10月の園芸レクは作って終わりにしない~小さな鉢を育てる時間が暮らしに秋を連れてくる~
はじめに…10月は「完成させるレク」より「育てるレク」がよく似合う
10月の窓辺には、少しだけ不思議な力があります。夏ほど眩しくない光が差し込み、外を見れば木々の色も少しずつ変わっていく。「もう秋やなあ」と誰かが言えば、「まだ昼は暑いで」と返事が飛んでくる。季節の話は、それだけで立派な会話の種になります。
そんな秋に園芸レクをするなら、立派な作品を1日で完成させなくても構いません。小さな鉢に好きな葉や飾りを選び、今日はここまで。翌日に眺めて、少し位置を変える。水をやり、また眺める。数日後には「この葉、昨日より元気ちゃう?」なんて声が出るかもしれません。植物は返事こそしませんが、見ている側はけっこう話しかけます。……返事をされたら、それはそれで職員会議になりそうですが。
手先をたくさん動かせる人もいれば、色を選ぶだけの人、眺めながら「そこに赤を置いたらええ」と監督役になる人もいます。参加の形は十人十色。誰かと同じ物を完成させるより、自分で1つ選べたこと、自分の鉢として明日も気に掛けられることの方が、その人らしい楽しみに繋がります。
園芸レクの面白さは、作品を作ることより「明日も見る理由」を暮らしの中に置けることです。
これは、施設のレクリエーションを考える時にも大切な視点です。「楽しんでもらわなければ」と気合十分で準備すると、職員の机だけが材料で満開になり、開始前にこちらが燃え尽きることもあります。季節を楽しむ方法は、もっと小さくて大丈夫。無理なく手を伸ばせて、その日の気分で関わり方を変えられるくらいがちょうど良いのです。
10月は、暑さが少し遠ざかり、冬支度にはまだ早い時期。そんな季節の隙間に、小さな鉢を1つ置いてみませんか。完成を急がず、試行錯誤しながら少しずつ育てていく。その鉢は秋の飾りだけではなく、「今日はどうなったかな」と明日へ目を向ける小さな楽しみに育っていきます。
[広告]第1章…手の平に秋の庭を作ろう~選ぶ楽しさから始まる小さな園芸~
テーブルの上に、小さな鉢や器を1つ置きます。その周りには赤や黄色に色づいた葉、松ぼっくり、苔のような素材、小さな飾り。全部を綺麗に並べる必要はありません。少しくらい散らばっている方が、「どれにしようかな」と手が伸びます。
園芸レクというと、土を入れて苗を植えて、水をやって……と立派な作業を想像しがちですが、入口はもっと軽くて大丈夫です。
「赤い葉と黄色い葉、どっちが好きですか?」
「この松ぼっくり、大き過ぎますかね?」
そんな問いかけから始めれば、それだけで参加になります。「私は赤」「松ぼっくりは要らん」「その鉢は地味やなあ」と注文が飛び始めたら、むしろ順調です。職員としては「そこまで言うなら全部お願いします」と言いたくなるところですが、そこは笑顔で受け止めましょう。
自分で作れるかどうかより、自分で選べる場面があることが園芸レクの大切な出発点です。
手を動かしやすい方なら、器の中へ素材を置いていきます。細かな作業が難しい方なら、職員が2つほど見せて「こちらとこちら、どちらにします?」と選んでもらう。手を動かさなくても、「もう少し右」「それは後ろ」と指揮を執れば立派な共同制作です。
完成見本と同じ形を目指す必要もありません。赤い葉ばかり選ぶ人がいても、松ぼっくりを真ん中へ堂々と置く人がいてもいい。器の奥に背のあるもの、手前に低いものを置けば小さな景色に奥行きが出ますが、最後は本人の「これでええ」が決定権です。
そこには自由自在な面白さがあります。
職員が美しく仕上げようとして手を出し過ぎると、いつの間にか職員作品になってしまいます。「ちょっと曲がっていますよ」が禁句になる日があっても良いのです。曲がっているから本人らしい。色の組み合わせが独特だから話題になる。均一に揃った展示より、1つずつ違う方が、眺める楽しさも増えていきます。
百聞は一見にしかず。素材を説明するより、目の前に置いて「好きなのを1つどうぞ」とした方が、気持ちは動きやすいものです。
器も新品ばかりでなく、使わなくなった小鉢などを生かせます。そこへ秋色の葉や松ぼっくりを添えれば、見慣れた器が小さな庭へ変わっていきます。やわらかな自然光が入る窓辺なら、葉の色や表情も見やすくなり、出来上がった後の居場所にもピッタリです。
そして、完成を急がないことも大事です。
今日は鉢を選ぶ。明日は葉を1つ足す。数日後に置き方を変える。「昨日と違うな」が生まれれば、それも楽しみになります。一日千秋とまではいかなくても、「明日はどうしようかな」と少し先を楽しみにできれば、小さな鉢はもう単なる工作物ではありません。
手の平に収まるくらいの秋だからこそ、自分のペースで関われます。大きな行事のような派手さはなくても、「私が選んだ」という小さな誇らしさが残る。その気持ちが、次に鉢へ手を伸ばす理由になっていきます。
第2章…触る・摘む・眺める・香る~五感と指先が自然に動き出す時間~
秋の園芸レクには、「作業をしている」という感覚より先に、いろいろな感覚がやってきます。
葉を1枚摘む。表面を指でなぞる。松ぼっくりの凸凹に触れる。色の違うものを並べて眺める。植物にそっと顔を近づけて香りを確かめる。
「こっちはツルツルやな」
「あら、裏はザラザラしてる」
そんな何気ない一言が出たら、その瞬間からレクリエーションはグッと面白くなります。正解を当てる時間ではなく、自分が感じたことを言葉にできる時間だからです。元気な葉を見つけるだけでも良いし、「この赤は派手やなあ」と品評会を始めても良い。気づけば職員より目利きが厳しい人が現れます。秋の園芸界、なかなか人材が豊富です。
葉や飾りをつまんで動かすことは、巧緻動作(指先を細かく使う動き)にも繋がります。ただし、「指の訓練ですよ」と構えてしまうと急に宿題らしくなります。
「この葉、どこに置きましょう?」
そんな声かけなら、自然と手が伸びることがあります。
届きにくければ材料を手元へ寄せる。小さ過ぎる物が扱いにくければ、少し大きな葉や飾りに替える。見ることが中心の方なら、明暗や色の差が分かりやすい組み合わせにする。参加する人に合わせて、楽しみ方も千差万別で良いのです。
「出来る動作を探す」のではなく、「楽しめる感覚を探す」と参加の入口はグッと広がります。
香りも立派な入口です。葉をそっと近づけた時、「昔、庭にあったなあ」と記憶が動き出すことがあります。手触りや色から昔の暮らしへ話が飛んでも構いません。鉢を作っていたはずなのに、気づけば畑や山歩き、庭木の剪定の話になっている。それも園芸レクの面白い寄り道です。植物の色や香り、手触りを会話につなげる楽しみ方は、季節を室内へ運ぶ工夫にもなります。
さらに、完成した鉢を少し離して眺めてみると、「赤をもう1枚」「こっちは少し寂しいな」と新しい気づきも出てきます。触って終わりではなく、見ることで次の動きが生まれる。この繰り返しなら、1つの鉢で何度でも遊べます。
手を動かせば目も動き、目が動けば言葉も出る。そこへ香りや手触りまで加われば、正に一石二鳥どころか、それ以上かもしれません。
大切なのは全部の感覚を使ってもらうことではありません。その人が「これ、ちょっと気になる」と感じる入口を1つ見つけること。秋の小さな鉢は、その一歩を急かさず待っていてくれます。
[広告]第3章…「水やりお願い」が小さな役割になる~毎日に育つ楽しみを置く工夫~
朝、いつもの席へ向かう途中で鉢をチラリ…。
「今日は水、どうやろ?」
昨日までなら素通りしていた窓辺に、1つ気になるものが出来る。園芸レクの楽しさは、そんな小さな変化にもあります。
水やりは毎日たっぷり行えば良いわけではありません。土を見て、少し触れて、乾いていれば必要な分だけ。「今日はまだ湿ってるから休みやな」と判断する日もあります。植物の世話は、やることが決まり切っていないからこそ、眺めたり考えたりする余地があります。
そこで職員が、
「水をあげてください」
ではなく、
「今日、この子どうしましょう?」
と尋ねてみます。
すると、世話をされる人から、植物の様子を見る人へ立場が少し変わります。
誰かにしてもらう時間の中へ「自分がしてあげる時間」が1つ入ると、暮らしには小さな役割が生まれます。
自分で水差しを持てる方なら、軽くて握りやすいものを用意します。量の調整が難しければ、職員が少量だけ入れて渡しても良いでしょう。「まだ水はいらん」と教えてもらうだけでも立派な参加です。
水を注ぐ人、土を見る人、葉を確認する人。役割は適材適所で構いません。
そして植物の面白いところは、翌日があることです。
昨日と同じように見えて、葉の向きが少し違う。新しい芽らしきものを見つける。逆に元気がない日もある。「水が足らんのかな?」「窓際は暑過ぎたかな?」と話が始まれば、鉢1つから日常に小さな事件が誕生します。
ただし、植物が元気をなくした時に「水や!もっと水や!」と全員で注ぎ始めるのは待ったです。植物にも水腹というものが……あるかどうかはさておき、土が湿っているなら置き場所や日差し、風の当たり方なども見てみます。元気がないから水を増やす、と決めつけないことも大切です。
職員側の負担を増やさない工夫も欠かせません。
毎日立派な観察記録を書く必要はなく、「水なし」「少し水」「葉が元気」くらいの短い印で十分。担当者1人が抱え込まず、その日に気づいた人が少し見る。そんな臨機応変な付き合い方なら、園芸レクが新しい仕事の山になりにくくなります。鉢の世話をみんなで見守る仕組みは、日々続けるための助けにもなります。
やがて「水やりの時間ですよ」と呼ばなくても、自分から鉢を見る人が現れるかもしれません。
レクリエーションの予定表に書かれた時間だけ楽しむのではなく、朝でも昼でも、通りすがりでも関われる。そんな存在になれば、小さな鉢はかなりの働き者です。
今日世話をしたから、明日の様子が少し気になる。
その「少し気になる」が、暮らしの中に次の日を待つ楽しみを1つ増やしてくれます。
第4章…完成品より変化が面白い~写真と会話で家族まで巻き込む秋の成長記録~
面会に来た家族が、窓辺の小さな鉢を見つけます。
「これ、作ったの?」
すると本人が、
「この赤い葉、私が選んだんよ」
ほんの数秒の会話ですが、ここには園芸レクの楽しいところがギュッと詰まっています。作品があるから話題が生まれ、「何をしたの?」ではなく「これ、どうしたの?」と具体的な会話が始まるのです。
しかも、園芸は完成した日の写真だけでは終わりません。
最初は葉が3枚。数日後には置き方が変わり、植物を育てるなら芽が伸びることもあります。「10月5日」「10月12日」と週に1枚ほど写真を残していけば、小さな鉢にも立派な成長記録が出来ます。
並べて見ると、
「最初、こんなんやったん?」
「この頃より今のほうがええやろ?」
本人まで写真を見比べ始めます。自分の作品なのに、過去の自分へ軽くダメ出し。作者というものは、いくつになっても厳しいものです。
写真に残したいのは上手に完成した姿ではなく、その人が選び、育て、楽しんだ時間です。
撮影する時は作品だけでなく、本人の手元を一緒に写すのも素敵です。葉を直している指、水を注いでいる瞬間、鉢を眺めている姿。そうした場面が1枚あるだけで、家族にも「こんなふうに過ごしているんだな」と日常の空気が伝わりやすくなります。写真と短いひと言を添えて残す方法は、家族との会話を広げる工夫にもなります。
そこへ本人の言葉も加えてみましょう。
「赤が好き」
「水はやり過ぎたらあかん」
「来週もっと立派になる予定」
長文でなくて構いません。むしろ短い方が、その人らしさが残ります。職員が考えた美しい文章より、本人のひと言の方が妙に味わい深いことがあります。
展示するなら、作品、写真、ひと言カードを近くに置くと、通り掛かった人も足を止めやすくなります。1つの鉢を本人だけで楽しむのではなく、他の利用者さんや職員、面会に訪れた家族まで眺めるようになると、そこに和気藹々とした小さな交流が生まれます。
もちろん、写真を撮ったり掲示したりする時は本人や家族の意向を大切にします。撮影して良いか、どこまで見せて良いかを確認し、名前や顔を広く見せる必要がなければ作品だけにする。楽しみを広げることと、プライバシーを守ることは両立できます。撮影前の声かけや掲示前の確認を丁寧に行うことも、安心して続けるための土台になります。
そして面白いのは、家族まで参加者になれることです。
「次は黄色い葉も良いね」
「家にも似た鉢があるよ」
そんなひと言を次の世話に取り入れれば、面会の日と普段の暮らしが繋がります。遠く離れて暮らす家族でも、施設の決まりに沿った方法で写真を共有できれば、小さな変化を話題にできます。
レクリエーションを「その場にいた人だけの時間」にしない。
作品が残り、写真が残り、本人の言葉が残る。その3つが揃うと、1つの園芸レクから何度も会話が生まれます。
鉢は手の平サイズでも、そこから広がる人の輪は意外に大きいものです。10月の小さな秋が、本人と職員だけでなく家族まで繋ぐ。そんな一期一会の場面が積み重なれば、完成品よりずっと温かなものが残っていきます。
[広告]まとめ…小さな鉢は今日で終わらない~明日を楽しみに出来る園芸レクへ~
10月の園芸レクで持ち帰りたいものは、立派な鉢でも、綺麗に並んだ作品でもありません。
「この赤が好き」
「今日は水はいらんな」
「昨日より伸びた気がする」
そんな小さな言葉が、暮らしの中に残っていくことです。
自分で葉を選び、指先で触れ、水やりの頃合いを考える。作った後も様子を眺め、ときには家族へ見せて話の種にする。1つの小さな鉢が、手を動かす時間、考える時間、人と話す時間へ次々に繋がっていきます。
それは一朝一夕で完成する楽しみではありません。
むしろ少しずつ変わるから面白い。「今日は何も変わらんな」と思った翌日に、小さな芽を見つけることもあります。毎日見過ぎて「伸びた!」「いや昨日もその高さでした!」なんて職員と楽しい攻防が始まるのも、園芸ならではでしょう。
職員も張り切り過ぎなくて大丈夫です。
大掛かりな材料を揃えなくても、毎日長い時間を設けなくても、小さな鉢を一緒に気に掛けるだけで続けられます。本人が全部できなければ、選ぶだけでも良い。眺めるだけの日があっても良い。水やりを忘れないよう職員同士でさりげなく支え合えば、相互扶助の小さな輪まで育っていきます。
そして何より、レクリエーションは予定表の中だけに存在するものではありません。
「明日も見てみよう」と思えるものが1つあるだけで、今日の楽しみには続きが生まれます。
秋はやがて深まり、窓の外の景色も変わります。その頃、小さな鉢にも少しずつ時間が積み重なっているはずです。葉を選んだ日、水をやった朝、家族と笑った面会の日。その全部が、1つの作品よりずっと豊かな「その人の秋」になっていきます。
10月の窓辺に、小さな鉢を1つ。
そこから始まるのは園芸だけではありません。自分で選ぶ喜び、誰かの役に立つ気持ち、明日を少し楽しみにする心。そんな芽まで一緒に育ったなら、今年の秋はなかなか良い出来です。
[ 広告 ]今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
[ 応援リンク ]
ブログランキング2つに参加しています。応援クリックをお待ちしております。
[ ゲーム ] 作者のitch.io(作品一覧)
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。