だけが先に走り出す。
(28)庭が立派なお宅ほど、虫も立派で気合いが要る。
(29)網戸を開けた瞬間に蚊が一緒に入ってきて、私も一緒に罪を背負う。
(30)台所で例の黒い影を見て、視界だけそっと閉じる。
(31)ゴミ箱を開けてしまい、時間が止まる。
(32)老朽化した床の「ミシッ」で、全身が点検モードに入る。
(33)廊下を踏み抜きそうになり、足より心が沈む。
(34)天井から「落ちて欲しくないもの」が落ちてきて、笑顔が一回死ぬ。
(35)玄関の匂いで、「今日は深呼吸の仕方が問われる日」と察する。
(36)換気したいけど寒い。寒いけど換気したい。心が二分裂する。
(37)冷蔵庫から年代物が出てきて、歴史の授業が始まる。
(38)台所の引き出しから、何故か電池が大量に出てくる。
(39)縁側から蛇が「こんにちは」。利用者さんは「いつもの子」。いつもの子!?
(40)ゴミ屋敷の新規訪問で、動線の確保だけで半日分の集中力を使う。

(41)持ってきたはずの書類がない。代わりに飴玉だけがある。
(42)頼まれたカタログを忘れて、自分の記憶力に不安が芽生える。
(43)ボールペンが消える。最後に見たのは、たぶん私の手の中。
(44)印鑑が見つからず、バッグの底が異世界に感じる。
(45)訪問直前に電話が鳴り、予定表が一気に崩れる音がする。
(46)キャンセルが出た瞬間は天国、直後に別件が入り現実に戻る。
(47)携帯を事務所に置き忘れて外勤に出て、社会から消えた気持ちになる。
(48)電波が弱い場所で、連絡が「気持ちだけ届く」。
(49)救急搬送の連絡で走るが、行き先を聞き忘れて二度走る。
(50)到着までの時間が長く感じて、秒が重くなる。
(51)記録を打っている時にフリーズして、心の中で土下座する。
(52)停電でデータが飛び、魂が抜ける。
(53)プリンターが紙詰まりし、機械と無言の戦争が始まる。
(54)紙が足りなくて、何故かコピーが小さくなる。小さくなるのは心。
(55)予定の場所を間違えて、到着してから「ここじゃない」を悟る。
(56)訪問時間を勘違いして、早過ぎて玄関前で彫像になる。
(57)逆に遅れて、走りながら謝罪文を脳内で3本作る。
(58)体温計の場所探しで、気づけば1時間。見つかるのは懐中電灯。
(59)保険証の場所探しで、何故か引き出しの奥から若い頃の写真が出てくる。
(60)薬の袋が多過ぎて、分類しているうちに人生観が変わる。

(61)玄関で「今日は家族が対応します」で終了し、帰り道が長く感じる。
(62)「今忙しいからまた今度ね」を笑顔で受け止め、心はそっと寝かせる。
(63)家族の温度差が大きくて、会話がジェンガになる。
(64)本人の「大丈夫」と家族の「大丈夫じゃない」が正面衝突する。
(65)本人の前では言えない話が多くて、目だけで会議する。
(66)サービス担当者会議が「みんな忙しい」を超えて成立した日は祝日扱い。
(67)連携が上手くいく日は、世界がやさしい。
(68)連携が上手くいかない日は、電話口の空気が冷える。
(69)「満床です」が続き、隠された拒否の警鐘が心の中で鳴る。
(70)受け入れ先が決まった瞬間、肩が下がって身長が1センチ戻る。
(71)難しい調整ほど、最後は「人の好意」に助けられる。
(72)紹介した事業所の担当者が神対応で、思わず拝む。
(73)逆に担当者が変わると、同じ話を最初から。私の声だけ熟成する。
(74)「前の担当はこう言ってた」で、過去と戦うことになる。
(75)利用者さんの一言で、こちらの迷いが一気に晴れる日がある。
(76)家族の「助かりました」で、疲れが少し軽くなる。
(77)「あなたに言うと安心する」で、責任と誇りが同時に増える。
(78)世間話が盛り上がり過ぎて、時計を見て現実に戻る。
(79)何故か経営者の話題になり、だいたい悪い方向で盛り上がる。
(80)「ケアマネって暇でしょ?」と言われ、笑顔でスルーする技が磨かれる。

(81)移乗の手伝いで火事場の力が出て、後で筋肉が抗議してくる。
(82)しゃがんだ瞬間にズボンが決断し、人生も一瞬止まる。
(83)腰が「今日は慎重に」と囁き、歩き方が急に丁寧になる。
(84)冬の缶ジュースがいつの間にか利用者さんの手に渡っていて、私は聖人みたいになる。
(85)夏の車内がサウナで、書類がしんなりする。
(86)寒い日に手がかじかんで、鍵が開かない。鍵より心が固い。
(87)訪問先で出されたお菓子を断れず、胃袋だけが忙しい。
(88)配り忘れたサンプルが賞味期限間近で、私の体内で処理される。
(89)介護食を試してみて、味の進化に感動する日と、遠い目になる日がある。
(90)「体調が悪いのは私かも」と思う日ほど、予定がぎっしり。
(91)子どもの発熱とアポイントがぶつかり、心が二重敬礼する。
(92)お盆や年末年始は「暇でしょ?」と言われるが、だいたい記録と調整で忙しい。
(93)帰社してから、靴下の替えを車に入れ忘れていたことに気づく。遅い。
(94)事務所の机に座った瞬間、眠気が本気を出す。
(95)それでも記録は書く。書き終わると自分を褒める。
(96)帰り道にコンビニで温かい飲み物を買い、心の回復が始まる。
(97)「今日も無事だった」と思った瞬間に電話が鳴り、第二ラウンドが始まる。
(98)明日の予定を見て、静かに深呼吸する。
(99)それでも玄関を出られるのは、誰かの生活が少し整うのを知っているから。
(100)最後に残るのは、利用者さんの「来てくれて助かったよ」。それが一番の回復アイテム。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


[ 応援リンク ]


人気ブログランキングでフォロー

福彩心 - にほんブログ村

[ ゲーム ]

作者のitch.io(作品一覧)


[ 広告 ]
  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。