9月のお月見をやさしく伝える~保育園で“なるほど”が生まれる夜~

目次
はじめに…お月さま、こんばんは―見上げる準備はできたかな?
9月になると夜風が涼しくなってきて、空の真ん中で丸い光がゆっくり笑います。これが「お月見」。難しい昔話を全部覚えなくても大丈夫。今日は保育園の子どもたちにも「なるほど」とうなずいてもらえるように、やさしい言葉で、楽しく、そしてお腹がすくお話をそっと用意しました。
「十五夜って、どうして“じゅうご”?」と聞かれたら、にっこりして「旧暦の8月15日の夜だからだよ」と一言。そこに「雲で見えない夜もあるけれど、そのときは“むげつ”っていって、静かな夜を楽しむんだよ」と付け足すと、子どもたちは目を丸くします。見えない夜まで楽しむなんて、ちょっと大人っぽくてかっこいい。
お部屋の机には、ころんとした月見団子。隣にすっと背の高いすすき。お芋や栗が顔を出したら、秋のごちそうパレードの始まりです。食べる前に「秋にがんばってくれた畑にありがとう、作ってくれた人にありがとう、いっしょに食べる皆にありがとう」と、空に向かって小さく手を合わせる。これだけで教室がやわらかい月の色になります。
園での伝え方は難しくありません。まずは窓の外を一緒に見上げて「お月さま、こんばんは」。つぎにだんごを見て「丸いって、どうしてこんなにかわいいのかな」。最後に深呼吸をひとつ。「夜の空は、おやすみの前のごほうびだね」。この3つで、子どもたちの心にぽっと灯りがともります。
さぁ、準備はばっちり。これからの章では、由来と意味、だんごとすすきの“なるほど”、そして保育園での伝え方を、笑顔が増えるコツといっしょにお届けします。空は広くて、月はやさしい、9月の夜は今日もきれい🩷。
[広告]第1章…十五夜って?~由来と3つの“お月見”~
9月の夜空を見上げると、真ん丸に近い月がひときわ輝いています。この日を「十五夜」や「中秋の名月」と呼びます。旧暦では秋を今の7~9月としていて、そのちょうど真ん中、旧暦8月15日の夜が十五夜です。新暦で言うと、だいたい9月の下旬ごろにあたります。年によっては10月になることもあります。
面白いことに、十五夜といっても必ず満月とは限りません。月の動きには2日ほどのズレがあって、14日目や16日目に真ん丸になる年もあります。見上げた空に「今日はまだおあずけかな?」なんて、ちょっとしたドキドキを提供してくれるのも十五夜の楽しさです。
さらに日本の風習では、この十五夜だけではなく「十三夜」と「十日夜」という兄弟分のお月見もあります。十三夜は旧暦9月13日、新暦では10月中旬から下旬ごろ。「後の月」と呼ばれ、十五夜と両方をお祝いしないと「片見月」といわれるくらい大事にされました。そして十日夜は旧暦10月10日、新暦では11月の初め辺りで、収穫の締めくくりを祝う日。3回もお月見チャンスがあって「お月さまありがとう」と言えるなんて、月イベントが充実していたんですね。
見えない夜にも名前があります。雲に隠れたら「無月」、雨なら「雨月」。昔の人は「今日は月が見えないなあ」とがっかりするのではなく、耳で風を聞き、しっとりした夜そのものを味わいました。さらに、十五夜のあとの月にもニックネームがついています。十六夜(いざよい)は少し出遅れる月、十七夜は立って待つ月、十八夜は座って待つ月、十九夜は寝て待つ月、二十夜は夜ふかしして待つ月。大人の気分そのままを空に写したようで、なんだか親しみやすく感じますよね。
旧暦と新暦をあわせて知ると、「昔の人も今の私たちと同じように月を待ちわびていたんだ」と感じられます。子どもたちに伝えるなら「9月や10月は、3回もお月見できる季節。見えなくても楽しむ気持ちがとてもステキ」と説明すれば、空を見上げる目がぐっと優しい眼差しとなるでしょう🩷。
第2章…お供えの理由と各地の楽しみ方~だんご・すすき・里いもから世界まで~
丸いお団子が主役になるのは、見上げた月と同じ“まる”に「今年もありがとう」を重ねるから。白くて、つやつやの形は、稲の粒が集まってお米になるイメージにもつながります。積み方にも意味があって、きちんと並べると「気持ちを整える」合図。数え方は地域でいろいろですが、十五夜なら「15個」、十三夜なら「13個」と、夜の月の名前に寄り沿わせる考え方が素敵です。
すすきは細い葉っぱが風を切って悪いものを寄せつけないお守り役。穂が稲に似ているので「田んぼが元気でいますように」という気持ちもこめられます。花瓶に差すときは、お団子の後ろにスッと立てて月の光の柱みたいに。あとは里いもや栗、枝豆が並べば、テーブルがいっきに秋のステージに早変わりです。
地域の楽しみ方はもっとカラフル。京都では温かいうどんや蕎麦に生卵を落として「月見」と呼ぶのが定番で、つやっとした黄身が夜空の月みたい。九州では鍋焼きうどんに卵を割り落としてほくほく。沖縄の宮古島では「観月会」のあとに「ぶちゃぎ」とよばれる吹上餅をおそなえして、月を見上げながら踊りで盛りあがります。どの土地も、目とお腹と心で「秋がきたね」を味わう工夫にあふれています。
世界に目を向けると、月の夜はさらに賑やか。中国では「中秋節」として家族が集まり、香ばしい「月餅」を分け合います。台湾では文旦や果物を囲み、香しいお茶でひと息。香港では冷たいアイス月餅も人気で、夜風の中で冷たい甘さがうれしい時間。ベトナムは星形のランタンを手に行列がすすみ、子どもたちの笑顔がまちを照らします。韓国の「秋夕」はご先祖に感謝する大切な日で、丸いお餅を作って「よい秋だったね」と分かち合います。
園で伝えるなら、食べ物や飾りをひとつずつ手に取りながら「どうして丸いのかな」「どうして細い葉っぱかな」と小さなクイズにしてみるのがおすすめ。答えは難しくなくて大丈夫。「月に似ているから」「風から守ってくれるから」。その一言で、子どもたちはテーブルの上と空の上がつながった気持ちになります。
もし雲が出ていても心配いりません。窓を少し開けて風の音を聞きながら、お団子の香り、すすきの手ざわり、里いもの土の記憶をたよりに楽しめます。見えない夜でも「今日の月はどんな顔?」と想像すれば、それだけで意味のある立派なお月見です🩷。日本の秋は、目でも鼻でも耳でも、まるごと味わえる季節なのです。
第3章…園での伝え方と遊び~30秒の伝え方・1分ミニ制作・安心のコツ~
まずは教室の明かりを少し落として、窓の外や天井を一緒に見上げます。先生のひと言は短くやさしく。「今日は十五夜。旧暦の8月15日をたたえる夜。見える日も、見えない日も、秋に『ありがとう』をいう時間だよ」。ここまででおよそ30秒。つづけて「9月や10月には『十三夜』や『十日夜』もあるよ。日本だけの特別な夜もあるんだ」と耳に残るリズムで添えると、子どもたちの視線がふわっと上を向きます。
次は手を動かす1分ミニ制作。紙皿の真ん中に黄色い丸をぺたりと貼って月に見立て、白い小さな丸シールを並べればお月見団子。紙コップの口に切り込みを入れて細長い画用紙をさせば、ふわりと揺れるすすき。綿をすこし指でのばしてコップのうしろに貼ると白い穂ができて、机の上が一気に秋の原っぱに変わります。ハサミが難しい年少さんは、先生が切ったパーツを配って、貼るだけで完璧に完成クオリティーに。できあがったら、そっと照明を当てて影を眺めると「お月さまの道」が床にのびているようで歓声が上がります。
言い方は年齢で少しだけ調整します。年少さんには「丸い月と丸いお団子、なかよしだね」。年中さんには「丸は『元気でいてね』の形。皆の丸い笑顔と一緒だよ」。年長さんには「旧暦は月のカレンダー。いまのカレンダーとは少しズレるから、十五夜はだいたい9月の下旬ごろ。十三夜は10月の真ん中、十日夜は11月の初め頃になる年があるよ」と、季節の手がかりを託します。難しい言葉は1つだけ、短く説明して、そのあとにやさしい例えを添えると、すっと胸に入ります。
食べ物を扱う園では、安心のひと工夫も忘れてはいけません。月見団子は実物を食べずに紙で表現すれば、アレルギーの心配がありません。お供え用のお団子を並べるなら、材料表示カードを一緒に置いて「見るだけ」と約束。里いもは葉や写真で紹介し、肌が敏感な子には直接は触れなくてよい代わりに、匂いを楽しむ参加方法を用意します。すすきの切り口はテープでカバーし、花瓶は低くて安定したものに。これだけで教室が安心で、秋の空気がグッと澄んだものに感じられます。
遊びの仕上げは「空へのお手紙」。窓の方を向いて深呼吸をひとつ🩷。「お月さま、こんばんは。今年もありがとう」。声に出すと、教室の空気が少しだけ明るくなります。最後に作品を持って写真を撮り、「十五夜・十三夜・十日夜」の3回のうち、どれかの日にまた見上げようねと、お約束。見える夜も、雲の夜も、雨の夜も、耳と鼻と心で味わえることを知った子どもたちは、9月から11月の空と友だちになれます。ここまで来たら、お月見はもう園の日常のやさしい一幕。毎年少しずつ顔が違う月みたいに、教室の笑顔もまた、明日は今日より丸くなります。
[広告]まとめ…空を見上げて『ありがとう』~皆で楽しむ月の夜~
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9月の夜は、お月見を話題に、深呼吸ひとつでやさしくなる時間になりますよね。旧暦の8月15日の「十五夜」、10月ごろの「十三夜」、11月初め頃の「十日夜」。3回も「きれいだね」と言える秋は、まるで空からのごほうび。満月ぴったりでなくても大丈夫、雲で見えない「無月」や雨の「雨月」まで、静けさごと味わえるのが粋というもの。
机の上には、丸い月見団子、すっと立つすすき、里いもや栗の秋の顔ぶれ。形や色や匂いが、空の上と下をつないでくれます。保育園では「どうして丸いの?」「どうして葉っぱはほそいの?」と問いかけるだけで、子どもたちの目がキラリ。旧暦と新暦の重なりをやさしく伝えれば、「今年の十五夜はいつかな?」と空と友だちになれます。
作って、見上げて、ひとこと。「お月さま、こんばんは。今年もありがとう」。たったこれだけで教室もお家の中もふわっと明るくなります。十五夜でも、十三夜でも、十日夜でも、見える夜も見えない夜も、私たちの方から月に会いにいくと良い。来年の秋には、また少し違う表情の月が待っています。だから今日は、丸い気持ちでおやすみなさい。空は広く、月はやさしく、そして9月の夜はいつだって「またね」と手を振ってくれているみたいです🩷。
⭐ 今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m 💖
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