片麻痺の高齢者さんの退院後は本番!~ケアマネが“言い過ぎずに”支える技~
目次
はじめに…お見舞いは長居禁止!?~まずは「安心」を置いて帰る話~
脳梗塞の後に片麻痺が残った利用者さんに関わる時、介護支援専門員として一番先に意識したいのは「正しさ」より「心の安全」です。ここ、つい逆になりがちなんですよね。退院の予定が見えた瞬間に、こちらの頭の中では住宅改修、福祉用具、サービス調整、家族の負担、転倒予防……と、脳内で会議が始まってしまう。でも利用者さん側はというと、「家に帰れるのは嬉しい。でも怖い」が同時に来ています。嬉しさの横に、でっかい不安が同居してる感じです。
しかも片麻痺は“見えている半分”だけの話では終わりません。動き難さだけでなく、疲れやすさ、注意力の揺らぎ、飲み込みの不安、痛み、しびれ、気持ちの落ち込み、眠りの乱れ……本人の中で説明しづらい変化が、じわじわ混ざってきます。だからこそ、こちらが「では解決策を5つ提案します!」みたいに前のめりになるほど、本人の心は置いてきぼりになりやすい。正論は、タイミングを間違えると“追い打ち”になります。正論って、便利だけど時々、トゲがあるんです。
このリメイク記事では、発症直後は医療の領域にしっかり任せるところから始めて、退院前の場面でケアマネがやりがちな「言い過ぎ事故」をどう防ぐか、そして退院後の生活で“出来る”を増やしていく現実的な支え方を、読み物として楽しく整理していきます。専門用語を振り回すより、現場で本当に役立つ「声掛け」「順番」「見落としポイント」を中心にしていきますね。
先に1つだけ、今日の合言葉を決めておきます。ケアマネは魔法使いではありません。なので、いきなり全部を直そうとしない。その代わり、本人が「よし、やってみようかな」と思える火種を、小さく丁寧に残していく。お見舞いだって同じで、長居して名アドバイスを連発するより、「助かったね」「また会いに来るね」を置いて、スッと帰る方がプロっぽい時もあります。見舞いで“満点”を取りに行かない勇気、これ大事です。
では次の章から、医療のターンと介護のターンの境目を綺麗に分けつつ、退院後に強いケアマネの動き方を、一緒に組み立てていきましょう。
[広告]第1章…発症直後は医療のターン~ケアマネは“焦らず待つ”が勝ち~
脳梗塞の発症直後って、現場の空気がまるで違います。救急搬送、検査、治療方針の決定、必要なら手術や点滴治療、そして全身状態の安定化。ここはもう完全に「医療チームの時間」で、ケアマネが腕まくりして前に出る場面ではありません。むしろ、前に出ようとすると空回りしやすい。良かれと思って動くほど、本人や家族の心に“余計な圧”がかかることがあるからです。
とはいえ、何もしないで良いわけでもありません。ここで大事なのは「出番を間違えない」こと。急性期は、支援の主役を奪わない形で“安心”を届けるのが、ケアマネとして一番価値のある動きになります。
まずは命が助かったことを一番に言う
発症直後の本人は、体の半分が思うように動かない衝撃に加えて、頭の中が混乱していることも少なくありません。家族も同じで、情報が追いつかず、心が置いていかれます。そんな時に大切なのは、難しい話をしないことです。
「助かって本当に良かったです」「今は治療に集中しましょう」「落ち着いたら、退院後のことは一緒に考えますね」この3つが言えれば十分です。ここで“退院後の生活”を先に語り出すと、本人はまだ受け止めきれていないのに、未来の宿題だけ増える感じになってしまいます。ケアマネが未来を見過ぎると、本人は今日を耐える力を削られちゃうんですね。
ちょっとユーモアを足すなら、「今は“回復するための病院合宿”ですね。私の出番は、合宿の後半から!」くらいの軽さが、場の緊張をほどくこともあります。もちろん相手の雰囲気次第ですが、“明るさ”は立派な支援です。
お見舞いは長居し過ぎず励まし過ぎず説教をしない
お見舞いって、つい頑張りたくなるイベントなんですよね。何か役に立つことを言わなきゃ、って。でも発症直後は、長居や質問攻めが一番疲れさせます。
特に注意したいのが、「リハビリ頑張って!」の連発です。言った側は応援のつもりでも、本人には“頑張れない自分を責めるスイッチ”になることがあります。代わりに、「今日はここまで出来たんですね」「しんどい日は休みながらで大丈夫」「医療スタッフがついてますから安心して」と、今の状態に寄り添う言葉の方が届きます。
ここでケアマネがやるべきは、名アドバイス大会ではなく、心の温度を下げる消火活動です。火を消すのが先、家の設計図はその後。順番が命です。
“情報収集”はするけど本人の前で詰め込み過ぎない
急性期は医療判断が中心なので、ケアマネが踏み込み過ぎるのは避けたい。一方で、退院後に備えて最低限の確認はしておくと、後半で効いてきます。ポイントは「本人の前で根掘り葉掘り聞かない」こと。本人が聞いている場所で、生活の困りごとを次々並べると、気持ちが沈みます。
家族や医療者から把握しておくと助かるのは、例えば片麻痺の程度だけでなく、疲れやすさ、注意力、飲み込みの状態、痛みの有無、手の使い難さ、移動の安全性などの“生活に直結する部分”です。ここは専門用語より、「何がやり難いか」「どんな時に危ないか」という言い方で十分です。
そして、一番大事なのは「今は医師の説明と治療が軸」という姿勢を崩さないこと。ケアマネの言葉が医療説明とズレると、本人も家族も余計に混乱します。ここは我慢の章です。ケアマネが頑張るのは、まだ先。
この時期に“やっておくと後がラク”なこと
退院後の支援は、ある日いきなり始まるようで、実は急性期の過ごし方が土台になります。だからこそ、今できる準備は「段取り」より「関係作り」です。
家族には、「退院が見えてきたタイミングで、生活のことを一緒に整えましょう」と伝えておく。本人には、「あなたのペースを大事にして進めます」と約束しておく。医療者には、「退院が近づいたら情報共有をお願いしたいです」と礼儀正しく橋をかけておく。この3方向に“安心の橋”ができると、次の章で登場する退院前カンファレンスが、ただの作戦会議ではなく、本人中心の話し合いに変わっていきます。
急性期のケアマネは、主役じゃなくて舞台スタッフです。でも舞台スタッフが優秀だと、主役は安心してスポットライトを浴びられる。さあ次は、病院側の初動の大変さと、そこからどうやって退院後に繋げるかを見ていきましょう。
第2章…病院は初動の修羅場~プロの動きに敬礼しつつ情報を拾うコツ~
急性期の病院って、外から見ると静かに見えることがあります。廊下はピカピカ、ナースステーションは落ち着いて見える。でも中身は、だいたい「見えない大運動会」です。救急搬送から始まって、検査、治療、全身管理、合併症の予防、そして“動ける体を取り戻すための準備”。この初動の段階は、医師だけでなく、看護師さん、リハビリ職(PT・OT・ST)、薬剤師さん、管理栄養士さんなど、たくさんの人の連携で成り立っています。
ケアマネとしてこの章で大事なのは、「ここで主役を奪わない」ことと、「後で困らない程度に情報を拾う」こと。この両立です。いわば、白衣のプロ集団に深々とお辞儀しつつ、落とし物(生活に必要な情報)だけはちゃんと拾って帰る。これが出来ると、次の章で登場する退院前カンファレンスが、グッとやりやすくなります。
病院の“早めに動かす”は無茶ではなく作戦
片麻痺が残った方に対して、病院が比較的早い段階からリハビリの話をすることがあります。ここで家族が驚くんですよね。「え、そんなに早く動かして大丈夫?」と。気持ちは分かります。けれど、早期から体を起こす、座る、立つ、少しずつ動かす、という流れは、ただの根性論ではなく、回復の土台作りの作戦です。
動かさない期間が長いほど、筋力は落ちやすいし、関節が固まりやすい。寝ている時間が増えると、肺炎などのリスクも上がりやすい。だから病院は、状態を見ながら「出来ることを少しずつ増やす」方向へ、計画的に舵を切ります。ケアマネがここでやるべきは、「早い=危険」と決めつけないこと。医療の説明と同じ方向を向いたまま、生活の視点で理解しておくことです。
“後で効く情報”は派手じゃないけど超重要
退院後の支援で困るのは、だいたい派手な問題ではなく、小さな行動の躓きです。例えば、立ち上がる時にどちら側へ体重を乗せると安全か、車いすのブレーキをどのタイミングで触るか、飲み込みが不安な時の食事の姿勢はどうするか。こういう地味な情報が、在宅生活の安全を左右します。
だから病院で拾いたいのは、「片麻痺がある」という大きな情報よりも、「どんな場面で危ないか」「何をすると楽か」「何をすると疲れるか」みたいな、生活に直結する手触りのある情報です。難しい言葉は要りません。むしろ、家族に伝わる言い方で整理できると強いです。
ここでケアマネがやりがちな失敗が、本人の前で“課題の読み上げ大会”を始めてしまうことです。「お風呂は無理ですね、トイレも危ないですね、段差も大変ですね」と言われたら、本人は心の中でこう叫びます。「うん、それ全部、今一番聞きたくない!」と。情報収集は大事。でも言う順番と場所が大事。これ、ケアマネの腕の見せどころです。
病院の人に聞くときは「生活に繋げたい」が合言葉
病院のスタッフさんに質問する時、コツがあります。答えやすい聞き方にすることです。おすすめは、「家に帰ったら、この方が安全に過ごすために、家族が気をつけるポイントってありますか?」という形。医療者の頭の中にある注意点を、“生活の言葉”に変換してもらいやすくなります。
もう1つ、聞き方で大事なのは、対立しないことです。「在宅は無理ですよね?」と聞くより、「在宅を目指すなら、どこが山場になりますか?」と聞く方が、現実的な話が出ます。病院側も「無理」と言い切るのは難しいですし、本人の前ではなおさらです。だからこそ、ケアマネは“可能性と条件”の話に誘導する。ここがスマートです。
そして、病院のチームを見ていると分かるのですが、みんな忙しいのに、生活の話を真剣に聞いてくれる人は多いです。ただし、時間は本当に限られている。だからこそケアマネは、短い時間で要点を拾う力が必要になります。欲張って全部聞こうとせず、「転倒リスク」「移動の介助」「食事の注意」「疲れやすさ」みたいな、退院後に事故に繋がりやすい部分を優先して押さえると、後が楽になります。
病院での初動は、例えるなら“F1のピット作業”みたいなものです。早い、正確、連携が命。ケアマネはドライバーでも整備士でもないけれど、レース後に走れる車を家に持ち帰る係です。だから、ここで拾う情報が次の章の材料になります。次は、いよいよ退院前カンファレンスの場面へ。本人が主役から降ろされないように、ケアマネがどう立ち回るかを、楽しく(でもかなり大事に)語っていきますね。
第3章…退院前カンファは本人が主役~「先回り助言」で心を折らない~
退院が見えてくると、病院の空気が少しずつ変わります。治療の話だけだったところに、「家に帰ったらどう暮らす?」が混ざり始める。ここで開かれる退院前カンファレンスは、言ってみれば“退院後の生活の作戦会議”です。
ただし、この会議には落とし穴があります。参加者が多いほど、専門職が真面目で優秀なほど、話が正しく整い過ぎて、本人の気持ちが置いていかれることがあるんです。本人は主役なのに、いつの間にか「決定事項を聞く人」になってしまう。ケアマネがここで果たす役割は、サービス調整だけじゃありません。一番大事なのは、本人が主役の席から降ろされないように、さりげなく手を引いてあげることです。
「困りごとを並べる」より先に「願いを聞く」
退院前カンファでよくある光景があります。誰かが良かれと思って言うんです。「お風呂は危ないですね」「トイレは介助が必要ですね」「段差がありますね」「転倒が心配ですね」。全部、正しい。正しいんだけど、本人の胸の中では、だんだん音が小さくなっていきます。まるで、心のシャッターが降りるみたいに。
何故かというと、本人はもう十分わかっているからです。出来なくなったことは、本人が一番痛いほど知っている。そこでさらに“出来ないダメ押し宣言”が積み重なると、会議が本人の自己紹介みたいになってしまう。「私はこれが出来ません、あれも出来ません」って。そりゃ元気がどんどん減ります。
だからこそ、ケアマネが最初に置きたい言葉はこれです。「退院したら、まず何を一番大事にしたいですか?」。家でお茶を飲みたいのか、庭を見たいのか、トイレを自分で行きたいのか、風呂に入りたいのか、家族と食卓を囲みたいのか。願いを先に聞くと、会議の空気が変わります。“出来ない話”が、“どうすれば近づけるか”の話に変わるんです。
ちょっとユーモアを添えるなら、「退院後の目標、でっかいのを1つください。小さいのは私がこっそり増やします」と言うと、笑ってくれる方もいます。笑いが出ると、会議は“裁判”じゃなくなります。ここ、地味に大事です。
ケアマネがやりがちな「先回り親切」を封印する
ケアマネって、段取りの仕事です。だから頭の中で、解決策が次々浮かぶのは自然なこと。でも、浮かぶことと、口に出すことは別です。
本人がまだ受け止め切れていない段階で、「手すりをこうして、福祉用具はこれで、訪問介護は週に何回で……」と話を進めると、本人は“決められていく感じ”になります。すると次に起きるのは、静かな抵抗です。「それは嫌」「それはやりたくない」「家に他人を入れたくない」。拒否は我儘ではなく、防衛反応です。いきなり生活が変わるのが怖いから、心がブレーキを踏むんですね。
ここでのコツは、提案を「決定」にしないことです。言い方を変えるだけで、受け止めやすさが変わります。「こうしてください」ではなく、「こういう方法もあります。どう感じます?」にする。これだけで、本人は主役に戻れます。
ケアマネの役割は、答えを押し付けることじゃなく、本人が答えを選べる状態にすること。本人が“選べた”と感じると、その後の生活が強くなります。選べないまま始まった支援は、どこかで息切れしやすい。ここが分かれ道です。
会議で守りたい「本人の通訳」という仕事
退院前カンファは、専門職が多い分、言葉が専門職のそれぞれの専門の言葉になります。すると、本人は頷きながらも理解が追いつかないことがあります。そこでケアマネは、本人の通訳になれます。専門用語を、小学生でも分かる言葉に直す。これは、サービス調整と同じくらい価値が高い仕事です。
例えば、「移乗」「更衣動作」「嚥下」「注意障害」みたいな言葉が飛び交った時、本人が置いていかれそうなら、会議の流れを止めずに、ふんわり確認を挟みます。「今の話を、家に帰ってからの言い方にすると、“立ち上がる時に右側が不安定なので、支え方を決めましょう”って意味ですね。合ってますか?」。この確認は、医療者にも嬉しいんです。伝わったかどうかが分かるからです。
もう1つ大事なのは、本人の言葉も通訳すること。本人が「大丈夫」と言った時、それが本当に大丈夫なのか、遠慮なのか、気合いなのか、見極めが必要です。本人の「大丈夫」は、時々「迷惑かけたくない」の別名です。だから、真正面から否定せずに、「大丈夫って言えるのは凄いです。じゃあ“どこなら手伝っても良い”ですか?」と聞く。ここで“手伝う前提”ではなく、“手伝う範囲を選べる”形にすると、本人の自尊心が守られます。
退院前カンファを「叩き込み会」にしないための段取り
退院前カンファで決めたことは、確かに大切です。でも、会議で決まったことが全部、そのまま現実になるとは限りません。家に帰った瞬間、想定外は普通に起きます。玄関の段差が思ったより高い、トイレの手すりが握り難い、夜の移動が怖い、疲れがドッと出る。退院後は“生活の実地テスト”が始まるんです。
だから、会議の最後にケアマネが置いておきたいのは、「後で調整できる余白」です。あれもこれも決め切るより、「帰ってみて困ったところから直します」を共有しておく。本人にとっては、その一言が救いになります。完璧にやらなきゃいけない圧が下がるからです。
そして、家族にも伝えておきたい。退院直後の数日は、イベントです。良い意味でも大変な意味でも、非日常。なので「退院して終わり」ではなく、「退院してからが始まり」。ここまでを会議で共有できると、チームの連携がグッと強くなります。
退院前カンファでケアマネが目指すのは、“正しい計画”より“続く計画”です。本人の気持ちがついてくる計画は、多少ゆっくりでも前に進みます。逆に、気持ちが置いていかれた計画は、見た目が整っていても止まりやすい。
次の章では、いよいよ在宅生活の本番です。住宅改修や福祉用具の話だけでなく、「退院後数日が勝負」という現場あるあるも含めて、事故を減らして“出来る”を増やす動き方を、楽しく具体的にまとめていきますね。
第4章…家に帰ってからが勝負~住まい・道具・チームで“出来る”を増やす~
退院の日って、気持ちは「よーし帰るぞ!」なんですけど、生活はだいたい「え、ここがこんなに手強いの?」から始まります。病院は“安全に整えられた環境”のプロ仕様。家は“思い出が詰まった迷宮”。段差、敷居、床の滑り、トイレの向き、夜の暗さ、布団の高さ、いつもの動線……全部が、片麻痺の体にとっては新しいテスト問題になります。
だからこの章の合言葉は、「退院はゴールじゃなくて、生活の実地テストのスタート」。ケアマネがここで強いのは、正解を先に決める人ではなく、“試して調整する流れ”を作れる人です。本人と家族が「また失敗した…」と落ち込む前に、「失敗はデータ!次、直せばOK!」に変換していきます。
退院後の数日間は“イベント扱い”で良い
退院直後は、本人も家族も疲れやすいです。緊張がほどけたところに、生活の細かい負荷がドッと来ます。ここで「計画通りにやりましょう!」を前面に出すと、家の中が急に“訓練施設”みたいな空気になってしまうことがあります。
おすすめは、退院後の最初の数日を「様子見と微調整の期間」として位置づけることです。本人にとっては、「完璧に出来なくて当たり前」という安心が生まれます。家族にとっては、「困ったら相談して良い」という逃げ道ができます。ケアマネとしては、ここを先に共有しておくと、後から起こる電話相談が“謝罪”ではなく“報告”になります。報告は前向きに進みますが、謝罪は心を削ります。まず心を守りましょう。
住まいの工夫は“立派さ”より“当たり前に続く”が正義
住宅改修や福祉用具って、派手さを求めると負けます。理想の設備を盛り込むより、本人が毎日、自然に使える形が勝ちです。例えば手すりも、「付けた」だけで終わることがあるんですよね。握り難い位置、立ち上がりと合わない高さ、曲がる場所がズレてる。すると本人は使わず、家族だけが手すりを見て安心してしまう。これはちょっと怖いパターンです。
だから大事なのは、本人の動きに合わせて“使えるかどうか”を確認していくことです。ケアマネは、リハ職や福祉用具の担当者の力を借りながら、家の中の「ここで危ない」が起きやすい場所から優先して整えます。本人が一番困っている動作、例えばトイレの立ち座り、寝起き、玄関、入浴の出入りなど、生活の核心から攻める。核心が整うと、本人は急に表情が明るくなります。「家で暮らせるかも」と思えるからです。
ここでのユーモアのネタを1つ。家の段差って、普段は“無口な家具”みたいな顔してますよね。でも片麻痺の生活になると、急に段差が自己主張してきます。「やあ、ここ通る?気をつけてね?」って。段差は性格が悪いわけじゃなくて、今まで見えてなかっただけ。見える化して対策する、それだけです。
チームの情報共有は「同じ説明」を増やすこと
退院後の支援は、訪問介護、訪問看護、通所、福祉用具、リハビリ、主治医、家族……と、関わる人が増えます。ここで起きがちなのが、本人と家族が“説明係”として疲れてしまう問題です。同じことを何度も説明するうちに、だんだん話が雑になり、伝え漏れが出て、事故に繋がることがあります。
だからケアマネがやりたいのは、本人と家族の負担を減らす情報の橋渡しです。ポイントは、難しい報告書を増やすことではなく、「みんなが同じ理解で動ける言い方」を揃えることです。例えば移動の介助なら、「立つ時は右側に体が流れやすいので、左側に支えを作る」みたいに、誰でもイメージできる言葉にまとめて共有する。言葉が揃うと、支援の質が揃います。揃うと、本人が安心します。
そして退院後は、計画の点検が命です。頭の中で考えた安全策が、家では通用しないことが普通にあります。だから、早めに「想定と現実のズレ」を拾って、ズレを直していきます。ケアマネの価値は、ここで跳ね上がります。
片麻痺は“見える半分”だけじゃない~小さな困りごとが大事故を呼ぶ~
片麻痺というと、手足の動きに目が行きます。でも実際の生活では、見え難い部分がジワっと効いてきます。例えば、口の動きや飲み込みが弱いと、咽込みが増えて食事が怖くなったり、肺炎のリスクが上がったりします。便秘が続けば食欲が落ち、体力も落ちます。痛みがあると動かなくなり、動かないとさらに固まる。肩が引っ張られて痛くなる方もいますし、手をだらんと下げたままにしてしまうと、関節に負担が掛かることもあります。
ここで大切なのは、「本人が言い難い小さな困りごと」を先に拾っておくことです。歯磨き一つとっても、片手だとやり難い。歯磨き粉を出す、フタを開ける、口をゆすぐ、タオルで拭く。この一連が難しいと、口の中の状態が崩れていきます。でも本人は「そんなことで迷惑かけたくない」と黙ってしまうことがあります。
だからケアマネは、恥ずかしさが出やすい生活動作ほど、明るく、軽く、具体的に聞くのがコツです。「歯磨き、片手だと地味に難しくないですか?実はみんなそこ引っかかります」と先に言ってしまう。すると本人も話しやすい。ここで話が出れば、チームで対策が打てます。
目指すのは“自立の形”を作ること~全部を一人でやらせない~
退院後に一番避けたいのは、本人が無理をして転ぶことと、家族が無理をして燃え尽きることです。片麻痺の生活は、気合いだけで押し切るとどこかで破綻します。だから「本人が出来ること」を守りつつ、「危ないところは仕組みで支える」。このバランスが大切です。
本人の自立は、何でも一人でやることではありません。必要なところだけ助けを借りて、自分らしい生活を続けることです。ケアマネは、その“自立の形”を一緒に作る役です。出来ないことを数えるより、出来る形に変える。出来る形が増えると、本人の顔つきが変わります。家族の肩も少し下がります。生活は、そこから安定していきます。
次は「最も注意しておきたいビジョン」、つまり片麻痺の方の支援で見落としがちな大事な視点を、もう一段深くまとめていきますね。
[広告]まとめ…片麻痺は見えない所にも来る~小さな困りごとを一緒に潰していこう~
片麻痺のある利用者さんの支援は、知識や段取りの勝負に見えて、実は「心の安全」と「生活の現実」の両方を守る勝負です。発症直後は医療のターンで、ケアマネは前に出過ぎず、安心をそっと置いて帰る。ここで無理に頑張ると、本人にも家族にも“宿題の山”だけが残ってしまいます。急性期は、助言よりも「今は治療に集中で大丈夫」という一言が効きます。
病院の初動はまさにプロの連携プレーで、ケアマネがすべきは対立ではなく、生活に繋がる情報を静かに拾うことでした。どんな場面で危ないか、どんな時に疲れるか、食事や移動で気をつけることは何か。派手な話より、地味な情報が在宅の安全を支えます。ここを押さえると、退院前の話し合いがスムーズになります。
退院前カンファレンスでは、本人が主役の席から降ろされないようにするのが肝心でした。「出来ないこと」を並べる前に「大事にしたいこと」を聞く。先回りの親切を封印して、提案は“決定”ではなく“選択肢”として差し出す。専門職の言葉は生活の言葉に通訳する。ここまで整うと、本人の表情が少し柔らかくなり、「やってみようかな」の火が残ります。
そして退院後は、生活の実地テストが始まります。家は思い出の場所であると同時に、片麻痺の体にとっては新しいコース。段差や動線は急に自己主張してきますが、相手が悪いわけではなく、今まで見えていなかっただけです。最初の数日は“イベント期間”として、完璧を求めず、困ったところから調整していく。その流れを作れると、本人も家族も折れ難くなります。
最後に大事なことを1つ。片麻痺は「見える半分」だけの話で終わらないことが多いです。飲み込み、痛み、疲れ、口腔ケア、便秘、眠りなど、小さな困りごとが積み重なると生活全体がしんどくなります。だからこそ、本人が言い難いことほど、明るく軽く聞いて、チームで共有して、早めに手当てしていく。ケアマネの仕事は、派手に解決することより、静かに“続く形”を増やすことです。
「全部を1人でやる」ではなく、「必要なところだけ助けを借りて、自分らしく暮らす」。この自立の形が出来た時、片麻痺のあっても生活は、ちゃんと前に進みます。焦らず、でも止まらず。今日も一歩、整えていきましょう。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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