見た目と正体が一致しません!~アピオス・シカクマメ・食用ほおずき・ポポーで巡る秋の味~

[ 旬の食と暮らし ]

はじめに…秋の売り場には知らないご馳走がまだ隠れています

秋の食材売り場には、栗、さつまいも、きのこ、梨といった顔馴染みが並びます。その少し先へ目を移すと、「野菜なのか、果物なのか、それとも飾りなのか?」と足を止めたくなる食材が、何食わぬ顔で秋を迎えています。

土の中に芋を作るマメ科のアピオス、さやに四枚の翼を広げるシカクマメ、薄い袋に甘酸っぱい実を隠した食用ほおずき、山里で南国のような香りを放つポポー。四つとも名前を聞いただけでは味が浮かびにくく、売り場で出会えば一瞬だけ思考停止です。「今日の献立には難しそう…」と通り過ぎたくなりますが、塩茹で、炒め物、ジャム、デザートと、料理法は意外なほど親しみやすく出来ています。

見慣れない食材は、料理が難しいのではなく、まだ食べ方を知らないだけなのかもしれません。

食材を野菜、豆、芋、果物と綺麗に分けたくなるのは、買い物をしやすくするための知恵です。けれども自然は自由自在。豆の仲間が芋のようになり、飾りに見える袋から果物が現れ、日本の秋にカスタードのような実が育ちます。こちらの分類表を軽やかに飛び越えてくる姿は、少しうらやましいほどです。

知らない味に出会うと、いつもの台所に小さな会話が生まれます。「これはどう切るの?」「本当に食べられるの?」「あ、思ったより美味しい」。その三言だけでも、食卓は十分にぎやかです。秋の奥で出番を待つ4つの食材を訪ねながら、見た目と正体がずれる楽しさを味わってみましょう。

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第1章…豆の仲間が土の中で芋になった?~アピオスの甘味とほっくり料理~

秋の畑で土をそっと掘ると、茶色い小さな塊が、細い地下茎に沿って数珠のように連なって現れます。見た目は小芋ですが、その地上では赤紫色の花を付けたツルが伸びています。この少し不思議な植物がアピオスです。

アピオスは北米原産のマメ科植物で、和名はアメリカホドイモ。食べる部分は根ではなく、塊茎(地下茎の一部が養分を蓄えて膨らんだ部分)です。豆の仲間なのに、収穫カゴへ入るのは豆ではなく芋。「所属はマメ科、担当業務は芋です」と名刺を差し出された気分になります。

日本では、明治初期に青森県へリンゴの苗木が運ばれた際、その根鉢に混じって伝わったと考えられています。今では青森県を代表する珍しい農産物の1つとなり、直径3~4センチほどの塊茎が食卓へ届きます。土の中では1つずつ離れず、細い地下茎で連なって育つため、掘り上げた姿は芋のネックレス。首には掛けません。そこは迷わず鍋へお願いします。

可食部100グラム当たりのエネルギーは146キロカロリーです。たんぱく質は5.9グラム、脂質は0.6グラム、炭水化物は35.6グラム、食物繊維(消化されにくい植物由来の成分)は11.1グラム含まれます。さらに、カリウム(体内の水分バランスなどに関わるミネラル)は650ミリグラム、カルシウムは73ミリグラム。瑞々しい野菜というより、少量でも腹持ちを感じやすい、滋味豊富な芋料理の仲間です。

アピオスは、豆か芋かを決める食材ではなく、豆と芋の良いところを一口で楽しむ食材です。

味は、栗のほっくり感へ芋と豆の香ばしさを重ねたような素朴な甘味です。初めてなら、よく洗って皮付きのまま蒸すか、やわらかくなるまで塩茹でにすると、持ち味が分かりやすくなります。茹で上がった実を半分に割り、塩をほんの少し振れば、それだけで秋のおやつです。バターを添えると洋風へ傾き、味噌を少し付ければ急に里山へ戻ってくる。小さな実なのに、行き先は変幻自在です。アピオスは通常、茹でてそのまま食べる他、皮付きのまま芋類と同じように料理へ利用できます。

おかずにするなら、素揚げや甘辛煮、きのこと一緒に炊くご飯、味噌汁の具がよく似合います。少し潰してコロッケへ混ぜれば、ジャガイモだけの時より香ばしい余韻が残ります。青森では、チャウダー、キッシュ、おこわの他、抹茶を合わせたケーキなどにも仕立てられてきました。珍しい食材だから特別な調理器具が要るわけではなく、いつもの芋料理の席へ1つ加えるくらいで十分です。

保存する時は、乾燥させ過ぎないことが大切です。加熱したものを小分けして冷凍すれば、風味を保ちながら料理へ使いやすくなります。袋の奥へ大切にしまい込み、「珍しいから特別な日に」と待っているうちに存在を忘れるのは、冷凍庫あるあるです。日付を書いた袋を目につく場所へ置き、味噌汁や炊き込みご飯へ気軽に登場させる方が、アピオスも本望でしょう。

海の向こうでは「アメリカン・グラウンドナット」や「ポテト・ビーン」と呼ばれ、北米の先住民にとって大切な食料の1つでした。現在も北米では、秋に塊茎を収穫し、茹でる、焼く、揚げる、潰すなど、ジャガイモに近い方法で味わわれています。食料となる植物が少数に偏る中、たんぱく質を含む多年生作物として可能性を探る研究も続いています。

日本のリンゴ畑の傍で根づき、北米では昔から人のお腹を支えてきたアピオス。小さな芋を1つ食べるだけでも、土の中から海の向こうまで物語が伸びていきます。知らない食材を迎える楽しさは、味だけでなく、その一口がどこから来たのかを想像できるところにもあるのです。


第2章…さやに四枚の翼が生えている!~シカクマメの歯応えと南国の食卓~

沖縄の野菜売り場で、緑色の手裏剣を細長く伸ばしたような野菜に出会うことがあります。さやの四方から、ヒラヒラと波打つ翼が張り出しているシカクマメです。包丁を入れる前から奇想天外で、野菜の姿にも設計者の遊び心があるのだろうかと考えてしまいます。

名前の由来は、さやに四枚の翼があり、輪切りにすると四角形や星形に近い断面が現れること。英語でも「ウイングド・ビーン」と呼ばれます。沖縄では「うりずん豆」という名が親しまれ、9月の旬食材として紹介されています。「うりずん」は草木が瑞々しく芽吹く頃を表す沖縄の言葉で、鮮やかな緑色から名付けられました。南国らしい優雅な呼び名ですが、まな板へ置けば存在感はなかなか勇ましいものです。

食べるのは、やわらかい若いさやです。選ぶ時は、緑色が鮮やかで張りがあり、翼の部分が黒ずんでいないものが目安になります。育ち過ぎたさやは繊維が硬くなりやすいため、細めで瑞々しいものが料理向きです。翼が立派だから大物を選びたくなりますが、野菜売り場での貫禄と、食卓でのやわらかさは別の話。見栄えに拍手しながら、若手をカゴへ迎えましょう。

生の若ざや100グラム当たりのエネルギーは19キロカロリーです。たんぱく質は2.4グラム、脂質は0.1グラム、食物繊維(消化されにくい植物由来の成分)は3.2グラム、カリウム(体内の水分バランスに関わるミネラル)は270ミリグラム含まれます。カルシウムは80ミリグラム、ビタミンCは16ミリグラムです。水分が92.8グラムを占め、軽やかに食べながら、歯応えもしっかり楽しめる野菜です。

シカクマメの魅力は、低いカロリーだけでなく、ひと切れで料理の姿と食感を同時に楽しくしてくれるところにあります。

初めて料理するなら、端を切り落として食べやすい長さに分け、熱湯でサッと茹でます。鮮やかな緑色になったら冷水へ取り、水気を切って、かつお節と醤油で和えるだけでも立派な一品です。噛むとシャキッと音が立ち、さやいんげんに似た青々しさの後から、ほのかな甘味が追いかけてきます。

薄切りにして豚肉と炒めれば、沖縄らしい元気なおかずになります。にんにくや胡麻油を利かせた中華炒め、衣を薄くまとわせる天ぷら、ツナや卵と合わせるサラダにも向いています。輪切りにすると星形が残るため、スープやちらしずしへ散らしても楽しげです。切るだけで飾り切りをしたように見えるとは、一石二鳥。料理人の腕が急に上がったように見えても、そこはシカクマメの功績です。

火を通し過ぎると、折角の歯応えと鮮やかな色が失われやすくなります。炒め物なら最後の方に加え、短時間で仕上げるのが似合います。天ぷらも、衣が軽く固まる程度で引き上げると、翼の形と瑞々しさが残ります。「念のため、もう少し」と鍋を見守り続けるのは料理あるあるですが、シカクマメには早めの退勤を認めてあげたいところです。

シカクマメはニューギニアや東南アジアにゆかりの深い熱帯のマメ科植物で、世界では若いさやだけでなく、葉、花、種、地下に育つ芋状の部分まで食用にされます。適切に調理すれば多くの部分を利用出来るため、「1つの植物で小さな食料品店」と表現されることもあります。東南アジアでは若いさやを加熱し、副菜やサラダとして食べる他、パプアニューギニアではさやや種、葉、地下部も暮らしの食料に役立てられてきました。

日本では、翼の付いた若いさやを味わうことが中心です。沖縄の炒め物から東南アジアのサラダ、南太平洋の畑まで、同じ植物が土地に合わせて役割を変えています。シカクマメを1本切っただけなのに、まな板の上から世界の食卓が四方へ広がる。変わった形は目を引くためだけではなく、知らない味へ手を伸ばす小さな取っ手なのかもしれません。

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第3章…飾る提灯を開けたら甘酸っぱい実~食用ほおずきの小さな驚き~

秋の光を受けた薄茶色の袋をそっと開くと、中から金色に近い丸い実が現れます。紙風船のような姿を眺めていると、縁側やお盆飾りが浮かびますが、こちらは食用ほおずき。完熟した実を口へ運べば、甘味のすぐ後ろから爽やかな酸味が追いかけ、細かな種がプチプチと弾みます。

外側の袋は蕚(がく・花を包んでいた葉が育った部分)です。果実を守りながら薄い紙のように乾いていくため、ひと粒ずつ小さな提灯をかぶった姿になります。オレンジチェリー、ゴールデンベリー、ストロベリートマトなど呼び名も百花繚乱。名前だけなら果物売り場が少々渋滞していますが、袋を開ければ主役は迷わず1人です。完熟した実には、ベリー類を思わせる濃い甘酸っぱさと、グァバに近いやわらかな香りがあります。

海外の公的な食品成分表では、生のケープグーズベリー100グラム当たり64キロカロリー、たんぱく質1.8グラム、脂質0.6グラム、炭水化物10.7グラム、食物繊維(消化されにくい植物由来の成分)4.0グラムとされています。水分は83グラムで、甘味のある果物としては軽やかに楽しみやすい数字です。品種や産地、熟し具合によって成分値には幅があるため、栄養を背負わせ過ぎず、色と香りと酸味を献立へ添える果物として迎えるのが似合います。

食用ほおずきの魅力は、甘いか酸っぱいかを決めることではなく、その両方が一粒の中で元気よく弾むところにあります。

最初の一粒は、冷やして生のまま味わうのが素直です。蕚を開き、実を水でやさしく洗えば準備は終わり。包丁も鍋も使わないため、料理をした気分が少し足りませんが、洗った人が本日の調理担当です。ヨーグルトへ半分に切って添えたり、サラダへ散らしたりすると、黄色い実が皿の中へ明るい灯りを置いてくれます。

甘酸っぱさはチョコレートともよく合います。実の表面を乾かしてから溶かしたチョコレートへ半分だけ潜らせ、冷やし固めれば、小さな秋の菓子になります。ほろ苦いチョコレートの後から酸味が現れるため、見た目は上品でも口の中は千変万化。ひと粒で止めようとした手が、次の提灯を開いているかもしれません。生食の他、チョコレートがけ、前菜、サラダの彩りなどにも利用されています。

実が多く手に入ったら、砂糖とレモン汁で短く煮るジャムも楽しめます。果実を半分に切り、重量の3~4割ほどの砂糖を加えて水分が出るまで置き、弱火で煮ます。果物に含まれるペクチン(ジャムへトロミを付ける植物の成分)の量や熟し具合で固まり方が変わるため、冷めた時に少し緩い程度で火を止めると扱いやすくなります。パンやヨーグルトだけでなく、炭酸水へ少量溶かせば秋色のドリンクにもなります。保存する場合は、容器の消毒や冷蔵管理を丁寧に行い、早めに食べ切る方が安心です。食用ほおずきは、ジャムや保存食、冷凍にも向く果実として紹介されています。

甘い料理だけに任せる必要もありません。刻んだ食用ほおずきへ味噌、味醂、少量の砂糖を合わせ、焼いた鮭や豚肉へ添えると、酸味が脂の余韻を軽くしてくれます。学校給食でも、鮭へ食用ほおずき味噌を合わせた献立が作られた例があります。果物と味噌の和洋折衷に一瞬身構えますが、甘辛い味噌へ爽やかな酸味が入ると、ご飯に合うソースへ着地します。

南米アンデスではゴールデンベリーとして親しまれ、そのまま食べる他、ジュース、サラダ、デザート、ジャム、リキュールなどへ幅広く使われます。ペルーでは、小さな実が農家の暮らしを支える作物にもなっています。日本の皿では秋の彩りとなり、アンデスの台所では飲み物や保存食へ姿を変える。同じ果実でも、土地が変われば出番もにぎやかに広がります。

なお、庭にある観賞用のほおずきを自己判断で食べるのではなく、食用として流通している完熟品を選びます。食べるのは色づいた果実であり、葉や茎は料理に使いません。袋が薄茶色になり、実が黄色からオレンジ色へ熟したものを迎えれば、香りも甘味も分かりやすくなります。

提灯のような袋は、実を隠すためにあるようで、開ける楽しさまで包んでいます。見慣れた秋の飾りに似た姿から、南国を思わせる香りが飛び出す。その小さな食い違いこそ、食用ほおずきを一度味わってみたくなる理由なのです。


第4章…日本の山里で味わう南国気分~ポポーと森のカスタードの正体~

秋の山里で、緑色のずんぐりした実を半分に切ると、中から黄色い果肉と大きな黒い種が現れます。見た目はアケビにも青いマンゴーにも似ていますが、立ち上がる香りはバナナ、マンゴー、パイナップルを同じ部屋へ招いたような華やかさ。日本の静かな庭先に実っていたはずなのに、口へ入れた瞬間、味覚だけが南国方面へ出発します。

この果物がポポーです。北米原産のバンレイシ科で、熱帯に多い仲間の中では珍しく、寒さのある地域でも育つ落葉果樹です。北米原産の樹木になる食用果実としては大きく、晩夏から秋に熟します。日本へは明治時代に入り、庭木などとして広がりました。山梨県早川町では昭和初期から栽培されたと伝えられ、10月ごろに地域の特産品として出荷されています。

熟した果肉は、トロリとなめらかでカスタードのよう。品種や熟し具合によって、バナナ、マンゴー、パイナップル、バニラなどを思わせる風味が重なります。「森のカスタード」と呼びたくなる面目躍如の食感です。和風の名前から素朴な梨のような味を想像していた人には、かなり陽気な肩透かしとなるでしょう。

ケンタッキー州立大学が示す成分値では、100グラム当たり80キロカロリー、たんぱく質1.2グラム、脂質1.2グラム、炭水化物18.8グラム、食物繊維(消化されにくい植物由来の成分)2.6グラムです。ビタミンCは18.3ミリグラム、カリウムは345ミリグラム、マグネシウムは113ミリグラム含まれます。ただし、この分析値は食べない皮も含めて測定されているため、実際に果肉だけを食べた時の数値とは多少異なります。数字を勲章のように並べるより、バナナに近い満足感を持つ秋の果物と考えると付き合いやすそうです。

ポポーは南国の果物を真似た味ではなく、北米の森が自分の気候で育てた濃厚な秋の甘味です。

食べ頃は、果実をやさしく押した時に少し弾力があり、甘い香りがハッキリ立った頃です。皮が緑色のまま熟すものもあり、バナナのような黒い斑点が出ることもあります。半分に切り、黒い種を避けながらスプーンですくえば、手軽なデザートになります。皮と種は食べず、黄色い果肉だけを味わいます。大きな種が次々と現れるため、「果肉を食べているのか、種を発掘しているのか」と思う瞬間もありますが、その発掘作業も初対面の楽しさです。

完熟後は傷みやすく、室温では数日ほど、冷蔵でも長期保存には向きません。食べ切れない時は皮と種を除き、果肉を潰して冷凍すると扱いやすくなります。冷凍果肉へ牛乳やヨーグルトを加えてミキサーにかければ、砂糖をたくさん足さなくても濃厚なシェイクになります。山梨県早川町でも、冷凍した果肉をドリンク、デザート、ソースへ使う楽しみ方が紹介されています。

もう少し料理を楽しむなら、果肉と無糖ヨーグルトを混ぜて冷やすだけでも、香りのよい簡単ムース風になります。レモン汁を少し加えると甘味の輪郭が整い、クラッカーやパンケーキにも合わせやすくなります。加熱料理では、プリン、カスタード、パイ、ケーキ、クッキー、アイスクリームなどへ変幻自在。バナナの代わりに果肉を混ぜられる料理も多く、熟した実を助ける道は思った以上に広がっています。

北米では、先住民が果実を生や乾燥した状態で食べ、樹皮も暮らしの道具へ利用してきました。現代では、旬の生果が農産物市場や地域の催しで販売される他、果肉がジュース、アイスクリーム、ヨーグルト、焼き菓子などへ加工されています。広い量販店でいつでも買える果物ではなく、産地の秋に出会って味わう地域色の濃いご馳走です。

ポポーが広く流通しにくい理由は、美味しさが足りないからではありません。完熟後の日持ちが短く、やわらかな実を遠くへ運びにくいからです。便利さを競う売り場では控えめでも、収穫した土地の近くで味わえば、その香りは堂々たる主役になります。出会える期間が短いからこそ、実を割った日の驚きまでご馳走になるのでしょう。

秋の味は、必ずしも渋く落ち着いている必要はありません。山里の緑色の実から、明るく濃厚な香りが飛び出す日もあります。ポポーをひと口味わえば、日本の秋は紅葉色だけでなく、カスタード色にも染まることが分かります。

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まとめ…知らない食材との出会いが秋の献立を楽しく広げてくれる

土の中で芋のように育つアピオス、四枚の翼を広げるシカクマメ、提灯の中に甘酸っぱさを隠す食用ほおずき、山里で南国の香りを放つポポー。どれも見た目や名前から味を想像しにくい食材ですが、調理法は塩茹で、炒め物、ジャム、冷たいデザートと、いつもの台所へ迎えやすいものでした。

珍しい食材を見つけると、失敗せず立派な料理を作らなければならない気がします。しかし、最初から縦横無尽に使い回す必要はありません。アピオスは塩茹で、シカクマメは短時間の炒め物、食用ほおずきは生のまま、ポポーはスプーンで掬う。まず素顔を知ってから、次の料理を考えれば十分です。

4種類が揃ったなら、前菜からデザートまでを1つの皿に詰め込むより、秋の小さな二皿献立が似合います。アピオスをやわらかく茹で、シカクマメと鶏肉を炒めて塩と醤油で整えれば、ほっくりとシャキシャキが楽しめる温かい主菜になります。食用ほおずきとポポーは、ヨーグルトへ添えて冷たいデザートに。全部を一皿へ載せる手もありますが、食卓が少々にぎやかな学級会になりそうなので、甘い組とおかず組に分かれてもらいましょう。

栄養の数字も食材を知る手掛かりになりますが、数字だけで食べる物を決めると、秋の楽しさは少し窮屈になります。食感、香り、旬の短さ、育った土地の料理まで含めて味わうと、1つの食材から見える景色は千差万別です。

知らない食材を1つ味わうことは、いつもの献立へ新しい道を1本増やすことです。

「食わず嫌い」という言葉がありますが、食べる前に好きになる必要もありません。少し切って、少し焼いて、家族で首を傾げながら一口食べてみる。その時間そのものが、季節のご馳走になります。気に入れば来年も探し、好みに合わなければ「こんな味だった」と笑って終える。それも立派な秋の思い出です。

有名な味覚だけを追いかけなくても、秋の売り場にはまだ面白い出会いが待っています。知らない名前を見つけた日は、難しい食材が現れた日ではなく、台所の世界がほんの少し広がる日なのです。

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