冬の甘くないチョコが食卓を救う!?~高齢者施設でカカオ料理研究とマンネリ打破作戦~
目次
はじめに…チョコはお菓子だけじゃない~冬の後半に“厨房ラボ”開設宣言~
バレンタインの話題って、日本だとだいたい「チョコ=甘いお菓子」で終わりますよね。甘い、可愛い、渡す、照れる、以上。ところが前回の“架空チョコ談話”をやった施設だと、2月後半に入った辺りで妙な空気が生まれます。甘いおやつで笑って終わるはずが、何故か職員の頭の中に残るんです。「……あれ、チョコって甘いだけだったっけ?」と。
そう、ここで第2弾。テーマは「甘くないチョコ」。と言っても、いきなり“砂糖なしの板チョコを配る”みたいな話ではありません。料理の世界では、チョコは「カカオ」として、香りとコクの調味料になれる。肉や煮込みだけじゃなく、サラダや野菜にも使える。しかも、ほんの少しで雰囲気が変わる。例えるなら、味噌汁に入れるひと摘まみの生姜みたいな存在です。主役じゃないのに、場を整える。あの感じ。
ただし、施設でやるなら勝手に暴走してはいけません。ここ、大事です。
「今日のご飯、全部カカオです」みたいな日が来たら、理事長はロマンで喜んでも、利用者さんはびっくりします。だから第2弾は最初にルールを決めます。1食に1品だけ。数日に1回だけ。小さく試して、反応を見て、良かったら残す。まるで研究です。しかも厨房での研究は、何故かちょっとテンションが上がる。白衣がなくても、エプロンと介護服で“研究者っぽく”なれるから不思議です。
さらに施設ならではの注意点もあります。粉っぽい使い方は、飲み込みに関わるので避けたい。無糖ココアをただ振りかける、みたいなことはしない。やるならソースやタレに溶かして、滑らかにして、口の中でバラけないようにする。料理に混ぜるなら「気づかれないほど少量」から始める。香りで驚かせるより、コクで満足させる。甘くないチョコは、派手にやるほど失敗しやすいので、“控えめに勝つ”のが正解です。
そして、ここが今回の面白いところ。職種が揃うと、研究がドラマになります。理事長は所長として夢を語り、事務長は記録係として「再現できるか」を監査し、栄養士は味の設計者としてまとめ、看護師は安全の目線を外さず、介護士は現場目線で「食べる時間の空気」を想像する。前回のチョコ談話が“恋より先に笑いが届く作戦会議”だったなら、今回は“胃袋が先に納得する作戦会議”です。
しかも今回は、職員の家庭での楽しみ方という“おまけ”も付けられます。例えばカカオニブ。カカオ豆を砕いたカリカリの粒で、香ばしくて大人っぽい。施設では噛む負担が心配なので基本は出さない。でも家庭ならヨーグルトやアイスに少しだけ乗せて楽しめる。こういう「施設では安全第一、家庭では遊び心」という二段構えが出来ると、得した気分になりますよね。
つまり第2弾は、甘くないチョコで食卓を変える話です。大袈裟に変えるんじゃなく、少しずつ、数日に1回、1品だけ。マンネリになりやすい食事の空気に、カカオという新しい風を入れてみる。冬の後半、外はまだ寒い。でも厨房の中は、ちょっと楽しい研究所になれる。そんな話を、ユーモア多めで、でも現実に回せる形で進めていきましょう。
[広告]第1章…1食1品・数日に1回~まずはカカオを暴走させない施設ルールが先に勝つ~
「甘くないチョコで料理を変える」。この響きだけで、理事長の目がキラッとします。たぶん理事長の頭の中では、もう施設の食卓が世界大会レベルです。カカオの香りがフワッと立ち、利用者さんが一斉に拍手し、職員は涙を流しながら「所長…!」と叫ぶ。そういう映像が流れているはずです。
ところが現実の施設は、もっと堅実です。食事は毎日ある。配膳は時間が決まっている。味の好みは人それぞれ。さらに「今日は体調が微妙」という日もある。だからこそ、研究を始める前に先に勝つべきものがあります。ルールです。ルールが勝つと、現場は安心して遊べます。逆にルールがないと、冒険が暴走して「厨房が事件現場」になります。
まず決めたのは、これ。
1食に1品だけ。数日に1回だけ。
たったこれだけで、空気が変わります。「全部を変える」じゃなく「1品だけ、ちょっと試す」。この小ささが、施設では最強です。利用者さんにとっても「いつもと違うのが一皿だけ」なら、安心して挑戦できます。職員にとっても「もし外れても被害が小さい」。これが大事。外れたら外れたで、笑い話に出来ます。全部がカカオだったら、笑い話にする前に謝罪会見になってしまいます。
事務長が、ルールを書き出しました。紙に、太字で。
「1食1品」
「数日に1回」
理事長が口を挟みます。
「でもさ、所長としては毎日でも…」
事務長が真顔で返します。
「所長は夢を見ていてください。現場はこちらで回します」
理事長は大人しくなりました。大人しくなりましたが、目はまだキラキラしています。大丈夫、所長の夢は“週に数回”でも十分育ちます。
次に決めたのが、使い方のルールです。ここは看護師の出番でした。
「粉っぽい使い方は避けましょう」
この一言で、全員が背筋を伸ばします。甘くないチョコは、粉のイメージが強い。無糖ココアを振りかけたくなる。でも施設では、粉が口の中で散る感じは避けたい。咽込みやすい方もいるし、口の中の乾きが強い方もいる。せっかくの“楽しい研究”が、ヒヤッとした空気になったらもったいない。
だから基本は「溶かす」「混ぜる」「滑らかにする」。
ソースやタレ、煮汁に溶かして、粉感を消して、口の中でまとまりやすくする。しかも量は少なく。香りを主張し過ぎない程度に。カカオは、前に出ると好みが割れやすいんです。裏方に回ると、何故か全員が「いつもより美味しい」と言い始める。控えめが勝ち。これがカカオの性格です。
そして栄養士が、さらに現実的なルールを追加します。
「“入ってる感”を出すより、コクを足す方向でいきましょう」
ここが第2弾の面白いところで、甘くないチョコは“味を変える”というより“味を整える”が得意です。例えば煮込みなら、丸みが出る。肉のソースなら、ツヤが出る。野菜の甘みなら、輪郭が出る。サラダのドレッシングなら、香りが一段深くなる。全部に入れなくても、1品にだけ入れると「今日の一皿が、何か違う」が作れます。
介護士は現場目線で、こう言いました。
「変化は欲しいけど、びっくりは要らないですもんね」
この言葉が、かなり重要です。食事って、楽しみであり、安心でもあります。変化が大き過ぎると、楽しみより不安が勝つことがある。だから研究のゴールは「驚かせる」じゃなく「ホッとするのに新しい」。これが施設の正解です。
ルールが整ったところで、理事長が胸を張りました。
「よし、研究所を開こう!」
事務長がすぐに補足します。
「“厨房ラボ”です。暴走は禁止です」
理事長は笑って頷きました。
「暴走しない研究所、良いねぇ」
介護士が小声で言います。「それ、研究所あるあるです」
看護師は真面目に頷きます。「安全第一の研究所が一番強いです」
栄養士が締めます。「少量で、滑らかに。これでいきます」
こうして、甘くないチョコの料理研究は、スタート地点に立ちました。派手な演出はまだありません。でも、ここまでルールが揃うと、現場は安心して遊べます。次の章では、いよいよ研究チームが本格始動します。理事長は所長として夢を語り、事務長は記録係として真顔で追い掛け、栄養士と看護師が安全と味で支え、介護士が“食べる時間の空気”を整える。介護服のまま始まる真顔の研究会、開幕です。
第2章…理事長は所長で事務長は記録係~介護服のまま始まる真顔の研究会~
ルールが決まった瞬間から、施設の空気は少し変わりました。誰も「研究を始めます!」なんて大声では言わないのに、何故か職員の動きが軽くなる。理由は簡単で、マンネリって“悪いこと”じゃないんですが、同じ景色が続くと、現場の心も少しずつ乾くんです。そこへ「数日に1回、1食1品だけ、ちょっと遊ぶ」という許可が出た。これ、現場にとっては小さな革命です。
理事長は早速、所長の顔になりました。白衣は着ていません。介護服の上にエプロンをつけただけ。でも本人の気分は完全に“厨房ラボのトップ”。
「よし、研究会を開こう。テーマは甘くないチョコだ」
言い方がもう、研究所の開所式です。
事務長は静かに席につき、メモ帳を開きました。ここで空気が締まります。事務長が本気の顔になると、何故かみんな背筋がピシッと伸びる。おかしいですよね、チョコの話なのに。
理事長が嬉しそうに言いました。
「事務長、今日はコストの話は封印だよ」
事務長は真顔で返します。
「承知しました。本日は“再現性”を監査します」
監査。出ました。研究っぽい単語。介護士が小声で言います。
「今日の事務長、優しいのに怖い」
看護師が落ち着いて頷きます。「監査があると、安全が守られますからね」
栄養士はペンを持って、もう設計図を描く顔です。「少量でコクを足す方向でいきます」
こうして“研究チーム”が揃いました。所長(理事長)、記録係(事務長)、設計者(栄養士)、安全担当(看護師)、現場代表(介護士)。職種が違うから、得意な見方が違う。それが研究にちょうど良いんです。
介護士が言いました。
「今回、利用者さんに『カカオを入れます』って言うべきですか?」
この質問だけで、現場感が一気に出ます。隠し味って、隠すから成立する。でも施設では、敢えて言った方が安心する場合もある。ここは微妙なバランスです。
看護師が答えます。
「『今日はちょっとコクを足してみました』くらいが良いと思います。驚かせないのが大事です」
栄養士も同意します。
「名前で勝負しないで、食べた後に『いつもより美味しいね』が出るのが理想です」
理事長が頷きます。
「ほら、研究は派手じゃなくて良い。派手なのは最後の発表会だけで良い」
事務長が即座にメモします。
「最後に発表会、了解」
介護士が笑います。
「もう発表会やる気じゃないですか」
理事長は笑いながら胸を張りました。
「所長だからねぇ」
研究会の議題は、まず「どの料理に入れるか」です。ここで栄養士が、すごく大事なことを言いました。
「1食1品だからこそ、ジャンルを回しましょう。主菜の日、副菜の日、汁物の日、煮込みの日。そうすると“数日に1回”でも飽きません」
ここが、読者の皆様が一番真似しやすいところです。毎回同じカレーに入れると、すぐ飽きる。でも回すとイベントになる。しかも「研究」っぽくなる。今日は汁物、明後日は野菜、次は肉。変化の作り方がうまいところ。
ただし、ここで事務長がブレーキを踏みます。
「採用候補は多過ぎると迷います。まずは3ジャンルに絞ってください」
理事長が反論します。
「所長としては全部やりたい」
事務長は淡々と返します。
「所長の気持ちは尊重しますが、現場は回します」
また出ました、現場を回す。強い言葉です。看護師が小さく拍手しそうな顔をしています。
結局、最初の3ジャンルはこうなりました。煮込み系、肉のソース系、野菜(サラダ含む)系。理由は簡単で、カカオの“得意技”が出やすいからです。煮込みはコクが出る。肉ソースはツヤが出る。野菜は甘みが締まる。しかも、全部「溶かして滑らかに」出来る。粉っぽさを残し難い。安全と楽しさが両立しやすい、というわけです。
ここまで話がまとまったところで、理事長が急に真面目な顔になります。
「ところでさ、甘くないチョコって聞くと、利用者さんは『苦そう』って思わないかな」
介護士が頷きます。「思いますね」
栄養士が笑います。
「だから“チョコを入れる”と言わないんです。“コクを足す”でいきます」
看護師が補足します。
「名前より、食べた後の表情が大事です」
事務長がまとめます。
「記録は『反応』を中心に。味の評価は『いつもよりどうか』で」
理事長が嬉しそうに言いました。
「良いねぇ、今日はみんなが研究者だ」
最後に、所長が一言付け加えました。
「家庭用のおまけも忘れずに。職員さんが家で試せるやつ」
ここで栄養士が、ニヤッとします。
「カカオニブの話、入れますか?」
事務長が真顔で確認します。
「施設では使用しない、と明記してください」
看護師も頷きます。「カカオニブは噛む負担があるので、家庭向け限定なら良いという扱いですね」
介護士が笑います。
「家庭だと“ちょっと大人感”が楽しめますね」
理事長が満足そうに言いました。
「よし、所長として許可する」
事務長がメモします。
「所長許可、記録」
こうして、介護服のまま始まった真顔の研究会は、ちゃんと現場で回る形に整いました。次の章はいよいよ実験日誌です。肉、煮込み、汁物、野菜。成功も失敗も混ざってこそ研究。笑いながら、でも安全は守りながら、カカオが食卓に“新しい空気”を運んでいく場面に入ります。
第3章…肉・煮込み・汁物・野菜まで挑戦!~成功と失敗が混ざるカカオ実験日誌~
研究会が終わった翌日から、厨房ラボは静かに動き始めました。静かに、というのが大事です。施設の食事は、毎日が本番。研究だからといって舞台裏をドタバタさせるわけにはいかない。けれど、職員の心の中では小さなファンファーレが鳴っています。「今日は数日に1回の、1食1品だけの実験日だ」と。
理事長は朝から所長の顔でした。
「本日の研究テーマ、カカオのコクでマンネリを倒す!」
事務長はメモ帳を開き、静かに言います。
「倒さなくて良いので、整えてください」
この時点で笑いが生まれます。研究は、こういう温度がちょうど良い。
最初の実験は、煮込み系。ここは王道です。王道だからこそ、失敗が目立ち難い。栄養士が選んだのは「いつもの煮込みの、いつもの一皿」。そこへ“ほんの少しのカカオ”を溶かして混ぜる。粉っぽさが残らないように、別容器で滑らかにしてから。看護師は横から見て、頷きました。
「これなら粉感は出ませんね」
介護士が確認します。
「利用者さんには、何て言います?」
栄養士は笑います。
「『今日はコクを足してみました』で十分です」
所長が頷きます。
「よし、秘密研究だねぇ」
事務長が即座に訂正します。
「秘密ではなく、控えめです」
配膳の時間。利用者さんの反応は、劇的ではありません。ところが、これが成功のサインです。驚きの顔が出ない。困った顔が出ない。代わりに出るのは、食べ進んだ後にフッとこぼれる一言。
「今日、何か美味しいね」
この一言が出た瞬間、厨房ラボの全員が心の中で拍手しました。理事長は表情を崩さずに、胸の中でガッツポーズ。事務長はメモに静かに書き込みます。
「反応:いつもより美味しい。違和感なし」
看護師は安心した顔。栄養士は勝利の顔。介護士は、談話室での会話が増える予感にニヤッとしました。
数日後、次の実験は肉のソース系。ここは一気に“料理っぽさ”が出ます。ソースに少し溶かすだけで、ツヤが出る。香りが深くなる。ところが、ここで研究らしい事件が起きました。入れた量が、ほんのちょっと多かったのです。多かったと言っても、味が壊れるほどではありません。でも、香りが前に出た。前に出ると、好みが割れる。
配膳後、男性利用者さんが言いました。
「今日の肉、なんか大人だな」
所長が小声で言います。
「ほら、男子は大人って言葉が好きなんだよ」
事務長がメモします。
「男性:大人。評価は不明」
女性利用者さんが続けました。
「ちょっと苦い?でも嫌いじゃない」
栄養士が、心の中でメモを取ります。“嫌いじゃない”は、次に繋がる。
一方で、別の方が小さく言いました。
「今日はいつもと違うね」
この「違うね」は、良くも悪くもあります。介護士がすぐに声を添えます。
「そうなんです、今日は“コクの日”でして」
言い方が軽いと、空気が柔らかくなる。利用者さんも笑いました。
「コクの日って何よ」
談話が回り始めた時点で、研究としては勝ちです。完全に好みが一致しなくても、会話が生まれれば食事の時間が明るくなる。マンネリ改善って、味そのものより“空気”が変わるのが大きいんです。
ただし看護師は、研究者の顔で言いました。
「香りが前に出ると、好みが割れやすいです。次は量を戻しましょう」
栄養士が頷きます。
「少量で勝つ。ここ、忘れないようにします」
所長は少し残念そうです。
「でも所長としては、攻めたい」
事務長は即答します。
「所長は攻めないでください」
笑いが起きて、研究は次に進みます。
次の候補は汁物。ここが一番難しい。何故なら汁物は、口の中に広がりやすいから。少しの香りでも目立つ。さらに粉っぽさの心配もある。だから栄養士が選んだのは「溶かして、完全に滑らかにして、ほんの少しだけ入れる」方式。しかも汁物の種類も慎重に選びました。
「コクが乗っても違和感が少ない汁」
所長が言いました。
「味噌汁に入れたら面白いんじゃない?」
栄養士は笑いながら首を振ります。
「所長、いきなり主役級は危険です」
事務長がメモします。
「味噌汁:危険」
看護師が頷きます。
「汁物は、まず“違和感ゼロ”が勝ちです」
結果はどうだったかというと、成功のようで成功じゃない、でも面白い結果でした。
「今日の汁、なんか濃いね」
そう言われた瞬間、介護士は心の中で「言われた!」と叫びます。濃いねは、コクが増えたサイン。ただし濃い=重いと感じる方もいる。栄養士がすぐに結論を出します。
「汁物は“採用保留”。もう少し研究が必要」
所長は少し悔しそうに言いました。
「研究って、こういうのが楽しいんだよねぇ」
事務長が冷静に返します。
「楽しいのは良いですが、採用は慎重に」
この温度差が、厨房ラボを守ります。
そして最後の実験が、野菜とサラダ。ここは“甘くないチョコ”の意外性が一番出ます。チョコをサラダに?と聞いた瞬間、普通は眉が動きます。でも、ここで言い方を変えると一気に現実になります。
「チョコじゃなくて、カカオでコクを足すドレッシングです」
栄養士の説明は、いつも通り落ち着いています。看護師も確認します。
「粉っぽさは?」
栄養士が答えます。
「完全に溶かして、トロッとさせます」
介護士はワクワクしています。談話が盛り上がりそうだから。所長はさらにワクワクしています。発表会が近い気がするから。事務長はメモを取っています。再現性が高い予感がするから。
利用者さんの反応は、予想外に良かった。
「これ、いつものサラダなのに、ちゃんとしてるね」
ちゃんとしてる。すごく良い言葉です。
「ドレッシングが、ちょっと大人だね」
また出ました、大人。男性陣が好きなやつです。
介護士が笑います。
「今日は“サラダが大人の日”です」
利用者さんが笑って、食卓がフワッと明るくなる。こういう瞬間が、研究のご褒美です。
もちろん失敗もありました。別の日に少しだけ酸味が強くなって、「酸っぱい」と言われたこともあります。所長が言いました。
「酸味が強いと、顔がシュッとなるねぇ」
事務長が言いました。
「顔がシュッとなるものは、採用しません」
栄養士が笑いながら反省します。
「酸味は控えめに。カカオのコクを主役にします」
看護師が頷きます。
「驚かせない、が一番です」
こうして、肉も煮込みも汁物も野菜も、少しずつ“使える範囲”が見えてきました。研究は大成功ではありません。大成功にしないのが、施設の研究の良さでもあります。小さく試して、反応を見て、少し直して、また試す。そこに笑いがあって、会話が増えて、食卓の空気が変わる。それだけで、マンネリ改善としては十分な成果です。
次の章では、いよいよ「採用メニュー」を決めます。成功したものを現場で回せる形に整えて、さらに職員の家庭用おまけとして“カカオニブ部門”も登場させます。所長の発表会欲が、ついに爆発する予感です。
第4章…採用メニュー決定!~そして家庭用おまけ“カカオニブ部門”も爆誕~
研究日誌が数回分たまったところで、所長がとうとう立ち上がりました。理事長です。胸を張って言いました。
「よし、発表会をやろう!」
事務長が即座に言いました。
「発表会というより、採用会議です」
所長はニコニコしながら訂正します。
「採用発表会!」
事務長は一拍置いて、静かにメモします。
「名称はどうでもいいので、結論を出します」
この温度差が、施設の厨房ラボの良さです。夢が暴走しそうになったら現実が止める。止められても夢は萎まない。むしろ笑いに変わって強くなる。良いチームです。
会議室には、研究チームが揃いました。栄養士はノートを開き、看護師は安全目線のチェックを持ち、介護士は利用者さんの反応を思い出し、事務長は再現性のための書式を整え、理事長は“所長の表情”で腕を組む。こういう時間があると、日々の食事が「作業」から「工夫」になっていきます。
まず議題になったのは、汁物の扱いでした。所長は言います。
「汁物、ロマンがあるんだよねぇ」
事務長が返します。
「ロマンは胃に重いことがあります」
看護師が静かに頷きます。「汁物は広がりやすいので、好みが割れやすいです」
栄養士が結論を出しました。
「汁物は“研究継続枠”。採用は急がない」
所長が残念そうに言います。
「所長としては、いつか味噌汁に…」
事務長がすぐ止めます。
「所長、味噌汁は危険です」
介護士が笑います。「味噌汁はみんなの心の拠り所ですからね」
そう、施設の汁物は“安心の象徴”。そこに変化を入れるなら、もっと慎重で良い。研究は諦めないけど、採用しない。これが大人の研究所です。
次に話題になったのは、肉のソース系。これは良い反応も出たけれど、香りが前に出過ぎると「大人」になり過ぎる日があった。所長は言いました。
「“大人の肉”は男子が喜ぶ」
事務長が冷静に返します。
「男子が喜んでも、全員が喜ばないと採用しません」
看護師も補足します。「香りが強いと好みが割れます。量は控えめで」
栄養士が頷きます。「採用するとしても“月に数回まで”。そして量は最小で」
ここで介護士が良いことを言いました。
「肉は“イベントの日”に向いてますね。今日は特別、って言いやすい」
その通りです。肉のソースは主張が出る分、“特別感”の演出に向いている。毎週の定番にはしないけれど、気分を上げたい日に入れる。これならマンネリ改善として効果が高い。採用は、条件付きで決まりました。
そして満場一致で採用されたのが、煮込み系と野菜(サラダ含む)系でした。煮込みは「いつもより美味しいね」が出た。野菜は「ちゃんとしてるね」が出た。この2つは、驚かせずに満足させる。しかも粉っぽさを残し難い。溶かして混ぜて、滑らかにして、少量で勝てる。施設向きの要素が全部揃っていました。
所長が嬉しそうに言います。
「じゃあ採用は2本柱だねぇ。煮込みのコク柱、野菜の大人柱」
事務長が訂正します。
「柱の名前は置いておきます。運用ルールを決めましょう」
ここで、最初のルールが生きてきます。1食1品。数日に1回。しかも採用メニューは“回して飽きないようにする”。栄養士が提案しました。
「煮込みの日、野菜の日、肉イベントの日。これで回せます」
看護師が確認します。
「カカオは必ず液体化してから使う。粉を振りかけない」
介護士が付け足します。
「利用者さんへの声掛けは“コクを足しました”で統一。びっくりさせない」
事務長がまとめます。
「記録は“違和感の有無”“食べ進み”“会話の増減”を中心に」
所長が笑います。
「所長の夢が、書式になっていくねぇ」
事務長は真顔で返します。
「夢は書式になると強いです」
この言葉、ちょっと名言です。現場で回る工夫は、書式とルールで守られる。守られるからこそ、遊び心が続く。施設の工夫って、そういう構造で出来ています。
さて、ここで話は“おまけ”に移ります。家庭用おまけ、カカオニブ部門です。栄養士が説明します。
「カカオニブは、カカオ豆を砕いた粒です。甘くなくて香ばしくて、カリカリします」
所長が言いました。
「カリカリ…良いねぇ」
看護師がすぐ釘を刺します。
「施設では基本使いません。噛む負担があるので」
事務長も頷きます。
「家庭向け限定、と明記」
介護士が笑います。
「職員の家で“ちょい大人”する用ですね」
ここが記事として美味しいところで、施設では安全優先、家庭では遊び心、という二段構えができます。例えば家庭なら、ヨーグルトに少し、アイスに少し、グラノーラに少し。ほんの少しで香ばしさが増えて、気分が変わる。もちろん食べ過ぎれば苦いし、硬いので好みはある。でも「こういう世界もある」と知るだけで、甘くないチョコの幅がグッと広がる。読者にとっては“得した情報”になります。
採用会議の最後、所長が締めの一言を言いました。
「甘くないチョコは、胃袋を驚かせるんじゃなく、食卓を整えるんだねぇ」
看護師が頷きます。「驚かせないのが一番です」
栄養士が笑います。「少量で勝つ、ですね」
介護士が言います。「会話が増えたのが、一番の成果です」
事務長が淡々と結論をまとめました。
「採用:煮込み系、野菜(サラダ)系。条件付き:肉ソース系。継続研究:汁物。家庭用のおまけ:カカオニブ」
こうして厨房ラボは、ただの一発ネタで終わらず、ちゃんと現場で回る“改善の仕組み”になりました。次はいよいよまとめです。甘くないのに、何故か心が甘くなる。そんな不思議な食卓の変化を、最後にしっかり味わって締めましょう。
[広告]まとめ…甘くないのに、なぜか心が甘い—食卓の新しい楽しみ方が増えた話
今回の厨房ラボで分かったのは、甘くないカカオは「チョコ味を足す魔法」じゃなくて、「いつもの食卓を整える小さな道具」だということでした。所長(理事長)が夢を語り、事務長が現実で締め、栄養士が少量で設計し、看護師が安全を守り、介護士が食卓の空気を整える。こうして回り始めると、マンネリって“敵”じゃなくなります。むしろ「数日に1回の実験日」があるだけで、いつもの献立が少し誇らしく見えてくるんです。
採用は、驚かせずに満足させられた煮込み系と、野菜(サラダ)系が中心になりました。肉ソース系はイベント枠で、“大人の香り”をほんの少し。汁物はロマン枠として研究継続。こうやって「全部に入れない」「1食1品」「数日に1回」というルールを守ったからこそ、現場が安心して遊べました。所長の夢が書式になって強くなる、あの瞬間も含めて、施設らしい良い研究でしたね。
そして最後に、カカオの“中身”も少しだけ触れておきます。カカオには、ポリフェノール系の成分や、ミネラル(マグネシウムや鉄など)、食物繊維が含まれると言われていて、「甘いお菓子のイメージ」より、実は中身がしっかりした食材寄りです。だからこそ、料理にほんの少し混ぜると、コクや香りの深みとして働きやすい。栄養を増やすというより、食欲のスイッチを優しく押す感じ、と言うと近いかもしれません。
ただし、良いものには“摂り過ぎ注意”もセットです。カカオにはカフェインやテオブロミンといった成分もあるので、敏感な方だと眠りにくさやドキドキに繋がることがあります。だから施設では、なおさら「少量で勝つ」が正解です。さらに、何でもそうですが毎日大量に使うのは避けて、体質や体調に合わせて“ほどほど”に。今回みたいに「数日に1回、1品だけ」で十分に楽しめます。
それと、実務的に一番大事なのは、粉っぽさを残さない工夫でした。粉を振りかけるより、ソースや煮汁に溶かして滑らかにして、口の中で散らない形にする。この工夫があるだけで、同じカカオでも安心感が全然違う。研究が“面白い”で終わらず、“続けられる”に変わります。
甘くないカカオは、派手な主役にはなりません。でも、ちょっとした差し色になって、食卓の会話を増やしてくれる。利用者さんが「今日なんか良いね」と言って、職員がニヤッとして、所長が胸の中でガッツポーズして、事務長が真顔で記録する。そんな一連の流れが、冬の後半の施設に小さな春を連れてくるんだと思います。次の実験日も、どうせ所長は張り切ります。だからこちらも、ルールで守りながら、笑っていきましょう。
今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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