高齢者施設の面会は今どうなってるの?~冬~会いたい気持ちと感染対策の狭間

[ 冬の記事 ]

はじめに…『会いたい』と『守りたい』がぶつかる場所

ご家族が「会いたい」と思う気持ちと、施設が「守りたい」と考える気持ち。高齢者施設の面会は、今もこの2つが正面からぶつかる場所です。コロナがとても大きな問題だった時期ほどの全面ストップは少なくなってきた一方で、面会がまったく自由になったかというと、まだそうでもありません。特別養護老人ホームなどでは、面会そのものは再開している流れが多いのですが、ほとんどの施設が予約制や時間の上限など、いくつかの条件を付けながら対応している状況が続いています。対面の時間を15分ほどに区切る、1度に会える人数を2名までにする、といった形での「短いけれど顔は合わせられる面会」を改めて案内している施設もあります。こうしたやり方は、高齢の入居者さんを感染症から守ることと、ご家族の安心の両方を両立させたいという考え方から生まれています。

では、何故今もそこまで気をつけているのでしょうか。理由の1つは、冬です。毎年、年末から翌年の2月頃にかけて、インフルエンザやコロナが同時に流行しやすい時期があります。実際、年末から年明けにかけて施設の中でインフルエンザやコロナの感染が確認され、一端、対面の面会や外出を中止し、ガラス越しやオンラインだけに切り替えた施設もあります。こうした施設では、落ち着いてきたと判断できた段階で再び面会を再開する、という形をとっており、状況が落ち着けば会えるし、流行が強まれば一時停止、という揺れ戻しが今も現実に起きています。

この「揺れ」は、施設だけの都合ではありません。高齢者施設では、1つのフロアの中に体が弱い方がたくさん暮らしています。冬の間にインフルエンザやコロナが同時に入ってしまうと、アッという間に複数人へ広がることがあり、結果としてフロアごとの隔離対応や、全員分のケアの組み直しが必要になることがあります。そうなると介護職員も看護職員も一気に負担が跳ね上がり、普段の生活ケアそのものが苦しくなります。実際に、12月にはインフルエンザ、1月にはコロナが発生して、施設側が感染拡大を止めるために対応に追われたという報告もあります。

つまり、今の面会は「好きな時に、好きなだけ行ける」という世界には、まだ戻り切っていません。面会そのものが再開されていても、事前の連絡が必要だったり、短時間だったり、マスクや手指の消毒、体調チェックが条件だったりします。感染が心配なタイミングになると、またオンライン面会だけに一端、戻すこともある。これは、施設が気まぐれでルールをコロコロ変えているわけではなく、冬の感染症シーズンが来るたびに「会わせたい」と「守りたい」の天秤が毎回揺れるからこその結果です。

この記事では、冬をイメージしながら、高齢者施設で今、実際に行われている面会の考え方を辿っていきます。施設側の事情、ご家族側の事情、そしてオンライン面会という工夫の良いところと苦しいところ。さらに、1月から2月のようなインフルエンザが強い季節に、どんなことが起きやすいのかも合わせて見ていきます。ご家族が「どう声を掛けたらいいのかな」と感じる気持ち、高齢者さんが「顔を見たい」と思う気持ち、現場の職員さんが「何とか守りきりたい」と踏ん張る気持ち。その3つがぶつからずに、ちゃんと同じ方向を向ける道を、一緒に考えていきましょう。

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第1章…高齢者施設は何故面会ルールを決めるの?施設側の事情と現場の声

高齢者施設では「自由に来て自由に会える」という面会が、今もまだ当たり前には戻っていません。多くの施設が、事前の予約をお願いしたり、短い時間だけにしたり、人数を絞ったりといった形で面会を続けています。例えば、ある介護老人保健施設では「事前の予約制で各フロアでの対面面会ができます。ただし不織布マスクの着用、面会前の検温と手指の消毒をお願いします。中学生以上が対象で、人数は3人まで。面会中の飲食はできません」といった具体的な条件を示し、さらに「周囲でインフルエンザやコロナの感染が増えた時は、また面会方法を元に戻したり、中止になることもあります」と家族に伝えています。これは令和6年4月の時点でも案内されている内容で、つまりコロナ禍の一番厳しい頃よりは緩んだけれど、完全フリーまではまだ進んでいないという段階です。

何故そこまで細かいルールが必要なのかというと、冬の感染症がとても怖いからです。高齢者施設は入居者さん同士の距離が近く、体力が落ちやすい方が多いので、インフルエンザやコロナが入ると一気に広がる恐れがあります。実際に、ある特別養護老人ホームでは「インフルエンザの流行期に入っていて、コロナも増加気味です。年末年始は人の動きが増えるので、12月28日~翌年1月5日の間は感染予防を最優先にして、今やっている面会の制限をさらに徹底します」というお知らせを出しています。これは「入居者さんの健康を守ることを最優先にします」という強い表明でもあり、施設側がどれだけ緊張感を持って冬を迎えているかが分かります。

冬から早春にかけて、施設の面会ルールはしょっちゅう揺れ動きます。例えば、ある施設ではフロアでコロナ陽性者が出たために、一端、面会そのものを止めた期間がありましたが、状況が落ち着いたと判断できた時点で「予約制での面会を再開します。体調が優れない方はご遠慮ください。外出の時はマスク着用と体調への配慮をお願いします」という形で、すぐに「面会再びOKです」という告知を出しています。これは、面会をずっと閉じたままにしたいわけではなく、落ちついたらなるべく早く顔を合わせて欲しいという意思がある、ということでもあります。

ただ、そのたびに現場はとても忙しくなります。面会を受け入れるということは「事前の予約を受ける人」「面会の時間や場所を準備する人」「入居者さんをフロアから面会場所まで連れて行って、また戻す人」「面会の後に消毒や片付けをする人」が必要になる、ということです。消毒や体調チェックは1回だけで終わりません。体温を測る、手を消毒してもらう、マスクを正しくつけてもらう、体調が悪くないかを聞く、飲食はしないように伝える、といった声かけや確認がひと組ごとに必要になります。こういった手間は書類上では数行で済みますが、実際には人が動いて時間を使ってやっと成り立っています。

ここに、今の介護現場が抱えている大きな問題が重なります。人手がとても足りないという問題です。介護の世界では「2025年には全国でおよそ32万人分の介護職員が足りなくなる」という予測が出ていて、既に働いている職員さん1人辺りの負担がとても重くなっています。仕事の内容も、食事や排泄やお風呂の介助といった身体のケアだけでなく、感染対策の準備や記録、家族対応、オンライン面会のサポートなど、どんどん広がっています。

つまり面会ルールは、入居者さんを守るための安全ベルトであると同時に、働く人をこれ以上潰さないための調整弁でもあります。冬にインフルエンザやコロナが同時に流行すると、一気に複数人が発熱して、フロアごとに隔離対応が必要になることがあります。その瞬間から、普段の介護に加えて防護具の着脱、消毒や記録、動線分けなどが追加され、少ない人数で回している現場は一気に限界へ近づきます。だから、施設が「面会は予約してね」「今日は短時間でお願いね」「今日は中止します」と言うのは、我儘ではなく、入居者さんの暮らしを止めないようにするための必死のブレーキなのです。


第2章…ご家族の事情と本音~行きたいのに行けないってどういうこと?~

高齢者施設で暮らすお父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんに「会いに行きたい」という気持ちは、殆どのご家族がずっと持ち続けています。厚生労働省も、高齢者施設での面会は入居されている方とご家族にとってとても大切な時間だとはっきり位置付けていて、ただのイベントではなく、心の安定や暮らしの安心感に関わるものだと説明しています。

それでも現実には、「いつでも行けるわけじゃない」という壁がはっきり存在します。まず時間の壁があります。例えば特別養護老人ホームなどでは、現在は対面で会える形を再開していても、事前の予約が必要で、当日の面会は10~15分ほどに区切られる、といった運用が今も案内されています。飲食は禁止、人数は少人数まで、といった条件が最初から決められている施設もあります。

この「決められた短い枠」に家族側で生活を合わせるのは、実はかなり大変です。お仕事がある人は休み時間のやりくりが必要になりますし、子どもがいる人は送り迎えと重ならない時間を選ばないといけません。施設が遠い場合、移動だけで半日が消えることだってあります。つまり「行きたいのに行けない」というのは、気持ちの問題だけではなく、時間割そのものが物理的に合わない、ということでもあるのです。

さらに、会い方そのものが今は昔と同じではありません。多くの施設では、感染症の流行状況によって、フロア全体の面会を一時的に止めたり、ガラス越しやオンラインに切り替えたりすることがあります。インフルエンザやコロナが強くなる冬から早春の間は、特に注意が高まりやすいと言われていて、状況次第では面会を一端保留し、その後に予約制の対面面会を「再開します」と告知する形をとっている施設もあります。

つまり面会は「ずっとOK」か「ずっとNG」かのどちらかではなく、施設ごとにその時の体調管理や流行状況を見ながら揺れ動くもの、というのが現在の姿に近いのです。

もう1つ、とても大きいのにあまり表で語られない事情があります。それは、ご家族の方があえて面会を控える場合があるということです。「顔を見せたら余計に『家に帰りたい』と泣いてしまうから、しばらく様子を見ようかな」というケースは、実際にたびたび相談されています。面会のたびに「帰ろう」「家に帰りたい」という気持ちが激しくなると、本人が夜に落ち着かなくなったり、不安が強くなったりすることがあります。その場合は、一度施設の職員さんと相談して、少し時間を空けたり、落ち着く工夫を一緒に考えたりすることが勧められています。

つまり「行かない」のではなく、「落ち着いてもらうためにあえて間を空ける」という選び方があるわけです。この判断は、冷たいどころか、とても現実的で、そして本人の生活リズムを大事にした判断でもあります。

家族側の立場には、もう1つの現実があります。面会できる時間帯が日中であることが多い、といっても、実際には夜や休日にゆっくり面会ができるよう柔軟に相談できることもあります、と案内している施設もあります。一般的に面会しやすい時間は、食事や入浴の介助が落ち着いた午後15時から17時頃、もしくは夕食後の18時から19時頃が勧められていて、どうしても日中の決まった時間では難しい場合は、スタッフにまず相談してほしい、と説明されています。

つまり「もう無理だから諦める」ではなく、「これは相談していいことなんだ」と考えていいのです。施設側としても、面会が完全に無くなると入居者さんの表情が落ちたり、家族の不安が膨らんだりすることは分かっています。だから、何とか形を整えて会わせたい、という方向に基本は向いています。

それでも、毎週のように顔を見に行ける方ばかりではありません。あるアンケートでは、入居している家族に会いに行く頻度として「週に1~2日くらい」が一番多いという結果がある一方で、「月に1回くらい」が次に多いという答えも出ていて、さらに「半年に1回くらい」や「それ以下」という人もわずかながら存在する、というデータが示されています。

つまり「たくさん行ける家族」と「そうたくさんは行けない家族」の両方がいて、そのどちらも現実なのです。どちらかが正解でどちらかが間違い、という話ではなく、暮らし方や距離や体力や仕事の形によって面会のリズムはまったく違ってくる、というだけのことです。

そして最近は、直接顔を合わせる回数が少なくても、「離れていてもつながっている」という形を保つ工夫も少しずつ広がっています。施設側がご家族のスマートフォン、たとえばLINEなどにこまめに連絡を送ったり、オンライン面会の予約や書類のやり取りまでまとめて共有できる仕組みを導入したりして、毎回わざわざ出向かなくても様子が分かるようにしようという動きがあります。こうした仕組みは、職員にとっても面会予約や伝達の手作業を減らすことに繋がると紹介されています。

「今日は顔を見に行けなかった」と落ち込んで1日が終わるのではなく、「今日は画面越しだけど声を聞けた」「今日はスタッフさんから表情の話を聞けた」と安心して眠れる日が増えるなら、それもまた立派な面会の形なのだと思います。

少し厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、高齢者施設の面会は気持ちだけでは動かないテーマになりました。今は、感染症への備えと生活の現実と心の距離感、この3つを同時に見ていく時代に入っています。会いたいと思う気持ちはそのままに、会い方はその人なりの形に合わせていく。ご家族が「行けなかった日」を責め過ぎないことも、入居されている方の安心にちゃんと繋がっていくのだろうと思います。


第3章…リモート面会という工夫~それでも残るもどかしさ~

タブレット端末やスマートフォン、そしてビデオ通話のアプリを使って、高齢者施設とご家族を繋ぐ「リモート面会」は、この数年で一気に広がりました。施設によっては、普段は対面の面会を時間制限付きで受け付けつつ、流行が強い時期には一端対面を止めて、代わりに画面越しの面会を予約制で用意しています。LINEなどの通話アプリや、Web会議の仕組みを使い、家族が自宅からおじいちゃんおばあちゃんの顔を見て話せるようにした、という案内が実際に各地の施設から出されています。施設がタブレットを準備し、家族側は自分のスマートフォンから参加できるので、遠方に住んでいてなかなか行けない親族でも顔を見られるようになった、という声もあります。

リモート面会は、完全に自由な時間というわけではありません。ある病院では、月曜から土曜の午後の決まった時間帯、例えば「15時30分」や「16:00」といった枠を予め用意して、そこに家族が予約を入れる方式を取っています。1回辺りの会話時間は最大で「10分」ほどと決められ、日曜や祝日などは対応が難しい日として予め除外されています。さらに、機器の準備は病院側で行い、タブレットと回線は用意するので、家族はその枠の中で画面越しに話してください、という運用が説明されています。

短い時間でも、顔を見て声を聞けるということは、やはり特別です。コロナによる面会制限が厳しかった時期には、何か月も会えていなかった家族と画面上で向かい合った高齢者が、ほぼ「20分」丸ごと涙を流して喜んだ、というエピソードも紹介されています。孤独感や不安が強かった方が、家族の姿を見た瞬間に表情を取り戻した、という報告もあり、リモート面会にははっきりと心を支える力がある、と現場は感じています。

ただし、リモート面会は「繋げば終わり」ではありません。特に高齢の入居者さんにとっては、そもそも画面が見えにくい、音が聞こえにくい、誰がどこから話しているのか分からない、といったハードルがあります。難聴がある方の場合、相手の声がはっきり聞き取れないと会話そのものが成立しにくく、結果としてただ映像を眺める時間になってしまうことがあります。耳の遠い方への呼びかけや連絡そのものをどう伝えるかは、介護の現場でもずっと課題になっていて、最近では音だけでなく光の合図なども組み合わせて意思を届ける工夫が紹介されるようになりました。

認知症の方の場合も、別の難しさがあります。画面の向こうにいる家族が本当に本人の家族だと分からないことがあり、落ち着かず途中で席を立ってしまったり、逆に「今すぐ家に連れて帰って」と大きな不安に繋がってしまったりすることがあります。普段の生活リズムに合わせて落ちついて話せるタイミングを選ばないと、却って本人を辛くさせてしまうことがあるという声は、施設側からも家族側からも聞かれています。

そのため、リモート面会はたいてい職員が付き添います。タブレットの角度を調整し、声が届いているかを確認し、会話が続くように橋渡しし、時には通訳のように内容を伝え直します。厚生労働省の案内でも、オンライン面会では利用者の傍にいる職員がサポートする場面を想定し、マスクの着用や距離の確保、個人情報の扱いといった注意点をとても細かく示しています。画面に近付き過ぎず、なるべく横に並んで、飛沫のリスクを下げつつ安心して会話できるよう工夫してください、という形での手順が整理されています。

ここで問題になるのが、現場の人手です。オンライン面会を開くということは、入居者さんの傍に職員が必ず1人は必要ということになります。「操作を助け、聞き取りにくいところを伝え直し、落ち着かない時は安全の見守りもする」という役割りは、ただの機械操作ではありません。実際に、オンライン面会が広がったことで「付き添い業務が増えて、職員の負担が増えた」と答えた職員もいて、負担感が生まれているという調査があります。ある報告では、職員の約18%がオンライン面会の付き添いを負担として挙げています。

つまりリモート面会は、家族と入居者さんの安心を支える力であると同時に、職員の手をかなり長い時間奪う仕組みでもあるのです。普段から介助やケア、記録や消毒に追われているスタッフが、さらに「リモート面会サポーター」という役割りまで同時に担うことになります。感染が広がりやすい冬には、フロアごとにマスク着用や動線わけなどの対策を強め、家族との面会時には家族側にもマスクをお願いするなど、細かなルールを積み上げているという報告もあります。こうした現場の声を見ると、リモート面会は魔法の道具ではなく、皆が少しずつ支え合ってやっと成り立っている、と言った方が近いのかもしれません。

それでもリモート面会が続いているのは、理由があります。高齢者施設の中で暮らす方にとって、ご家族の顔や声は「自分は一人じゃない」という感覚を取り戻す力になります。会うことで、表情が緩み、安心して眠れる夜が戻ってくることがあるというのは、介護の現場でずっと語られている大切な経験です。

ただ、ここから先が今の課題です。画面越しの安心は確かに存在しますが、人の温もりはまだ完全には代わり切れません。傍に座る、手を握る、ゆっくり頷き合う、といった時間そのものは、どうしても直接の面会にしかありません。だから多くの施設は、状況が落ちついたらなるべく早く短時間でも対面の面会を再開しようとします。予約制で、人数を絞って、マスクをお願いして、飲食は無しで、面会の場所をきちんと区切って。それでもいいから、ちゃんと顔を合わせてもらいたい。そこには、入居者さんと家族の関係だけでなく、介護の現場そのものを保ちたいという職員の思いも含まれています。


第4章…冬の感染症シーズンに揺れ動く面会ルール

冬は、特別養護老人ホーム、介護老人福祉施設にとって一番神経を使う季節です。理由はとてもシンプルで、インフルエンザと新型コロナという2つの感染症が一斉に動きやすいからです。実際に、令和7年1月には、ある特別養護老人ホームで入居者さんにインフルエンザの陽性が確認され、同じタイミングで職員にもコロナの感染が確認されました。その施設では入居者さんの暮らすユニット単位で面会を急遽、制限し、「対象ユニット」と「制限の期間」をはっきり示した上で、面会そのものを抑える判断をしています。そこでは理由として「入居者様の安全を最優先に考えた措置」と説明しており、つまり冬の間は、いつでも誰でも自由に会えるという形ではなく、状況に応じて一気にブレーキを踏むことがまだ当たり前だと分かります。

こうした急なブレーキは、年末から年明けにかけて特に起きやすい動きです。令和6年12月下旬には、県内でインフルエンザの報告数が急増し注意報が出たことを受けて、ある従来型特養が「対面での面会」と「外出」と「オンライン面会」までをまとめて一端中止にした、というお知らせを出しています。この施設では、複数の入居者さんにインフルエンザが確認された段階で家族の予約受付も止め、年末年始という本来は会いたい人が多い時期であっても「面会と外出は一端止めます」と伝えました。その上で「オンラインだけを再開するのは最短でも令和7年1月3日以降を予定しています」と明記し、落ちつき次第、段階的に戻すという姿勢も示しています。つまり、冬は一度ストップをかけてから少しずつ戻す、この揺れを前提にした動き方が既に現実になっているのです。

年が明けて1月になると、施設ごとに「最低限の繋がりは保つ」ための形が用意されることが増えてきます。ある高齢者施設では、インフルエンザやコロナが強くなっているという説明と共に、対面での面会を玄関付近など限定されたスペースだけで受け付ける運用を案内しています。そこでは「事前に電話で予約をしてください」「平日のみ、10:00〜16:00の間」「面会は15分以内」「マスク着用と手指の消毒をお願いします」「発熱や体調不良がある場合は遠慮してください」といった条件がはっきりと示され、さらに「予約を受け付けていても、その時の感染状況によっては当日中止になる場合があります」という注意も添えられています。これはつまり、家族と顔を合わせるチャンスそのものは用意しつつも、施設の中へウイルスを持ち込まないことを最優先するというバランスの取り方であり、冬の間の面会がどれほど繊細なラインの上にあるかが分かります。

一方で、2月から3月にかけて落ちつきが見えてくると、面会のルールが一気に緩む施設もあります。令和7年2月の時点で、ある特別養護老人ホームは「これまで行っていた一部の面会制限を緩和します」と公表し、回数の上限や予約そのものを取りはらい、土日祝日を含む終日での面会を認める方針に切り替えました。この施設では、面会場所を入居者さん本人の居室とし、天気が良ければ屋上や敷地内での散歩も可能と案内しています。時間帯は9:00〜11:30と13:00〜17:00の間、1回につき30分以内、同時に会えるのはご家族3名までという条件を示しつつ、基本的には「会いたい時に会えるように戻します」という方向に進んでいます。ただし、入り口での手洗い、うがい、体温測定、37℃以上なら面会できないこと、マスクの着用、飲食の禁止など、感染症対策そのものは続行であり、状況が悪化した場合は再び中止する可能性があることも明記されています。つまり緩むとはいっても、完全に昔通りに戻るわけではなく、安全を守りながらの再開があくまで基本線になっているのです。

厚生労働省も、高齢者施設での面会は入居者さんにもご家族にもとても大切な時間だという立場を示しています。その上で、施設ごとに工夫しながら面会を続けるための方法や注意点をまとめ、実例やリーフレットという形で職員向けに伝えています。目指しているのは「会わせないこと」ではなく「安全に会わせ続けること」であり、その時に必要になる衛生管理、距離の取り方、マスクの扱いなど、現場が迷いがちなポイントを具体的に整理する方向に動いています。

冬の1月から2月は、高齢者施設にとってはまるで波のような時期です。年末から年明けにかけてインフルエンザやコロナが施設の中に入りかけた瞬間には、面会は一時停止という強いブレーキが踏まれます。発熱が落ちつき、ユニットごとの感染拡大を抑えられたと判断できたら、短時間の予約制で玄関越しというような「一部再開」の形に切り替わります。さらに流行が下火になってくると、2月後半から3月にかけて、予約なしで居室での面会も可能というところまで戻っていきます。ただし、どの段階でも共通しているのは、面会できるかどうかが、入居者さんの体調やフロアの状況と直結しているという点です。そして、どの段階でも、手洗いやうがい、マスク着用や体温測定といった基本の対策は「まだ続けましょう」という扱いになっています。

この季節にご家族として出来る一番大切なことは、施設と気持ちを同じ方向に揃えることです。行く前に自分や同居の家族の体調に少しでも気になるところがあれば、そのことを正直に伝えること。体温が高い場合や喉が痛い場合は、勇気を持って日を改めるという判断を一緒に考えること。どうしても会いたい思いがある時期こそ、施設側も本当は会わせたいと思っているということを思い出してあげること。冬の間の面会は、あなたと施設と入居者さんの三者でリズムを合わせる共同作業なのだと意識できると、短い時間でも、安心して顔を合わせられる温度の高い一時に近付いていきます。

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まとめ…顔を合わせる時間を諦めないために私達が出来ること

高齢者施設での面会は、コロナが話題の中心だった頃のように全てストップ、という状況からは、少しずつ外れてきました。対面で会える場面も戻り、短い時間でも直接同じ空間で笑い合える日が増えた施設もあります。面会の予約や時間制限、マスクや手指の消毒といった条件付きではあるものの、「会うこと」そのものを施設側が大切なケアとして捉えているという点は、はっきりとした流れになっています。厚生労働省も、入居されている方とご家族の交流は心の安定にとってとても重要であり、工夫しながら続けていくべきだと示しています。

ただ、自由に好きな時に会えるようになったかといえば、そこはまだ途中の段階です。特に冬から早春、つまり1月〜2月頃は、インフルエンザやコロナが広がりやすい季節です。実際に、年末年始から年明けのタイミングで複数の入居者さんや職員に発熱や陽性が確認され、特定フロアやユニットの面会を一端中止にしたり、外出や外泊も一斉に見合わせたりした施設は少なくありません。この「一端止める」という判断は、入居者さんの安全を最優先にするためであり、落ち着いたと判断できたら再開する、という動きそのものが今の標準になっています。

この揺れは、家族にも、職員にも、入居者さん本人にも、時々つらい形で圧し掛かります。「今日こそ行けると思ったのに」「今日こそ顔を見たかったのに」という日が、やむを得ずキャンセルになることがあります。逆に、感染状況が落ち着いてくると、予約制での短い対面面会から、再び居室内での面会や屋外での散歩に近い形へと緩む施設も出てきます。面会時間が30分まで延びたり、1度に会える人数が3名まで認められたり、週末や祝日を含めて面会できるよう配慮されるケースもあります。これは、会う時間そのものが生活の力になるということを、現場が身に染みて理解しているからこその調整です。

では、家族として何を意識すればいいのでしょうか。一番大切なのは、施設と同じ方向を見て動くことです。行く側の体調が少しでもあやしい時、「今日は辞めます」と自分から伝えることは、単なる遠慮ではありません。他の入居者さんや職員を守る行動そのものであり、結果的に「面会そのものを続けられる環境」を守ることに繋がります。施設にとっても、安心して面会を受け入れられるご家族は本当にありがたい存在です。これは、ただのお願いではなく、冬の間に面会という文化を絶やさないための共同作業なのです。

もう1つは、会い方を1つに決めつけないことです。直接傍で話す時間は、もちろん特別です。ただ、画面越しの面会や、動画メッセージ、写真付きの連絡、近況の報告なども、離れて暮らす家族同士をしっかり繋ぐ力があります。タブレット越しでも、声を聞いた瞬間にぱっと表情が明るくなる方が実際にいらっしゃいますし、画面を見ながら涙ぐむ場面は、現場では少しも珍しくありません。施設の職員が傍で角度を直したり、言葉を聞き取りやすく伝え直したりしながら支えているのは、「それでも繋がっていて欲しい」と本気で願っているからです。

高齢者施設の面会は、「会わせるか会わせないか」という白黒の話ではなくなりました。これからは「どうすれば会える形を守れるか」を皆で考える時代です。施設は、入居者さんの安全と暮らしを守るために一時停止という強いブレーキを踏むことがあります。ご家族は、少しでも会える時間を大切にするために、自分の体調や都合を正直に伝え、予約の枠に合わせる工夫を重ねています。そして職員は、対面でもオンラインでも、限られた人数と時間の中で「繋がり」を絶やさないように支え続けています。

これが、今、冬の介護現場で起きている等身大の姿です。会いたいという気持ちはとても人間らしくて、真っ直ぐで、誰にも止められないものです。その気持ちをちゃんと生活の力に変えていくために、施設も家族も、そして私たち自身も、少しずつ歩み寄りながら季節を越えていく必要があります。会う時間は短くても、声の届き方が少し不器用でも、それは確かに「今ここにいるよ」というサインになります。そのサインを、冬の間も途切れさせないこと。それこそが、高齢者施設で暮らす人と、その人を想う家族を支える、一番優しい約束なのだと思います。

⭐ 今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m 💖


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