雨の季節は鼻から楽しむ~6月の香りで心と暮らしをやさしく整える~
はじめに…雨の日ほど見つかる「いい匂い」がある
6月の朝、窓を開けると空はどんより。洗濯物は部屋の中、玄関には濡れた傘。「今日も雨かぁ」と肩を落としたくなる日もあります。ところが、そんな日に限って鼻にはいつもと違う季節が届きます。雨に濡れた土、青々とした草木、庭先のアジサイ、新しい畳から漂ういぐさの香り。目の前は灰色の空でも、鼻の周りだけは意外ににぎやかです。
香りには形も音もありません。それなのに、フッと届いた瞬間に「懐かしいな」と昔の景色が浮かんだり、張っていた気持ちが緩んだりします。高齢になれば香りの感じ方が変わることもありますが、誰かが決めた「良い香り」を押しつける必要はありません。今日は好き、今日はちょっと苦手、何も香らない空気が落ち着く。そんな日があって良いのです。
雨続きで気分まで湿りそうな6月だからこそ、五感の1つである鼻を少し遊ばせてみるのも面白いものです。玄関を出たところで深呼吸したら、「おや、草の匂い」。畳の部屋へ入ったら、「ああ、落ち着く」。そこでさらに鼻を近づけ過ぎて家族に怪しまれたら……少々やり過ぎです。
雨の日は、晴れの日には気づかなかった香りを見つけられる日でもあります。鬱々としやすい季節を嫌うばかりではなく、鼻先に届く小さな変化を楽しめれば、気分も心機一転。雨音の向こう側に、6月らしい楽しみが1つ増えていきます。
[広告]第1章…雨上がりは香りの散歩道~土・草・畳に季節を感じる~
雨が止んだばかりの道を歩くと、いつもの近所なのに空気が少し違って感じられます。乾いていた地面はしっとり濡れ、土からは独特の香りが立ち上がり、道端の草や庭木まで急に存在感を増します。晴れた日には素通りしていた場所が、鼻にとっては小さな散歩コースへ早変わり。6月の気まぐれな雨は面倒でも、その雨があるから出会える匂いがあります。
草の香りも面白いものです。雨に濡れた葉や茎から青々とした匂いが漂うと、「昨日までこんなに主張していましたっけ?」と言いたくなるほど元気いっぱい。庭の雑草まで季節の出演者になってしまいます。抜こうと思っていたのに、ちょっと良い香りがすると一瞬だけ手が止まる。いや、抜くものは抜きますけどね……と自分にツッコミを入れながら、そんな道草も6月らしい時間です。雨の日には、晴れた日とは違う花鳥風月が鼻先にも広がっています。
家へ戻れば、今度は畳の香りが待っています。いぐさの清々しい匂いは、外の湿った土や草とは違う落ち着きを運んできます。新しい畳ほど香りは分かりやすいものの、和室へ入った瞬間の「ああ、この感じ」という懐かしさは、日本の暮らしに馴染んだ感覚の1つでしょう。自然の匂いを遠くまで探しに行かなくても、足元や家の中に季節を感じる入口は残っています。
6月は空を見れば灰色の日が多くても、足元では土が潤い、草木が育ち、家では畳が静かに香っています。何気ない匂いに気づくだけで、いつもの景色は少しだけ季節らしくなります。晴天ばかりを待たず、雨上がりに鼻を少し働かせてみる。そんな小さな楽しみ方なら、傘を閉じた帰り道にもすぐ始められます。
第2章…懐かしい匂いは心の引き出しを開ける~香りと記憶の不思議~
ふと漂ってきた匂いに、忘れていた景色が突然、甦ることがあります。炊きたてのご飯で昔の台所を思い出したり、木の香りから子どもの頃に遊んだ家を思い浮かべたり。頭の中で「思い出そう」と頑張ったわけでもないのに、香りの方から勝手に扉を開けてくるような瞬間です。
嗅覚(においを感じ取る感覚)は、記憶や感情と結びつきやすい感覚として、暮らしの中でも面白い働きを見せてくれます。懐かしい香りに触れた途端、昔の出来事が浮かんだり、気持ちがフッと和らいだりすることがあります。
高齢者との暮らしでも、これはちょっとした会話の入口になります。「この匂い、知ってる?」と尋ねたら、「昔、家にこんな木があったなぁ」「母親がよく使っていたよ」と、思いがけない話が返ってくるかもしれません。写真を見せても出てこなかった話が、香り1つで始まることもある。鼻というのは、なかなか抜け目のない聞き役です。
ただし、懐かしい香りだから必ず楽しい記憶に繋がるとは限りません。人の人生には喜怒哀楽があり、同じ匂いでも思い出す場面はそれぞれ違います。誰かには安心する香りでも、別の人には苦手な記憶と結びついていることがあります。「懐かしいでしょ?」と答えを先に決めず、「どんな感じがする?」くらいの距離がちょうど良いのでしょう。
香りは思い出を正解へ導くものではなく、その人の心にしまわれた景色へそっと近づく入口です。何十年も前の台所、雨の日の通学路、家族と過ごした部屋。鼻先から始まった小さな話が、その人らしい人生の一場面へ繋がったなら、それだけでも十分に豊かな香りの時間になります。
[広告]第3章…好きな香りは毎日同じじゃなくて良い~選ぶ自由と休む自由~
昨日はレモンの爽やかな香りが心地良かったのに、今日は何故か「ちょっと近いです」と鼻が拒否する。反対に、普段なら気にならないミントが妙に気持ち良く感じる日もあります。香りの好みは名札のように固定されたものではなく、その日の気分や体調によって揺れることがあります。
高齢者と香りを楽しむ時にも、この揺れは大切にしたいところです。昨日喜んでいた香りだから今日も喜ぶだろう、と決めてしまうと、本人は少し困っているのに周囲だけが「お気に入りですから」と満足してしまうことがあります。そこで必要なのが臨機応変。「今日はどう?」と表情や反応を見ながら、その日の心地良さに合わせるくらいが自然です。
香りを選ぶというと、つい「何の香りにしよう」と考えますが、実は「今日は何も使わない」という選択肢もあります。雨の日の湿った空気だけで十分な日もあれば、窓を開けた時の風が心地良い日もあるでしょう。折角、買ったアロマだから毎日使わなければ……となると、香りの方が勤務表を持って出勤しているようで、ちょっと働かせ過ぎです。香りにも休日があって良いのです。
人によって好き嫌いが違うことも忘れられません。柑橘が好きな人、木の香りに落ち着く人、甘い香りが苦手な人、無香が好きな人。正に十人十色です。家族や介護する側が「これは癒やされる香りだから」と決めるより、本人が心地良いかどうかを大切にした方が、香りは暮らしの邪魔をせず、そっと寄り添ってくれます。
好きな香りを選べることと、今日は香らせないと決められること、その両方が心地良い暮らしの一部です。香りを楽しむ日は楽しみ、要らない日は休む。そのくらい自由な付き合い方なら、6月のどんよりした午後にも、自分の気分にちょうど合う小さな晴れ間を作れそうです。
第4章…香らせ過ぎないのも思いやり~高齢者と楽しむ優しい香りケア~
良い香りを見つけると、つい誰かにも分けたくなります。「これ、凄く落ち着くよ」と部屋に置き、「もう少し香った方が良いかな」と量を足していく。ところが香りは、濃くすれば満足度まで増えるものではありません。本人にはちょうど良くても、隣にいる人には「ちょっと待って、鼻が先に帰宅したがっています」となることもあります。
特に家族が集まる部屋や高齢者施設のように複数の人が過ごす場所では、香りの感じ方は千差万別です。木の香りに安心する人もいれば、柑橘の爽やかさを好む人もいる。その一方で、今日は何も香らない方が落ち着くという人もいます。香りの好みを本人の個性として受け止め、使わない選択まで大切にすることが、心地良い香りケアに繋がります。
昔から「過ぎたるは及ばざるが如し」と言いますが、香りにもよく似合う言葉です。部屋中を別世界に変えるほど香らせなくても、近づいた時にほんのり感じる程度で楽しめることがあります。本人の表情が曇ったり、「今日は要らない」と言ったりしたなら、その日はお休み。昨日、上手くいった方法を毎日の決まりにしない柔軟自在さも、大切な気遣いです。
そして梅雨には、「良い香りを足す」前に部屋そのものの空気へ目を向けたい日もあります。湿気がこもっていたり、生活のにおいが気になったりした時、別の香りで覆ってしまうだけでは心地良さに繋がらないことがあります。窓を開けられる時には空気を入れ替え、身の回りを整え、その上で本人が好きなら少し香りを楽しむ。香りは主役というより、暮らしの端にちょこんと座るくらいが似合います。
優しい香りケアとは、何を香らせるかより、目の前の人が心地良いかを大切にすることです。「良かれと思って」が香りの大盛りサービスにならないように、少し控えめに、時には何もしない。そんな距離感なら、高齢者にも家族にも、6月の空気を気持ち良く楽しめる余白が残ります。
[広告]まとめ…鼻先の小さな季節を拾えば雨の日もちょっと楽しくなる
6月は、どうしても雨や湿気ばかりに目が向きがちです。けれど少し鼻を働かせてみれば、雨上がりの土、濡れた草木、畳や木の香りなど、この季節だからこそ出会えるものが身近にあります。晴れの日とは違う楽しみが見つかれば、「また雨か」という朝も、ほんの少し見え方が変わってきます。
香りには、懐かしい記憶を連れてきたり、気持ちを緩めたりする面白さもあります。一方で、好き嫌いやその日の感じ方には個人差があります。高齢者と一緒に楽しむ時も、「この香りなら喜ぶはず」と決めるのではなく、本人の表情や言葉を大切にしたいところです。何も香らせない日まで含めて選べる方が、暮らしには自然な自由自在さが残ります。
香りを暮らしに取り入れることは、大きな準備が必要な楽しみではありません。窓辺で雨の匂いに気づく、畳の上で少し深呼吸する、好きな香りがあればほんのり楽しむ。それくらいの悠々自適な距離で十分です。香りを足すことより、今の自分や目の前の人が心地良いかどうかを確かめるほうが、ずっと大切なのでしょう。
6月を楽しくするのは、特別な香りを探すことではなく、今日の空気の中にある心地良さへ気づくことです。鼻先に届いた小さな季節を拾いながら、雨の日も晴れの日も、その日の自分に合ったペースで過ごしていきたいですね。梅雨空の向こうに青空を待つ時間まで、暮らしの楽しみの1つになれば素敵です。
[ 広告 ]今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
[ 応援リンク ]
ブログランキング2つに参加しています。応援クリックをお待ちしております。
[ ゲーム ] 作者のitch.io(作品一覧)
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。