寒の内だけの朝食ご褒美を計画~冬の朝を楽しみに変えるコツ~

[ 1月の記事 ]

はじめに…寒の内限定の朝食で1日を優しくスタートしてみませんか?

冬の朝、目が覚めているのに、布団の中から一歩が踏み出せない。窓の外はまだ薄暗くて、空気もひんやり。頭では「起きなきゃ」と分かっているのに、体も心も動きたがらない。寒の内は、そんな葛藤がいつもより少し濃くなる季節です。

この時期は、気温がグッと下がるだけでなく、体のリズムや心の元気も冬モードに入っていきます。高齢の方は冷えで関節が強張りやすくなり、子どもや大人も寝起きの怠さを感じやすくなります。起きる前から「今日も寒そうだな」という予感だけで、溜め息が1つ増えてしまうこともあるでしょう。

でも、もしベッドの向こう側に「寒の内だけの特別な朝ご飯」が待っていたらどうでしょうか?「今日は鮭と根菜たっぷりのぽかぽか味噌汁の日だよ」「明日の朝はりんごシナモンのご褒美粥だからね」と前の晩に宣言しておくだけで、翌朝の気持ちは少し変わります。「寒いけど、あれを食べたいから起きてみようかな」という、小さな楽しみの力が生まれます。

この冬限定の起きたご褒美になる朝ごはん計画では、食材の値段はいったん脇において、栄養と美味しさ、そして「起きる理由」を最優先に考えます。体の中から温まるタンパク質や冬野菜、香りで気持ちを切り替えてくれる柚子や生姜などをたっぷり使いながら、家族全員が笑顔で1日を始められるメニューを組み立てていきます。高齢者のいるご家庭や、介護の現場でもそのまま応用できるよう、優しい味付けと消化のしやすさにも目を向けていきます。

寒の内は、ただ「寒さに耐える季節」ではなく、「朝の一時をとことん丁寧に味わう期間」に変えることができます。ほんの少しだけ特別な朝ご飯を用意して、自分や家族への「よく頑張っているね」という労いを、毎朝の食卓にそっと載せていきましょう。ここから先の章では、体と心の仕組みも踏まえながら、具体的な冬のご褒美になる朝ご飯のアイデアをたっぷり紹介していきます。

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第1章…寒の内の朝はなぜつらい?体と心の理由

寒の内と呼ばれる時期は、暦の上でも「一年で一番寒さが厳しくなる頃」とされています。だいたい年明けからしばらくの間。1月5日~2月3日頃の話。空気はキリッと冷え込み、外に出ると鼻の奥がツンとするほど。そんな季節に迎える朝は、春や夏の朝とは違う顔をしています。目は覚めているのに体が動いてくれない、布団から足を出した瞬間に後悔する、そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

実はこの「冬の朝はつらい」という感覚には、きちんと理由があります。根性が足りないわけでも、気合いが弱いわけでもなく、体と心の両方が「今はまだ動きたくないよ」と訴えている状態なのです。ここを少し理解してあげると、「じゃあ、どうやって優しくスイッチを入れてあげようか」と考えやすくなり、後ほど登場するご褒美の朝ご飯の意味もグッと深まっていきます。

冬の朝に体のスイッチが入るまで時間が掛かる訳

人の体温は一日中、同じではなく、夜に下がり、朝から少しずつ上がっていくリズムを持っています。ところが寒の内のように外気温がグッと下がる季節は、寝ている間も体が冷えやすく、目が覚めても体温がなかなか上がってきません。布団の中と外との温度差が大きいほど、脳は「ここから出ない方が安全だ」と判断してしまいます。

高齢の方は筋肉量が減りがちで、元々、自分で熱を作る力が若い頃より弱くなっています。その上、血の巡りもゆっくりになりやすく、起き抜けの関節や筋肉が強張りやすい時期です。寒い朝にいきなり立ち上がると、ふらつきや転倒の危険も増えてしまうため、「ゆっくり温めながら動き出す」が本来は理に適ったスタートの仕方と言えます。

子どもや働き盛りの大人だって例外ではありません。冬は日照時間が短く、まだ外が薄暗いうちに起きなければならない日も多くなります。体内時計は、朝の光を合図にして目覚めのスイッチを入れているので、明るさが足りないと「まだ夜だよ」と勘違いしてしまい、眠気が残りやすくなるのです。

心のブレーキも強くなる冬モード

体のスイッチが入り難いのと同じように、心のエンジンも冬は掛かり難くなります。寒い朝を想像しただけで、「外に出たくない」「家事をしたくない」「仕事に行きたくない」と、やる気より先にため息が出てしまうこともあります。

高齢者の方にとっては、寒さが痛みや不調を思い出させる切っ掛けになることもあります。「膝がまた痛みそうだ」「外に出たら風邪を引くかもしれない」と、不安の種が増えやすい季節です。在宅介護をしている家族や、介護の現場で働く人にとっても、冬の朝はなかなかの勝負どころです。布団から自分の体を起こすだけでなく、ご本人を起こし、お部屋を暖め、着替えを手伝い、朝ご飯の支度を整える。やることの多さを思い浮かべるだけで、心の中にブレーキが掛かってしまうこともあるでしょう。

そんな「行きたくない気持ち」「動きたくない気持ち」が重なりやすいのが、まさに寒の内の朝です。だからこそ、この時期に「さあ起きろ!」と気合いだけで押し出そうとすると、体も心も悲鳴をあげてしまいます。必要なのは叱咤ではなく、小さな楽しみと安心感です。

ご褒美の朝ご飯は体と心の優しい合図

冬の朝に必要なのは、「起きなさい!」という号令ではなく、「起きたらちょっといいことが待っているよ」という優しい合図です。その合図になれるのが、温かくて栄養のある朝ご飯です。

湯気の立つ味噌汁やスープの香り、焼きたての鮭の音、柚子のさわやかな香り、りんごを煮た甘い匂い。これらは全て、脳と心に「ここは温かくて安全な場所だよ」「美味しい一日の始まりだよ」と伝えるメッセージになります。しかも冬の旬の食材を使えば、体の中からポカポカと温めてくれたり、風邪に負けにくい力をそっと後押ししてくれたりもします。

寒の内限定のご褒美の朝ご飯は、贅沢な宴会料理である必要はありません。大切なのは、「この時期だけの特別」「自分や家族を労わるための一皿」という意味付けです。今日は鮭と根菜たっぷりの和ご飯の日、明日はスープとりんごシナモンの日、といった具合に、少し先の朝の楽しみまで用意してあげると、寒さに負けそうな気持ちが少しずつ前向きに変わっていきます。

次の章では、冬の朝にこそ意識したい栄養のポイントや、体温アップや免疫のことを、難しい言葉を出来るだけ使わずに整理していきます。その上で、後半では具体的な和風と洋風のご褒美の朝ご飯をたっぷり紹介していきますので、ご自身の暮らしやお仕事の場面に合いそうなものを選びながら、寒の内の朝時間を少しずつ変えていきましょう。


第2章…寒さに負けない体を作る冬の朝ご飯の基本

寒の内の朝ご飯を考える時、一番大切なのは「美味しそうかどうか」と同じくらい、「体のスイッチを優しく入れてくれるかどうか」です。どれだけ栄養のある食材を並べても、食べる人の気持ちや、その日の体調に合っていなければ、台所の努力は報われません。この章では、難しい栄養学の教科書ではなく、毎日の食卓目線で考える冬の朝ご飯の基本を整理していきます。

冬の朝に意識したい体のリズム

人の体は、一日の中で体温が緩やかに上下しています。夜は体温が下がり、朝に向かって少しずつ上がっていくのが自然な流れですが、寒の内のように冷え込みが強い季節は、なかなか体温が上がり切らず、「まだ眠い」「体が重い」という感覚が長引きやすくなります。ここで、温かい飲み物や汁物をひと口含むと、内側からじんわり温度が上がり始め、ぼんやりしていた頭にも少しずつ血が巡っていきます。

高齢の方や、在宅介護を受けている方は、筋肉量が少なくなっている分、自分で熱を作る力がどうしても弱くなりがちです。そのため、朝一番に何も食べずに動き出すと、冷えやふらつき、怠さが強く出てしまうこともあります。逆に言えば、冬の朝は「体のエンジンが掛かり難いもの」と受け止めた上で、起きてからしばらくの間に、温かい物と栄養を少しずつ入れてあげることが、1日のスタートを支える大事な役割を果たします。

体を温める栄養の基本を押さえる

寒さに負けない朝ご飯を考える時、意識しておきたい要素は大きく分けて3つあります。1つめは「熱を生み出す材料」です。肉や魚、卵、豆製品、牛乳やヨーグルトなどのたんぱく質は、体の中で分解される時に多くの熱を生み出しやすい性質があり、朝の体温アップに大きく関わっています。焼き鮭と卵焼き、味噌汁に豆腐を入れる、といった昔ながらの和朝食は、実はとても理に適った組み合わせなのです。

2つめは「血の巡りを助ける温め食材」です。生姜、長ねぎ、玉ねぎ、ごぼうなどの香りや辛味のある野菜は、体の内側から温めてくれる心強い味方です。味噌汁に生姜を少しすりおろして加えたり、ホイル焼きの鮭の上に長ねぎをたっぷり乗せたり、といったほんのひと工夫だけでも、同じメニューでも温まり方が変わってきます。

3つめは「冬の体調を支えるビタミンとミネラル」です。ほうれん草や小松菜、白菜、大根、人参などの冬野菜、みかんや柚子、りんご、キウイといった果物には、体の調子を整える成分がたっぷり含まれています。これらを朝ごはんのどこかに少しずつ散りばめてあげることで、風邪を引きやすい季節の心強い土台になってくれます。

冬の旬を朝の一皿に取り入れる

寒の内は、野菜や果物にとっても、じつは美味しい季節です。大根や白菜、かぶは寒さに当たるほど甘みを増し、葉物野菜の色も濃くなって栄養たっぷりになります。これらを上手に朝ご飯に取り入れると、「冬だからこそ味わえる一皿」に変わります。例えば、大根と人参をゴロゴロ入れた具だくさん味噌汁に、ほうれん草の胡麻和えを添えるだけで、ひと皿の中に冬の畑が丸ごと入ったような豊かさが生まれます。

果物も同じです。みかんをそのまま出すのももちろん良いですが、皮をむいて一口サイズに切り、ヨーグルトと合わせて小さなデザートにすれば、酸味と甘み、乳製品のまろやかさが合わさって、目覚めを優しく後押ししてくれます。りんごは薄切りにして焼きりんご風にしたり、オートミールやパンと合わせて温かい一皿にしても楽しい存在になります。「今日はどの冬の恵みを朝の食卓に乗せようかな」と考える時間も、寒い季節ならではの楽しみと言えるかもしれません。

食べやすさと心のスイッチも忘れない

冬の朝ご飯で意外と重要なのが、「食べやすさ」と「心のスイッチとしての香りや見た目」です。どれだけ栄養満点でも、噛み難かったり、飲み込み難かったりすれば、高齢の方には負担になってしまいます。根菜は少し小さめに切ってやわらかく煮る、ご飯は少し水分を多めにして炊く、肉や魚はほぐして提供するなど、ひと工夫でグッと口当たりが優しくなります。

そしてもう1つ大切なのが、香りと見た目です。味噌汁の湯気、生姜や柚子の香り、こんがり焼けた鮭の色、鮮やかなほうれん草の緑色、みかんのオレンジ色。こうした五感への刺激は、「寒いけれど、起きて良かったな」という小さな満足感に繋がります。前の晩に「明日の朝は鮭の日だよ」「りんごシナモンの日だよ」と予告しておくだけで、布団の中でその香りや味を想像できるようになり、朝の一歩を後押ししてくれるはずです。

寒の内の朝ごはんの基本は、難しい栄養計算ではなく、「体温を上げる材料をしっかり」「冬の旬を少しずつ」「食べやすさと香りで心のスイッチも入れる」という3つの柱を押さえることです。次の章からは、この考え方を具体的な和風のご褒美の朝ご飯に落とし込みながら、「布団から出られない朝」をそっと押し出してくれる実例を紹介していきます。


第3章…布団から出られない寒さに効くポカポカ和朝食

寒の内の朝に一番欲しくなるのは、「頑張れ!」という励ましの言葉よりも、「起きたらこれが待っているよ」という、小さくて確かな楽しみかもしれません。ここでは、布団から出る勇気がなかなか湧かない朝にこそ力を発揮してくれる、和風のご褒美の朝ご飯を具体的にイメージしていきます。特別な技術や難しい調味料は使わず、冬の台所でお馴染みの食材を中心に、体を温めてくれる工夫と「食べたい」という気持ちを引き出すひと手間を重ねていきましょう。

鮭と根菜と味噌汁の「王道ぽかぽか朝ごはん」

寒い朝の定番としてまず思い浮かぶのが、焼き鮭とご飯、味噌汁という和の組み合わせです。ここに冬の根菜をたっぷり足してあげると、体も心もじんわり温まる、寒の内ならではの一膳になります。

炊き立ての白いご飯、あるいは少しだけもち麦を混ぜたご飯を茶碗によそい、その横には塩麹に軽く漬けておいた鮭をこんがり焼いて添えます。焼き目の香ばしさと脂の旨味は、それだけで「早く席に着きたい」と思わせてくれる力があります。骨を抜いて少しほぐしてから出せば、高齢の方でも安心して口に運べます。

味噌汁には、大根、人参、ごぼう、長ねぎ、豆腐など、冬に美味しい具材をこれでもかと詰め込みます。根菜は少し小さめに切り、時間をかけてコトコト煮込むことで、甘みと軟らかさが増していきます。仕上げに生姜をほんの少しすりおろして加えると、湯気と一緒に立ちのぼる香りが、鼻から喉、胸のあたりまで温かさを運んでくれます。

小さな小鉢には、ほうれん草のおひたしや、小松菜と油揚げをさっと煮を添えても良いでしょう。鮮やかな緑色は見た目にも元気をくれる上、冬に不足しがちなビタミンを補う心強い存在になります。デザートには、皮を剥いたみかんをひと房ずつ小皿に盛りつければ、食後の口直しにもピッタリです。

前の晩に「明日の朝は鮭と根菜たっぷりの味噌汁の日ね」とひと言伝えておくだけで、布団の中の自分や家族は、無意識のうちにその香りや湯気を想像しながら眠りにつくことになります。目覚めた瞬間に「寒いなあ」と思っても、「でも、あの味噌汁が待っている」と思い出せたら、それだけで一歩目の重さは少し軽くなります。

胃腸がお疲れ気味の日には七草粥風の優しい一膳を

冬はご馳走の機会も多く、知らないうちに胃腸に負担がかかっていることがあります。そんな時に無理やりしっかり食べようとすると、却って怠さが増してしまうこともあります。少し疲れ気味の朝や、体調が万全ではない朝には、七草粥風の優しい和ご飯が活躍します。

本物の春の七草が手に入らなくても大丈夫です。大根とかぶ、その葉、小松菜や水菜などを細かく刻み、お粥に混ぜ込めば、立派な七草粥風の一膳になります。お米は、ふだんのご飯よりも多めの水でじっくり煮て、口に入れるとフワッとほどけるくらいの軟らかさに仕上げます。そこへ、少量の塩と、ごく薄い出汁の味を付けてあげるだけで、胃に沁み込むような優しさの朝ご飯になります。

お粥に合わせるおかずは、たらなどの白身魚を使ったトロミあんかけがおすすめです。小さく切った魚をさっと煮て、生姜を効かせた出汁でトロミを付ければ、飲み込むのも簡単で、体の中からじんわり温まります。卵を落として半熟状にした温泉卵を添えれば、たんぱく質もしっかり摂れます。

小鉢には、薄切りにした大根に柚子の皮を合わせた浅漬けを置いてみましょう。柚子の香りは、食欲が落ちている朝でも「ちょっと味見してみようかな」と思わせてくれる不思議な力を持っています。飲み物としては、柚子と蜂蜜をお湯で溶いた温かい1杯が、乾いた喉と冷えた指先をそっとほぐしてくれます。

「今日はお腹休めの日だから、七草粥風のご褒美にしようね」と声を掛けると、食べる量が少なくても「何も食べられなかった」という寂しさが減ります。「自分の体を労わるための特別メニュー」として位置付けてあげることで、無理に頑張らなくても良いという安心感も一緒に届きます。

在宅介護や高齢者施設で生きる実現しやすい和ご飯

在宅介護の現場や、高齢者施設の朝ごはんに取り入れる場合、どれだけ理想的なメニューでも、準備が大変すぎると続けることが難しくなります。ここで大切になるのは、「特別な朝ご飯」そのものよりも、「寒の内の間だけ、いつもの朝に1つだけ工夫を足す」という考え方です。

例えば、普段の味噌汁を「根菜多めの日」にするだけでも立派なご褒美になります。大根、人参、ごぼう、里芋などを前日にまとめて切り、朝は温めるだけにしておけば、利用者さんの目の前でコトコト煮込まなくても、器に注いだ瞬間の湯気と香りを届けることが出来ます。

主菜の魚も、骨を抜いた状態で提供できる冷凍の切り身を活用すれば、手間を減らしながら安全性も高められます。焼き立てが難しい場合は、前もって焼いたものを軽く温め直し、長ねぎと生姜をのせて、少しだけ醤油を垂らすだけでも、香りのご馳走になります。

また、人数が多い場では、一人一人違うものを用意するのではなく、「今日は鮭の日」「今日はお粥の日」とテーマを決めてしまう方法もあります。その上で、「ご飯かお粥かを選べる」「味噌汁の具を2種類から選べる」といった、ささやかな選択肢を用意すると、利用者さんにとっては大きな楽しみになります。「自分で選べた」という感覚は、その日の気分をグッと明るくしてくれます。

介護をする側にとっても、「今日は寒の内のご褒美朝ご飯の日」というラベルが1つあるだけで、同じ仕事でも少し違う気持ちで取り組めることがあります。忙しい毎日の中で、全てを完璧に変えるのではなく、「この期間だけの、ちょっとした特別」を共有すること。それこそが、寒の内のポカポカ和ご飯に込められた大きな意味なのかもしれません。

次の章では、和食とは少し気分を変えて、スープやオートミール、りんごシナモンなどを使った洋風やデザート風のご褒美朝ご飯を取り上げていきます。甘い香りやおしゃれな器の力も借りながら、「自分を甘やかしたい朝」を優しく支えてくれるメニューを見ていきましょう。


第4章…自分を甘やかしたい日のための洋風&デザート風朝食

寒の内が続くと、「今日くらいは自分を甘やかしたいなあ」と思う朝が、必ずやってきます。外は相変わらず冷たい風、起きれば家事や介護や仕事が待っていると分かっている。それでも、せめて最初のひと口くらいは夢のある味で始めたい。そんな気分の朝に寄り添ってくれるのが、洋風やデザート風のご褒美朝ご飯です。少しだけ非日常を感じるスープや、甘い香りのオートミール、りんごシナモンの一皿が、寒い季節の心をそっとほぐしてくれます。

冬の朝に似合うスープブランチでゆっくり目覚める

和食の朝ご飯も心強い味方ですが、たまには気分を変えて「スープが主役の朝」にしてみるのも良いものです。鶏むね肉と白菜、かぶ、玉ねぎなどをじっくり煮込んだポタージュは、冬の台所の宝物のような存在です。トロリとした口当たりと、野菜の自然な甘み、鶏の旨味が重なった一杯は、飲み物というより「食べる毛布」と言ってもいいかもしれません。

スープの横には、薄く切ったライ麦パンや、小さめのご飯を添えます。パンを浸しながら食べても良いですし、胃腸が弱い方にはスープを少し多めにして、具を細かく刻めば、軟らかな雑炊のようにもなります。忙しくてゆっくり座っていられない朝でも、温かいスープを数口飲むだけで、体の芯からじんわりと目が覚めていく感覚を味わえるはずです。

器選びも大切なポイントです。いつもの茶碗ではなく、お気に入りのマグカップや、ちょっとだけ厚手のスープ皿を使うと、それだけで「今日は特別な朝だな」と感じられます。在宅介護の場でも、取っ手付きのカップや持ちやすい器を選べば、高齢の方でも手がかじかみ難く、安心して口に運ぶことが出来ます。「今日はホテルの朝食ごっこね」と、ひと言添えるだけで、いつもの居間が少しだけ違う景色に見えてきます。

甘い香りで自分を釣り上げるりんごシナモンとオートミール

「寒いし、布団から出たくない。でも甘い物が待っているなら、ちょっとだけ起きようかな」。そんな気分の朝には、りんごとシナモンを使ったオートミールの出番です。牛乳や豆乳でふやかしたオートミールを温め、その中に小さく切ったりんごと、ほんの少しのバターを加えて煮ていきます。仕上げにシナモンをふりかければ、台所は一気に冬のカフェの香りで満たされます。

オートミールは、見た目は地味でも、穀物のエネルギーと食物繊維がギュッと詰まった頼もしい食材です。そこに牛乳や豆乳のたんぱく質、りんごの甘みとビタミンが合わさることで、「デザートのようでいて、しっかり体の土台も支えてくれる」一皿になります。高齢の方で噛む力が弱くなっている場合は、りんごを予め柔らかく煮てから混ぜれば、口当たりもさらに優しくなります。

ただ甘いだけではなく、横には茹で卵や温泉卵をそっと添えましょう。1つ分の卵が加わるだけで、満足感と体温の上がり方が変わります。デザート風の主役と、たんぱく質の相棒。この二人三脚が、甘いご褒美の中にも「今日一日を歩く力」をしっかり忍ばせてくれます。

食後や一緒に飲む飲み物には、紅茶やほうじ茶に薄く切った生姜を浮かべるのもおすすめです。カップから立ちのぼる香りをひと息吸い込むだけで、頭の中にこもっていた寒さがフッとほどけていくように感じられるかもしれません。

在宅介護や忙しい朝でも続けやすい洋風ご褒美の工夫

洋風やデザート風の朝ご飯は、どうしても「手間が掛かりそう」「特別な材料が必要そう」と思われがちです。しかし、寒の内の間だけ、と割り切って考えれば、全てを一から手作りしなくても大丈夫です。むしろ、「続けられる気軽さ」と「ワクワクする香りや見た目」を両立させることが、在宅介護や子育て中の家庭には向いています。

例えば、スープは一度に多めに作っておき、翌朝は温め直すだけにしておく方法があります。味が馴染んだ翌日のスープは、初日とはまた違う美味しさがあり、忙しい朝にも心の余裕を届けてくれます。オートミールも、予め一人分ずつ器に入れておき、朝は牛乳や豆乳を注いで温めるだけにすれば、準備のハードルはグッと下がります。

高齢者施設では、全ての利用者さんに同じ洋風メニューを提供するのが難しい場合でも、「寒の内の間、週に一度だけスープの日を作る」といった取り入れ方なら現実的です。和食中心の献立の中に、たまに現れる洋風スープやりんごデザートは、それだけで大きな楽しみになります。「次のスープの日はいつかな」と、先の予定を楽しみに出来ることは、日々の心の支えにもなります。

自分を甘やかしたい朝のご褒美ご飯は、本来、誰にも遠慮する必要のない時間です。介護をしている人も、されている人も、家族を支えている人も、一人で頑張っている人も、皆本当によく頑張っています。その頑張りに対して、「今日くらいは良いよね」と笑いながら差し出せる一皿があること。それが、寒の内の洋風&デザート風ご褒美ご飯の、本当の価値なのかもしれません。

ここまで和風と洋風、2つの角度から寒い季節の朝ご飯を見てきました。最後のまとめでは、寒の内だけの特別な朝時間が、春に向かって歩き続ける力に繋がっていく流れを、もう一度、優しく振り返っていきます。

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まとめ…寒の内だけの特別な朝が春まで歩く力になる

寒の内の朝は、とかく「つらい季節」として語られがちです。布団から出た瞬間に肌を刺す冷気、まだ暗い窓の外、やらなければならない用事の数々。けれど視点を少し変えてみると、この時期は「一日をどうやって始めるか」を見つめ直す絶好のチャンスでもあります。体のエンジンが掛かり難い季節だからこそ、最初のひと口の温度や香り、色合いに意味を込めてあげると、その日一日の景色が少し違って見えてきます。

第1章と第2章では、冬の朝がつらく感じられる理由を、体と心の両方から辿りました。体温が上がり難いこと、日照時間が短くて目覚めのスイッチが入り難いこと、高齢の方や介護をしている家族にとっては、寒さが不安や負担に繋がりやすいこと。これらは決して「自分が弱いから」ではなく、冬という季節が元々、持っている性質です。その上で、たんぱく質で熱を生み出し、生姜や長葱などの温め食材で血の巡りを助け、冬野菜や果物で体調を支える。そんな基本を押さえた朝ご飯が、寒さに立ち向かうための土台になることを確認してきました。

第3章では、焼き鮭と根菜たっぷりの味噌汁、七草粥風の優しい一膳など、「布団から出られない朝」にそっと効いてくれる和のご褒美を描きました。湯気の立つ具だくさん味噌汁、生姜の香り、鮮やかな青菜の緑、みかんのオレンジ色。どれも特別なご馳走ではありませんが、「今日はこの一杯から始めよう」と思わせてくれる力を持っています。在宅介護や高齢者施設でも、根菜を少し多めに入れてみる、骨を抜いた魚を温め直して香りを立たせる、味噌汁の具を選べる日にしてみるなど、現場の負担を増やし過ぎない形で取り入れられる工夫を考えました。

第4章では、スープブランチやりんごシナモンのオートミールなど、「自分を甘やかしたい朝」を支える洋風&デザート風の一皿に目を向けました。鶏肉と冬野菜を煮込んだポタージュ、ふんわり甘いりんごとシナモンの香り、お気に入りのマグカップに注いだスープや紅茶。少しだけ非日常をまとった朝ご飯は、「今日くらいは良いよね」と自分に笑い掛ける切っ掛けをくれます。介護をしている人も、されている人も、家族を支えている人も、どれだけ頑張っているかを思えば、そのくらいのご褒美はむしろ必要なものだと感じられるはずです。

寒の内だけのご褒美になる朝ご飯は、豪華な献立や完璧な段取りを目指すものではありません。「この時期だけ、いつもの朝に1つだけ特別を足してみる」という、小さな約束の積み重ねです。今日は鮭と根菜のポカポカ朝ご飯の日、明日は七草粥風のご自愛デー、その次はスープとりんごシナモンの日。そんな風に、少し先の朝を楽しみに出来る予定が増えていくと、厳しい寒さの中でも「まあ、もう少し頑張ってみようか」という気持ちがじんわり湧いてきます。

やがて季節が進み、寒の内が終わる頃、同じ窓から射し込む光も少しずつ春めいてきます。その時、あなたや家族、高齢の方の表情が、冬の始まりよりもほんの少し柔らかくなっていたとしたら、それは毎朝の食卓に込めた小さな工夫たちの成果かもしれません。布団から一歩を踏み出した自分を迎えてくれる湯気と香り。そのささやかなご褒美が、春まで歩き続ける力の一部になってくれることを願いながら、この冬だけの特別な朝時間を、どうぞ楽しんで育ててみてください。

今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m


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