真夏でもお風呂は週2回?~汗拭きシート1枚で変える高齢者施設の残り5日~
目次
はじめに…次のお風呂は木曜日です
真夏の午後、冷房の効いた施設でも、背中や首筋にはジンワリ汗が滲みます。食事を終え、車いすで少し移動しただけでも、衣服の内側は思った以上に蒸れるものです。ところが入浴日を尋ねると、「次は木曜日ですよ」と返ってくる。今日は月曜日。カレンダーを二度見しても、やっぱり木曜日です。見間違いであってほしいところですが、数字は妙に正直でした。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、週2回の入浴を基本とするところが少なくありません。職員不足や安全な介助に必要な時間を考えれば、毎日全員がお風呂へ入るのは簡単ではないでしょう。それでも、汗やベタつきまで入浴日に合わせて休んでくれるわけではありません。汗に「本日は入浴日ではありません」と伝えても、業務連絡は通じないのです。
高齢になると、不快感をうまく言葉に出来なかったり、忙しそうな職員へ遠慮したりすることもあります。本人から訴えがないまま、首元や背中に汗が残り、痒みや肌荒れへ繋がる可能性も見逃せません。
週2回の入浴を責めるだけでなく、残りの日を心地よく過ごせる仕組みを作ることが大切です。
そこで役立つのが、本人の手元に置ける低刺激の汗拭きシートです。清潔保持(体を清潔な状態に保つこと)を大仕事にせず、自分で拭けるところは自分の好きな時間に拭く。届かないところだけ職員が手伝う。小さな1枚を臨機応変に使えば、人手が限られる施設でも、夏の暮らしを少しずつ快適に変えられます。
[広告]第1章…「訴えがない」は快適の合図ではない
昼食後の居室で、高齢者さんが首元へそっと手を入れています。背中を椅子の背もたれから浮かせたり、パジャマの襟を何度も引っ張ったりする。その姿を見て「暑いですか?」と尋ねても、「別に何ともないよ」と返ってくることがあります。
本人がそう言うなら大丈夫――と通り過ぎたくなるところですが、少しだけ立ち止まりたい場面です。
高齢者さんの中には、職員へ迷惑をかけたくないと遠慮する人がいます。認知症などによって、ベタつきや痒みを上手く言葉にできない人もいます。汗をかいていることに気づきにくくなっていても、皮膚は正直です。首、脇、背中、胸の下、腹部のシワ、足の付け根などには、汗と湿気が溜まりやすくなります。
訴えがなくても、衣服が湿っていないか、肌が赤くなっていないか、同じ場所を触っていないかを見る。これは大袈裟な観察ではなく、日々の何気ない目配りです。表情や仕草から小さな変化を拾う姿勢は、細心周到でありながら、決して堅苦しいものではありません。
「何も言わないから平気でしょう」と思った直後、背中へ手を入れてみれば、こちらが驚くほど汗ばんでいることもあります。汗は報告書を書いてくれませんし、申し送りにも自分から参加しません。そこまでしてくれたら助かるのですが、流石に汗へ業務協力を求めるのは無理な相談です。
本人が訴えないことは、本人が快適に過ごしている証明にはなりません。
入浴日ではなくても、汗をかいた場所を拭く、湿った衣服を替える、肌の状態を確認する。その小さな対応が、痒みや赤みを防ぎ、落ち着いて過ごせる時間に繋がります。皮膚の浸軟(汗や湿気で皮膚がふやけて弱くなる状態)を避けるためにも、早めの気づきが欠かせません。
「備えあれば憂いなし」と言いますが、夏の肌ケアも同じです。症状が現れてから慌てるより、汗をかいた時にサッと整える。週2回の入浴予定を守ることと、毎日の清潔を守ることは、二者択一ではありません。
入浴のない日にも、本人の肌と表情へ目を向ける。その眼差しがあれば、汗拭きシートは単なる消耗品ではなく、心地よい暮らしを支える小さなケア用品になります。
第2章…自分で拭ける1枚を手の届く場所へ
汗をかいた時、自宅ならタオルを取り、首筋や腕を自分のタイミングで拭きます。ところが施設へ入ると、汗を拭くことまで「職員に頼んで行うケア」へ変わってしまう場合があります。
ナースコールを押して、「汗拭きシートを取ってください」とお願いする。職員が来るまで待ち、袋を開けてもらい、使い終わったら捨ててもらう。これでは、首をひと拭きしたいだけなのに、ちょっとした一大行事です。本人も遠慮して、「まあ、次のお風呂まで良いか…」と我慢してしまいます。
自分で腕や胸元を拭ける人なら、汗拭きシートを手の届く場所へ置くだけで、暮らしは変わります。ベッドサイドや洗面台、車いすの収納袋など、無理なく取れる場所を一緒に探します。本人の生活動作に合わせた定位置が決まれば、必要な時に自分で使えます。
ただ置けば完成、とはいきません。袋のフタを開けられるか、1枚ずつ取り出せるか、使ったシートを安全に捨てられるかも確かめたいところです。握る力が弱い人には、フタの大きい容器や取り出し口の広い製品が向いています。片麻痺(体の左右どちらかにまひがある状態)がある人なら、動かしやすい側へ置く工夫も必要です。
ここで職員が先回りして、全部拭いてしまうと話が少し違ってきます。親切のつもりが、本人の出番まで奪ってしまうからです。腕や首は本人にお願いし、手の届かない背中だけ手伝う。そんな役割分担なら、臨機応変なケアと自立支援(本人が持つ力を生かして暮らしを支えること)を一緒に進められます。
「自分で拭いてください」と渡したら、シートではなく袋の外側で首をこすり始めた――なんてこともあるかもしれません。いや、そちらは乾いております、と心の中で小さくツッコミつつ、最初の1枚だけ一緒に使ってみれば大丈夫です。
汗を拭く時間を自分で選べることも、その人らしい暮らしを守る大切な自由です。
香りが苦手な人、冷感が心地よい人、冷たさに驚く人など、感じ方は十人十色です。無香料や低刺激の製品を基本にしながら、肌の状態や本人の好みも確かめます。汗拭きシートは全員へ同じように配るだけの用品ではなく、その人の使いやすさに合わせて生かす道具です。
小さな1枚を傍に置く。それだけで、職員を待つ時間が減り、本人が自分で整えられる場面が増えていきます。自分の体を自分で心地よくする。その当たり前を施設の中にも残しておきたいものです。
[広告]第3章…持ち込み任せにしない夏の肌ケア準備
施設へ入る日、家族の手には衣類、薬、履き慣れた靴、洗面道具が入った大きな袋があります。説明を聞きながら名前を書き、足りない物を買い足し、気づけば荷物は小旅行どころか引っ越し便です。
そこへ「汗拭きシートもご用意ください」と加えること自体は、悪いことではありません。本人が長く使ってきた製品なら、香りや肌触りに安心できるでしょう。ただし、夏の清潔ケアを家族の持ち込みだけに任せると、用意できる人とできない人の間に差が生まれます。
家族が遠方にいる人もいれば、頼める家族がいない人もいます。持参したシートがなくなるたびに連絡を受けても、すぐ届けられるとは限りません。「次の面会日に持って行こう」と思っているうちに、季節が1つ進みそうになる。いや、汗は面会予定表を見て待ってくれません。
肌を清潔に保つための基本用品は、家族の準備状況に左右されない仕組みが必要です。
入所時には、汗をかきやすいか、肌が乾燥しやすいか、香りや冷感が苦手ではないか、自分でどこまで拭けるかを確認します。皮膚が弱い人には、低刺激で無香料の製品を選び、使用後の赤みや痒みにも目を向けます。アセスメント(本人の状態や暮らしを把握する確認作業)へ夏の肌ケアを加えておけば、準備万端で暑い時期を迎えられます。
家族には、本人が愛用している物があれば持参してもらう。その一方で、施設にも標準的な身体用シートや清拭用品を常備しておく。この両輪があれば、私物が切れた日にもケアは止まりません。
顔用、身体用、陰部用などを無造作に同じ棚へ並べると、職員も本人も迷います。名前や用途が分かる表示を付け、保管場所を決め、乾燥や誤使用を防ぐ。用意しただけで満足せず、使える状態まで整えてこそ用意周到です。
汗拭きシートは、入所時の持ち物一覧へ一行追加すれば済む話ではありません。誰が用意できなくても、必要な時に使えること。肌質や好みに合わせて選べること。施設と家族が役割を分け合えば、夏の清潔は「持ってきた人だけの特典」ではなく、全ての入居者さんに届く日常のケアになります。
第4章…「まとめてドン」で業者も施設も動き出す
介護の世界には、電動ベッド、移動用リフト、体圧分散マットレスなど、暮らしを支える立派な機器が揃っています。複雑な道具を作るのは個別のメーカーで、複数の商品をカタログに集め、施設や家庭へ届けるのが福祉用具の販売・貸与事業者です。
いわば、作り手と使い手を繋ぐ目利き役です。
ただ、どれほど良い商品でも、利益が出にくく、注文も少なく、配送の手間ばかり増えるとなれば、積極的には扱いにくいでしょう。人の善意だけでトラックは走りませんし、ガソリンスタンドで「高齢者さんの笑顔のためです」と言っても、満タンにはしてもらえません。世の中、そこはなかなか現実的です。
そこで、汗拭きシートを家族が1袋ずつ持参する小さな買い物ではなく、施設単位の継続契約に変えてみます。100床の施設なら、毎月一定量を箱単位で納品する。夏だけ増量し、涼しい時期は数量を減らす。配送日を決め、在庫が切れる前に補充する仕組みなら、売る側にも安定した注文が生まれます。
施設側にも利点があります。家族へ不足の連絡をする回数が減り、誰の袋か分からない汗拭きシートが棚の奥で迷子になることも減ります。職員が必要な時に迷わず使えれば、時間の短縮にも繋がります。入居者さんにとっては、家族の有無や面会回数に関係なく、同じように肌ケアを受けられる環境が整います。
高齢者さんに必要な用品を広げるには、優しさだけでなく、続けられる商いの形が欠かせません。
施設向けの商品なら、単に市販の袋を大きな段ボールへ詰めれば完成、というわけではありません。片手でも開けやすいフタ、1枚ずつ取り出しやすい構造、乾燥しにくい密閉性、肌に優しい無香料、拭きやすい大判サイズ。本人のベッドサイドへ置く小分け容器と、職員が介助に使う業務用包装を分けても良いでしょう。
使用後のシートを包んで捨てられる形や、容器に氏名を書ける場所があれば、現場ではさらに扱いやすくなります。こうした工夫は適材適所で、豪華な新機能より、毎日困っている小さな不便を解消する方が喜ばれることもあります。
メーカーは作る。販売事業者は施設へ届ける。施設は標準用品として備える。職員は必要な人へ渡し、本人が使える部分は自分で使う。この流れが出来れば、誰か一人の頑張りに頼らず、汗を拭く習慣を続けられます。
販売する側にとっては、1回売って終わる高額機器とは異なり、毎月使われる消耗品です。大量仕入れで単価を下げても、複数施設へ定期納品できれば商売繁盛の道はあります。施設側も値段が下がり、入居者さんの快適さが上がる。三方が少しずつ得をする形なら、話は動きやすくなります。
「高齢者さんのために安くしてください」とお願いするだけでは、会議室で丁寧に頷かれて、そのまま資料の下へ眠るかもしれません。けれど、「100床へ毎月まとめて納品できます」と添えれば、担当者の電卓が急に元気を出す。少し世知辛く見えても、電卓が動いた先で高齢者さんの汗が拭けるなら、それも立派な前進です。
[広告]まとめ…小さな1枚から高齢者の心地良い毎日へ
夏の汗は、入浴予定表を見て遠慮してくれません。週2回の入浴を安全に続けていても、その間の5日間には、寝汗をかく朝も、リハビリで体が温まる午後もあります。首筋がベタつく日もあれば、背中の湿りが気になる夜もあるでしょう。
毎日全員の入浴回数を増やすことが難しくても、出来ることまでなくなるわけではありません。本人が使える汗拭きシートを手の届く場所へ置き、自分で拭けるところは好きな時に整えてもらう。届かない場所には職員が手を添え、肌の赤みや衣類の湿りにも目を向ける。そんな日々の積み重ねが、清潔と尊厳を守ります。
入所時には肌質や好みを確かめ、家族の持ち込みだけに頼らず、施設にも低刺激の用品を備えておきたいところです。さらにメーカーや販売事業者が施設向けの商品を作り、箱単位で一括納品できれば、安定供給と価格の軽減を両立できます。商売の電卓が元気に動き、その先で高齢者さんがサッパリ笑えるのなら、電卓にも少しくらい拍手を送って良いでしょう。
法定の最低基準を守るだけでなく、その人が今日を気持ちよく過ごせるところまで支えるのが暮らしのケアです。
汗拭きシートは、入浴の代わりになる万能用品ではありません。それでも、訴えにくい不快感を見つけ、自分で整える自由を残し、職員不足の中でも一歩進むための小さな道具にはなれます。
1枚では世界は変わらないように見えても、施設の標準用品になれば景色は変わります。職員の個人的な気配りに任せず、誰もが当たり前に使える環境を作る。そこから夏の肌ケアは、臨機応変な親切ではなく、日常茶飯の暮らしへ育っていきます。
次のお風呂が木曜日でも、今日の汗は今日のうちにサッパリと。そんな当たり前が高齢者施設にも根づけば、真夏の1日はもう少し軽やかになります。
[ 広告 ]今日も閲覧ありがとうございましたm(__)m
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