福祉用具は進化しているのに~暮らしはもっと楽になれているだろうか?~

[ ケアマネの流儀 ]

はじめに…道具の進化と、暮らしの実感はいつも同じ速さとは限らない

福祉用具の世界は、本当に日進月歩です。ベッドも手すりも車椅子も、前より使いやすく、前より優しく、前より暮らしに寄り添う形へと整ってきました。けれど、ここで少し立ち止まってみたくなるのです。道具が進化した分、毎日の暮らしもちゃんと軽やかになっているだろうか、と。新しい品が増えることと、生活の実感が豊かになることは、似ているようで同じではありません。

福祉用具貸与事業所は、用具を届けるだけの場所ではありません。福祉用具貸与(介護保険で用具を借りる仕組み)に加えて、福祉用具販売(使い回ししない品の購入支援)や住宅改修(手すり設置や段差解消の工事支援)まで、暮らしの土台を広く支える役目があります。しかも、その背後には福祉用具専門相談員(用具選びを支える専門職)や住環境コーディネーター(住まいを整える視点を持つ人)といった、なかなか頼もしい顔触れが控えています。表面から見ると「道具屋さん」でも、中身はかなりの総力戦です。

しかも現場では、急な退院、今日中の環境調整、会議への参加依頼など、予定表が綺麗なまま終わる日の方が珍しいかもしれません。朝は静かでも昼には電話が鳴り、夕方には別の相談が入る。まるで雨が降ると言っていないのに洗濯物を干した日に限って空が怪しくなる、あの感じです。こちらの都合など、暮らしの前では少し細い。そんな場面で、すっと動いてくれる人たちがいるのは、利用者さんにも周りの支援者にも心強いことだと思います。

ただし、ここに1つ面白い宿題があります。道具は新しくなっていても、使う人がその変化を知らなければ、暮らしの景色は昨日のままです。交換のひと手間が惜しくてそのまま、説明の機会がなくてそのまま、何となく慣れているからそのまま。人は慣れる天才ですから、良い意味でも困りものです。便利さが目の前に来ていても、「まあ、今ので何とか」と言ってしまう辺り、私たちの日常はなかなか味わい深いものです。

この記事では、福祉用具貸与事業所の頼もしさと、少し惜しいところの両方を見つめながら、道具の進化をどうすれば暮らしの実感へ繋げられるのかを、肩肘を張らずに辿っていきます。品物の話に見えて、実は主役は毎日の生活です。試行錯誤を重ねながらも、使う人の動きがひとつ楽になり、気持ちが少し前を向く。その積み重ねこそが、ほんとうの豊かさなのかもしれません。

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第1章…福祉用具の仕事はただ届けるだけでは終わらない

福祉用具貸与事業所という言葉を聞くと、まず思い浮かぶのは「必要な道具を家まで持ってきてくれるところ」かもしれません。もちろん、それは大切なお仕事です。けれど実際には、そこだけでは終わりません。福祉用具貸与(介護保険で用具を借りる仕組み)に加えて、福祉用具販売(衛生面などから貸し出しに向かない品の購入支援)もあり、さらに住宅改修(手すり設置や段差解消の工事支援)まで関わることがあります。道具を運ぶ人というより、暮らしの形を整える人。そう見ると、この仕事の輪郭がグッと立体的に見えてきます。

ここが面白いところで、相手にしているのは「物」なのに、本当に向き合っているのは人の「生活」なんですね。立ち上がる時にどこへ手を伸ばすのか。トイレまでの数歩が遠いのか近いのか。ベッドの高さが合っているのか、家の段差が気持ちを萎ませていないか。そういう日常の細かな凸凹を見て、どの道具が馴染むかを考えるわけです。静かなようで実は千思万考、かなり頭を使う世界です。

しかも、その支え方は感覚だけではありません。福祉用具専門相談員(用具選びを支える専門職)がいて、住環境コーディネーター(住まいと動きの相性を見る視点を持つ人)の資格を持つ人も少なくありません。道具の知識と住まいの見方、その両方で利用者さんの毎日を支えていく。ここに第1の新しい視点があります。福祉用具の仕事は、品物を右から左へ渡すことではなく、「その人がその家でどう暮らすか」を読み解く通訳のような仕事でもあるのです。

さらに、品揃えの世界もなかなか奥深い。一般に目にする案内だけではなく、専門のカタログや研修、展示会などを通して、たくさんの用具に触れながら知識を更新していきます。分厚いカタログを前にすると、こちらは「これは図鑑かな、それとも電話帳かな」と一瞬だけ身構えますが、その細かさの中に、生活を少し楽にする工夫がぎっしり詰まっています。種類が多いのは迷いやすい反面、それだけ選べる余地があるということ。そこは少し頼もしい話です。

私はここで、福祉用具貸与事業所の価値を「便利な道具の窓口」とだけ呼ぶのは、少しもったいないと思うのです。本当は、生活の再設計を手伝う現場なのではないでしょうか。歩き方が変われば、部屋の使い方も変わる。座り方が変われば、気分まで変わる。ほんの数センチの手すりの位置が、その人の一日を穏やかにすることもある。そう考えると、届けられているのは品物だけではなく、安心や自信の下拵えなのかもしれません。

そして何より、こうした仕事は表に出難いのです。ベッドが無事に置かれ、手すりが自然に付き、本人が普段通りに暮らせていると、周りは「良かったね」で終わります。けれど、その「普通に見える毎日」を作るまでには、見立てや相談や段取りが積み重なっています。縁の下の力持ちとは、こういう場面で使いたくなる言葉です。目立たないのに、暮らしの足元をきちんと支えている。その役割は、なかなか味わい深いものがあります。


第2章…頼もしさの正体は早さと手際と生活を見る目にある

福祉用具貸与事業所の頼もしさは、ただ動きが速いという話だけではありません。本当の値打ちは、急ぎの場面でも話を飲み込み、必要な形にして現場へ落とし込むところにあります。退院当日にポータブルトイレが必要になることもあれば、新しく関わった方のために、その日のうちに住まいの環境を整えたい場面もあります。退院前カンファレンス(退院前の準備会議)や担当者会議(関係者で方針を揃える話し合い)への急な参加依頼にも応じてきた、という実感が本文にはしっかり描かれていました。こういう話を聞くと、福祉用具の仕事は静かな倉庫仕事ではなく、電光石火で走る現場仕事でもあるのだと分かります。

しかも、その速さは勢いだけで出来ているわけではありません。担当件数が一人あたり100件以上とも言われる中で、福祉用具貸与計画書(用具の使い方や導入内容をまとめる書類)を作成し、必要な調整を進め、書類も比較的きちんと早めに整えていく。ここには、見え難いけれど相当な段取り力があります。電話が鳴ったら「今は手が離せません」と言いたくなる日も人間ですからあるはずなのに、そこを飲み込んで動く。こちらなど、買い物メモを持って出たのに肝心の卵を忘れる日がありますから、頭が下がります。臨機応変とは、こういう人たちの背中に似合う言葉です。

さらに頼もしさを感じるのは、品物を置いて終わりにしない手際の良さです。特殊寝台、いわゆるベッドを、バラバラの部品からすばやく組み立てて設置する。しかも事業所によっては、部屋を整えながら用具を入れてくれることもあるといいます。その様子は正にプラモデルのようだと感じる場面がありましたが、近いものがあります。説明書を見ながら固まる私たちと違い、あちらは部材と空間を見て、生活の動線まで含めて組み上げていく。あれは組み立てというより、暮らしの再配置に近いのかもしれません。

そして、ここがこの章の大事な切り口です。早い人は頼もしい。けれど、福祉用具の現場では、早いだけでは足りません。その人がどこで立ち上がり、どこで躓きやすく、どの向きなら安心して動けるかまで見えて、はじめて「助かった」に繋がります。会議に来られること、道具を持って来られること、組み立てられること。その全部の先にあるのは、利用者さんの暮らしが今日も回ることです。ここが新しい視点だと思うのです。福祉用具貸与事業所の速さは、時間短縮のためだけではなく、生活の不安を長引かせないための速さでもあるのでしょう。

しかも、その支えは昼間だけに限りません。事業所によって差はあるにせよ、早朝や深い時間帯でも連絡がつくよう携帯電話を持ち、急な環境変化に備えている担当者もいることでしょう。誰かが亡くなられて部屋を急いで広くしたい時など、生活は待ってくれません。そんな時、道具を扱う人でありながら、暮らしの節目に立ち会う人にもなっている。ここまで来ると、福祉用具貸与事業所は「物を運ぶところ」より、「困ったの谷間を埋めるところ」と呼びたくなります。備えあれば憂いなしという言葉は、こういう仕事のそばで使うと、少しだけ重みが増します。

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第3章…進化した道具があっても、使い替えなければ景色は変わらない

福祉用具の世界は日進月歩です。新しい商品が出るたびに、形が少し洗練され、動きが少し滑らかになり、使う人の負担が少し軽くなるよう工夫が重ねられています。けれど、ここで見逃したくないのは、道具が進化することと、暮らしが変わることは別だという点です。新しい用具が世の中にあっても、使っている人の手元がずっと同じなら、生活の景色もまた現状維持のままになりやすいのです。

その背景には、福祉用具貸与の仕事ならではの距離感があります。契約が済むと、追加の相談がない限り、利用者さんと直接会う機会は定期メンテナンスくらいになることもあり、場合によっては半年ほど顔を合わせないこともある。月に1回伺えたら丁寧な方、という実感もあるでしょう。人と会う回数が少なければ、「これ、もっと合う物がありますよ」と声を掛ける機会も減ります。ここが第3章の大事な切り口です。進歩を止めるものは古い道具そのものではなく、知らせる場面の少なさかもしれません。

しかも、人は慣れる生き物です。今の手すりで何とか歩ける。今のマットレスでも眠れている。今の車椅子でも動けている。そうなると、新しい提案を受けても「まあ、このままで」となりやすい。わかります。家具の位置を変えるだけでも少し気合いが要るのに、毎日使う道具の交換となれば、気持ちが一歩引くのも自然です。こちらだって、台所の便利グッズを買ったのに箱のまま棚に置いて、「そのうち使う」と言いながらも季節を跨ぐほどになることがあります。人間、なかなか味があります。

ただ、ここで前向きに見たいのです。新しい用具には、新しい改良があります。ほんの少しの違いに見えても、立ち上がりやすさ、移りやすさ、疲れ難さが変わることがある。すると、昨日までは手伝いが必要だった動きが、今日は自分で出来るようになるかもしれません。こうした「新しい自立の芽」という感覚は、とても大切だと思います。自立支援(自分で出来ることを増やす支え)は、気合いだけで進むものではなく、道具との相性でフッと開くこともあるからです。試行錯誤の先で、暮らしに少し光が差す。そういう変化は十分にあり得ます。

さらに心強いのは、交換そのものに特別な費用がかからないとされている点です。利用の枠の中で見直しを検討しやすいなら、遠慮し過ぎる必要はありません。梅雨前に特殊寝台のマットレスを見直す、季節の変わり目に動線を整える、体の状態が少し変わったところで用具を比べ直す。こうした見直しは、贅沢ではなく、暮らしの点検です。車のタイヤだけ季節で気にして、毎日体を預ける道具は何年もそのまま、となると少し不思議です。いえ、私たちの日常には、そういう小さな不思議がけっこうありますけれど。

この章の結論はシンプルです。福祉用具の進化は、店頭やカタログの中で止めておくには惜しいものです。使う人の暮らしへ届いて、初めて意味を持ちます。新しい道具をすすめることは、品物を替える話ではなく、その人の毎日をもう一度見直す切っ掛けを渡すこと。そう考えると、交換は面倒ごとではなく、暮らしを少し整え直す機会に見えてきます。景色が変わる入口は、意外とそんなところにあるのかもしれません。


第4章…本当に豊かなのは最新機器よりも、自分でできることが増える毎日

福祉用具の話になると、つい「新しい機械」「最先端の道具」という言葉に目が向きます。もちろん、それは胸が躍る話です。タブレットやスマホで動く道具を見せてくれる事業所もあり、ハンズフリーの機械だけではない広がりが、現場には少しずつ入ってきています。けれど、この章で大切にしたいのは、機械の新しさそのものではありません。本当の豊かさは、道具が新しかったかどうかよりも、その人が自分で出来ることを少し取り戻せたかどうかにある。私はそこに、この仕事の真価があると思います。

例えば、いや、この言い方は控えましょう。こんな場面です。昨日まで誰かの手を借りていた立ち上がりが、今日は自分の力で出来る。ベッドから車椅子への移動が少し滑らかになる。部屋の中を移るとき、怖さより先に「行けそう」が来る。こういう変化は、数字では見え難くても、暮らしの中ではとても大きいのです。福祉用具は着々と進化し、新しい用具に交換することで「新しい自立の芽」が見える可能性が高いと元の文章にもありましたが、まさにそこです。最新機器の価値は、飾って眺めることではなく、生活の中で静かに自信を育てることにあります。

しかも面白いのは、道具が助けているようで、実はその人の「やってみよう」を後ろからそっと押しているところです。自立支援(自分で出来ることを増やす支え)は、気合いや根性だけで進むものではありません。高さが合う、手をかけやすい、移りやすい、疲れにくい。そうした細かな工夫が整うことで、体の動きが前に出やすくなります。四字熟語でいえば一進一退の日もありますが、それでも少しずつ前へ進めるように土台を整えるのが福祉用具の役目なのでしょう。道具は主役ではないけれど、名脇役としてはかなり頼もしい存在です。

さらに、ここで見方を変えてみると、豊かさとは「何でも自分だけでやること」でもありません。必要な場面では道具に助けてもらい、その分、自分で出来る場面を増やしていく。全部を頑張り切るのではなく、無理なく暮らしを回していく。その感覚の方が、むしろ健全です。私たちはつい、助けを借りると負けたような気分になることがあります。けれど実際には、上手に頼れる人ほど毎日が整いやすい。炊飯器を使っているのに「米は気合いで炊くべきだ」とは言いませんから、ここも似たような話かもしれません。少し笑えて、でも大事なところです。

そして、福祉用具貸与事業所が見せてくれる最先端の姿勢も、そこへ繋がっています。新しい機器を取り入れること自体が目的ではなく、その人の暮らしに合う選択肢を増やすことが目的なのです。百花繚乱のように道具が並んでいても、使う人の毎日に結びつかなければ宝の持ち腐れです。反対に、1つの用具がピタリとはまれば、動ける範囲が広がり、気持ちまで少し晴れることがある。そう思うと、豊かさとは高価さでも派手さでもなく、「今日も自分らしく動けた」と感じられる時間の積み重ねなのかもしれません。

この章の結びでは、こんな言葉が似合います。福祉用具の進化は、機械の自慢話で終わらせるには惜しい。暮らしの中に入って、出来ることを1つ増やし、気持ちを少し軽くしてこそ意味があるのです。昨日より少し動きやすい、昨日より少し頼られ過ぎない、昨日より少し自分で決められる。その「少し」の積み重ねが、生活を豊かにしていく。派手ではなくても、こういう前進はじんわり嬉しいものです。

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まとめ…福祉用具の進化は道具自慢ではなく暮らし直しのチャンスになる

福祉用具貸与事業所の仕事を辿っていくと、見えてくるのは「道具を届ける人たち」という姿だけではありませんでした。レンタルだけでなく、販売や住宅改修まで支え、急ぎの場面では素早く動き、日々の暮らしの中にそっと入り込んで整えていく。表から見ると静かな仕事でも、その中身は細やかな配慮と迅速果断の連続です。しかも、支えているのは物そのものではなく、その人がその人らしく暮らせる毎日でした。

そして、この記事で一番大事にしたかったのはここです。福祉用具の進化は、道具の話で終わらせるには惜しいのです。新しい用具が増え、扱い方が洗練され、選べる幅が広がっても、それが暮らしの場面へ届かなければ景色は変わりません。反対に、用具を見直す機会があり、今の体の状態や住まいに合う形へ整えられれば、自分で出来ることが少し増える。その「少し」が、毎日には思っている以上に大きいのだと思います。新しい自立の芽とは、派手な変化ではなく、昨日よりほんの少し動きやすい今日のことなのかもしれません。

私たちはつい、新しい道具というと機械の賢さや見た目の立派さに目を向けがちです。けれど、本当に嬉しいのは、立ち上がる時の不安が減ることだったり、移る動作が前より滑らかになることだったりします。暮らしの豊かさは、拍手が起きるような大きな変化だけで出来ているわけではありません。小さな安心、小さな自信、小さな前進。その積み重ねが、じわじわと生活を明るくしていきます。気づけば、最新機器の話をしていたはずなのに、最後は「今日も自分で出来た」が主役になっている。何とも奥ゆかしい着地点です。

福祉用具貸与事業所の価値は、道具の数や新しさだけでは測れません。暮らしを見て、急ぎに応じ、必要なときに見直しを提案し、その人の生活の輪郭をそっと整えていくところにあります。縦横無尽に動きながらも、目指している先はいつも生活者の毎日です。そう思うと、福祉用具の進化とは、技術の進歩というより、暮らし直しの機会が増えていることなのかもしれません。道具に助けてもらいながら、自分で出来ることを少しずつ取り戻していく。その歩みが続く限り、毎日はまだまだ優しく変わっていけそうです。

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