二十四節気の寒露の時候~月と湯気と新米のしあわせの交錯~

[ 10月の記事 ]

はじめに…朝露から届く合図~やさしい秋の本番です~

朝、窓をすべらせると、ひんやりした空気がほっぺにタッチして、窓辺には小さな水玉の行列。これが「寒露」。二十四節気の第17番、だいたい10月08日頃から22日頃までの、秋がグッと大人びてくる時間帯です。昼はニコニコ、朝夕はブルッ。そんな温度のギャップが、木の葉にゆっくり色鉛筆をかけていきます。

空では渡り鳥が隊列を組み、庭先では菊が肩を並べ。夜は月が冴えて、湯気は白いマフラーみたいに立ちのぼります。台所からは新米の甘い香り、里芋はほくほく、栗はつやつや、きのこはこっそり香りの準備中。鮭も「出番です」と言わんばかりに、食卓の主役候補に名乗りを上げます。

この季節は、頑張り過ぎず、温め過ぎず、ほどよくご機嫌。散歩は日なたを選んで、帰ったら手を温める湯呑みを1つ。夜長と仲良くするコツは、早く寝ることよりも「気持ちよく区切る」ことかもしれません。お月様に「今日はここまで」とウィンクしたら、毛布の中へすべり込みましょう。

これからの章では、寒露の景色の見どころ、今こそおいしい台所の話、そして体をやさしく整える工夫まで、ゆっくり寄り道しながらご案内します。肩の力をストンと落として、深呼吸を1つ。さあ、やさしい秋の扉を一緒に開けてみましょう。

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第1章…寒露の景色~渡り鳥と菊と玄関先の小さな合唱~

二十四節気の中でも第17番にあたる「寒露」は、だいたい10月08日頃から10月22日頃まで。昼はぽかぽか、朝夕はひやり—この温度の段差が、木の葉の色鉛筆をゆっくり赤や黄に替えていきます。窓ガラスや手すりの上には、つぶつぶの水玉がならんで、秋の到着印をぺたりと押していくようです。

空を見上げると、北から南へゆっくりと線を引く渡り鳥。V字の行列は、まるで空の楽譜に音符を書き込むみたい。地面に目を落とすと、落ち葉はカサコソと小さな手紙の音をたて、玄関先では虫の合唱隊がこっそりリハーサルを始めます。家の中に入れば、朝の冷気は湯のみの湯気でやわらいで、指先が「ただいま、ぬくもり」とほっと息をつきます。

七十二候のミニ案内

この時季をさらに細かく3つに区切った「七十二候」では、最初に「鴻雁来(こうがん きたる)」がやって来ます。空の隊列が見えたら、季節のページが一枚めくられた合図。続いて「菊花開(きくのはな ひらく)」で、庭や軒先がふわりと品のいい香りに包まれ、最後は「蟋蟀在戸(きりぎりす とに あり)」。玄関のあたりで、ちいさな楽団がチリチリと夜の挨拶をしてくれます。耳をすませば、遠く近く、秋の音の重ね合わせが聞こえてきます。

朝、ベランダの柵に並ぶ露は、小さなレンズ。向こう側の世界をきらりと拡大して見せてくれるので、いつもの景色も少し特別に見えます。夕方は西の空が金色から桃色、そして群青へと三色グラデーション。ほんの数分で色が変わるので、台所の作業はひと区切りつけて、窓辺で空の絵の具が入れ替わるのを鑑賞するのもおすすめです。

服装は、日なたと日かげで体感がころりと変わります。外では上着を一枚、室内ではひざ掛けを一枚。首・手首・足首を温めるだけで、体のご機嫌はぐっと整います。無理に頑張らず、ゆっくり歩いて、深呼吸を1つ。寒露は「急がない練習」を教えてくれる、そんなやさしい先生みたいなものです。


第2章…十三夜と新米のよろこび~里芋・栗・豆が並ぶ夜~

月がほほえむ夜に、湯気の立つお椀をそっと両手で包むと、秋は急に身近になります。旧暦では「十三夜」と呼ばれる夜があり、だいたい10月中頃の澄んだ空に、少し欠けた上品な月がかかります。十五夜の後にもう一度月見をする、この二回セットの楽しみ方は日本ならでは。片方だけだと「片見」なんてちょっぴり寂しい呼び名がつくので、できればもう一度、窓を開けて月に会いに行ってみましょう。

炊きたての白いごはんは、この時季こそ主役。蓋を開けると、甘い香りがふわりと立ち上がり、粒の1つ1つがきらっと光ります。そこへ里芋のねっとり、栗のほっくり、そして豆の香ばしさが加わると、食卓は一気に十三夜仕様。十五夜が「芋名月」と呼ばれるのに対して、十三夜は「豆名月」や「栗名月」とも言われます。名前だけでお腹が鳴りそうですが、実物はもっとすごい。口に入れるたび、秋の景色がひと口ずつ増えていく感じがしてきます。

月夜の台所は、湯気が指揮者

里芋は皮をこすり落として下茹でし、味噌と出汁で小鍋にまとめると、月見のお椀が完成。栗は渋皮まで丁寧にむいたら塩ひとつまみで炊き合わせ、白いごはんに合わせれば、茶碗の中に小さな月がごろごろ転がります。豆は軽く炒って香りを出し、炊き上がりに混ぜるだけで、ごはんがちょっとおめかし。台所の湯気がリズムを取り、まな板の音が伴奏をして、気づけば家全体がコンサートホールみたいです。

月見の一品は、香りで決める

香りが1つ添わると、秋のご馳走は急に大人顔。鮭を軽くあぶって、柚子の皮をすりおろし、しょうゆを数滴。きのこは弱火でじわじわ水分を引き出し、塩を1つまみだけ。香りが立ったら火を止めて、熱々のご飯にのせれば、月を見上げる前に思わず「ごちそうさま」が出てしまいそう。急がず、焦がさず、いい香りが出たところで止めるのが合図です。

食卓を囲む人が多い日は、茶碗を小さめにして、回数で楽しむのもコツです。ひと口でひと景色、ふた口でふた景色。あとは温かいお茶を用意して、月の方を向いて深呼吸。空を見上げる時間が、一番の調味料になります。

夜はだんだん長くなりますが、無理をしないのが一番。体を冷やさないよう首周りをやさしく包み、温かい物を少しずつ。月が雲に隠れたら、そろそろお開きの合図。台所の火を落として、今日の湯気に「またね」と挨拶したら、すべすべのお布団へ。十三夜と新米が教えてくれるのは、欲張りすぎない満足の形。ほんのり満ちて、やさしく区切る—それがこの季節の、一番おいしい作法です。


第3章…旬の台所~柿・きのこ・鮭を、焼いて・煮て・蒸してヨシ~

台所に立つと、まな板の上は秋の小さな舞台になります。香りの主役はきのこ、相方は鮭。そこへ柿の甘さや柚子の香りが加わると、湯気が合図を出して、夕ご飯の幕が上がります。難しいことは1つもなくて、火加減を弱めに、待つ時間を楽しめば、季節はちゃんと味に出てくれます。

炊き込みご飯は香りが合図

お米を研いで、出汁をそっと注ぎ、薄口しょうゆと少しの酒を落としたら、しめじやえのきを手で割って、上にのせます。塩をした鮭は大きめのまま、どんと中央へ。蓋をして静かに待つ間、部屋はゆっくり森の香りに変わっていきます。炊き上がりに鮭をほぐして混ぜると、茶碗の中に秋の景色がひろがります。仕上げの生姜はほんの少し。香りがふわっと立ったところが、食べごろの合図です。

焼く日のご馳走は皮目から

魚焼きグリルの前では、慌てないことがいちばんのコツ。鮭でも鯖でも、皮目を下にしてそっと置き、最初は強火、途中からは中火にして落ち着かせます。焼き上がりに柚子の皮をすりおろして、しょうゆを数滴。きのこはアルミホイルの舟に入れて、しょうゆとみりんをひとたらし。隣で一緒に焼けば、台所は一気に「秋まつり」。湯気と香りが手をつないで、食卓をほぐしてくれます。

蒸してしっとり、湯気におまかせ

土瓶がなくても、深めの小鍋で気軽に楽しめます。出汁に薄塩、そこへ舞茸やえのき、薄切りの蓮根、ついでに銀杏を数粒。弱火でことこと、湯気が白いマフラーになったらできあがり。椀の蓋を開けると、森の息を吸い込んだみたいに胸がすっと広がります。最後にすだちをひとしぼり。香りが立ったら、もうそれ以上は煮立てないのがやさしさです。

柿は「しょっぱい」と仲よし

熟れた柿は、そのままでも主役ですが、少しの塩とお酢で表情が変わります。大根を薄く切って、柿と合わせ、塩をほんの指先。お酢を少しまとわせると、甘さがきゅっと整って、箸がのんびり進みます。白和えにしても上品で、豆腐のまろやかさが柿の明るさをやさしく包みます。食後にもうひと切れ…と手が伸びる頃、月はちょうど窓の高さ。デザートは景色つき、というわけです。

ひと息つくなら、湯のみを小さめに

温かいほうじ茶や生姜湯を、少し小さめの湯のみでくり返し。たくさん飲むより、回数で楽しむほうが体が軽く感じます。ご飯は山盛りよりも、茶碗に小さくよそっておかわりを。おいしいは、ゆっくり味わうほど増えていきます。明日の朝は、残りの炊き込みごはんで小さなおにぎり。冷たい空気にひと口の湯気。それだけで、1日のスタートはやさしくなります。

台所は、季節と仲良くなる秘密基地。焼いて、煮て、蒸して—どれも難易度は低めで、達成感は大き目。湯気が肩の力を抜いてくれるので、食べ終わる頃には、心も指先もぽかぽかです。


第4章…体ぽっかぽか養生術~夜長に無理しない過ごし方~

秋の風はやさしいのに、体は釣られて油断しがち。寒露の頃は、温め過ぎず・冷やし過ぎずの「ほどよい加減」を見つけた人から、ご機嫌になります。朝夕の冷えは、首もとにスカーフをひと巻き、手には湯のみ、足にはやわらかい靴下。たったこれだけで、体のスイッチが「省エネモード」に切り替わります。

首・手首・足首を味方に

体の入口は3つの「首」。ここがぬくいと、他の場所までじんわり伝線します。外では薄手の上着を一枚、中では膝掛けを一枚。動き始める前に、指先をギュッと握ってパッと開くミニ体操を数回。10回よりも、1回を丁寧に。体は回数より「気持ち良さ」で動きやすくなります。

湯気の力でスイッチOFF

夜は湯船に短めに浸かり、肩を沈めたり浮かせたりの「ゆらし入浴」。上がったら、うなじと背中にタオルをふわり。寝る前のスマホは窓の外の月にバトンタッチ。画面の光より、月明かりの方が、瞼にやさしいです。布団に入ったら、鼻から4つ数えて吸い、口から6つ数えて吐く。10回もいりません。数えるより、フウッと長く吐けたら合格です。

月夜のスロースタート運動

運動は、頑張るより「続く」が勝ち。夕方に10分だけ、月の見える道を歩いてみましょう。背筋をすっと伸ばし、踵からやさしく着地。金木犀の香りに会えたら、そこで一度立ち止まり、深呼吸を1つ。走らなくても、体はちゃんと温まります。帰ったら白湯を少し。湯気が喉を通る音まで、耳で味わってください。

乾燥と冷えに効く、台所の小さな知恵

台所では、鍋物や汁ものを1日1回。具はなんでも、汁はあつあつ、器は両手で。柚子や生姜をほんの気持ちだけ添えると、香りが体内の「おはよう」を押してくれます。おやつは甘い柿をひと切れと、温かいお茶を小さめの湯のみでおかわり。量より回数、早飲みより「ふうふう」。胃袋が喜ぶテンポに合わせると、体は自然に軽くなります。

朝と夜の「区切り」を上手に

朝はカーテンをそっと開けて、冷たい空気をひと口だけお招き。窓辺の露がキラリと光ったら、今日のスタート合図です。夜は灯りを少し落として、音も小さめに。湯のみを洗って水切りに置く音を「今日の終わりのベル」にしましょう。区切りが上手だと、がんばらなくても整います。

寒露は、体にやさしい季節。あわてず、欲張らず、懐に手を入れて歩くくらいの速度がちょうどいい。湯気と月と、小さな習慣に守られて、体はちゃんとあたたかく育ちます。明日の自分に「よく眠れたね」と言ってもらえるように、今夜は心を緩めて、おやすみなさい。

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まとめ…やさしい秋のトリセツ~寒露の間にできる小さなしあわせ~

朝は露がきらり、夕方は空がゆっくり色替え。鳥の隊列と菊の香り、玄関先の小さな合唱団まで、すべてが「ゆっくりどうぞ」と声をかけてくれる季節でした。歩く速度を少しだけ落とすと、見える景色がふくらみ、深呼吸の気持ち良さも一段と増します。

食卓では、新米の甘い湯気に、里芋と栗、きのこや鮭の香りが重なって、茶碗の中に秋が完成します。焼いても、煮ても、蒸しても、難しい手数はいりません。小さめの器で回数を重ねると、体にも心にもやさしい満足が残ります。

暮らしの養生は、3つの「首」を温め、湯舟でふうっと力を抜き、月をひと目だけ仰いで区切ること。頑張るより、整える。走るより、続ける。そんな合言葉が、夜長を味方にしてくれます。

寒露は、派手さよりも「ほどよさ」が似合う時間。湯気と月と小さな習慣をお守りに、今日も明日もご機嫌に。どうぞ、やさしい秋をゆっくり味わってくださいね。

⭐ 今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m 💖


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